「親が多汗症だから自分もそうなってしまうのか」「子どもに遺伝してしまうのではないか」と不安を感じている方は少なくありません。多汗症は、手のひらや足の裏、脇などに体温調節に必要な量を超えて大量の汗をかく疾患であり、日常生活や社会生活に大きな影響を与えることがあります。
多汗症と遺伝の関係については、近年の研究によって徐々に明らかになってきています。結論からお伝えすると、多汗症には遺伝的な要因が関与していることがわかっていますが、必ずしも親から子へ100%遺伝するわけではありません。本記事では、多汗症と遺伝の関係、遺伝する確率、遺伝以外の原因、そして効果的な治療法について詳しく解説します。
📋 目次
- 📌 多汗症とは?遺伝との関係を理解するための基礎知識
- 🔍 多汗症は遺伝する?遺伝確率と家族性の関係
- 🧬 多汗症の遺伝パターンと発症メカニズム
- ⚠️ 遺伝以外に多汗症を引き起こす原因
- 💡 多汗症の遺伝が心配な方へ|予防と早期対策
- 💊 多汗症の治療法|遺伝的な体質でも改善できる
- 🏥 多汗症の治療を検討している方へ
この記事のポイント
多汗症には遺伝的要因が関与し、親が多汗症の場合の子への遺伝確率は約50%。ただし必ず発症するわけではなく、外用薬・ボトックス注射・ミラドライ等の治療で遺伝的体質でも症状改善が可能。
🎯 多汗症とは?遺伝との関係を理解するための基礎知識
多汗症について遺伝との関係を理解するためには、まず多汗症がどのような疾患であるかを正しく知ることが重要です。ここでは、多汗症の定義や種類、症状について解説します。
🦠 多汗症の定義と症状
多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて異常に発汗する疾患です。通常、人間の体は体温が上昇すると汗をかいて体温を下げようとします。しかし、多汗症の方は、特に体温が上昇していない状態でも大量の汗をかいてしまいます。
日本皮膚科学会の定義によると、多汗症は「温熱や精神的負荷の有無に関わらず、日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗が生じる疾患」とされています。多汗症の症状には以下のようなものがあります。
- 📌 手のひらから滴り落ちるほどの汗をかく
- 📌 書類やノートが汗で濡れてしまう
- 📌 握手をするのが恥ずかしい
- 📌 脇汗で衣服が濡れてしまう
- 📌 足の汗で靴の中が蒸れる
- 📌 額や顔から大量の汗が流れる
これらの症状が6ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたしている場合は多汗症の可能性があります。ご自身の症状が気になる方は、「多汗症のセルフチェック方法|症状の見分け方と受診の目安を解説」も参考にしてください。
🔸 多汗症の種類|原発性と続発性の違い
多汗症は大きく分けて「原発性多汗症」と「続発性多汗症」の2種類があります。遺伝との関連を理解するうえで、この区別は非常に重要です。
原発性多汗症は、特定の病気や原因がないにもかかわらず過剰な発汗が起こる多汗症です。特定の部位(手のひら、足の裏、脇、顔、頭部など)に限定して発汗することが多く、思春期前後から症状が現れることが特徴です。この原発性多汗症は、遺伝的な要因が関与していると考えられています。
一方、続発性多汗症は、他の病気や薬の副作用、ホルモンバランスの変化などが原因で起こる多汗症です。甲状腺機能亢進症、糖尿病、更年期障害、感染症、悪性腫瘍などの基礎疾患が原因となることがあります。続発性多汗症は全身に発汗することが多く、遺伝との関連は原発性に比べて低いとされています。
💧 多汗症が起こる部位と特徴
原発性多汗症は、発汗が起こる部位によってさらに細かく分類されます。それぞれの部位によって特徴が異なります。
手掌多汗症(手のひらの多汗症)は、手のひらに過剰な発汗が起こるタイプです。書類を持つと汗で濡れる、パソコンのキーボードが汗で滑る、握手が恥ずかしいなどの悩みを抱える方が多いです。日本人の有病率は約5%程度と報告されており、比較的多い症状です。
腋窩多汗症(わきの多汗症)は、脇の下に過剰な発汗が起こるタイプです。衣服の汗染みが目立つ、制汗剤を使っても効果が持続しないなどの悩みがあります。腋窩多汗症はワキガと併発することも多く、臭いの問題も合わせて悩む方がいます。
足蹠多汗症(足の裏の多汗症)は、足の裏に過剰な発汗が起こるタイプです。靴の中が蒸れる、水虫になりやすい、サンダルで滑るなどの問題が生じます。
頭部・顔面多汗症は、額や頭皮、顔面に過剰な発汗が起こるタイプです。食事中に汗が流れる、緊張すると顔中から汗が出るなどの症状があり、人前で目立ちやすいため精神的な負担が大きい傾向があります。

