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手掌多汗症の手術で後悔しないために知っておくべきこと

手のひらの汗が止まらず、日常生活や仕事に支障をきたしている方にとって、手掌多汗症の手術は「根本的な解決策」として魅力的に映るかもしれません。しかし、インターネット上では「手術して後悔した」「代償性発汗がひどくなった」という声も少なくなく、手術を検討している方が不安を感じるのは当然のことです。後悔しない選択をするために、手術のメリットとリスク、そして手術以外の選択肢について詳しく解説していきます。

🚨 この記事を読まないと…

  • 📌 手術後に「こんなはずじゃなかった」と後悔するリスクがある
  • 📌 代償性発汗(発症率50〜98%)という深刻な副作用を知らないまま手術を受けてしまう
  • 📌 手術より効果的な非手術治療の選択肢を見逃してしまう

💡 この記事でわかること

  • ✅ 手術(ETS)の本当のリスクと成功率をわかりやすく解説
  • 後悔しやすい人・満足しやすい人の特徴を徹底比較
  • ✅ 手術なしで改善できる最新の非侵襲的治療法も紹介
👩 読者の声
「手術しようと思ってたけど、代償性発汗って何?って全然知らなかった…。この記事読んでよかった!」

目次

  1. 手掌多汗症とはどのような状態か
  2. 手掌多汗症の手術(ETS)とはどのような治療か
  3. 手術で後悔する主な原因:代償性発汗とは
  4. 代償性発汗以外の手術リスクと副作用
  5. 手術を受けて後悔しやすい人の特徴
  6. 手術を受けて満足している人の特徴
  7. 手術以外の治療選択肢
  8. 手術を検討する前に試すべき非侵襲的治療
  9. 手術を受ける際に後悔しないための準備
  10. まとめ

この記事のポイント

手掌多汗症の手術(ETS)は90%以上の有効率を持つが、代償性発汗(発症率50〜98%)の深刻なリスクがある。アイシークリニックでは塩化アルミニウム外用剤・ボツリヌストキシン注射など非手術的治療を優先し、十分な情報提供のもと段階的な治療を推奨している。

💡 手掌多汗症とはどのような状態か

手掌多汗症とは、手のひら(手掌)に過剰な発汗が起こる状態を指します。通常、人間は体温調節のために発汗しますが、手掌多汗症の方は体温調節とは無関係に、精神的な緊張や興奮をきっかけとして大量の汗をかいてしまいます。症状が軽い場合は、緊張したときに手がしっとりとする程度で済みますが、重症の場合は安静にしていても汗が滴り落ちるほどになることがあります。

手掌多汗症は、日本人の約0.6〜1%程度に見られるとされており、決して珍しい疾患ではありません。思春期に発症することが多く、ピークは10代後半から20代と言われています。手のひらの汗によって、握手や書き仕事、スマートフォンの操作、楽器の演奏などが困難になり、日常生活の質を大きく低下させます。また、人との接触を避けるようになったり、自己肯定感が下がったりするなど、心理的な影響も無視できません。

発汗を調節しているのは自律神経系の一部である交感神経です。手掌多汗症の場合、精神的な刺激に対して交感神経が過剰に反応し、手のひらにある汗腺(エクリン汗腺)が必要以上に活性化されます。このメカニズムを理解することが、後で説明する手術の原理を理解する上でも重要です。

手掌多汗症は原発性(一次性)と続発性(二次性)に分けられます。原発性手掌多汗症は、特定の基礎疾患がなく、発汗そのものが病態の中心となるものです。一方、続発性手掌多汗症は、甲状腺機能亢進症や糖尿病、感染症、神経疾患などの基礎疾患に伴って発症します。治療を始める前に、続発性でないかどうかを確認することが大切です。

Q. 手掌多汗症の代償性発汗とはどのような症状ですか?

代償性発汗とは、手掌多汗症の手術(ETS)で手のひらの発汗が抑制された後、背中・腹部・太もも・臀部など別の部位から代わりに大量の汗をかくようになる現象です。発症率は50〜98%と報告されており、重篤な場合は手術前より生活の質が低下することがあります。

