手のひらや脇の下に大量の汗をかく多汗症は、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことがあります。制汗剤や内服薬などの保存的治療で十分な効果が得られない場合、ETS手術(胸腔鏡下交感神経節遮断術)が治療の選択肢として検討されることがあります。ETS手術は手掌多汗症に対して高い効果が期待できる治療法ですが、代償性発汗をはじめとするさまざまなリスクを伴います。手術を検討される方は、事前にリスクと効果について十分に理解し、慎重に判断することが重要です。本記事では、アイシークリニック大宮院の視点から、ETS手術のリスクや副作用、合併症について詳しく解説いたします。
📋 目次
- 🎯 ETS手術とは?多汗症治療における位置づけ
- ⚠️ ETS手術の最大のリスク「代償性発汗」とは
- 📍 代償性発汗の発生部位と症状の程度
- 🩺 ETS手術に伴うその他の副作用・合併症
- 👁️ ホルネル症候群のリスクと症状
- 👅 味覚性発汗(フレイ症候群)について
- 🔄 ETS手術の効果が得られない・再発するケース
- ✅ ETS手術を受ける前に確認すべきポイント
- 🌟 ETS手術以外の多汗症治療の選択肢
- 🏥 多汗症治療の選び方と専門医への相談
この記事のポイント
ETS手術は手掌多汗症に高い効果があるが、70〜90%以上の確率で代償性発汗が発生し、永続的に続く可能性がある。アイシークリニックでは、まずボトックス注射やミラドライなど可逆的な治療法を優先的に検討することを推奨している。
🎯 ETS手術とは?多汗症治療における位置づけ
この章では、ETS手術の基本的な仕組みと多汗症治療における位置づけについて解説します。
ETS手術は、Endoscopic Thoracic Sympathectomyの略称で、日本語では「胸腔鏡下交感神経節遮断術」と呼ばれます。この手術は、胸部にある交感神経節を切断または焼灼することで、手のひらや脇の下、顔面などの発汗を抑える治療法です。
🔸 ETS手術の仕組み
人間の発汗は自律神経の一つである交感神経によってコントロールされています。多汗症の方は、この交感神経が過剰に興奮することで大量の汗をかいてしまいます。ETS手術では、胸部の肋骨の間から細い内視鏡を挿入し、背骨の両側を通る交感神経幹の特定の部位を遮断します。これにより、脳からの発汗命令が手や脇などの末端に伝わらなくなり、発汗が抑制されるという仕組みです。
🔸 ETS手術の適応となる多汗症
ETS手術は主に以下の多汗症に対して行われます。手掌多汗症(手のひらの多汗症)に対しては最も効果が高く、術後の満足度も比較的高いとされています。また、腋窩多汗症(脇の多汗症)や顔面多汗症に対しても行われることがありますが、代償性発汗のリスクとのバランスを考慮する必要があります。多汗症の手術の種類については「多汗症の手術の種類とは?ETS手術やミラドライなど治療法を徹底解説」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
🔸 手術の流れと入院期間
ETS手術は通常、全身麻酔下で行われます。手術時間は両側で約1〜2時間程度です。胸に5mm〜1cm程度の小さな傷を2〜3箇所つけ、そこから内視鏡と手術器具を挿入して神経を処置します。入院期間は施設によって異なりますが、通常2〜4日程度です。術後は胸腔ドレーンを留置することがあり、肺の状態を確認してから退院となります。
