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頭と顔の汗がすごい…それは多汗症かも?ミラドライの適用範囲と頭部・顔面多汗症の治療法を解説

「暑くもないのに、頭から汗が滝のように流れ落ちる」「顔の汗がひどくて、メイクがすぐに崩れてしまう」「人前に出ると額から汗が噴き出して、恥ずかしい思いをしている」——このような悩みを抱えている方は少なくありません。

頭や顔から異常に汗をかく症状は、単なる「汗っかき」ではなく、「頭部・顔面多汗症」という医学的に認められた疾患である可能性があります。多汗症は適切な治療によって改善が期待できる病気です。

近年、わきの多汗症治療として注目を集めている「ミラドライ」をご存知の方も多いでしょう。しかし、頭や顔の汗にミラドライは効果があるのでしょうか?本記事では、頭部・顔面多汗症の原因や症状、ミラドライの仕組みと適用範囲、そして頭や顔の多汗症に有効な治療法について詳しく解説します。大宮エリアで多汗症治療をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。


目次

  1. 頭と顔の汗がひどい…それは多汗症かもしれません
  2. 多汗症とは何か
  3. 頭部・顔面多汗症の特徴と症状
  4. 多汗症の原因とメカニズム
  5. 多汗症の診断基準
  6. ミラドライとは?仕組みと効果
  7. ミラドライは頭や顔に使えるのか
  8. 頭部・顔面多汗症の治療法
  9. ボトックス注射による治療
  10. その他の治療選択肢
  11. 代償性発汗について理解する
  12. 日常生活でできる汗対策
  13. 大宮エリアで多汗症治療を受けるには
  14. よくあるご質問
  15. まとめ
  16. 参考文献

1. 頭と顔の汗がひどい…それは多汗症かもしれません

頭や顔から大量の汗をかくことに悩んでいる方の中には、「自分は単に汗っかきなだけ」と考えて、長年我慢し続けているケースが少なくありません。しかし、日常生活に支障をきたすほどの発汗がある場合は、「多汗症」という治療可能な疾患に該当する可能性があります。

多汗症の有病率は、日本人において約5%程度と推定されています。つまり、20人に1人は多汗症の症状を抱えているということになります。しかし、実際に医療機関を受診している人はそのうちのわずか約4%に過ぎず、多くの方が「体質だから仕方ない」と諦めてしまっているのが現状です。

頭や顔の汗が原因で以下のような困りごとを経験したことはありませんか?

髪の毛がいつも汗でびっしょりになってしまう。額から汗が流れ落ちて、目に入ることがある。人前で話すときに顔中から汗が噴き出す。メイクがすぐに崩れてしまい、何度も化粧直しが必要。眼鏡が曇ってしまい、仕事に支障が出る。初対面の人と会うときに、汗が気になって会話に集中できない。

これらの症状に心当たりがある方は、頭部・顔面多汗症の可能性があります。多汗症は決して珍しい病気ではなく、適切な診断と治療によって症状を改善できる可能性があります。


2. 多汗症とは何か

多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて、異常に大量の汗をかいてしまう疾患です。人間は体温を一定に保つために汗をかきますが、多汗症の場合は、温熱刺激や精神的負荷がなくても、あるいはあったとしても通常の範囲を大きく超えた量の汗が分泌されます。

多汗症は、その発症範囲と原因によって分類されます。

発症範囲による分類としては、全身性多汗症と局所性多汗症があります。全身性多汗症は、体全体から過剰な発汗が見られる状態です。局所性多汗症は、手のひら、足の裏、わきの下、頭部、顔面など、特定の部位に限定して過剰な発汗が見られる状態で、多汗症の約9割がこの局所性多汗症に該当します。

原因による分類としては、原発性多汗症と続発性多汗症があります。原発性多汗症は、他の疾患や薬剤の影響がなく、原因が明確でない多汗症です。多くの場合、若年で発症し、家族歴があることも特徴です。続発性多汗症は、甲状腺機能亢進症、糖尿病、感染症、神経疾患などの基礎疾患や、服用している薬剤が原因で起こる多汗症です。この場合は、原因となっている病気の治療が優先されます。

