はじめに
ワキガ(腋臭症)は、脇の下から特有の臭いを発する症状で、多くの方が悩みを抱えています。制汗剤やデオドラント製品では改善が難しい場合、手術による根本的な治療を検討される方も少なくありません。しかし、手術を考える際に最も気になるのが「ダウンタイム」ではないでしょうか。
ダウンタイムとは、手術後から日常生活に戻るまでの回復期間のことを指します。この期間の長さや過ごし方は、手術方法によって大きく異なり、仕事や学校、プライベートの予定にも影響を与えます。
本記事では、アイシークリニック大宮院の視点から、ワキガ手術の各種類におけるダウンタイムの詳細、回復までの経過、注意点、そしてダウンタイムを快適に過ごすためのアドバイスまで、包括的に解説していきます。
ワキガ(腋臭症)とは
ワキガは医学的には「腋臭症」と呼ばれ、脇の下に存在するアポクリン汗腺から分泌される汗が、皮膚の常在菌によって分解されることで特有の臭いを発する状態です。
ワキガの原因
ワキガの主な原因は以下の通りです:
人間の汗腺には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2種類があります。エクリン汗腺は全身に分布し、主に体温調節のための水分を多く含む汗を分泌します。一方、アポクリン汗腺は脇の下、乳輪、陰部などの特定部位に存在し、タンパク質や脂質を多く含む粘り気のある汗を分泌します。
アポクリン汗腺から分泌される汗自体は無臭ですが、皮膚表面の常在菌(コリネバクテリウム属など)がこの汗に含まれる成分を分解することで、特有の臭いが発生します。ワキガ体質の方は、このアポクリン汗腺の数が多かったり、活動が活発であったりすることが特徴です。
ワキガの遺伝性
ワキガには強い遺伝性があることが知られています。両親のどちらかがワキガ体質の場合、約50%の確率で子どもに遺伝するとされています。両親ともにワキガ体質の場合は、その確率は約80%まで上昇します。これは、アポクリン汗腺の数や活動性に関与する遺伝子が関係しているためです。
保存的治療の限界
軽度のワキガであれば、制汗剤やデオドラント製品、こまめな清潔保持などの保存的治療で対応できる場合もあります。しかし、中等度から重度のワキガの場合、これらの方法では十分な効果が得られないことがあります。また、ボトックス注射などの注射治療は一時的な効果しか得られず、数か月ごとに繰り返す必要があります。
このような場合、根本的な解決を目指して手術による治療を選択することになります。
ワキガ手術の種類とダウンタイムの概要
ワキガ手術には複数の方法があり、それぞれ効果の程度、傷跡の大きさ、そしてダウンタイムが異なります。ここでは主な手術方法とダウンタイムの特徴を概観します。
剪除法(せんじょほう)
剪除法は、脇の下の皮膚を3~5センチ程度切開し、皮膚を裏返してアポクリン汗腺を医師が直接目で確認しながら除去する方法です。別名「皮弁法」とも呼ばれます。
ダウンタイムの特徴:
- 期間:約2~4週間
- 特徴:最も効果が高い反面、ダウンタイムは最も長い
- 傷跡:切開による線状の傷跡が残る
- 固定期間:術後3~5日間は脇を固定する必要がある
剪除法は保険適用が可能な手術方法であり、効果の確実性が高いことから、重度のワキガの方に推奨される治療法です。
マイクロリムーブ法(吸引法)
マイクロリムーブ法は、脇の下に小さな穴(5~10ミリ程度)を開け、そこから細い管を挿入してアポクリン汗腺を吸引除去する方法です。
ダウンタイムの特徴:
- 期間:約1~2週間
- 特徴:傷跡が小さく、比較的ダウンタイムが短い
- 傷跡:小さな穴の跡のみ
- 固定期間:術後1~3日間程度
剪除法に比べて傷跡が小さく、ダウンタイムも短いため、仕事や学校を長期間休めない方に選ばれることがあります。ただし、剪除法に比べるとアポクリン汗腺の除去率はやや劣ります。
ミラドライ(非切開治療)
ミラドライは、マイクロ波を利用してアポクリン汗腺とエクリン汗腺を破壊する非切開の治療法です。
