目次
- 軟性繊維腫とは
- 軟性繊維腫の別名と分類
- 軟性繊維腫ができる原因
- 軟性繊維腫の症状と見た目の特徴
- 軟性繊維腫と他のイボとの違い
- 軟性繊維腫と糖尿病・メタボリックシンドロームの関係
- 軟性繊維腫の診断方法
- 軟性繊維腫の治療法
- 治療後の経過とアフターケア
- 軟性繊維腫の予防法
- 大宮で軟性繊維腫の治療を受けるなら
- よくある質問
- まとめ
1. 軟性繊維腫とは
軟性繊維腫(なんせいせんいしゅ)とは、皮膚にできる良性の腫瘍で、主に首周り、脇の下、まぶた、鼠径部(足の付け根)など、皮膚が薄くて柔らかい部分や、しわや摩擦が多い部位に発生しやすいできものです。一般的に「首イボ」「脇イボ」と呼ばれることも多く、30代以降の方に多く見られる皮膚の変化として知られています。
軟性繊維腫は、肌色から茶色、時には黒っぽい色をしており、皮膚から盛り上がった柔らかい突起物として現れます。触ると弾力があり、痛みやかゆみを伴わないことがほとんどです。大きさは数ミリメートルから数センチメートルまでさまざまで、なかには茎(くき)のような形で皮膚からぶら下がっているものもあります。
この皮膚腫瘍は良性であり、放置しても健康上の問題を引き起こすことはほとんどありません。がん化するリスクも極めて低いとされています。しかし、見た目が気になる方や、衣類やアクセサリーが引っかかって不快感を覚える方、また多発して美容上の悩みとなっている方が多いのも事実です。
特に首周りは人目につきやすい部位であり、夏場に首元を出す服装をする際に気になったり、ネックレスが引っかかったりするなど、日常生活においてストレスを感じる方も少なくありません。このような理由から、皮膚科や形成外科で治療を希望される方が年々増加しています。
軟性繊維腫は、ウイルス性のイボとは異なり、他人にうつることはありません。また、近くの皮膚に感染が広がることもないため、その点では安心していただけます。ただし、自己判断で処理しようとすると、出血や感染症を引き起こす可能性があるため、必ず医療機関で適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
2. 軟性繊維腫の別名と分類
軟性繊維腫は、医学的にはさまざまな名称で呼ばれています。これは、イボの大きさや形状によって細かく分類されているためです。ここでは、軟性繊維腫の代表的な別名と分類について詳しく解説します。
アクロコルドン
アクロコルドン(Acrochordon)は、軟性繊維腫のなかでも最も小さいタイプを指します。大きさは1〜2ミリメートル程度で、皮膚からの隆起が少なく、平坦または軽く盛り上がった形状をしています。色は肌色から薄茶色が一般的で、首やデコルテ周辺に多数発生することが多いです。一つひとつは小さくても、10個以上、場合によっては数十個も多発することがあり、全体として目立つことがあります。
スキンタッグ
スキンタッグ(Skin tag)は、アクロコルドンよりもやや大きく、1〜5ミリメートル程度のサイズで、皮膚から明確に飛び出している形状が特徴です。茎のような細い部分で皮膚とつながっており、引っ張ると取れそうに見えることがあります。しかし、自分で引っ張って取ろうとすると出血や感染のリスクがあるため、絶対に避けてください。スキンタッグは放置していると徐々に大きくなることがあります。
軟性繊維腫(狭義)
狭義の軟性繊維腫は、スキンタッグよりもさらに大きなものを指し、5ミリメートルから数センチメートル、まれにそれ以上になることもあります。茎のある有茎性のものが多く、皮膚からぶら下がるような形状をしています。大きくなると衣類との摩擦で炎症を起こしやすくなったり、ねじれて血流が悪くなり痛みを伴ったりすることがあります。
首イボ・脇イボ
一般的な呼び方として「首イボ」「脇イボ」という名称が広く使われています。これらは医学用語ではありませんが、患者さんにとって分かりやすい表現として定着しています。首イボは首周りにできるイボの総称であり、軟性繊維腫だけでなく、脂漏性角化症(老人性イボ)やウイルス性イボを含む場合もあります。正確な診断のためには、皮膚科専門医による診察が必要です。
線維上皮性ポリープ
線維上皮性ポリープ(Fibroepithelial polyp)は、軟性繊維腫の病理学的な名称です。顕微鏡で組織を観察すると、表皮の過形成と真皮の線維性結合組織の増生が見られます。この名称は主に医学文献や病理診断で使用されます。