汗を分泌する汗腺には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。多汗症の原因となるのは主にエクリン汗腺です。エクリン汗腺は全身に分布しており、特に手のひら、足の裏、額、わきの下などに密集しています。エクリン汗腺から分泌される汗は、主に水分と塩分で構成されており、本来は無臭です。

一方、アポクリン汗腺はわきの下、乳輪、外陰部などに分布しており、ここから分泌される汗に含まれる脂肪酸が皮膚の常在菌によって分解されることで、特有のにおい(いわゆるワキガ)が発生します。

多汗症では、エクリン汗腺からの発汗を制御する交感神経の活動が亢進していることが示唆されていますが、その詳細なメカニズムは現在も研究が続けられています。


3. 頭部・顔面多汗症の特徴と症状

頭部・顔面多汗症は、頭部や顔面に過剰な発汗が見られる局所性多汗症の一種です。日本で行われた調査によると、原発性局所多汗症の有病率は約10%であり、そのうち頭部の多汗症は約4.7%、顔面の多汗症は約3.6%と報告されています。

頭部・顔面多汗症には以下のような特徴があります。

発症年齢と性差については、他の部位の多汗症と比較して、男性の割合がやや高く、成人前後に発症を自覚することが多いとされています。また、症状が長期間にわたって続く傾向があります。

発汗部位としては、耳の上部、側頭部、後頭部、額、前頭部などから大量の汗が流れ落ちるように分泌されます。髪の生え際周辺で特に顕著に症状が現れることが多いです。

発汗のタイミングとしては、熱い食べ物や飲み物を摂取した後、精神的に緊張したとき、暑い環境にいるときなどに発汗が誘発されやすくなります。発汗は通常数分で収まることが多いですが、状況によっては数時間から一日中続くこともあります。

日常生活への影響としては、髪の毛が常に湿った状態になることで不快感が生じます。メイクが崩れやすくなります。眼鏡が曇りやすくなります。人前での発表や面接などで汗が気になり、本来の実力を発揮できなくなることがあります。汗を気にするストレスがさらに発汗を促すという悪循環に陥ることもあります。

特に注目すべき点として、頭部・顔面の発汗には「脳冷却」という重要な生理的役割があります。脳は高温に対して非常に敏感であり、適切な温度を維持するために頭部や顔面からの発汗が重要な役割を果たしています。このため、頭部・顔面の発汗閾値は他の部位よりも低く設定されており、比較的低体温の状況でも汗が出やすい構造になっています。


4. 多汗症の原因とメカニズム

多汗症の正確な原因は完全には解明されていませんが、現在の研究から以下のようなことがわかっています。

まず、自律神経の関与についてです。発汗は自律神経の一つである交感神経によって制御されています。多汗症では、この交感神経の活動が通常よりも亢進していることが示唆されています。交感神経が刺激されると、神経終末からアセチルコリンという神経伝達物質が放出され、これがエクリン汗腺を刺激して発汗が起こります。多汗症の方では、この一連の反応が過剰に起こっていると考えられています。

脳の関与も指摘されています。体温調節を司る視床下部や、情動に関与する扁桃体、前頭葉などの関与を示唆する研究報告もあります。精神的な緊張や不安が発汗を誘発することから、脳の高次機能と発汗の関連が注目されています。

遺伝的要因についても研究が進んでいます。多汗症は家族内で発症することが多く、常染色体優性遺伝の可能性が報告されています。研究では、14番染色体上に多汗症に関連する遺伝子座が存在する可能性が示唆されています。

ただし、重要なのは、多汗症は精神的な問題ではなく、身体的な疾患であるということです。「緊張しているから汗をかく」のではなく、交感神経の機能異常によって発汗が誘発され、その結果として精神的なストレスを感じるというのが正しい理解です。多汗症を「精神的なもの」と片付けてしまうことは、患者さんの苦しみを理解せず、適切な治療の機会を逃すことにつながりかねません。


5. 多汗症の診断基準

多汗症の診断には、日本皮膚科学会が策定した「原発性局所多汗症診療ガイドライン」に基づく診断基準が用いられます。

局所多汗症の診断基準は以下の通りです。明らかな原因がないまま、局所的に過剰な発汗が6か月以上認められ、かつ以下の6項目のうち2項目以上に該当する場合、原発性局所多汗症と診断されます。