ダウンタイムの特徴:
- 期間:約3~7日間
- 特徴:切開しないため、ダウンタイムが最も短い
- 傷跡:切開による傷跡は残らない
- 固定期間:固定の必要なし
メスを使わない治療法のため、手術に抵抗がある方や、ダウンタイムを最小限に抑えたい方に人気があります。ただし、保険適用外の自由診療となります。
ボトックス注射
厳密には手術ではありませんが、ワキガ治療の選択肢として挙げられます。ボツリヌス毒素を注射することで、汗腺の活動を一時的に抑制します。
ダウンタイムの特徴:
- 期間:ほぼなし(当日から通常生活可能)
- 特徴:効果は約3~6か月間で、繰り返しの治療が必要
- 傷跡:注射痕が数日残る程度
ダウンタイムはほとんどありませんが、効果が一時的であることと、根本的な治療ではない点に注意が必要です。
剪除法のダウンタイム詳細
剪除法は最も確実性の高いワキガ手術ですが、その分ダウンタイムも長くなります。ここでは、剪除法のダウンタイムについて時系列で詳しく解説します。
手術当日
手術は局所麻酔または全身麻酔で行われ、片側で約30~60分、両側で1~2時間程度かかります。手術後は以下のような状態になります:
麻酔が切れると、患部に痛みや違和感を感じます。ただし、処方される鎮痛剤で多くの場合コントロール可能です。脇の下にはガーゼと弾性包帯で圧迫固定が施され、腕を動かすことに制限がかかります。
手術当日は、可能であれば安静に過ごすことが推奨されます。入浴は禁止で、シャワーも避けるべきです。多くのクリニックでは、手術後1~2時間程度の安静時間を設けた後、問題がなければ帰宅可能です。
術後1~3日目(固定期間)
この期間は脇の固定が必要な最も重要な時期です:
脇の下は圧迫固定されたままで、腕を上げる動作や脇を広げる動作は避けなければなりません。多くの場合、脇を開かないように腕を体に密着させた状態を保つよう指示されます。日常生活では、腕を体から離さないよう注意しながら、できるだけ安静に過ごします。
痛みは徐々に軽減していきますが、動作時には痛みを感じることがあります。処方された鎮痛剤を適切に服用しながら過ごします。入浴は引き続き禁止で、固定部分を濡らさないよう注意しながら、首から下のシャワーのみ可能となる場合もあります。
この期間中、デスクワークであれば可能な場合もありますが、腕を使う作業や体を動かす仕事は困難です。
術後4~7日目(固定除去後)
多くの場合、術後3~5日目に固定が外されます:
固定が外れると、腕の動きの制限が緩和されますが、まだ完全に自由に動かせるわけではありません。患部には腫れや内出血(青あざ)が見られることが多く、触れると痛みを感じます。
この時期から、患部を濡らさないように注意しながら、慎重に全身のシャワーが可能になります。ただし、湯船に浸かることはまだ避けるべきです。洗髪も可能ですが、腕を高く上げる動作は避け、前かがみの姿勢で行うなど工夫が必要です。
軽いデスクワークや家事は徐々に再開できますが、重い物を持ったり、腕を大きく動かしたりする動作は避けます。
術後1~2週間
この頃には日常生活の多くの動作が可能になってきます:
痛みは大幅に軽減し、鎮痛剤が不要になる方も増えてきます。腫れや内出血も徐々に引いていきますが、完全には消えていません。術後約1週間~10日目頃に抜糸が行われることが一般的です。
抜糸後は、創部の清潔を保ちながら、通常の入浴(湯船に浸かること)も可能になります。ただし、長時間の入浴や高温のお湯は避け、創部を強くこすらないよう注意が必要です。
この時期には、通常の日常生活や軽いデスクワークは問題なく行えるようになります。ただし、激しい運動や重労働はまだ避けるべきです。
術後2~4週間
徐々に通常の生活に戻っていく時期です:
痛みはほぼなくなり、腫れも目立たなくなってきます。傷跡は赤みを帯びた状態で、まだ目立ちますが、時間とともに薄くなっていきます。この時期から、徐々に運動を再開できますが、激しい運動や腕を大きく動かすスポーツは避けるべきです。