3. 軟性繊維腫ができる原因
軟性繊維腫の正確な発生メカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。ここでは、現在分かっている主な原因について詳しく説明します。
加齢による皮膚の変化
軟性繊維腫は、加齢に伴って発生することが多いできものです。20代後半から30代にかけて発生し始め、40代以降になると顕著に増加する傾向があります。これは、年齢を重ねるにつれて皮膚の弾力性が低下し、コラーゲンやエラスチンの産生量が減少することで、皮膚の構造が変化するためと考えられています。
また、肌の新陳代謝(ターンオーバー)が遅くなることで、皮膚の老化が進行し、イボができやすい状態になります。これは老化現象の一つであり、誰にでも起こり得る自然な変化です。
摩擦による刺激
皮膚への継続的な摩擦や刺激は、軟性繊維腫の発生を促進する重要な要因です。首周りはネックレスや衣類の襟、マフラーなどが頻繁に接触する部位であり、これらによる日常的な摩擦が皮膚に刺激を与えています。
同様に、脇の下は腕を動かすたびに皮膚同士が擦れ合う部位であり、下着のストラップや脇の縫い目による刺激も加わります。鼠径部も同様に、下着や衣類による摩擦を受けやすい部位です。
このような継続的な摩擦刺激が、皮膚の線維組織の増殖を促し、軟性繊維腫の形成につながると考えられています。
遺伝的要因
軟性繊維腫には遺伝的な要因も関与していると考えられています。家族に軟性繊維腫ができやすい人がいる場合、同様の体質を受け継いでいる可能性があります。特に両親や祖父母の首にイボが多い方は、将来的に同様のイボができやすい体質である可能性が高いです。
ただし、遺伝的要因があるからといって必ず軟性繊維腫ができるわけではありません。生活習慣の改善や予防策を講じることで、発生を抑えることができる可能性があります。
紫外線の影響
紫外線は皮膚の老化を促進する大きな要因です。首は顔と同様に衣類で覆われていないことが多く、日常的に紫外線を浴びやすい部位です。長年にわたる紫外線曝露は、皮膚のコラーゲン線維やエラスチン線維を傷害し、光老化を引き起こします。
この光老化が軟性繊維腫の発生リスクを高める一因となっていると考えられています。顔には日焼け止めを塗っていても、首元は忘れがちな方が多いため、注意が必要です。
ホルモンバランスの変化
ホルモンバランスの変化も軟性繊維腫の発生に関与していると考えられています。妊娠中の女性に軟性繊維腫が増加することがあるのは、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンレベルの変化が関係していると推測されています。
また、閉経期のホルモン変動も、皮膚の構造や代謝に影響を与え、イボができやすい状態を作り出す可能性があります。
肥満
肥満傾向のある方は、軟性繊維腫ができやすいことが複数の研究で示されています。これは、肥満によって皮膚のしわやたるみが増え、皮膚同士の摩擦が増加することが一因と考えられています。
また、肥満はインスリン抵抗性と関連しており、これが軟性繊維腫の発生に影響している可能性があります。この点については次章で詳しく説明します。
4. 軟性繊維腫の症状と見た目の特徴
軟性繊維腫は、その見た目や症状に特徴があります。ここでは、軟性繊維腫を見分けるためのポイントについて詳しく解説します。
外観の特徴
軟性繊維腫の外観には、以下のような特徴があります。
まず、色については、肌色(正常な皮膚と同じ色)から薄茶色、茶色、場合によっては黒っぽい色まで、さまざまです。色素沈着が起こると、より濃い色になることがあります。
形状については、平坦で表面が滑らかなものから、皮膚から盛り上がって半球状になっているもの、さらには茎のような細い部分で皮膚につながり、ぶら下がっているもの(有茎性)まで、多様な形態を示します。
大きさは、1ミリメートル程度の非常に小さなものから、数センチメートルに達する大きなものまであります。多くの場合は数ミリメートル程度ですが、まれに親指大やそれ以上に成長することもあります。
表面は通常滑らかですが、時にザラザラしていることもあります。触ると柔らかく、ゴムのような弾力があるのが特徴です。
好発部位
軟性繊維腫ができやすい部位には特徴があります。最も多いのは首周り、特に首の側面や後ろ側です。次いで、脇の下、まぶた、鼠径部(足の付け根)、胸の下(特に女性のブラジャーのラインあたり)、腹部、背中などにも発生します。