一つ目は、発症が25歳以下であることです。二つ目は、左右対称性に発汗がみられることです。三つ目は、睡眠中は発汗が止まっていることです。四つ目は、週に1回以上多汗のエピソードがあることです。五つ目は、家族歴があることです。六つ目は、日常生活に支障をきたしていることです。

重症度の判定には、HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)という4段階のスケールが用いられます。レベル1は「まったく気にならず、日常生活に全く支障がない」状態です。レベル2は「我慢できるが、日常生活に時々支障がある」状態です。レベル3は「なんとか耐えられるが、日常生活に頻繁に支障がある」状態です。レベル4は「耐えられず、日常生活に常に支障がある」状態です。レベル3およびレベル4に該当する場合は、重症の多汗症として治療の適応となります。

ご自身の症状が多汗症に該当するかどうか気になる方は、まずセルフチェックを行い、複数の項目に当てはまる場合は、医療機関を受診することをお勧めします。多汗症は体質と諦めずに、専門医に相談することで、適切な治療を受けられる可能性があります。


6. ミラドライとは?仕組みと効果

ミラドライは、わきの多汗症およびワキガ(腋臭症)の治療に用いられる医療機器です。マイクロ波を利用して汗腺を破壊することで、発汗とにおいを抑制する治療法として、近年注目を集めています。

ミラドライの仕組みは以下の通りです。ミラドライは、5.8GHzのマイクロ波を皮膚の表面から照射します。マイクロ波は水分子に選択的に吸収されて熱を発生させる性質があります。汗腺は水分を多く含んでいるため、マイクロ波のエネルギーが集中的に吸収され、熱によって汗腺が破壊されます。

皮膚の表面は、ハイドロセラミック・クーリングという冷却システムによって保護されるため、やけどのリスクは最小限に抑えられます。

治療の対象となる汗腺は、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方です。エクリン汗腺は多汗症の原因となる汗腺であり、アポクリン汗腺はワキガの原因となる汗腺です。ミラドライはこれら両方の汗腺を破壊するため、わきの多汗症とワキガの両方に効果が期待できます。

ミラドライの効果と特徴としては、まず皮膚を切らない治療であることが挙げられます。手術と異なりメスを使用しないため、傷跡が残りません。また、破壊された汗腺は再生しないため、半永久的な効果が期待できます。施術時間は片側約20〜30分程度で、両脇で1時間程度です。施術後はすぐに帰宅でき、日常生活への支障は最小限です。

効果の程度には個人差がありますが、一般的に1回の施術で汗腺の7〜8割が破壊され、発汗量やにおいが施術前の2〜3割程度まで減少するとされています。施術直後は残りの汗腺の機能も一時的に低下するため、より高い効果を実感できますが、数か月経過すると残存した汗腺が活動を再開するため、発汗量が若干戻ることがあります。これは再発ではなく、正常な経過です。

ミラドライは2018年6月に日本の厚生労働省から正式に承認を受けた医療機器です。米国FDA(アメリカ食品医薬品局)でも腋窩多汗症、腋臭症、減毛の適応で承認を取得しています。


7. ミラドライは頭や顔に使えるのか

ここで多くの方が気になるのは、「ミラドライは頭や顔の多汗症にも効果があるのか」という点ではないでしょうか。

結論から申し上げると、ミラドライは頭部および顔面の多汗症には適用されません。

その理由は以下の通りです。

まず、機器の設計と承認範囲についてです。ミラドライは、わきの下(腋窩)の汗腺を破壊するために設計された機器です。日本国内での薬事承認は腋窩多汗症のみを対象としており、頭部や顔面への使用は承認されていません。わきの下の皮膚構造と、頭部・顔面の皮膚構造は異なるため、同じ設定での治療は安全性と有効性が確認されていません。

次に、解剖学的な制約があります。頭部には頭皮があり、毛髪が密生しています。また、顔面には表情筋、神経、血管が複雑に存在しています。これらの部位にマイクロ波を照射することは、予期せぬ副作用や合併症のリスクがあります。

さらに、頭部・顔面の発汗の生理的意義も関係しています。前述の通り、頭部・顔面からの発汗には脳を冷却するという重要な役割があります。この部位の汗腺を広範囲に破壊することは、体温調節機能に悪影響を及ぼす可能性があり、医学的に推奨されません。