軽いジョギングやウォーキング、ストレッチなどから始め、徐々に運動強度を上げていきます。重い物を持つ作業も、少しずつ再開できますが、無理は禁物です。
術後1~3か月
ほぼ通常の生活が可能になる時期です:
創部の赤みは徐々に薄くなり、傷跡も目立ちにくくなっていきます。ただし、完全に傷跡が目立たなくなるには、さらに時間がかかります。激しい運動やスポーツも、担当医の許可があれば再開可能です。
術後6か月~1年
傷跡が最終的な状態に落ち着く時期です:
傷跡は白っぽく変化し、徐々に目立ちにくくなります。ただし、完全に消えることはなく、線状の傷跡として残ります。個人差はありますが、適切なケアを行うことで、傷跡を最小限に抑えることができます。
マイクロリムーブ法のダウンタイム詳細
マイクロリムーブ法は、剪除法に比べて低侵襲であるため、ダウンタイムが短いのが特徴です。
手術当日~術後3日目
マイクロリムーブ法では、小さな穴を開けるだけなので、剪除法ほどの圧迫固定は必要ありません:
術後は軽い圧迫固定が行われますが、剪除法ほど強固なものではありません。痛みも剪除法に比べて軽度で、日常生活への影響は少なめです。ただし、やはり腕を大きく動かす動作は避けるべきです。
手術当日の入浴は避けますが、翌日から固定部分を濡らさないように注意しながら、シャワーは可能な場合が多いです。
術後4日~1週間
この時期には、多くの制限が解除されます:
固定が外れ、通常の入浴が可能になります。痛みはほとんどなく、日常生活での動作に支障はありません。小さな傷跡もほぼ目立たなくなってきます。
デスクワークや軽い家事は問題なく行えます。ただし、激しい運動や重労働はまだ避けるべきです。
術後1~2週間
ほぼ通常の生活に戻れる時期です:
腫れや内出血がほぼ消失し、傷跡も非常に目立ちにくくなります。この時期から、軽い運動を再開できます。重い物を持つことも、徐々に可能になります。
術後2週間以降
通常の生活が完全に可能になります:
激しい運動やスポーツも、担当医の許可があれば再開可能です。傷跡はほとんど目立たず、時間とともにさらに薄くなっていきます。
ミラドライのダウンタイム詳細
ミラドライは非切開治療のため、ダウンタイムが最も短いのが特徴です。
治療当日
ミラドライは外来で行われ、治療時間は両脇で約60~90分程度です:
治療後は、脇の下に腫れや赤みが見られます。治療部位には冷却パックを当てて、炎症を抑えます。痛みは個人差がありますが、多くの場合、鎮痛剤でコントロール可能です。
治療当日の入浴は避けますが、治療部位を濡らさないように注意すれば、シャワーは可能な場合もあります。日常生活での動作に大きな制限はありませんが、腕を激しく動かすことは避けるべきです。
治療後1~3日目
この期間は腫れが最もピークになります:
脇の下が腫れて、ゴルフボール大程度の膨らみが見られることもあります。この腫れは自然に引いていきますが、不安になる方もいらっしゃいます。痛みは徐々に軽減していきますが、動作時には違和感を感じることがあります。
入浴は治療後1~2日目から可能になりますが、患部を強くこすらないように注意が必要です。デスクワークや軽い家事は問題なく行えます。
治療後4~7日目
腫れが引き始め、日常生活への影響がほとんどなくなります:
腫れは徐々に引いていき、痛みもほぼなくなります。通常の入浴が可能で、日常生活での制限はほとんどありません。この時期から、軽い運動も再開できます。
治療後1~2週間
ほぼ通常の状態に戻ります:
腫れや赤みがほぼ消失し、見た目も通常に戻ります。激しい運動も可能になり、生活上の制限はなくなります。ミラドライの効果は、治療後2~3か月かけて徐々に現れてきます。
ダウンタイム中の具体的な注意点
ワキガ手術後のダウンタイム中には、いくつかの重要な注意点があります。これらを守ることで、順調な回復と良好な治療結果につながります。
患部の安静と固定
手術直後の固定期間は、治療成績を左右する最も重要な時期です:
剪除法では、脇の下の皮膚とその下の組織が密着して治癒する必要があります。そのため、術後数日間は脇をしっかりと固定し、腕を動かさないようにすることが極めて重要です。
固定期間中に腕を動かしすぎると、皮膚の下に血液やリンパ液が溜まる「血腫」や「漿液腫」が形成される可能性があります。これらが発生すると、治療期間が延びたり、感染のリスクが高まったりします。
具体的には、腕を肩より高く上げる動作、重い物を持つ動作、脇を大きく広げる動作などは避けるべきです。寝るときも、患側の腕を体に密着させた状態を保つよう心がけます。
入浴と清潔保持
適切な入浴方法と清潔保持は、感染予防に重要です:
手術当日から固定が外れるまでは、入浴を避けるのが基本です。体を清潔に保つためには、固定部分を濡らさないように注意しながら、首から下を濡れタオルで拭く程度にとどめます。
固定が外れた後も、抜糸までは湯船に浸かることは避け、シャワーのみにします。シャワーを浴びる際は、患部を強くこすったり、高温のお湯を直接当てたりしないよう注意が必要です。
抜糸後は通常の入浴が可能になりますが、創部を清潔に保つため、入浴後は清潔なタオルで優しく水分を拭き取ります。
感染予防
手術後の感染は、治療結果に大きな影響を与える合併症です:
処方された抗生物質は、指示通りに最後まで服用します。自己判断で服用を中止すると、感染リスクが高まります。患部に異常な赤み、腫れ、熱感、膿の排出、発熱などの症状が現れた場合は、すぐにクリニックに連絡する必要があります。
創部を不潔な手で触ったり、汚れた衣服が直接触れたりしないよう注意します。抜糸後も、創部が完全に閉鎖するまでは、清潔を保つことが重要です。
日常生活での工夫
ダウンタイム中の日常生活では、いくつかの工夫が必要です:
衣服は、前開きのゆったりしたものを選びます。頭からかぶるタイプの服は、着脱時に腕を大きく動かす必要があるため、避けるべきです。また、患部に直接触れる部分は、柔らかく清潔な素材のものを選びます。
睡眠時は、患側を上にして横向きに寝るか、仰向けで寝るのが理想的です。患側を下にして寝ると、圧迫によって痛みを感じたり、治癒に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
食事は、特別な制限はありませんが、バランスの取れた栄養摂取を心がけます。特に、タンパク質やビタミンCは創傷治癒に重要な栄養素です。また、アルコールは術後しばらくの間は控えるべきです。
仕事や学校への復帰
仕事や学校への復帰時期は、手術方法と職業の内容によって異なります:
剪除法の場合、デスクワークであれば術後1週間程度で復帰可能なことが多いですが、体を動かす仕事や重い物を持つ仕事の場合は、2~4週間程度の休養が必要です。
マイクロリムーブ法の場合、デスクワークなら術後3~5日、体を動かす仕事でも1~2週間程度で復帰できることが多いです。
ミラドライの場合、ほとんどの方が翌日から通常の仕事や学校に復帰できます。
ただし、これらは一般的な目安であり、個人差があります。担当医と相談しながら、無理のない復帰計画を立てることが重要です。
ダウンタイムを短縮・快適に過ごすためのポイント
ダウンタイムの期間自体を大きく短縮することは難しいですが、いくつかの工夫で快適に過ごし、順調な回復を促すことができます。
術前の準備
手術前の準備が、ダウンタイムの快適さを左右します:
まず、手術前に仕事や学校のスケジュールを調整し、十分な休養期間を確保します。周囲の人に手術を受けることを伝えておくと、サポートを得やすくなります。
また、術後すぐに使用する前開きの衣服、固定期間中の食事の準備、必要な日用品の購入などを事前に済ませておくと、術後の生活がスムーズになります。
特に一人暮らしの方は、術後数日間のサポートを誰かに依頼しておくことも検討すべきです。
冷却と安静
術後早期の適切なケアが、ダウンタイムの質を向上させます:
手術直後から数日間は、許可された範囲で患部を冷却することで、腫れや痛みを軽減できます。ただし、直接氷を当てるのではなく、タオルで包んだ保冷剤などを使用します。また、冷やしすぎにも注意が必要です。