Q. 親が多汗症の場合、子どもに遺伝する確率は?
親が多汗症である場合、子どもが多汗症を発症する確率は約50%とされています。これは常染色体優性遺伝のパターンによるものです。ただし、遺伝子を受け継いでも必ず発症するわけではなく、環境要因や生活習慣も発症に影響するため、実際の発症率はさらに低くなることもあります。
🔍 多汗症は遺伝する?遺伝確率と家族性の関係
多汗症が遺伝するかどうかは、多くの方が気になるポイントです。ここでは、研究データに基づいて多汗症と遺伝の関係について詳しく解説します。
📊 多汗症の遺伝確率はどのくらい?
原発性多汗症には、遺伝的な要因が関与していることが複数の研究で示されています。家族歴を持つ多汗症患者の割合は、研究によって異なりますが、約30〜65%と報告されています。つまり、多汗症の方の約3人に1人から3人に2人は、家族にも多汗症の方がいるということになります。
国内外の研究によると、親が多汗症である場合、子どもが多汗症を発症する確率は約50%とされています。これは、多汗症が常染色体優性遺伝のパターンをとる可能性を示唆しています。ただし、遺伝子が受け継がれても必ず発症するわけではなく、環境要因なども影響するため、実際の発症率はこれより低くなることもあります。
また、両親ともに多汗症である場合は、子どもが多汗症になる確率がさらに高くなると考えられています。一方で、両親に多汗症がなくても、祖父母や親戚に多汗症の方がいれば、遺伝子を受け継いでいる可能性があります。
🧬 家族性多汗症に関する研究データ
多汗症の遺伝に関する研究は世界各国で行われています。代表的な研究結果をいくつか紹介します。
日本で行われた研究では、手掌多汗症患者の約40%に家族歴があることが報告されています。また、一卵性双生児を対象とした研究では、片方が多汗症である場合、もう片方も多汗症である確率が非常に高いことがわかっています。これは遺伝的要因の強さを示す重要な証拠です。
アメリカの研究では、多汗症患者の約35%に家族歴があり、特に手掌多汗症と足蹠多汗症で遺伝の関与が強いことが示されています。また、ブラジルの研究では、多汗症患者の約65%に家族歴があると報告されており、地域や研究方法によって数値に差があることがわかります。
これらの研究結果から、多汗症には明らかな遺伝的要因があることは確かですが、遺伝だけで発症が決まるわけではないことも示されています。
⚡ ワキガと多汗症の遺伝の違い
多汗症と混同されやすいワキガ(腋臭症)ですが、遺伝のパターンには違いがあります。ワキガは多汗症よりも遺伝の影響が強いとされており、両親のどちらかがワキガの場合、子どもがワキガになる確率は約50〜80%、両親ともにワキガの場合は約80〜95%と報告されています。
この違いは、ワキガと多汗症の原因となる汗腺の種類の違いにあります。ワキガはアポクリン汗腺から分泌される汗が原因で、アポクリン汗腺の数や大きさは遺伝によって決まります。一方、多汗症はエクリン汗腺の過剰な活動が原因であり、汗腺の機能を制御する神経系の働きが関与しています。ワキガの遺伝について詳しくは「ワキガは遺伝する?遺伝確率や親から子への影響・予防法を医師が解説」をご覧ください。