Q. ETS手術後に代償性発汗が起こる確率はどのくらいですか?
ETS手術後の代償性発汗の発生率は70〜90%以上と非常に高く、約30〜40%の患者では日常生活に影響するレベルの症状が報告されています。一度発生すると完全に治ることは難しく、多くの場合は永続的に続くため、手術前に十分なリスク理解が必要です。
⚠️ ETS手術の最大のリスク「代償性発汗」とは
ETS手術を検討する際に最も重要なリスクとして知っておくべきなのが「代償性発汗」です。
代償性発汗とは、手術によって手のひらなどの発汗が止まる代わりに、体の他の部位から大量の汗が出るようになる現象です。このリスクは非常に高い確率で発生し、手術を受けた方の多くが経験すると報告されています。
🔸 代償性発汗が起こるメカニズム
代償性発汗のメカニズムは完全には解明されていませんが、以下のような説が考えられています。人間の体には体温調節機能があり、一定量の汗をかくことで体温を維持しています。ETS手術で特定部位からの発汗を止めると、体は他の部位から汗を出して体温調節を行おうとします。また、交感神経のバランスが崩れることで、手術で遮断されなかった部位の発汗が増加するとも考えられています。
🔸 代償性発汗の発生率
代償性発汗の発生率は非常に高く、研究によって数値は異なりますが、概ね70〜90%以上の患者さんに何らかの代償性発汗が生じるとされています。軽度のものから重度のものまでさまざまですが、約30〜40%の患者さんでは日常生活に影響を及ぼすレベルの代償性発汗が見られるという報告もあります。一部の患者さんでは、手術前の手汗よりも代償性発汗の方がつらいと感じるケースもあり、これが手術の後悔につながることがあります。
🔸 代償性発汗は治るのか
残念ながら、代償性発汗は一度発生すると完全に治ることは難しいとされています。時間の経過とともに多少軽減することはありますが、多くの場合は永続的に続きます。代償性発汗を軽減するための再手術や神経再建術なども試みられていますが、確実な効果は保証されていません。そのため、ETS手術を受ける前に、代償性発汗のリスクを十分に理解し、受け入れられるかどうかを慎重に検討することが極めて重要です。
📍 代償性発汗の発生部位と症状の程度
代償性発汗は体のさまざまな部位に発生しますが、特に発生しやすい部位があります。また、その症状の程度も人によって大きく異なります。
🔸 代償性発汗が起こりやすい部位
代償性発汗が最も多く見られる部位は、背中、胸、腹部、太もも、臀部などの体幹部です。特に背中と太ももは高頻度で発汗が増加する部位として報告されています。足の裏に代償性発汗が出ることもあり、もともと足の多汗症がなかった方でも足裏の汗が増えることがあります。また、鼠径部(股の付け根)や膝の裏なども発汗が増加しやすい部位です。これらの部位は手のひらや脇と異なり、衣服で覆われているため、汗染みや蒸れによる不快感が問題となることがあります。
🔸 代償性発汗の症状の程度
代償性発汗の程度は、軽度から重度までさまざまです。
📌 軽度の場合:以前より少し汗をかきやすくなった程度で、日常生活にはほとんど影響がありません
📌 中等度の場合:暑い日や運動時に明らかに汗が増え、着替えが必要になることがあります
📌 重度の場合:少し動いただけでも大量の汗をかき、衣服がびしょびしょになるほどの発汗が見られます
重度の代償性発汗は、手術前の手汗よりも生活の質を大きく低下させることがあり、これが手術を後悔する最大の原因となっています。
🔸 代償性発汗のきっかけ
代償性発汗は、さまざまな状況で誘発されます。
✅ 気温や湿度が高い環境
✅ 運動や身体活動
✅ 緊張やストレス
✅ 辛い食べ物の摂取
✅ 入浴後
特に夏場は代償性発汗が顕著になりやすく、患者さんの中には夏を憂鬱に感じる方もいらっしゃいます。また、仕事中のプレゼンテーションや人前に出る場面で発汗が増加することもあり、手術前とは異なる形でのQOL低下を感じることがあります。