安静を保つことも重要です。特に固定期間中は、無理に動こうとせず、できるだけ安静に過ごします。読書や映画鑑賞など、腕を動かさずに楽しめる活動を計画しておくとよいでしょう。
処方薬の適切な服用
処方された薬を適切に服用することで、痛みのコントロールと感染予防が可能になります:
鎮痛剤は、痛みが強くなってから服用するのではなく、処方された時間に規則正しく服用することで、より効果的に痛みをコントロールできます。ただし、指示された用量を超えて服用してはいけません。
抗生物質は、症状が改善しても自己判断で中止せず、処方された分を最後まで服用します。
栄養と水分補給
適切な栄養と水分補給は、創傷治癒を促進します:
タンパク質は創傷治癒に不可欠な栄養素です。肉、魚、卵、大豆製品などを積極的に摂取します。また、ビタミンCは コラーゲン合成に重要で、野菜や果物から摂取できます。亜鉛も創傷治癒に関与する栄養素で、牡蠣、レバー、ナッツ類などに含まれます。
十分な水分補給も重要です。ただし、アルコールやカフェインの過剰摂取は避けるべきです。
禁煙
喫煙は創傷治癒を著しく遅延させます:
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、創部への血流を減少させます。これにより、創傷治癒が遅れ、感染リスクも高まります。また、喫煙は創部の壊死や治癒不全のリスクも増加させます。
手術を機に禁煙することが理想的ですが、少なくとも術前2週間と術後4週間は禁煙すべきです。
ストレスマネジメント
精神的なストレスも、創傷治癒に影響を与えることが知られています:
適度な休息と睡眠を確保し、リラックスできる時間を持つことが重要です。心配事があれば、担当医や看護師に相談し、不安を解消することも大切です。
ダウンタイム中に起こりうる症状と対処法
ダウンタイム中には、いくつかの症状が現れることがあります。多くは正常な治癒過程の一部ですが、中には注意が必要なものもあります。
痛み
術後の痛みは程度の差はあれ、ほとんどの方が経験します:
正常な痛みは、処方された鎮痛剤でコントロール可能で、時間とともに徐々に軽減していきます。多くの場合、術後3~5日をピークに、その後は日ごとに改善していきます。
ただし、鎮痛剤を服用しても痛みが全く改善しない場合、日ごとに痛みが増強する場合、拍動性の強い痛みがある場合などは、感染や血腫などの合併症の可能性があるため、すぐに担当医に連絡すべきです。
腫れ
手術後の腫れは正常な反応です:
剪除法では、術後数日から1週間程度は腫れが目立ちます。マイクロリムーブ法やミラドライでも、程度は軽いですが腫れが見られます。この腫れは、組織の損傷に対する体の自然な反応で、時間とともに徐々に引いていきます。
適度な冷却や安静を保つことで、腫れを最小限に抑えることができます。ただし、腫れが日ごとに増強する場合、患部が著しく硬くなる場合、波動を感じる場合などは、血腫や漿液腫の可能性があるため、医師の診察が必要です。
内出血(青あざ)
手術による組織の損傷により、内出血が生じることがあります:
内出血は、青紫色や黄色のあざとして現れます。特に剪除法では、術後に目立つ内出血が見られることが多いですが、これは正常な経過の一部です。内出血は通常、1~2週間程度で自然に吸収されて消失します。
ただし、内出血の範囲が広がり続ける場合や、患部が著しく膨らんでくる場合は、活動性の出血がある可能性があるため、医師に連絡すべきです。
しびれや感覚の変化
手術部位やその周辺にしびれや感覚の変化を感じることがあります:
これは、手術時に皮膚の神経が影響を受けるために起こります。多くの場合、数週間から数か月かけて徐々に改善していきますが、完全に元通りにならないこともあります。
しびれや感覚の変化は、多くの場合、生活に大きな支障をきたすものではありませんが、気になる場合は担当医に相談してください。
創部の硬さ