これらの部位に共通しているのは、皮膚が薄くて柔らかいこと、そして摩擦を受けやすいことです。衣類や下着、アクセサリーなどによる日常的な刺激が、軟性繊維腫の発生を促していると考えられています。
自覚症状
軟性繊維腫は、通常は自覚症状がほとんどありません。痛みやかゆみを伴わないことが多く、気づかないうちにできていることも珍しくありません。
ただし、以下のような場合には症状が現れることがあります。
衣類やアクセサリーが引っかかったり擦れたりした場合には、炎症を起こして赤みや痛み、軽い出血を伴うことがあります。また、茎のある軟性繊維腫がねじれると、血流が悪くなって痛みを感じることがあります。さらに、感染を起こした場合には、腫れや痛み、膿が出ることもあります。
これらの症状が現れた場合には、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。
数と分布
軟性繊維腫は、1個だけできることもあれば、数十個から数百個と多発することもあります。多発している場合でも、それぞれのイボは独立しており、ウイルス性のイボのように周囲に感染が広がることはありません。
加齢とともに数が増加していく傾向があり、一度できると自然に消失することはほとんどありません。放置していても健康上の問題はありませんが、増え続けることで美容上の悩みが大きくなる方もいます。
5. 軟性繊維腫と他のイボとの違い
首や体にできるイボにはさまざまな種類があります。軟性繊維腫と混同されやすい他のイボとの違いについて、ここで詳しく解説します。
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)との違い
ウイルス性イボは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発生するイボです。軟性繊維腫との主な違いは以下の点です。
原因について、軟性繊維腫は加齢や摩擦などが原因であり、ウイルスは関与していません。一方、ウイルス性イボはHPVの感染が原因です。
感染性について、軟性繊維腫は他人にうつることはありませんが、ウイルス性イボは接触によって他人や自分の他の部位に感染する可能性があります。
外観について、軟性繊維腫は柔らかく、茎がある有茎性のものが多いです。ウイルス性イボは硬く、表面がザラザラしていることが多く、盛り上がった形状をしています。
好発部位について、軟性繊維腫は首、脇、鼠径部など皮膚が薄い部位に多いです。ウイルス性イボは手足、特に指や足の裏にできやすいです。
治療について、どちらも液体窒素療法で治療可能ですが、ウイルス性イボは再発しやすく、治療回数が多くなる傾向があります。
脂漏性角化症(老人性イボ)との違い
脂漏性角化症は、加齢に伴って発生する良性の皮膚腫瘍で、「老人性イボ」とも呼ばれます。軟性繊維腫との主な違いは以下の点です。
外観について、脂漏性角化症は表面がザラザラしており、盛り上がった形状をしています。色は茶色から黒色が多く、表面にフケのような角質が付着していることがあります。軟性繊維腫は表面が滑らかで、柔らかいのが特徴です。
形状について、脂漏性角化症は皮膚から飛び出すような形ではなく、皮膚に貼り付いたような形状をしています。軟性繊維腫は茎があって皮膚からぶら下がっているものが多いです。
好発部位について、脂漏性角化症は顔、頭皮、胸、背中など日光に当たりやすい部位に多く発生します。軟性繊維腫は摩擦を受けやすい部位に多いです。
ほくろ(色素性母斑)との違い
ほくろは、メラノサイト(色素細胞)が集まってできる良性の腫瘍です。軟性繊維腫との違いは以下の点です。
色について、ほくろは黒色や茶色など、色素が濃いのが特徴です。軟性繊維腫は肌色から薄茶色が多いです。
形状について、ほくろは平坦なものから盛り上がったものまでさまざまですが、軟性繊維腫のように茎があって皮膚からぶら下がることは稀です。
触った感触について、ほくろは軟性繊維腫ほど柔らかくなく、やや硬い感触があります。
粉瘤(アテローム)との違い
粉瘤は、皮膚の下にできる袋状の構造物で、内部に角質や皮脂が溜まっています。軟性繊維腫との違いは以下の点です。
発生部位について、粉瘤は皮膚の下(皮下)にできますが、軟性繊維腫は皮膚の表面から盛り上がって発生します。
形状について、粉瘤は皮膚の下でドーム状に盛り上がり、中央に開口部(へそ)があることが多いです。軟性繊維腫は表面から飛び出した形状をしています。