Q. ETS手術でホルネル症候群が起こるとどうなりますか?
ホルネル症候群はETS手術の合併症で、発生率は0.5〜2%程度です。眼瞼下垂(まぶたの下がり)、縮瞳(瞳孔が小さくなる)、顔面の発汗減少の3症状が現れ、顔の左右非対称を引き起こします。永続的に残る場合もあり、確立された外科的治療法がないため注意が必要です。
🩺 ETS手術に伴うその他の副作用・合併症
代償性発汗以外にも、ETS手術にはさまざまな副作用や合併症のリスクがあります。手術を検討する際には、これらについても十分に理解しておく必要があります。
🔸 術後の痛み
ETS手術後は、胸部に痛みを感じることがあります。傷口の痛みは通常1〜2週間程度で軽減しますが、肋間神経痛のような痛みが数週間から数ヶ月続くことがあります。また、手術中に肺を一時的に虚脱させるため、術後に胸の違和感や軽い呼吸困難感を感じることもあります。これらの症状は時間の経過とともに改善することがほとんどですが、まれに長期間続くこともあります。
🔸 気胸
ETS手術では胸腔内に内視鏡を挿入するため、気胸(肺に穴が開いて空気が胸腔内に漏れる状態)のリスクがあります。通常は手術終了時に胸腔ドレーンを挿入して空気を排出し、肺を膨らませた状態で抜去しますが、術後に気胸が発生することもあります。軽度の気胸は安静にしていれば自然に吸収されますが、重度の場合は再度ドレーンを挿入して治療する必要があります。
🔸 血胸・出血
手術中に血管を傷つけると、胸腔内に出血が起こる血胸のリスクがあります。内視鏡手術は視野が限られるため、予期せぬ出血が起こる可能性があります。大量出血の場合は、内視鏡手術から開胸手術への切り替えが必要になることもあります。ただし、熟練した術者による手術では、このようなリスクは比較的低いとされています。
🔸 感染症
あらゆる手術と同様に、ETS手術でも術後感染のリスクがあります。傷口の感染や、まれに胸腔内の感染(膿胸)が起こることがあります。感染予防のために術前・術後に抗生物質が投与されますが、完全にリスクを排除することはできません。発熱や傷口の赤み・腫れ・膿などの症状が見られた場合は、速やかに医師に相談することが重要です。
🔸 神経損傷
手術中に目的以外の神経を傷つけてしまうリスクがあります。特に腕神経叢(腕に向かう神経の束)が近くにあるため、これを損傷すると腕のしびれや筋力低下が生じる可能性があります。また、肋間神経を傷つけると、長期間にわたる胸の痛みやしびれが残ることがあります。
👁️ ホルネル症候群のリスクと症状
ETS手術の重要な合併症の一つに、ホルネル症候群があります。この合併症は頻度は高くないものの、発生すると永続的な症状が残る可能性があるため、十分な注意が必要です。
🔸 ホルネル症候群とは
ホルネル症候群は、頸部や胸部の交感神経が障害されることで生じる症候群です。ETS手術では、目的とする交感神経節の近くに、眼や顔面を支配する交感神経が走っているため、誤ってこれらを損傷するとホルネル症候群が発生します。特に第1胸椎(T1)レベルでの操作はリスクが高いとされています。
🔸 ホルネル症候群の症状
ホルネル症候群の典型的な3つの症状は、眼瞼下垂(まぶたの下がり)、縮瞳(瞳孔が小さくなる)、発汗減少(顔面の汗が減る)です。患側の目が細く見えたり、左右の瞳孔の大きさに差が出たりします。これらの症状は顔面の非対称性をもたらし、外見上の問題となることがあります。また、暗い場所での見えにくさを感じることもあります。
🔸 ホルネル症候群の発生率と予後
ホルネル症候群の発生率は、報告によって異なりますが、概ね0.5〜2%程度とされています。一時的なものであれば数週間から数ヶ月で回復することもありますが、永続的に残る場合もあります。一度発生すると完全な回復は難しいことが多く、外科的な治療法も確立されていません。そのため、ETS手術を行う施設では、ホルネル症候群のリスクを最小限にするための技術的な工夫が行われています。