手術部位が硬くなることがあります:
これは、創傷治癒の過程で形成される瘢痕組織によるものです。時間とともに柔らかくなっていきますが、完全に元の柔らかさに戻らないこともあります。適度なマッサージが硬さを軽減するのに役立つことがありますが、マッサージを開始する時期や方法については、担当医の指示に従ってください。
発熱
軽度の発熱(37~38度程度)は、手術による組織の損傷に対する体の反応として起こることがあります:
このような発熱は通常、術後数日以内に自然に解熱します。ただし、38.5度以上の発熱が続く場合、悪寒を伴う場合、患部の赤みや痛みが増強する場合などは、感染の可能性があるため、すぐに医師に連絡する必要があります。
浸出液
創部から透明または淡黄色の液体が出ることがあります:
これは漿液と呼ばれるもので、創傷治癒の過程で見られる正常な現象です。少量であれば問題ありませんが、大量に出る場合や、膿のような悪臭のある液体が出る場合は、感染の可能性があるため、医師の診察が必要です。

よくある質問
ワキガ手術のダウンタイムについて、患者さんからよくいただく質問をまとめました。
手術方法と職業の内容によって異なります。剪除法の場合、デスクワークであれば1週間程度、体を使う仕事であれば2~4週間程度の休養が推奨されます。マイクロリムーブ法では、デスクワークなら3~5日、体を使う仕事でも1~2週間程度です。ミラドライの場合、多くの方が翌日から仕事に復帰できます。
ただし、これらは一般的な目安であり、個人差があります。担当医と相談して、自分の職業内容と回復状況に合わせた計画を立てることが重要です。
Q2: ダウンタイム中、運動はいつから再開できますか?
運動の種類と強度によって異なります。散歩などの軽い運動は、剪除法で術後2週間程度、マイクロリムーブ法で1週間程度から可能です。ミラドライでは、数日後から可能です。
ジョギングや水泳などの有酸素運動は、剪除法で術後3~4週間、マイクロリムーブ法で2週間程度から可能になります。筋力トレーニングや球技など、腕を激しく動かす運動は、剪除法で術後1~2か月、マイクロリムーブ法で3~4週間程度待つのが安全です。
いずれの場合も、担当医の許可を得てから段階的に運動を再開することが重要です。
Q3: 傷跡はどのくらいで目立たなくなりますか?
傷跡の経過は手術方法によって異なります。剪除法の場合、術後しばらくは赤く盛り上がった状態ですが、3~6か月かけて徐々に平らになり、白っぽく変化していきます。最終的な傷跡の状態になるまでには、6か月~1年程度かかります。
マイクロリムーブ法の傷跡は小さいため、数週間で目立たなくなることが多いです。ミラドライは切開しないため、傷跡は残りません。
傷跡を最小限にするためには、術後の適切なケア、紫外線対策、必要に応じた瘢痕ケア製品の使用などが有効です。
Q4: ダウンタイム中、入浴はいつから可能ですか?
手術方法によって異なります。一般的に、手術当日の入浴は避けるべきです。
剪除法の場合、固定が外れるまで(術後3~5日程度)は入浴を避け、固定が外れてから抜糸まで(術後1週間~10日程度)はシャワーのみ、抜糸後から通常の入浴が可能になります。
マイクロリムーブ法の場合、術後1~2日目からシャワーが可能で、数日後から通常の入浴が可能になることが多いです。
ミラドライの場合、治療後1~2日目からシャワーが可能で、数日後から通常の入浴が可能です。
入浴の際は、患部を強くこすらない、高温のお湯を避ける、長時間の入浴は避けるなどの注意が必要です。
Q5: ダウンタイム中、飲酒は可能ですか?
術後しばらくの間は、飲酒を控えるべきです。アルコールは血管を拡張させ、出血や腫れを増悪させる可能性があります。また、処方された鎮痛剤や抗生物質との相互作用も懸念されます。
一般的には、抜糸が終わり、創部が安定するまで(術後2週間程度)は禁酒が推奨されます。その後も、しばらくは適量にとどめるのが無難です。
Q6: ダウンタイムを短くする方法はありますか?