📌 手掌多汗症の手術(ETS)とはどのような治療か

手掌多汗症に対して行われる主な手術は、胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS:Endoscopic Thoracic Sympathectomy)と呼ばれるものです。この手術は、脇の下に小さな穴(1〜2cm程度)を開け、そこから内視鏡を挿入して胸部の交感神経を切断または焼灼する方法です。交感神経の信号を遮断することで、手のひらへの発汗指令を物理的に断つことができます。

手術は全身麻酔下で行われ、両側の交感神経に対して処置を行うため、通常は両脇に切開を入れます。手術時間は1〜2時間程度で、入院期間は1〜3日程度と短く、回復も比較的早いとされています。手術の成功率は高く、手のひらの発汗改善に関しては90%以上の有効率が報告されています。

交感神経のどの部位を遮断するかによって、ETSにはいくつかの種類があります。胸部交感神経節は、T2からT5(第2胸椎から第5胸椎に対応する神経節)まで存在しますが、手掌多汗症に対してはT3またはT4レベルの神経節を遮断することが多いです。かつてはT2レベルで行われることが多かったのですが、代償性発汗が強く出やすいことから、近年ではT3やT4での遮断が主流になっています。

また、神経を完全に切断するのではなく、クリップで一時的に挟んで遮断する「クリッピング法」も行われています。理論的には、後から副作用が出た場合にクリップを外すことで効果を元に戻せる可能性があるとされていますが、実際には神経の変性が起きている場合には完全な回復は困難であることが多いとされており、この点は後悔の原因になることもあります。

✨ 手術で後悔する主な原因:代償性発汗とは

手掌多汗症の手術で後悔する最も一般的な原因が「代償性発汗(compensatory sweating)」です。これは、手術によって手のひらの発汗が抑制されると、体は熱を逃がすために別の部位(主に体幹部や太もも、背中、お腹など)から代わりに大量の汗をかくようになる現象です。

代償性発汗はほぼすべての患者に起こるとされており、発症率は50〜98%という報告もあります。その程度は人によって異なり、軽微なものから、もとの手汗よりも日常生活に支障をきたすほど重篤なものまでさまざまです。代償性発汗の部位としては、背中、胸部、腹部、太もも、臀部などが多く報告されており、食事中(特に辛い食べ物や熱い食べ物を食べたとき)に顕著に悪化することもあります。

代償性発汗が重篤になると、手汗が改善されたにもかかわらず、「背中が濡れて衣服が気になる」「外食のたびに大量の汗をかいて恥ずかしい」「夏場は体が汗でびしょびしょになる」といった状況になり、手術前よりも生活の質が下がったと感じる方もいます。このような場合に「手術しなければよかった」と後悔するのは自然なことです。

代償性発汗の重さは、遮断する神経節のレベルと相関していることが知られています。より上位(T2)での遮断は手のひらへの効果が高い一方、代償性発汗も強くなりやすいとされています。T3やT4での遮断は代償性発汗が比較的軽減されるとされていますが、完全に防ぐことはできません。手術前に代償性発汗についてしっかりと説明を受けていなかった場合、術後に初めてこの現象を経験し、強い後悔を感じることになります。

代償性発汗に対する有効な治療法は現時点では確立されておらず、一度起こると改善が難しいことも後悔の大きな要因です。クリッピング法によってクリップを外すことで改善することもありますが、効果は限定的で、すべての患者に適応できるわけではありません。

Q. 手掌多汗症の手術(ETS)の有効率とリスクは?

ETS手術は手のひらの発汗改善において90%以上の有効率を持つ高い手術です。一方で、代償性発汗・ホルネル症候群(まぶたの下垂や縮瞳)・気胸・手の過度な乾燥などのリスクもあります。手術の成功率と術後の生活満足度は必ずしも一致しないため、十分な情報収集が不可欠です。

🔍 代償性発汗以外の手術リスクと副作用

代償性発汗以外にも、ETS手術には知っておくべきリスクや副作用があります。手術を検討する前にこれらを十分に理解しておくことが、後悔を防ぐための第一歩です。

ホルネル症候群は、ETSの合併症の一つで、眼瞼下垂(まぶたが下がる)、縮瞳(瞳孔が小さくなる)、眼球陥凹(眼球が引っ込む)の三つの症状が同側に現れる状態です。交感神経の頚部分枝への影響によって起こるもので、T2レベルでの手術で比較的多く見られます。多くの場合は一時的なものですが、永続することもあります。顔の見た目に影響するため、患者にとっては非常に大きな問題となり得ます。