多汗症とワキガは併発することもありますが、別々の疾患であり、遺伝のしやすさも異なることを覚えておきましょう。
Q. 多汗症の原発性と続発性の違いは何ですか?
原発性多汗症は特定の病気がないにもかかわらず過剰な発汗が起こる疾患で、手のひら・足の裏・脇など特定部位に限定して発汗し、遺伝的要因の関与が強いとされます。一方、続発性多汗症は甲状腺機能亢進症・糖尿病・更年期障害などの基礎疾患が原因で全身に発汗が起こるもので、遺伝との関連は低いとされています。
🧬 多汗症の遺伝パターンと発症メカニズム
多汗症がどのように遺伝するのか、そのメカニズムを理解することで、ご自身やお子さんの発症リスクをより正確に把握できます。ここでは、多汗症の遺伝パターンと発症のメカニズムについて詳しく解説します。
🔬 多汗症に関与する遺伝子
多汗症の原因となる特定の遺伝子はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの候補遺伝子が研究によって示唆されています。
2006年に発表された研究では、14番染色体上に多汗症に関連する遺伝子座が存在する可能性が報告されました。また、2009年の研究では、交感神経の活動に関与する遺伝子が多汗症と関連している可能性が示されています。
最近の研究では、ABCC11遺伝子が多汗症と関連している可能性が指摘されています。この遺伝子はアポクリン汗腺の分泌にも関与しており、耳垢の湿り具合やワキガとも関連することが知られています。ただし、ABCC11遺伝子は主にアポクリン汗腺に影響するため、エクリン汗腺が主な原因である多汗症との直接的な関連については、さらなる研究が必要です。
多汗症は単一の遺伝子ではなく、複数の遺伝子が関与する多因子遺伝の可能性が高いと考えられています。これは、遺伝的な素因があっても必ずしも発症しない理由の一つでもあります。
📌 常染色体優性遺伝のパターン
原発性多汗症は、常染色体優性遺伝のパターンをとると考えられています。常染色体優性遺伝とは、一対の染色体のうち片方に変異があれば症状が現れる遺伝形式です。
このパターンでは、親の一方が多汗症の遺伝子を持っている場合、子どもがその遺伝子を受け継ぐ確率は50%となります。ただし、遺伝子を受け継いでも発症しないケース(不完全浸透)や、同じ遺伝子を持っていても症状の程度が異なるケース(表現度の差)があります。
そのため、家族に多汗症の方がいても、必ずしも発症するとは限りません。また、家族に多汗症の方がいなくても、新たな遺伝子変異(新生突然変異)によって発症する可能性もあります。
⚡ 交感神経と発汗の関係
多汗症の発症メカニズムを理解するうえで重要なのが、交感神経の働きです。発汗は主に交感神経によってコントロールされており、交感神経が過剰に活動すると発汗量が増加します。
原発性多汗症の方は、交感神経の活動が通常よりも亢進していることが多いとされています。特に、緊張や不安などの精神的なストレスに対する交感神経の反応が過敏である傾向があります。
この交感神経の過敏さは、遺伝的な要因によって決まる部分が大きいと考えられています。交感神経系を制御する脳の視床下部や、神経伝達物質の受容体の感受性などに遺伝的な影響があると推測されています。ストレスと多汗症の関係については「多汗症の原因はストレス?自律神経との関係や対処法を医師が解説」で詳しく解説しています。
🔸 発症時期と遺伝の関連
原発性多汗症は、多くの場合、小児期から思春期にかけて発症します。日本皮膚科学会のガイドラインによると、原発性多汗症の発症年齢は25歳以下であることが診断基準の一つとされています。
研究によると、多汗症患者の約40%は10歳までに、約85%は25歳までに症状が現れるとされています。この早期発症は、遺伝的要因の関与を強く示唆しています。
思春期に症状が悪化するケースが多いのは、ホルモンバランスの変化や精神的なストレスの増加が関係していると考えられています。遺伝的な素因を持っている人が、思春期特有の環境変化によって発症するというパターンが多いようです。
⚠️ 遺伝以外に多汗症を引き起こす原因
多汗症は遺伝的な要因だけで発症するわけではありません。ここでは、遺伝以外の多汗症の原因について解説します。
😰 精神的・心理的要因
精神的なストレスや不安は、多汗症の発症や悪化に大きく関与しています。緊張したときに手のひらに汗をかく経験は誰にでもありますが、多汗症の方はこの反応が過剰に起こります。
社会不安障害やパニック障害などの精神疾患を持つ方は、多汗症を併発することが多いとされています。また、多汗症そのものがストレスとなり、症状をさらに悪化させるという悪循環に陥ることもあります。
精神的要因による多汗症は、遺伝的な素因がなくても発症する可能性があります。ただし、遺伝的に交感神経が過敏な体質の人は、精神的ストレスによって多汗症を発症しやすいとも考えられます。