感染リスクについて、粉瘤は内部に老廃物が溜まっているため、感染を起こして赤く腫れ、痛みを伴うことがあります。軟性繊維腫は感染を起こすことは稀です。
正確な診断のためには、皮膚科専門医による診察が必要です。見た目が似ていても、それぞれ治療法が異なるため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
6. 軟性繊維腫と糖尿病・メタボリックシンドロームの関係
近年の研究では、軟性繊維腫は単なる加齢現象や皮膚の変化だけでなく、体内の代謝異常と関連している可能性が指摘されています。特に、糖尿病やメタボリックシンドロームとの関連が注目されています。
インスリン抵抗性との関連
インスリン抵抗性とは、膵臓から分泌されるインスリンが、肝臓、脂肪組織、骨格筋などの標的組織において十分に機能しない状態を指します。この状態では、血糖値を下げるためにより多くのインスリンが必要となり、高インスリン血症が生じます。
複数の研究において、軟性繊維腫が多発している患者さんでは、インスリン抵抗性や高インスリン血症の頻度が高いことが報告されています。インスリンやインスリン様成長因子(IGF)は、皮膚の線維芽細胞の増殖を促進する作用があり、これが軟性繊維腫の発生に関与している可能性があります。
糖尿病との関連
糖尿病患者さんでは、健常者と比較して軟性繊維腫の発生率が約3〜4倍高いという報告があります。これは、糖尿病に伴う高インスリン血症や代謝異常が、皮膚の軟部組織の増殖を促進するためと考えられています。
軟性繊維腫が急に増えてきた場合や、若い年齢で多発している場合には、糖尿病やインスリン抵抗性の存在を示唆している可能性があります。このような場合には、皮膚科での治療だけでなく、内科での血糖検査を受けることも検討してみてください。
メタボリックシンドロームとの関連
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のうち2つ以上を合併した状態を指します。厚生労働省のe-ヘルスネットによると、この病態はインスリン抵抗性を基盤として、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクを高めます。
軟性繊維腫は、メタボリックシンドロームの皮膚における表れ(デルマドローム)の一つとして認識されるようになっています。同様に、黒色表皮腫(首の後ろや脇の下の皮膚が黒ずんで厚くなる状態)も、高インスリン血症を反映する皮膚所見として知られています。
健康管理への示唆
軟性繊維腫が多発している場合、それは単なる美容上の問題だけでなく、体内の代謝状態を反映している可能性があります。特に以下のような場合には、内科的な検査を受けることを検討してみてください。
軟性繊維腫が急激に増加している場合、若い年齢で多数の軟性繊維腫がある場合、家族に糖尿病の方がいる場合、肥満傾向がある場合、高血圧や脂質異常症を指摘されたことがある場合などです。
軟性繊維腫の治療と併せて、生活習慣の改善や適切な体重管理を行うことで、全身の健康状態の向上につながる可能性があります。
7. 軟性繊維腫の診断方法
軟性繊維腫の診断は、主に皮膚科専門医による視診(目で見て行う診察)によって行われます。ここでは、診断の流れと必要に応じて行われる検査について説明します。
視診による診断
軟性繊維腫は特徴的な外観を持つため、多くの場合、経験豊富な皮膚科医であれば視診のみで診断が可能です。色、形、大きさ、硬さ、発生部位などを総合的に評価して診断します。
診察時には、イボの数や分布、増え方のスピードなどについて問診が行われることもあります。また、患者さんの年齢、家族歴、既往歴なども診断の参考になります。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー(皮膚鏡検査)は、特殊なライト付きの拡大鏡を使用して皮膚を観察する検査です。肉眼では見えにくい皮膚の微細な構造を観察することができます。
軟性繊維腫の診断においては、通常はダーモスコピーは必要ありませんが、他のイボ(脂漏性角化症やほくろなど)との鑑別が難しい場合や、悪性腫瘍の可能性を除外する必要がある場合に実施されることがあります。
病理組織検査
病理組織検査(生検)は、イボの一部または全体を切除して、顕微鏡で組織を観察する検査です。軟性繊維腫の場合、通常は病理検査は必要ありませんが、以下のような場合には実施されることがあります。