Q. ETS手術を受ける前に試すべき治療法は何ですか?
ETS手術は不可逆的な治療のため、まず外用制汗剤(塩化アルミニウム製剤)、ボトックス注射、イオントフォレーシス、抗コリン薬などの保存的治療を試すことが推奨されます。アイシークリニックでも、代償性発汗リスクのない可逆的な治療を優先的に検討することをお勧めしています。
👅 味覚性発汗(フレイ症候群)について
ETS手術後に見られるもう一つの特徴的な副作用に、味覚性発汗があります。これは食事の際に特定の食べ物を摂取すると発汗が誘発される現象です。
🔸 味覚性発汗の症状
味覚性発汗は、食事中や食後に顔面や首、胸などに発汗が生じる症状です。特に辛い食べ物、酸っぱい食べ物、チーズなどの発酵食品を食べた時に発生しやすいとされています。顔が赤くなったり、汗をかいたりすることで、食事の場面で恥ずかしさを感じる方もいらっしゃいます。
🔸 味覚性発汗のメカニズム
味覚性発汗が起こるメカニズムは完全には解明されていませんが、交感神経を遮断したことによる神経伝達の乱れが関係していると考えられています。通常、食事による唾液分泌と発汗は異なる神経経路で制御されていますが、ETS手術後にこれらの経路に異常な連絡が生じることで、食事の刺激が発汗につながってしまう可能性があります。
🔸 味覚性発汗の対処法
味覚性発汗を完全に治す方法は確立されていませんが、いくつかの対処法があります。
📌 発汗を誘発しやすい食べ物を避けることで症状を軽減できます
📌 抗コリン薬の外用や内服が効果を示すこともあります
📌 ボトックス注射が味覚性発汗に対して効果があるという報告もありますが、効果は一時的であり、定期的な治療が必要となります
🔄 ETS手術の効果が得られない・再発するケース
ETS手術は手掌多汗症に対して高い効果が期待できる治療法ですが、すべての患者さんで期待通りの効果が得られるわけではありません。また、一度効果が得られても、時間の経過とともに再発することがあります。
🔸 効果が不十分なケース
ETS手術後も発汗が完全に止まらない、または期待していたほど発汗が減少しないケースがあります。これは、交感神経の解剖学的なバリエーション(個人差)や、神経の遮断が不完全であったことが原因として考えられます。また、交感神経幹以外の経路で発汗が制御されている場合、手術の効果が限定的となることがあります。
🔸 再発のリスク
ETS手術後、最初は効果があっても、数ヶ月から数年後に発汗が再発することがあります。再発率は研究によって異なりますが、5〜10%程度とされています。再発の原因としては、切断した神経の再生、副交感神経路による代償、残存した神経の活性化などが考えられています。再発した場合、再手術が検討されることもありますが、初回手術よりも効果が低く、合併症のリスクも高まる傾向があります。
🔸 再手術のリスク
再発や効果不十分の場合に再手術が検討されることがありますが、再手術は初回手術よりもリスクが高くなります。前回の手術による癒着があるため、視野が悪くなり、神経や血管を傷つけるリスクが増加します。また、代償性発汗がさらに悪化する可能性もあります。再手術を行うかどうかは、リスクとベネフィットを慎重に検討した上で判断する必要があります。
Q. ETS手術後に発汗が再発することはありますか?
ETS手術後の発汗再発率は5〜10%程度とされています。切断した神経の再生や副交感神経路による代償が主な原因です。再発時に再手術を行う場合、前回手術による癒着で視野が悪化し、神経・血管損傷リスクが高まるうえ、代償性発汗がさらに悪化する可能性もあります。
✅ ETS手術を受ける前に確認すべきポイント
ETS手術を検討している方は、手術を受ける前にいくつかの重要なポイントを確認することをお勧めします。十分な情報収集と検討を行った上で、慎重に判断してください。
🔸 代償性発汗を受け入れられるか
⚠️ 最重要チェックポイント!