🦠 基礎疾患による続発性多汗症
続発性多汗症は、他の病気や状態が原因で起こる多汗症です。以下のような基礎疾患が原因となることがあります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、甲状腺ホルモンの過剰分泌により代謝が亢進し、全身の発汗が増加します。糖尿病では、低血糖時に発汗が増加することがあります。また、糖尿病性神経障害により発汗異常が起こることもあります。
感染症に伴う発熱でも発汗が増加します。結核やHIV感染症などでは、特に夜間の発汗(盗汗)が特徴的です。悪性腫瘍、特にリンパ腫や白血病などの血液がんでも、全身の発汗が増加することがあります。
更年期障害では、エストロゲンの減少により自律神経のバランスが乱れ、ホットフラッシュとともに発汗が増加します。これらの続発性多汗症は、原因となる疾患の治療によって改善することが期待できます。
💊 薬剤性の多汗症
一部の薬剤は副作用として発汗を増加させることがあります。抗うつ薬(特にSSRIやSNRI)、解熱鎮痛薬、ホルモン剤、降圧薬の一部などが発汗増加の原因となることがあります。
また、アルコールや違法薬物の離脱症状として発汗が起こることもあります。薬剤性の多汗症が疑われる場合は、自己判断で服薬を中止せず、必ず医師に相談してください。
🏃♀️ 生活習慣の影響
遺伝的な素因がある場合でも、生活習慣によって症状の程度が変わることがあります。カフェインやアルコールの過剰摂取、辛い食べ物の摂取は発汗を増加させる傾向があります。
肥満も多汗症のリスク因子です。体脂肪が多いと体温調節のために発汗量が増加します。また、運動不足により自律神経のバランスが乱れ、発汗異常が起こることもあります。
睡眠不足や不規則な生活リズムも、自律神経のバランスを乱し、多汗症の症状を悪化させる可能性があります。
Q. 多汗症の遺伝が心配な場合、発症を予防できますか?
多汗症の遺伝子を持っていても、生活習慣の改善により発症を抑えられる可能性があります。具体的には、ストレスマネジメント・適度な運動・十分な睡眠で自律神経のバランスを整えること、カフェイン・アルコール・辛い食べ物の過剰摂取を避けることが有効です。遺伝的素因は発症リスクを高める要因の一つに過ぎません。
💡 多汗症の遺伝が心配な方へ|予防と早期対策
家族に多汗症の方がいる場合、ご自身やお子さんへの遺伝を心配される方も多いでしょう。ここでは、多汗症の予防と早期対策について解説します。
✨ 遺伝的素因があっても発症を抑えられる可能性
多汗症の遺伝子を持っていても、必ずしも発症するわけではありません。遺伝的素因は発症のリスクを高める要因ですが、環境要因や生活習慣によって発症を抑えられる可能性があります。
特に、ストレスマネジメントは重要です。適度な運動、十分な睡眠、リラクゼーション法の習得などにより、自律神経のバランスを整えることで、発症リスクを下げられる可能性があります。
また、カフェインやアルコールの過剰摂取を避ける、辛い食べ物を控えるなどの食生活の改善も、発汗を抑える効果が期待できます。
🧒 子どもの多汗症の早期発見と対応
親が多汗症の場合、子どもにも発症する可能性があるため、早期発見が重要です。子どもが「手が湿っている」「汗で紙が濡れる」「運動していないのに汗をかく」などの症状を訴えた場合は、多汗症の可能性を考慮しましょう。
子どもの多汗症は、学校生活や友人関係に影響を与えることがあります。手汗で教科書が濡れる、楽器が滑る、握手やダンスで恥ずかしい思いをするなど、学業や社会性の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
症状が気になる場合は、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。多汗症の診療については「多汗症は病院の何科を受診すべき?症状別の診療科と治療法を詳しく解説」で詳しく解説しています。
📌 生活習慣の改善で症状を軽減
遺伝的な素因があっても、生活習慣の改善により症状を軽減できることがあります。以下のポイントを意識してみてください。
規則正しい生活リズムを心がけ、十分な睡眠をとることが大切です。睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、発汗異常を悪化させます。1日7〜8時間の睡眠を目標にしましょう。
適度な運動も効果的です。運動により自律神経のバランスが整い、発汗機能が正常化することが期待できます。ただし、激しい運動は逆効果になることもあるため、ウォーキングやヨガなどの軽い運動から始めることをお勧めします。
ストレスマネジメントも重要です。深呼吸、瞑想、趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。必要に応じて、カウンセリングを受けることも有効です。