悪性腫瘍の可能性が否定できない場合、診断が困難な場合、治療後に切除した組織を確認する場合などです。
病理検査では、表皮の過形成(表皮が厚くなっている状態)と真皮の線維性結合組織の増生が確認されます。これにより、軟性繊維腫の確定診断が得られます。
鑑別診断
診断においては、軟性繊維腫と似た外観を持つ他の皮膚疾患との鑑別が重要です。鑑別が必要な疾患には、ウイルス性イボ(尋常性疣贅)、脂漏性角化症、ほくろ(色素性母斑)、神経線維腫、皮膚線維腫などがあります。
正確な診断のためには、皮膚科専門医による診察を受けることが大切です。自己判断で治療を行うと、適切でない処置によって問題が生じる可能性があります。
8. 軟性繊維腫の治療法
軟性繊維腫は良性腫瘍であり、放置しても健康上の問題はほとんどありませんが、見た目が気になる場合や不快感がある場合には、以下の方法で除去することが可能です。
液体窒素療法(冷凍凝固療法)
液体窒素療法は、マイナス196度の液体窒素を患部に当てて凍結させることで、イボの組織を壊死させる治療法です。保険適用で受けられる治療であり、最も一般的に行われている方法の一つです。
治療は、綿棒に液体窒素を浸して患部に押し当てるか、スプレー式の装置で液体窒素を噴射する方法で行われます。治療時には冷たさと軽い痛みを感じますが、多くの患者さんは「少しピリッとする程度」と表現します。
治療後、患部はかさぶたのように黒くなり、1〜3週間後に自然に脱落します。小さなイボであれば1〜3回程度の通院で除去可能ですが、大きなイボや数が多い場合には複数回の治療が必要になることがあります。
液体窒素療法のメリットは、保険適用であること、簡便で短時間で終わること、出血がほとんどないことなどです。デメリットとしては、複数回の通院が必要な場合があること、治療後に色素沈着(茶色い跡)や色素脱失(白い跡)が残る可能性があることなどがあります。
ハサミによる切除
医療用のハサミを使用して、イボを根元から切除する方法です。特に茎のあるスキンタッグタイプの軟性繊維腫に適しています。
小さなイボであれば麻酔なしで行うこともできますが、大きなイボや痛みに敏感な方には局所麻酔を行います。切除後の出血はほとんどなく、縫合も通常は不要です。
ハサミによる切除のメリットは、その場で即座に除去できること、治療時間が短いこと、傷跡が目立ちにくいことなどです。保険適用となる場合と自費診療となる場合があるため、事前に確認が必要です。
電気焼灼法(電気メス・高周波メス)
高周波の電流を利用して、イボを焼灼(焼いて取り除く)する方法です。局所麻酔を行った上で、電気メスや高周波メスを使用してイボを除去します。
切除と同時に止血もできるため、出血がほとんどありません。比較的大きなイボや、平坦なイボの除去にも適しています。
電気焼灼法のメリットは、1回の治療で確実に除去できること、止血効果があること、さまざまなサイズや形状のイボに対応できることなどです。デメリットとしては、麻酔が必要なこと、治療後にかさぶたができて数週間で剥がれ落ちることなどがあります。
外科的切除(手術)
大きな軟性繊維腫や、病理検査が必要な場合には、メスを使用した外科的切除が行われることがあります。局所麻酔を行い、イボを周囲の正常な皮膚ごと切除して、縫合します。
外科的切除のメリットは、確実に除去できること、切除した組織を病理検査に出せることなどです。デメリットとしては、縫合が必要なため傷跡が線状に残ること、抜糸のための通院が必要なことなどがあります。
手術時間は多くの場合20分程度で終わり、健康保険が適用されます。
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)
炭酸ガスレーザーは、水分に吸収される特性を持つレーザーで、イボの組織を蒸散させて除去する方法です。主に自費診療となりますが、多数のイボを一度に治療したい場合などに適しています。
炭酸ガスレーザーのメリットは、多数のイボを効率的に除去できること、出血が少ないこと、傷跡が比較的きれいに治ることなどです。デメリットとしては、自費診療となるため費用がかかること、治療後の色素沈着のリスクがあることなどがあります。
治療法の選択
どの治療法が最適かは、イボの大きさ、数、形状、発生部位、患者さんの希望、医療機関の設備などによって異なります。皮膚科専門医と相談の上、最適な治療法を選択することが大切です。