ダウンタイムの期間自体は手術方法によってある程度決まっていますが、以下の方法で快適に過ごし、順調な回復を促すことができます:
- 術後の指示を厳守する(特に固定期間の安静)
- 処方された薬を適切に服用する
- 栄養バランスの取れた食事を摂る
- 十分な睡眠と休息を取る
- 禁煙する
- ストレスを軽減する
- 患部を清潔に保つ
また、ダウンタイムを最初から短くしたい場合は、非切開治療のミラドライを選択するという方法もあります。
Q7: 両脇を同時に手術することはできますか?
多くの場合、両脇を同時に手術することが可能で、実際によく行われています。両脇を同時に行うことで、手術回数を減らし、トータルの治療期間を短縮できます。
ただし、両脇を同時に手術すると、ダウンタイム中の日常生活への影響が大きくなります。両腕が使いにくい状態になるため、食事、着替え、洗髪などの基本的な動作に支障をきたします。そのため、手術後数日間はサポートが必要になることがあります。
片側ずつ手術する場合は、日常生活への影響を最小限に抑えられますが、トータルの治療期間は長くなります。どちらを選択するかは、ライフスタイルや周囲のサポート状況によって決めるべきです。
Q8: 手術後、臭いは完全になくなりますか?
手術の効果は、手術方法によって異なります。
剪除法は、アポクリン汗腺を直接目で確認しながら除去するため、最も高い効果が期待できます。多くの場合、90%以上のアポクリン汗腺を除去でき、臭いは大幅に軽減します。ただし、完全に無臭になるとは限らず、わずかに臭いが残ることもあります。
マイクロリムーブ法は、剪除法に比べるとアポクリン汗腺の除去率がやや劣りますが、それでも多くの方で満足のいく効果が得られます。
ミラドライは、マイクロ波でアポクリン汗腺を破壊する方法で、効果には個人差があります。多くの方で臭いの軽減が見られますが、1回の治療で十分な効果が得られない場合、追加治療が必要になることもあります。
Q9: 再発の可能性はありますか?
手術方法によって再発率は異なります。
剪除法は、最も再発率が低い方法です。適切に行われた剪除法では、再発率は数%程度とされています。ただし、完全にすべてのアポクリン汗腺を除去することは不可能なため、わずかに残った汗腺から再び臭いが発生する可能性はあります。
マイクロリムーブ法やミラドライは、剪除法に比べると再発率がやや高くなります。ただし、多くの場合、再発したとしても術前ほどの強い臭いではありません。
また、思春期前に手術を受けた場合、成長に伴ってアポクリン汗腺が新たに発達し、再び臭いが強くなることがあります。そのため、ワキガ手術は思春期以降に行うのが一般的です。
Q10: 手術後、脇の汗は減りますか?
ワキガ手術では、主にアポクリン汗腺を標的としますが、同時にエクリン汗腺も影響を受けるため、脇の汗の量も減少することが多いです。
特にミラドライは、アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方を標的とするため、臭いだけでなく、多汗の改善も期待できます。
ただし、完全に汗をかかなくなるわけではありません。また、ごくまれに、手術後に他の部位の発汗が増える「代償性発汗」という現象が起こることがあります。
年齢別・ライフステージ別の検討事項
ワキガ手術を検討する際は、年齢やライフステージに応じた考慮が必要です。
学生の場合
学生がワキガ手術を受ける場合、以下の点を考慮する必要があります:
長期休暇(夏休みや春休み)を利用して手術を受けると、ダウンタイム中も学校を休まずに済みます。特に受験生の場合、重要な試験の時期を避けて計画することが重要です。
部活動をしている場合、運動制限の期間を考慮して手術時期を決める必要があります。特に大会前などは避けるべきです。
また、未成年者の場合、保護者の同意が必要です。手術の必要性や方法について、家族でよく話し合うことが大切です。
社会人の場合
社会人の場合、仕事への影響を最小限にすることが重要です:
有給休暇を利用して手術を受ける方が多いですが、職種によって必要な休養期間が異なります。デスクワークの場合は比較的短期間で復帰できますが、体を使う仕事の場合は長めの休養期間を確保する必要があります。
繁忙期を避けて手術時期を計画することも重要です。また、上司や同僚に手術を受けることを伝えるかどうかは、個人の判断によりますが、サポートを得やすくなる利点があります。
出張や重要な会議などの予定と重ならないよう、スケジュールを調整することも必要です。