食生活では、カフェインや辛い食べ物、アルコールの過剰摂取を避けることが推奨されます。これらは交感神経を刺激し、発汗を促進する作用があります。
Q. 遺伝性の多汗症にはどんな治療法がありますか?
遺伝的要因による多汗症でも、適切な治療で症状の大幅な改善が可能です。治療法には、塩化アルミニウム液やエクロックゲルなどの外用薬、ボトックス注射(腋窩は保険適用)、イオントフォレーシス、マイクロ波で汗腺を破壊するミラドライ、重度の場合は交感神経遮断術などがあり、症状の部位や程度に応じて最適な方法を選択できます。
💊 多汗症の治療法|遺伝的な体質でも改善できる
遺伝的な要因による多汗症であっても、適切な治療により症状を改善することが可能です。ここでは、多汗症の主な治療法について解説します。
🧴 外用薬による治療
多汗症の治療の第一選択肢として、外用薬があります。塩化アルミニウム液は、汗腺の出口を塞ぐことで発汗を抑制する効果があります。市販薬として入手可能なものもあり、手軽に始められる治療法です。
塩化アルミニウム液は、就寝前に乾燥した患部に塗布し、翌朝洗い流すのが一般的な使用方法です。効果が現れるまでに数日から数週間かかることがありますが、軽度から中等度の多汗症には効果が期待できます。
2020年には、日本で初めての保険適用の多汗症治療外用薬「エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)」が発売されました。この薬は抗コリン作用により発汗を抑制します。保険適用の治療について詳しくは「多汗症の治療は保険適用される?適用条件と治療法を専門医が解説」をご覧ください。
💉 ボトックス注射による治療
ボトックス(ボツリヌストキシン)注射は、中等度から重度の多汗症に対して効果的な治療法です。ボトックスは神経と汗腺の間の信号伝達を阻害することで、発汗を抑制します。
ボトックス注射は、腋窩多汗症に対して保険適用となっています。1回の治療で4〜6ヶ月程度効果が持続するため、年に2〜3回の治療が必要です。手掌多汗症や足蹠多汗症にも効果がありますが、これらの部位は自費診療となります。
ボトックス注射の詳細については「多汗症にボトックスは効果ある?持続期間や治療の流れを医師が解説」で詳しく解説しています。
⚡ イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは、微弱な電流を流した水に手や足を浸すことで発汗を抑制する治療法です。電流が汗腺の活動を抑制するメカニズムにより効果を発揮します。
週に2〜3回の治療を数週間継続することで効果が現れ、その後は週1回程度の維持療法で効果を持続させることができます。家庭用の機器もあり、継続的なセルフケアが可能です。
イオントフォレーシスは、手掌多汗症や足蹠多汗症に特に効果的とされています。副作用が少なく、長期間安全に続けられる治療法です。
💊 内服薬による治療
多汗症の内服薬としては、抗コリン薬が使用されることがあります。プロバンサイン(プロパンテリン臭化物)は、保険適用のある多汗症治療薬で、全身の発汗を抑制する効果があります。
ただし、抗コリン薬には口渇、便秘、排尿困難、動悸などの副作用があるため、使用には注意が必要です。また、緑内障や前立腺肥大のある方には使用できません。
精神的な要因が強い場合は、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。これらの薬は、緊張や不安による発汗を軽減する効果が期待できます。
🔪 手術による治療
保存的治療で十分な効果が得られない重度の多汗症には、手術が選択肢となることがあります。代表的な手術法として、交感神経遮断術(ETS手術)があります。
ETS手術は、胸腔鏡を用いて交感神経を切断または焼灼する手術です。手掌多汗症に対して高い効果がありますが、代償性発汗(他の部位の発汗が増加する)という副作用が起こる可能性があります。
腋窩多汗症に対しては、汗腺を直接除去する皮弁法や、吸引法などの手術法もあります。手術療法の詳細については「多汗症の手術の種類とは?ETS手術やミラドライなど治療法を徹底解説」をご覧ください。
🌊 ミラドライによる治療
ミラドライは、マイクロ波を用いて汗腺を破壊する治療法です。切開を必要としないため、傷跡が残らず、ダウンタイムも比較的短いのが特徴です。