気胸(肺が萎んだ状態)は、胸腔内に空気が漏れることで起こります。ETSは胸腔内の操作を行うため、この合併症が起こる可能性があります。軽微なものは自然に改善しますが、重篤な場合はドレナージ(チューブを入れて空気を抜く処置)が必要になることもあります。

味覚性発汗(フレイ症候群に類似した症状)は、特定の食べ物を食べたときに顔や頭皮に汗をかく現象です。手術による神経の変化が原因と考えられており、食事のたびに不快感を感じることになります。

手の過度の乾燥も術後に起こり得る問題です。手の発汗が完全に止まることで、手が乾燥しすぎてひび割れや皮膚トラブルが起こることがあります。手汗で悩んでいた方が今度は乾燥で悩むという状況は、やはり後悔の原因になり得ます。

また、手術である以上、全身麻酔に伴うリスク(アレルギー反応、誤嚥性肺炎など)や、出血、感染、縫合不全といった一般的な外科的合併症のリスクも存在します。これらは稀ですが、ゼロではありません。

さらに、手術の効果が時間とともに薄れることもあります。術後数年が経過した後、手のひらの発汗が再び増加することが報告されており(いわゆる「再発」)、この場合は手術の恩恵を受けられなくなる一方、代償性発汗だけが残るという最悪の状況になりかねません。

💪 手術を受けて後悔しやすい人の特徴

手掌多汗症の手術を受けた後に後悔しやすい方には、いくつかの共通した特徴があります。自分がこれらに当てはまるかどうかを確認することで、手術の判断をより慎重に行うことができます。

まず、手術のリスクについて十分な説明を受けていなかった方が後悔しやすい傾向があります。手術前に代償性発汗について詳しく説明されていなかった場合、術後に初めてその深刻さを知ることになり、「こんなはずではなかった」という気持ちが生じます。インフォームドコンセントが不十分なまま手術を受けることは、後悔の大きなリスク要因です。

次に、手汗の症状が比較的軽度にもかかわらず手術を選択した方も、後悔しやすいとされています。手汗が少し気になる程度であれば、代償性発汗によって術後の生活の質がむしろ低下する可能性があります。症状が重篤であるほど、手術による恩恵が代償性発汗のデメリットを上回りやすいとされています。

他の治療法を試さずに早急に手術を選択した方も後悔しやすいと言えます。後述するように、手術以外にも複数の治療選択肢があります。これらを試さずに直接手術を選んだ場合、「もっと別の方法を試しておけばよかった」という後悔が生じることがあります。

また、精神的なストレスや社会的なプレッシャーによって衝動的に手術を決定した方は、落ち着いて状況を整理する前に取り返しのつかない決断をしてしまうリスクがあります。重要なライフイベント(就職面接、結婚式など)を前にして焦りを感じている場合は特に注意が必要です。

さらに、代償性発汗が起こりやすい体質の方も後悔しやすい傾向があります。元々体幹部の発汗が多い方、肥満気味の方、暑い環境で生活する方などは、代償性発汗が重篤になりやすいとされています。手術前にこのような素因を評価することは、現時点では完全には難しいのが現状ですが、主治医とよく相談することが重要です。

Q. 手掌多汗症に手術以外の治療法はありますか?

手掌多汗症には複数の非手術的治療があります。①塩化アルミニウム外用剤(汗腺を物理的に塞ぐ)、②イオントフォレーシス(微弱電流で汗腺機能を抑制)、③ボツリヌストキシン注射(効果は4〜6ヶ月持続)、④抗コリン薬内服の順に試みるステップアップ治療が日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されています。

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🎯 手術を受けて満足している人の特徴

一方で、手掌多汗症の手術を受けて満足している方も多くいます。手術に対するポジティブな結果を得やすい方の特徴を理解することも重要です。

手汗の症状が重篤で、日常生活や職業活動に深刻な支障をきたしていた方は、術後の満足度が高い傾向があります。例えば、楽器奏者、外科医、電気工事士など、手の状態が職業パフォーマンスに直結する職業の方が、手汗によって仕事ができなくなっていた場合、手術によって劇的な改善を得ることができ、満足度が非常に高くなることがあります。