このため、頭や顔の汗でお悩みの方がミラドライを検討されている場合は、ミラドライではなく、頭部・顔面多汗症に適した他の治療法を選択する必要があります。


8. 頭部・顔面多汗症の治療法

頭部・顔面多汗症の治療には、日本皮膚科学会の診療ガイドラインに基づいたいくつかの選択肢があります。治療法は症状の重症度、発汗の部位、患者さんのライフスタイルなどを考慮して選択されます。

頭部・顔面多汗症の治療アルゴリズムでは、まず第一選択として塩化アルミニウム外用療法と内服療法が推奨されています。

塩化アルミニウム外用療法は、古くから多汗症治療に用いられてきた方法です。塩化アルミニウムが汗管(汗が出る通り道)に沈着し、汗管を塞ぐことで発汗を抑制すると考えられています。ただし、頭部や顔面は皮膚が敏感な部位であるため、かぶれ(刺激性皮膚炎)が起こりやすいという欠点があります。特に顔面への使用は、肌トラブルの原因となる可能性があるため、医師の指導のもとで慎重に使用する必要があります。

内服療法では、抗コリン薬が使用されます。代表的な薬剤は臭化プロバンテリン(商品名:プロ・バンサイン)で、多汗症に対して保険適応を持つ唯一の内服薬です。アセチルコリンの働きを阻害することで、発汗を抑制します。ただし、口渇、便秘、眼の調節障害などの副作用があり、緑内障の方には使用できないなどの制限があります。

第二選択として、A型ボツリヌス毒素(ボトックス)の局所注射療法があります。これについては次の章で詳しく解説します。


9. ボトックス注射による治療

ボトックス注射は、頭部・顔面多汗症に対して有効な治療法の一つです。

ボトックスの仕組みは以下の通りです。ボトックス(A型ボツリヌス毒素製剤)は、神経終末でのアセチルコリンの放出を阻害する作用を持っています。アセチルコリンは汗腺を刺激して発汗を促す神経伝達物質であるため、その放出を抑制することで発汗を抑える効果が得られます。

頭部・顔面へのボトックス注射では、発汗が気になる部位に細かく注射を行います。前頭部、額の生え際周囲、こめかみの一部、鼻、耳寄りの頬などが治療対象となります。

ただし、注意が必要な点があります。ボトックスには筋肉の緊張を和らげる作用もあるため、表情筋の近くには注射できません。頬や額の表情を作る筋肉の近くに注射すると、一時的な筋力低下や表情の変化が生じる可能性があります。

ボトックス注射の効果と持続期間については、注射後2〜3日から効果が現れ始め、2〜3週間程度で効果が最大となります。効果の持続期間には個人差がありますが、一般的に頭皮や顔では4〜6か月程度です。効果を維持するためには、定期的な再注射が必要となります。ただし、繰り返し治療を行うことで、効果の持続期間が長くなるケースも報告されています。

保険適用に関しては、重度の腋窩多汗症に対するボトックス注射は保険適応となっていますが、頭部・顔面の多汗症に対しては現在のところ保険適応外です。そのため、自費診療となります。

副作用としては、注射部位の内出血、一時的な頭痛やおでこの重さ、まれに代償性発汗(他の部位の発汗が増える現象)などが挙げられます。代償性発汗の発生率はワキで約3%程度とされていますが、実際に汗が増加するケースは稀です。

ボトックス注射は、温熱性発汗だけでなく、緊張したときに起こる精神性発汗や、辛いものを食べたときに起こる味覚性発汗も抑制することができます。


10. その他の治療選択肢

頭部・顔面多汗症の治療には、上記以外にもいくつかの選択肢があります。

まず、神経ブロック療法があります。発汗の原因となる交感神経をブロックする治療法です。薬剤やレーザーを用いて、特定の神経節の機能を抑制します。ただし、代償性発汗のリスクがあるため、十分な説明を受けた上で治療を検討する必要があります。