ミラドライは主に腋窩多汗症の治療に用いられ、1〜2回の治療で永続的な効果が期待できます。ワキガの治療としても効果があり、多汗症とワキガの両方に悩む方には特に適した治療法です。
ミラドライの効果や仕組みについては「ミラドライの仕組みと原理を徹底解説|わきが・多汗症治療の効果とメカニズム」で詳しく解説しています。また、効果の持続期間については「ミラドライの効果はいつから実感できる?持続期間と経過を医師が解説」をご参照ください。
🏥 多汗症の治療を検討している方へ
多汗症は遺伝的な要因が関与する疾患ですが、適切な治療により症状を大幅に改善することが可能です。遺伝だからと諦めずに、医療機関に相談することをお勧めします。
👨⚕️ 専門医への相談のすすめ
多汗症の治療は、症状の程度や発汗部位、患者さんのライフスタイルなどを考慮して、最適な治療法を選択することが重要です。皮膚科や形成外科などの専門医に相談することで、適切な診断と治療を受けることができます。
初診時には、いつから症状があるか、どの部位にどの程度の発汗があるか、日常生活への影響はどうか、家族に多汗症の方がいるかなどを詳しく伝えることが大切です。これらの情報は、適切な診断と治療方針の決定に役立ちます。
📝 治療法の選択肢を知ることの重要性
多汗症には複数の治療法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。外用薬から始めて効果が不十分な場合はボトックス注射、さらに効果を求める場合は手術やミラドライなど、段階的に治療を進めていくことが一般的です。
治療法を選択する際は、効果の程度や持続期間、副作用のリスク、費用、ダウンタイムなどを総合的に考慮することが大切です。医師と十分に相談し、自分に合った治療法を見つけましょう。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
💡 高桑康太医師(当院治療責任者)より
「当院を受診される多汗症の患者様のうち、約40%の方に家族歴があります。特に手掌多汗症の方は『親も同じ症状がある』とおっしゃるケースが多く、遺伝的な要因の影響を日々の診療で実感しています。最近では、10代から20代の若い患者様の受診が増加しており、ご両親に連れられて来院されるお子さんも少なくありません。遺伝的な体質だからと諦めずに治療を始めた結果、日常生活の質が大きく改善された患者様を数多く見てきました。多汗症でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。」
❓ よくある質問
いいえ、多汗症は必ずしも遺伝するわけではありません。親が多汗症の場合、子どもに遺伝する確率は約50%とされていますが、遺伝子を受け継いでも発症しないケースもあります。環境要因や生活習慣も発症に影響するため、家族に多汗症の方がいても必ず発症するとは限りません。
はい、両親に多汗症がなくても発症することはあります。祖父母や親戚に多汗症の方がいれば遺伝子を受け継いでいる可能性がありますし、新たな遺伝子変異(新生突然変異)によって発症することもあります。また、ストレスや基礎疾患などの環境要因によって発症する続発性多汗症の場合は、遺伝と関係なく発症します。
遺伝性の多汗症でも、適切な治療により症状を大幅に改善することが可能です。外用薬、ボトックス注射、イオントフォレーシス、ミラドライ、手術など様々な治療法があり、症状の程度や部位に応じて最適な治療を選択できます。遺伝的な体質は変えられませんが、発汗を抑制する治療により日常生活の質を向上させることができます。
多汗症の治療は年齢によって選択できる治療法が異なります。塩化アルミニウム液などの外用薬は小児期から使用可能です。ボトックス注射は一般的に成人以降に行われることが多いですが、症状が重度の場合は医師の判断で早期に行うこともあります。まずは皮膚科を受診して、お子さんの年齢と症状に合った治療法を相談することをお勧めします。
多汗症とワキガは異なる疾患であり、遺伝のパターンにも違いがあります。ワキガの遺伝確率は親の片方がワキガの場合で約50〜80%、両親ともにワキガの場合で約80〜95%と、多汗症より高い傾向があります。これはワキガの原因であるアポクリン汗腺の数や大きさが遺伝によって強く決まるためです。一方、多汗症はエクリン汗腺の活動に関わるため、遺伝の影響はワキガほど強くありません。
📚 参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務