代償性発汗は高確率で発生し、一度発生すると元に戻すことは困難です。手のひらの汗が止まる代わりに、背中や太ももなどから大量の汗をかくようになる可能性があることを十分に理解し、それでも手術を受けたいかどうかを慎重に検討してください。代償性発汗によって、手術前よりもQOLが低下する可能性があることも念頭に置く必要があります。
🔸 他の治療法を試したか
ETS手術は不可逆的な治療であるため、手術を受ける前に他の治療法を十分に試すことをお勧めします。外用制汗剤、内服薬、ボトックス注射、イオントフォレーシスなどの保存的治療で効果が得られる可能性もあります。多汗症の治療法については「多汗症の治療は保険適用される?適用条件と治療法を専門医が解説」でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
🔸 十分な説明を受けたか
手術を受ける施設で、リスクや合併症について十分な説明を受けることが重要です。代償性発汗の発生率や程度、ホルネル症候群のリスク、再発の可能性などについて、具体的な数値とともに説明を受けてください。また、疑問点があれば遠慮なく質問し、納得した上で手術に臨むことが大切です。
🔸 セカンドオピニオンの検討
ETS手術は不可逆的な治療であるため、一つの施設の意見だけでなく、複数の専門家の意見を聞くことをお勧めします。特に代償性発汗のリスクや、他の治療選択肢について、異なる視点からのアドバイスを得ることで、より適切な判断ができるようになります。
🌟 ETS手術以外の多汗症治療の選択肢
ETS手術のリスクを考慮すると、まずは他の治療法を検討することが推奨されます。多汗症にはさまざまな治療選択肢があり、それぞれの特徴を理解した上で、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
🔸 外用制汗剤
塩化アルミニウム製剤などの外用制汗剤は、多汗症治療の第一選択として広く用いられています。汗腺の出口を物理的に塞ぐことで発汗を抑制します。軽度から中等度の多汗症では効果が期待でき、副作用も皮膚のかぶれ程度で比較的安全です。市販薬も処方薬もあり、手軽に始められる治療法です。
🔸 ボトックス注射
ボトックス(ボツリヌス毒素)を発汗部位に注射することで、神経から汗腺への信号伝達を一時的にブロックし、発汗を抑制します。脇や手のひら、足裏などの多汗症に効果があり、効果は通常4〜6ヶ月程度持続します。ETS手術と異なり可逆的な治療であるため、効果や副作用を確認しながら継続するかどうかを判断できます。ボトックス治療については「多汗症にボトックスは効果ある?持続期間や治療の流れを医師が解説」で詳しく解説しています。
🔸 イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは、水に浸した手のひらや足裏に微弱な電流を流す治療法です。電流によって汗腺の機能が一時的に低下し、発汗が抑制されます。1回の治療は20〜30分程度で、週に2〜3回の治療を継続することで効果が得られます。家庭用の機器もあり、自宅で継続的に治療を行うことができます。
🔸 内服薬
抗コリン薬などの内服薬は、全身の発汗を抑制する効果があります。プロバンサイン(臭化プロパンテリン)やオキシブチニンなどが使用されますが、口渇、便秘、眼の乾燥などの副作用があります。また、全身に作用するため、局所的な治療と比較して副作用が出やすい傾向があります。多汗症の原因がストレスによる場合は「多汗症の原因はストレス?自律神経との関係や対処法を医師が解説」もあわせてご参照ください。
🔸 ミラドライ
💡 注目の治療法!