手術前に十分な情報収集を行い、代償性発汗を含めたリスクを十分に理解した上で手術を決断した方は、術後に予期せぬ事態に直面する可能性が低く、結果として満足度が高くなる傾向があります。「代償性発汗は起こるかもしれないが、それでも手汗が改善された方が生活の質が上がる」と判断できた方は、術後に代償性発汗が起こっても比較的受け入れやすくなります。

複数の治療法を試した後、効果が不十分で最後の選択肢として手術を選んだ方も、満足度が高い傾向があります。他の治療の限界を経験した後に手術を選ぶことで、手術のメリットを客観的に評価できるようになっているからです。

経験豊富な専門医のもとで手術を受けた方は、手術の成功率が高く、合併症のリスクも低いとされています。手術件数や専門性の高い医療機関を選ぶことが、良好な結果につながります。

💡 手術以外の治療選択肢

手掌多汗症の治療は手術だけではありません。多くの場合、まず非侵襲的(体を傷つけない)または低侵襲的な治療から試み、効果が不十分な場合に手術を検討するという段階的なアプローチが推奨されています。ここでは、主な非手術的治療について説明します。

塩化アルミニウム外用剤は、多汗症に対して最も基本的な治療の一つです。制汗剤の一種で、汗腺の開口部を物理的に塞ぐ作用があります。市販の制汗剤よりも高濃度のものが医療機関で処方され、就寝前に手のひらに塗布し、翌朝洗い流すという方法で使用します。皮膚への刺激感がある場合もありますが、副作用は少なく、費用も安価です。ただし、重症の手掌多汗症では効果が不十分なことが多いのが現状です。

イオントフォレーシスは、水に手を浸して微弱な電流を流す治療法です。汗腺の機能を一時的に抑制する効果があるとされていますが、そのメカニズムは完全には解明されていません。週に数回の治療を繰り返すことで効果を維持します。機器によっては自宅での治療も可能で、副作用も皮膚の乾燥や刺激感程度と比較的少ないです。ただし、定期的な治療継続が必要で、効果の持続には手間がかかります。

ボツリヌストキシン注射(ボトックス注射)は、手のひらにボツリヌス毒素を注射することで、汗腺を支配する神経の信号伝達を阻害し、発汗を抑制する治療です。効果は非常に高く、多くの患者で劇的な改善が見られます。ただし、効果は数ヶ月(通常4〜6ヶ月程度)で消失するため、定期的に繰り返し注射を受ける必要があります。また、手のひらは神経が密集しており、注射時に強い痛みを感じる方も多いです。費用は保険適用されない場合もあり、定期的な治療には経済的な負担が伴います。

内服薬(抗コリン薬)は、神経から汗腺への信号伝達を全身的に抑制するもので、手掌多汗症にも効果があります。ただし、全身に作用するため、口の乾燥、便秘、尿閉、眼のかすみなどの副作用が出やすく、長期的な使用には注意が必要です。また、効果には個人差があります。

最近では、外用抗コリン薬(クリームや溶液タイプ)も登場しており、全身への副作用を抑えながら局所的に発汗を抑制することが期待されています。日本でも使用可能な薬剤が増えており、今後さらに選択肢が広がることが期待されます。

Q. 手掌多汗症の手術前に確認すべきことは何ですか?

手術前には、①代償性発汗の発症率・部位・対処法を担当医に具体的に確認する、②複数の医療機関でセカンドオピニオンを受ける、③術者の手術経験・件数を確認する、④HDSSスコアで症状の重症度を客観的に評価することが重要です。アイシークリニックでは患者ごとの状況に合わせた丁寧な説明のもと治療方針を提案しています。

📌 手術を検討する前に試すべき非侵襲的治療

手術を検討する前に、まず非侵襲的または低侵襲的な治療を十分に試すことが重要です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、ETS手術は他の治療が無効であった重症例に対して行うべきとされており、最初から手術を選ぶことは推奨されていません。

治療のステップアップとしては、まず塩化アルミニウム外用剤を試し、効果が不十分であればイオントフォレーシス、次にボツリヌストキシン注射、それでも改善しない場合に手術を検討するという流れが一般的です。各ステップで十分な期間(少なくとも数週間〜数ヶ月)試してみることが大切です。