また、治療にかかる費用も治療法によって異なります。保険適用の治療では、3割負担の場合、液体窒素療法で1回数百円程度(3個以下で約630円、4個以上で約810円)となります。自費診療のレーザー治療などは、医療機関によって料金設定が異なりますので、事前に確認してください。
9. 治療後の経過とアフターケア
軟性繊維腫の治療後は、適切なアフターケアを行うことで、傷の回復を早め、傷跡を目立たなくすることができます。ここでは、治療法別の経過とアフターケアについて説明します。
液体窒素療法後の経過
液体窒素療法の後、患部は以下のような経過をたどります。
治療直後には、患部が赤く腫れたり、軽い痛みを感じたりすることがあります。これは正常な反応であり、通常は数時間から1日程度で落ち着きます。
治療後数日すると、患部が黒っぽく変色し、かさぶたのようになります。このかさぶたは自然に剥がれ落ちるまで、無理に剥がさないようにしてください。
1〜3週間後には、かさぶたが自然に脱落し、その下に新しい皮膚ができています。この新しい皮膚は、周囲の皮膚と比べて色が薄かったり濃かったりすることがありますが、時間の経過とともに目立たなくなることが多いです。
アフターケアとしては、患部を清潔に保つこと、必要に応じて処方された軟膏を塗布すること、入浴時に患部を強くこすらないことなどが大切です。
ハサミ切除・電気焼灼後の経過
ハサミによる切除や電気焼灼の後は、以下のような経過をたどります。
治療直後には、小さな傷ができますが、通常は出血はほとんどありません。局所麻酔を使用した場合は、麻酔が切れると軽い痛みを感じることがあります。
治療後数日で、傷の部分にかさぶたができます。このかさぶたは1〜2週間程度で自然に剥がれ落ちます。
かさぶたが取れた後は、新しい皮膚ができています。最初は赤みを帯びていることがありますが、2〜3か月程度で目立たなくなることが多いです。
アフターケアとしては、処方された軟膏を指示通りに塗布すること、患部を清潔に保つこと、日焼けを避けること(色素沈着予防)、テーピングで傷跡をケアすること(指示があった場合)などが大切です。
外科的切除後の経過
外科的切除(手術)の後は、以下のような経過をたどります。
手術直後には、縫合された傷があり、ガーゼで保護されています。痛みがある場合は処方された鎮痛剤を服用します。
手術翌日以降には、傷のチェックを受け、問題がなければシャワーで傷口を洗浄することが許可されます(入浴はもう少し後になることが多いです)。
5〜14日後に抜糸が行われます。抜糸の時期は手術部位によって異なります。
抜糸後には、傷跡をきれいに治すためにテーピングを行うことがあります。傷跡は時間の経過とともに目立たなくなりますが、完全に消えるわけではありません。
再発について
軟性繊維腫は、治療した部位に再発することは稀です。ただし、同じ部位に新たなイボができることはあります。これは再発ではなく、新たに発生したものです。
軟性繊維腫ができやすい体質の方は、治療後も新たなイボができる可能性があります。定期的な皮膚のチェックと、必要に応じた再治療を検討してください。
10. 軟性繊維腫の予防法
軟性繊維腫を完全に予防することは難しいですが、いくつかの対策を講じることで、発生リスクを軽減したり、増加を抑えたりすることができる可能性があります。
紫外線対策
紫外線は皮膚の老化を促進し、軟性繊維腫の発生リスクを高める要因の一つです。以下の紫外線対策を心がけましょう。
日焼け止めを顔だけでなく、首やデコルテにも塗ることが大切です。外出時には日傘や帽子を使用し、直射日光を避けるようにしましょう。紫外線が強い時間帯(午前10時から午後2時頃)の外出を控えることも有効です。
特に首は紫外線対策が忘れられがちな部位ですので、意識的にケアを行いましょう。
摩擦を減らす
皮膚への継続的な摩擦は、軟性繊維腫の発生を促進する要因です。以下の点に注意して、摩擦を減らしましょう。
ネックレスなどのアクセサリーは、長時間の着用を避けたり、肌に優しい素材を選んだりすることを心がけてください。衣類の襟やマフラーによる摩擦にも注意が必要です。肌触りの良い、柔らかい素材の衣類を選ぶようにしましょう。
下着は体に合ったサイズのものを選び、締め付けや擦れが少ないものを選ぶことが大切です。入浴時には首や脇を強くこすらず、優しく洗うようにしましょう。
保湿ケア
皮膚の乾燥は、バリア機能の低下につながり、外部刺激に対して弱くなります。以下の保湿ケアを心がけましょう。