ミラドライはマイクロ波を使用して汗腺を破壊する治療法で、主に脇の多汗症・わきがに対して行われます。皮膚を切開せずに汗腺を破壊できるため、ETS手術と比較して侵襲性が低く、代償性発汗のリスクもありません。効果は永続的とされていますが、1回の治療で完全な効果が得られない場合は追加治療が必要なこともあります。
ミラドライについては「ミラドライの仕組みと原理を徹底解説|わきが・多汗症治療の効果とメカニズム」で詳しく解説しています。
🏥 多汗症治療の選び方と専門医への相談
多汗症の治療法を選ぶ際には、自分の症状の程度や部位、生活スタイル、治療に対する希望などを考慮することが重要です。ETS手術は最後の手段として位置づけ、まずは低侵襲な治療から始めることをお勧めします。
🔸 治療法選択のステップ
多汗症の治療は、一般的に以下のようなステップで進めることが推奨されています。
⚡ 第1段階:外用制汗剤による治療を試みます
⚡ 第2段階:効果が不十分な場合は、ボトックス注射やイオントフォレーシスなどの治療を検討します
⚡ 第3段階:これらの治療でも効果が得られない、または効果が持続しない場合に、手術的治療を検討するという流れです
多汗症でどこの科を受診すべきか迷う場合は「多汗症は病院の何科を受診すべき?症状別の診療科と治療法を詳しく解説」をご覧ください。
🔸 専門医への相談の重要性
多汗症の治療、特にETS手術を検討している場合は、必ず専門医に相談することをお勧めします。多汗症を専門的に診療している医師は、さまざまな治療選択肢についての知識を持っており、患者さんの状態に合わせた最適な治療法を提案してくれます。また、ETS手術のリスクについても詳しく説明してもらえるため、十分な情報を得た上で判断することができます。
🔸 治療選択における心理的サポート
多汗症は身体的な症状だけでなく、精神的な苦痛を伴うことも多い疾患です。汗を気にするあまり、人前に出ることを避けたり、社会生活に支障をきたしたりすることもあります。治療法を選択する際には、このような心理的な側面も考慮することが大切です。必要に応じて、心療内科やカウンセリングなどの心理的サポートを受けることも検討してください。多汗症の症状について不安がある方は「多汗症のセルフチェック方法|症状の見分け方と受診の目安を解説」でセルフチェックを行うこともできます。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太医師(当院治療責任者)より
「当院には多汗症でお悩みの患者様が多くいらっしゃいますが、ETS手術についてのご相談も少なくありません。特に『他院でETS手術を勧められたが、代償性発汗が心配』という方や、『すでにETS手術を受けて代償性発汗に悩んでいる』という方からのご相談が増えている印象です。ETS手術は確かに手掌多汗症に対して高い効果がありますが、代償性発汗は非常に高い確率で発生し、元に戻すことが困難です。当院では、まずボトックス注射やミラドライなど、可逆的で代償性発汗のリスクがない治療から検討することをお勧めしています。治療法の選択に迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。」
❓ よくある質問
代償性発汗の発生率は70〜90%以上と非常に高いですが、全員に起こるわけではありません。ただし、程度の差はあれ、多くの患者さんが何らかの代償性発汗を経験します。軽度であれば日常生活にほとんど影響がありませんが、重度の場合は手術前よりもQOLが低下することがあるため、手術を検討する際は十分にリスクを理解した上で判断することが重要です。
残念ながら、一度発生した代償性発汗を完全に治すことは困難です。時間の経過とともに多少軽減することはありますが、多くの場合は永続的に続きます。代償性発汗を軽減するための神経再建術なども試みられていますが、確実な効果は保証されていません。代償性発汗に対する対症療法として、発汗部位へのボトックス注射や制汗剤の使用などが行われることもあります。
ETS手術は、原発性手掌多汗症に対して保険適用となる場合があります。ただし、すべての医療機関で保険適用として行われているわけではなく、自由診療として行っている施設もあります。手術を検討する際は、事前に保険適用の可否や費用について医療機関に確認することをお勧めします。また、術前検査や入院費用なども含めた総額を確認しておくと安心です。
ETS手術後の入院期間は通常2〜4日程度で、退院後は1〜2週間程度で日常生活に復帰できることが多いです。傷口の痛みは1〜2週間で軽減し、激しい運動や重いものを持つことは2〜4週間程度控える必要があります。ただし、肋間神経痛のような胸の痛みが数週間から数ヶ月続くことがあり、個人差があります。仕事復帰の時期は職種によって異なるため、医師と相談してください。
手のひらの多汗症に対しては、ETS手術以外にもいくつかの治療選択肢があります。外用制汗剤(塩化アルミニウム製剤)、ボトックス注射、イオントフォレーシス、内服薬(抗コリン薬)などが代表的です。これらの治療はETS手術と異なり可逆的であり、代償性発汗のリスクがないため、まずはこれらの治療を試すことをお勧めします。効果や持続期間は治療法によって異なりますので、専門医に相談してください。
📚 参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務