交感神経遮断術(ETS)は、手掌多汗症(手のひらの多汗症)に対しては広く行われている手術療法ですが、頭部顔面多汗症に対してはほとんど行われていません。その理由は、頭部・顔面の発汗を止めるためには第2胸部交感神経(T2)を遮断する必要があり、この手術を行うとほぼ100%の確率で重度の代償性発汗が発生するためです。代償性発汗により、胸や背中、腹部、腰、お尻、太ももなどから大量の汗が出るようになり、手術前よりも生活の質が低下してしまうケースが少なくありません。そのため、現在ではほとんどの医療機関で第2交感神経を遮断する手術は行われていません。

精神療法も選択肢の一つです。多汗症の方は、不安障害やうつ傾向を併せ持っていることがあります。このような場合、精神療法が効果的なことがあります。催眠療法、バイオフィードバック療法、自律訓練法などが挙げられます。これらの療法は、発汗を直接抑制するものではありませんが、精神的なストレスを軽減することで、ストレス誘発性の発汗を減少させる効果が期待できます。


11. 代償性発汗について理解する

多汗症の治療、特に外科的治療を検討する際に重要なのが、「代償性発汗」についての理解です。

代償性発汗とは、多汗症の治療などによってある部位の発汗が抑えられる代わりに、別の部位の発汗が増える現象です。交感神経遮断術(ETS)の後に最も高い頻度で発生しますが、外用薬やボトックス注射でもまれに起こることがあります。

代償性発汗が起こる主なメカニズムとしては、交感神経の遮断により体温調節機能に変化が生じ、脳の体温調節中枢が代償的に他の部位からの発汗を促進するためと考えられています。

代償性発汗が起こりやすい部位は、背中、胸、腹部、腰、お尻、太ももなど、主に脇より下の体幹部です。

発生率については、治療法や遮断する神経の部位によって異なります。第2交感神経(T2)を遮断した場合はほぼ100%の確率で発生し、第3交感神経(T3)では約5%の確率で手術を後悔するほどの代償性発汗が発生するとされています。第4交感神経(T4)以下の遮断では、代償性発汗のリスクは低減しますが、完全になくなるわけではありません。

代償性発汗の程度には大きな個人差があり、軽度のものから日常生活に重大な支障をきたすものまでさまざまです。残念ながら、手術前に代償性発汗がどの程度、どの部位に出現するかを完全に予測することは現時点では不可能です。

外用薬やボトックス注射による代償性発汗の発生率は比較的低く、ボトックス注射では0.5%未満と報告されています。塗り薬の場合は成分によって異なりますが、多くは1%未満です。

このような理由から、頭部・顔面多汗症の治療においては、手術療法よりも、外用薬やボトックス注射などの低侵襲な治療法が第一選択とされています。


12. 日常生活でできる汗対策

医療機関での治療と並行して、日常生活で以下のような工夫を行うことで、汗による不快感を軽減することができます。

生活習慣の改善としては、まず規則正しい生活を心がけることが大切です。睡眠不足や過労は交感神経を優位にさせ、発汗を促進する可能性があります。十分な睡眠をとり、疲労をためないようにしましょう。

食事の見直しも効果的です。辛いものや酸っぱいもの、カフェインを多く含む飲料、アルコールなどは交感神経を刺激し、発汗を促す可能性があります。これらの摂取を控えめにすることで、発汗を軽減できる場合があります。

ストレス管理も重要です。ストレスや緊張は精神性発汗の引き金となります。リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガなど)を取り入れたり、趣味の時間を作ったりして、ストレスを適度に発散させましょう。

禁煙も検討してください。喫煙は交感神経を刺激するため、禁煙することで発汗が軽減する可能性があります。

実用的な対策としては、吸湿性・速乾性に優れた素材の衣類を選ぶことが挙げられます。綿、麻、機能性素材などを選ぶと、汗をかいても不快感が軽減されます。

タオルやハンカチを常に携帯し、こまめに汗を拭き取ることも大切です。汗を放置すると、蒸れやにおいの原因となります。

制汗剤の使用も効果的です。市販の制汗剤でも一定の効果が期待できますが、顔や頭皮に使用する際は、肌への刺激に注意が必要です。敏感肌用の製品を選んだり、パッチテストを行ってから使用したりすることをお勧めします。

メイク崩れ対策としては、汗に強い化粧品を使用したり、メイク崩れ防止のスプレーを活用したりすることで、メイクの持ちを良くすることができます。


13. 大宮エリアで多汗症治療を受けるには

頭や顔の汗でお悩みの方、多汗症の治療を検討されている方は、まず専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