妊娠を希望する女性の場合
妊娠を希望する女性の場合、以下の点を考慮します:
妊娠中は麻酔や薬の使用に制限があるため、手術は避けるべきです。また、授乳中も薬の影響を考慮する必要があります。そのため、妊娠を希望する場合は、妊娠前に手術を済ませておくか、授乳が終わってから手術を受けることが推奨されます。
出産後は育児で忙しくなるため、手術のタイミングとして適さない場合もあります。ライフプランを考慮して、適切な時期を選ぶことが重要です。
高齢者の場合
高齢者の場合、以下の点に注意が必要です:
高齢になると、創傷治癒能力が低下するため、ダウンタイムが長引く可能性があります。また、基礎疾患がある場合、手術のリスクが高まることがあります。
持病がある場合は、かかりつけ医と手術を行う医師の間で情報を共有し、安全に手術を受けられるか確認する必要があります。
高齢者の場合、ワキガの症状が加齢とともに軽減していることもあるため、手術の必要性自体を慎重に検討することも重要です。
アイシークリニック大宮院でのワキガ治療
アイシークリニック大宮院では、患者さん一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた、最適なワキガ治療を提供しています。
丁寧なカウンセリング
当院では、初診時に十分な時間をかけて、患者さんの症状、お悩み、ライフスタイル、希望する治療結果などを詳しくお伺いします。その上で、最適な治療方法をご提案します。
ワキガの程度は、客観的な評価と患者さんの主観的な評価の両方から判断します。軽度のワキガの場合、必ずしも手術が必要ではなく、保存的治療で十分な場合もあります。
複数の治療オプション
当院では、剪除法、ミラドライなど、複数の治療オプションをご用意しています。それぞれの治療法の効果、ダウンタイム、費用、傷跡などについて詳しくご説明し、患者さんが納得した上で治療方法を選択できるようサポートします。
手術の安全性への配慮
手術は、経験豊富な医師が執刀します。麻酔方法、手術手技、術後管理など、すべての過程で安全性を最優先に考えています。
術前には、患者さんの健康状態を確認し、リスク要因がないか慎重に評価します。持病がある場合や、服用中の薬がある場合は、事前にご相談ください。
充実した術後フォロー
術後は、定期的に経過観察を行い、順調に回復しているか確認します。術後に不安なことや気になることがあれば、いつでもご相談いただけます。
また、術後の過ごし方、創部のケア方法、運動再開の時期など、具体的なアドバイスを提供します。
アクセスの良さ
アイシークリニック大宮院は、JR大宮駅から徒歩圏内に位置し、通院に便利な立地です。術後の定期的な通院も、負担なく続けていただけます。
まとめ
ワキガ手術のダウンタイムは、手術方法によって大きく異なります。剪除法では2~4週間、マイクロリムーブ法では1~2週間、ミラドライでは3~7日程度が一般的な目安です。
ダウンタイムの長さだけでなく、手術の効果、傷跡、費用なども含めて、総合的に治療方法を選択することが重要です。また、自分のライフスタイルや仕事の内容、手術後のサポート体制なども考慮に入れる必要があります。
ダウンタイム中は、医師の指示を守り、適切なセルフケアを行うことで、順調な回復と良好な治療結果につながります。不安なことや気になることがあれば、遠慮なく担当医に相談することが大切です。
ワキガは、適切な治療によって改善可能な疾患です。長年の悩みから解放され、自信を持って日常生活を送れるようになるため、多くの患者さんが手術を受けて良かったと感じています。
アイシークリニック大宮院では、患者さん一人ひとりに寄り添い、最適なワキガ治療を提供しています。ワキガでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる医学情報源を参考にしました:
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」腋臭症(ワキガ) https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/index.html
- 日本形成外科学会「形成外科で扱う疾患」 https://www.jsprs.or.jp/
- 厚生労働省「医療情報提供サービス」 https://www.mhlw.go.jp/
- MSDマニュアル家庭版「多汗症」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務