入浴後には保湿剤を塗り、皮膚の潤いを保つことが大切です。首やデコルテも顔と同様にスキンケアを行いましょう。乾燥しやすい季節には、加湿器を使用するなどして室内の湿度を保つことも有効です。
適正体重の維持
肥満は軟性繊維腫の発生リスクを高める要因の一つです。また、肥満はインスリン抵抗性とも関連しており、軟性繊維腫の発生に影響を与える可能性があります。
バランスの取れた食事を心がけ、過度な糖質や脂質の摂取を控えましょう。定期的な運動を行い、適正体重を維持することが大切です。健康診断を定期的に受け、血糖値やコレステロール値などの数値をチェックしましょう。
生活習慣の改善
全身の健康状態を良好に保つことは、皮膚の健康にもつながります。
十分な睡眠をとり、ストレスを適切に管理することが大切です。バランスの取れた食事を心がけ、ビタミンやミネラルを十分に摂取しましょう。禁煙を心がけることも、皮膚の老化を遅らせるために重要です。
これらの予防策を実践しても、軟性繊維腫が完全に予防できるわけではありません。しかし、皮膚の健康を保ち、老化の進行を遅らせることで、発生リスクを軽減することが期待できます。
11. 大宮で軟性繊維腫の治療を受けるなら
大宮エリアにお住まいの方や、大宮周辺で軟性繊維腫の治療をお考えの方は、ぜひアイシークリニック大宮院にご相談ください。
アイシークリニック大宮院の特徴
アイシークリニック大宮院では、皮膚科・形成外科の専門医が在籍し、軟性繊維腫をはじめとするさまざまな皮膚のできものに対して、適切な診断と治療を提供しています。
専門医チームによる診療として、日本形成外科学会形成外科専門医のもと、皮膚科、形成外科など複数の診療科の専門医が連携して治療にあたります。患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。
豊富な治療オプションとして、液体窒素療法、ハサミによる切除、電気焼灼法、外科的切除など、複数の治療法に対応しています。イボの状態や患者さんのご希望に応じて、最適な方法を選択できます。
保険診療に対応しており、メスを使用した切除手術など、多くの治療が健康保険適用で受けられます。費用面についても事前にご相談いただけますので、安心して治療を受けていただけます。
美しい仕上がりへのこだわりとして、形成外科の技術を活かし、傷跡が目立たない治療を心がけています。見た目を気にされる方にも満足いただける仕上がりを目指しています。
治療の流れ
診察では、皮膚科専門医がイボの状態を診察し、軟性繊維腫かどうかの診断を行います。必要に応じてダーモスコピー検査なども実施します。
治療計画として、イボの状態や患者さんのご希望を伺い、最適な治療法をご提案します。治療にかかる費用や時間、術後の経過についてもご説明いたします。
治療では、選択した方法に基づいて治療を行います。多くの治療は数分から20分程度で終了し、日帰りで行えます。
アフターケアとして、治療後のケア方法をご説明し、必要に応じて軟膏などを処方します。経過観察のための再診日もご案内いたします。
アクセス
アイシークリニック大宮院は、JR大宮駅から徒歩圏内に位置しており、埼玉県内はもちろん、東京や近隣県からのアクセスも便利です。首イボや脇イボでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

12. よくある質問
軟性繊維腫に関して、患者さんからよくいただく質問とその回答をまとめました。
自分で軟性繊維腫を取ることは絶対にお勧めしません。ハサミで切ったり、糸で縛って血流を止めたりする方法がインターネットなどで紹介されていることがありますが、これらは非常に危険です。
自己処理によって出血、感染、傷跡の残存、不完全な除去などのリスクがあります。また、軟性繊維腫だと思っていたものが実は別の疾患であった場合、適切な治療の機会を逃してしまう可能性もあります。必ず医療機関で適切な診断と治療を受けてください。
軟性繊維腫は市販薬で治せますか?
軟性繊維腫に効果のある市販薬はありません。ドラッグストアなどで販売されている「イボ取り」の塗り薬や貼り薬は、主にウイルス性イボを対象としたものであり、軟性繊維腫には効果がありません。
市販のイボ取り製品を軟性繊維腫に使用しても効果がないばかりか、皮膚を傷める可能性もあります。軟性繊維腫の除去には、医療機関での治療が必要です。
軟性繊維腫は悪性化しますか?