ボツリヌストキシン注射は、手術前の最後の非手術的選択肢として特に重要です。手術に比べて侵襲性が低く(体に与えるダメージが小さく)、代償性発汗のような深刻な副作用がないため、多くの専門家が手術前にボツリヌストキシン注射を試すことを推奨しています。注射の痛みは局所麻酔クリームや冷却などによって軽減できることも多く、治療の継続が難しければ手術を改めて検討することができます。

また、精神的なストレスが手掌多汗症を悪化させることが知られているため、ストレス管理や心理療法(認知行動療法など)も補助的な治療として有用な場合があります。特に、発汗への不安や恐怖がさらに発汗を引き起こすという悪循環を断ち切るために、心理的なアプローチが効果的なこともあります。

非侵襲的治療を十分に試すことは、後悔のリスクを下げるだけでなく、「できることはすべて試した」という実感を持って手術に臨める点でも重要な意味を持ちます。手術を選択する際に「まだ他の方法を試していない」という気持ちが残っていると、術後に副作用が出たときの後悔が大きくなります。

✨ 手術を受ける際に後悔しないための準備

もし非手術的治療で十分な効果が得られず、手術を検討することになった場合、後悔を最小限にするためにいくつかの重要な準備をしておく必要があります。

まず、複数の医療機関でセカンドオピニオンを受けることを強くお勧めします。一つの医療機関の意見だけに依存するのではなく、複数の専門家の見解を聞くことで、より客観的な判断ができます。特に、手術に積極的な医療機関だけでなく、保存的治療(非手術的治療)に詳しい皮膚科専門医の意見も参考にすることが重要です。

代償性発汗についての十分な理解と覚悟が必要です。担当医に代償性発汗の発症率、好発部位、重篤になった場合の対処法について具体的に質問し、その回答を記録しておきましょう。「代償性発汗が起こっても受け入れられる」という確信を持てない場合は、手術の判断を再考することをお勧めします。

手術を行う医師の経験と技術を確認することも大切です。ETSは技術依存性の高い手術であり、術者の経験によって結果が大きく異なる可能性があります。手術件数、専門資格、合併症の発生率などを事前に確認し、信頼できる医師を選ぶことが後悔を防ぐ上で非常に重要です。

手術前に、自分の症状の重篤度を客観的に評価することも役立ちます。多汗症の重症度を評価するためのHDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)という指標があり、日常生活への影響を4段階で評価します。重症(スコア3〜4)の場合は手術のメリットが大きいとされますが、軽症〜中等症(スコア1〜2)の場合は手術のメリットが代償性発汗のリスクを上回るかどうかを慎重に検討する必要があります。

手術を受けた患者の体験談を参考にすることも有益ですが、インターネット上の情報は偏りがある場合があります。特に、非常に満足した患者や非常に不満な患者は声を上げやすい傾向があり、平均的な結果を反映していないことがあります。できれば、実際に手術を受けた方と直接話す機会を設けるか、医療機関が提供するサポートグループなどを活用することをお勧めします。

クリッピング法と切断法の違いについても把握しておくとよいでしょう。クリッピング法は理論的にはリバーシブル(元に戻せる)とされていますが、前述の通り、完全な回復を保証するものではありません。しかし、切断法よりも将来の選択肢が残るという意味で、クリッピング法の方が精神的な安心感につながることもあります。どちらの方法を採用しているかを事前に確認しましょう。

手術後のフォローアップ体制を確認することも重要です。術後に代償性発汗が起こった場合や、その他の合併症が生じた場合に、適切な対応をしてもらえる体制が整っているかどうかを事前に確認しておきましょう。術後の不安な時期に適切なサポートを受けられることは、後悔を防ぐ上で大きな助けになります。

また、手術を急がないことも大切な姿勢です。特定のイベント(就職試験、結婚式など)を前にして焦りを感じている場合でも、それがために手術を急ぐことは避けた方が賢明です。手術の結果は長期間にわたって体に影響を与えるものであり、一時的な状況への対応として手術を選択することには慎重であるべきです。そのようなイベントに向けては、ボツリヌストキシン注射などの一時的な効果を持つ治療で対応することを検討してみてください。

👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

高桑康太 医師(当院治療責任者)より

「当院では、手掌多汗症でご相談いただく患者様の多くが、インターネットで「手術後悔」という情報を目にして不安を抱えながら来院されます。手術(ETS)は確かに高い有効性を持つ治療法ですが、代償性発汗のリスクを十分にご理解いただいた上で、まずは塩化アルミニウム外用剤やボツリヌストキシン注射といった非侵襲的な治療から段階的に試みることが、後悔のない選択につながると考えています。患者様お一人おひとりの症状の重さや生活背景に合わせて丁寧にご説明しながら治療方針を一緒に考えてまいりますので、まずはお気軽にご相談ください。」

🔍 よくある質問

手掌多汗症の手術後に後悔する主な原因は何ですか?