多汗症の診療は、主に皮膚科、形成外科、美容皮膚科などで行われています。診療科によって対応できる治療法が異なる場合がありますので、事前に医療機関に問い合わせて、希望する治療が受けられるかどうか確認することをお勧めします。

大宮エリアには、多汗症の診療を行う医療機関が複数存在します。通院のしやすさ、担当医の専門性、提供される治療法の種類などを考慮して、ご自身に合った医療機関を選択してください。

受診の際には、以下のような情報を整理しておくと、スムーズに診察を受けることができます。症状が始まった時期や頻度、発汗が起こる状況やきっかけ、日常生活への影響の程度、これまでに試した対策や治療、家族に同様の症状がある方がいるかどうか、服用中の薬やアレルギーの有無などです。

多汗症は決して珍しい病気ではなく、適切な診断と治療によって症状を改善できる可能性があります。一人で悩まずに、専門医に相談してみてください。


14. よくあるご質問

頭部・顔面多汗症やミラドライに関して、患者さんからよくいただくご質問にお答えします。

「頭や顔の汗がひどいのですが、ミラドライで治療できますか?」というご質問をいただきます。ミラドライは腋窩(わきの下)の多汗症およびワキガの治療に特化した機器であり、頭部や顔面への使用は承認されていません。頭部・顔面多汗症の治療には、塩化アルミニウム外用、内服薬、ボトックス注射などの別の治療法が適しています。

「頭部・顔面多汗症の治療は保険適用されますか?」というご質問もよくいただきます。塩化アルミニウム外用は保険適用外ですが、内服の抗コリン薬(プロ・バンサインなど)は多汗症に対して保険適用があります。ボトックス注射は、重度の腋窩多汗症には保険適用されますが、頭部・顔面多汗症に対しては保険適用外となり、自費診療となります。

「ボトックス注射の効果はどのくらい持続しますか?」という点については、個人差がありますが、一般的に頭皮や顔では4〜6か月程度効果が持続します。効果を維持するためには、定期的な再注射が必要です。繰り返し治療を行うことで、効果の持続期間が長くなるケースもあります。

「多汗症は完治しますか?」というご質問については、原発性多汗症の根本的な原因が完全には解明されていないため、「完治」という表現は難しいですが、適切な治療によって症状を十分にコントロールし、日常生活の質を向上させることは可能です。

「子どもでも多汗症の治療は受けられますか?」という点については、多汗症は小児期から発症することがあり、治療の適応となる場合があります。ただし、治療法によっては年齢制限がある場合や、成長期の影響を考慮する必要がある場合があります。お子様の多汗症が気になる場合は、専門医にご相談ください。


15. まとめ

本記事では、頭や顔の汗がひどいという症状について、多汗症という観点から詳しく解説しました。

重要なポイントを整理すると、まず頭部・顔面多汗症は治療可能な疾患です。日常生活に支障をきたすほどの頭や顔の発汗がある場合、それは単なる「汗っかき」ではなく、「頭部・顔面多汗症」という医学的に認められた疾患である可能性があります。適切な診断と治療によって、症状を改善することができます。

次に、ミラドライは頭部・顔面には適用されません。ミラドライはわきの下の多汗症およびワキガの治療に特化した機器であり、頭部や顔面への使用は承認されていません。頭や顔の汗でお悩みの方は、別の治療法を検討する必要があります。

頭部・顔面多汗症の主な治療法としては、塩化アルミニウム外用療法、内服の抗コリン薬、ボトックス注射などがあります。これらの治療法は、日本皮膚科学会の診療ガイドラインに基づいて推奨されているものです。

治療を検討する際は、代償性発汗についての理解も重要です。特に外科的治療を検討する場合は、代償性発汗のリスクについて十分な説明を受け、理解した上で判断することが大切です。

一人で悩まず、専門医に相談してください。多汗症は決して珍しい病気ではなく、悩んでいる方は多くいらっしゃいます。専門医に相談することで、ご自身に合った治療法を見つけることができます。

頭や顔の汗でお悩みの方は、ぜひ一度、皮膚科や形成外科などの専門医にご相談ください。適切な治療を受けることで、汗の悩みから解放され、より快適な日常生活を送ることができるようになります。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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