軟性繊維腫は良性腫瘍であり、悪性化(がん化)するリスクは極めて低いとされています。基本的には放置しても健康上の問題はありません。
ただし、イボが急激に大きくなったり、出血や痛みを伴ったり、見た目が急に変化したりした場合には、念のため皮膚科を受診して診察を受けることをお勧めします。
軟性繊維腫は他人にうつりますか?
軟性繊維腫はウイルス性のものではないため、他人にうつることはありません。また、自分の体の他の部位に感染が広がることもありません。この点はウイルス性イボとの大きな違いです。
ご家族やパートナーへの感染を心配される方もいらっしゃいますが、その心配は不要です。
一度治療すれば再発しませんか?
治療した部位に同じイボが再発することは稀です。ただし、軟性繊維腫ができやすい体質の方は、同じ部位や別の部位に新たなイボができることがあります。これは再発ではなく、新規発生です。
予防策を講じることで新たなイボの発生を減らせる可能性がありますが、完全に防ぐことは難しいです。気になるイボができた場合には、再度治療を受けることができます。
治療は痛いですか?
治療法によって痛みの程度は異なります。液体窒素療法では、冷たさと軽いピリピリとした痛みを感じますが、多くの方が耐えられる程度です。
ハサミによる切除や電気焼灼法では、必要に応じて局所麻酔を行いますので、治療中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みを感じる程度です。
痛みに敏感な方やご不安のある方は、事前にお申し出いただければ、痛みを軽減するための対応をいたします。
治療後に傷跡は残りますか?
治療法やイボの大きさ、部位、個人の体質によって異なります。小さなイボであれば、治療後にほとんど傷跡が残らないことが多いです。
液体窒素療法では、治療後に色素沈着(茶色い跡)や色素脱失(白い跡)が残ることがありますが、時間の経過とともに目立たなくなることが多いです。
外科的切除では、線状の傷跡が残りますが、形成外科の技術を用いることで目立ちにくくすることができます。傷跡が気になる方は、事前に医師にご相談ください。
治療費はどのくらいかかりますか?
治療法や医療機関によって費用は異なります。保険適用の液体窒素療法の場合、3割負担で1回数百円程度(3個以下で約630円、4個以上で約810円)に診察料や処方料が加わります。
外科的切除も多くの場合保険適用となりますが、費用はイボの大きさや数によって異なります。自費診療のレーザー治療などは、医療機関によって料金設定が異なりますので、事前にお問い合わせください。
13. まとめ
軟性繊維腫(アクロコルドン、スキンタッグ、首イボ)について、原因から治療法、予防法まで詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
軟性繊維腫は、皮膚にできる良性の腫瘍であり、首、脇の下、まぶた、鼠径部などに好発します。30代以降に増加し、加齢、摩擦、紫外線、遺伝、肥満などが発生に関与していると考えられています。
ウイルス性のイボとは異なり、他人にうつることはなく、がん化するリスクも極めて低いです。放置しても健康上の問題はほとんどありませんが、見た目が気になる場合や不快感がある場合には治療が可能です。
治療法には、液体窒素療法、ハサミによる切除、電気焼灼法、外科的切除、炭酸ガスレーザーなどがあり、イボの状態や患者さんの希望に応じて選択されます。多くの治療は保険適用で受けられ、短時間で終了します。
また、軟性繊維腫は糖尿病やメタボリックシンドロームとの関連が指摘されています。多発している場合には、内科的な検査を受けることも検討してみてください。
大宮エリアで軟性繊維腫の治療をお考えの方は、ぜひアイシークリニック大宮院にご相談ください。皮膚科・形成外科の専門医チームが、患者さん一人ひとりに最適な治療をご提供いたします。
首イボや脇イボでお悩みの方、まずはお気軽にご相談ください。
参考文献
- 清水宏『あたらしい皮膚科学 第3版』中山書店、2018年
- 日本皮膚科学会 一般公開ガイドライン
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドローム(メタボ)とは?」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
- 日本形成外科学会 皮膚腫瘍 概要
- 日本生活習慣病予防協会「肥満症/メタボリックシンドローム」
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「皮膚の腫瘍」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務