最も多い原因は「代償性発汗」です。手術で手のひらの発汗が抑制される代わりに、背中・腹部・太ももなど別の部位から大量の汗をかくようになる現象で、発症率は50〜98%と報告されています。手術前に十分な説明を受けていなかった場合、術後に初めてその深刻さを知り、強い後悔につながることがあります。

手掌多汗症の手術(ETS)の成功率はどのくらいですか?

手のひらの発汗改善に関しては90%以上の有効率が報告されており、成功率は高い手術です。ただし、ほぼすべての患者に代償性発汗が生じるリスクがあるため、手術の成功と術後の生活満足度は必ずしも一致しません。症状の重篤度や生活背景を考慮した上で判断することが重要です。

手術を受ける前に試すべき治療法はありますか?

日本皮膚科学会のガイドラインでも、手術は他の治療が無効な重症例に対して行うべきとされています。一般的には、①塩化アルミニウム外用剤、②イオントフォレーシス、③ボツリヌストキシン注射の順に試み、それでも改善しない場合に手術を検討するステップアップ治療が推奨されています。当院でも同様のアプローチで治療方針を提案しています。

代償性発汗はどうすれば治せますか?

残念ながら、代償性発汗に対する有効な治療法は現時点では確立されておらず、一度起こると改善が難しいとされています。クリップで神経を挟む「クリッピング法」であれば、理論上はクリップを外すことで改善できる可能性がありますが、神経の変性が起きている場合は完全な回復が困難なこともあります。このリスクを事前に十分理解しておくことが大切です。

手術を後悔しないために事前に何を確認すべきですか?

主に以下の点を確認することをお勧めします。①代償性発汗の発症率・部位・対処法について担当医に具体的に質問する、②複数の医療機関でセカンドオピニオンを受ける、③術者の手術経験・件数を確認する、④自分の症状の重症度を客観的に評価する。当院では、患者様一人ひとりの状況に合わせて丁寧に説明しながら治療方針を一緒に考えています。

💪 まとめ

手掌多汗症の手術(ETS)は、適切な患者選択と十分な情報提供のもとで行われる場合には、日常生活の質を大きく向上させる有効な治療法です。しかし、代償性発汗をはじめとするリスクを正しく理解せずに手術を受けた場合、後悔する可能性が高くなります。

後悔しないための最も重要なポイントは、まず非手術的治療を十分に試みること、手術のリスク(特に代償性発汗)を十分に理解した上で判断すること、そして経験豊富な専門医のもとで手術を受けることです。また、複数の医療機関でセカンドオピニオンを受けることも、より客観的な判断につながります。

手掌多汗症は、身体的な不快感だけでなく心理的な負担も大きい疾患です。治療の選択においては、症状の重篤度と自分の生活スタイル、価値観をよく考慮した上で、焦らず慎重に判断することが大切です。アイシークリニック大宮院では、手掌多汗症の治療について専門的なカウンセリングを行っており、患者さん一人ひとりの状況に合わせた最適な治療法を提案しています。手汗でお困りの方は、まず専門医への相談から始めてみてください。

📚 関連記事

📚 参考文献

  • 日本皮膚科学会 – 手掌多汗症の診断基準・重症度評価(HDSS)および治療ガイドライン(塩化アルミニウム・イオントフォレーシス・ボツリヌストキシン・ETS手術の適応と推奨ステップ)の参照
  • 厚生労働省 – 多汗症を含む皮膚疾患・外科手術に関する医療情報、インフォームドコンセントの基準、および保険診療上の取り扱いに関する参照
  • PubMed – ETSの有効率・代償性発汗の発症率(50〜98%)・ホルネル症候群等の合併症リスク・クリッピング法vs切断法の比較に関する国際的な臨床研究文献の参照

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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