はじめに
「顔が赤くなりやすい」「頬や鼻の周りが常に赤い」「赤みがなかなか引かない」といったお悩みを抱えている方は少なくありません。肌の赤みは、見た目の印象に大きく関わるだけでなく、自己肯定感や日常生活にも影響を与えることがあります。
大宮エリアをはじめ、さいたま市やその周辺地域にお住まいの方で、肌の赤みでお悩みの方に向けて、本記事では赤みが生じるメカニズムから具体的な治療法まで、皮膚科の専門知識に基づいて詳しく解説いたします。
肌の赤みは原因によって治療法が大きく異なります。自己判断でケアを続けても改善しない場合や、症状が悪化している場合は、早めに専門医を受診することが重要です。適切な診断と治療により、多くの方が症状の改善を実感されています。
第1章:肌の赤みとは?基本的なメカニズムを理解する
1-1. 肌の赤みが発生する仕組み
肌の赤みの正体は、主に「炎症」と「毛細血管の拡張」の2つです。私たちの皮膚には無数の毛細血管が張り巡らされており、これらの血管の状態が肌の色に大きく影響を与えています。
皮膚には外界からの刺激物質や細菌などの異物の侵入を防ぐためのバリア機能という仕組みが備わっています。しかし、このバリア機能が何らかの原因で低下すると、免疫反応が働きます。皮膚の赤みは、この免疫反応の一つであり、生体を防御するために起こる炎症反応の結果です。
炎症が起きると、免疫細胞やリンパ球などが血流にのって患部に届けられ、炎症を抑制するための対処をします。そのため、一時的に毛細血管が拡張し、患部に向かって血流量が増加します。表皮部分はおよそ0.2mm程度しかないため、拡張した毛細血管の赤みは表皮を通して外から確認することができます。
1-2. 生理的な赤みと病的な赤みの違い
肌の赤みには大きく分けて「生理的な赤み」と「病的な赤み」があります。
生理的な赤みは、運動や入浴、寒暖差、アルコール摂取などにより、一時的に血管が拡張することで起こります。これは基本的に自然な反応であり、短時間でおさまります。緊張したときに顔が赤くなるのも、この生理的な反応の一つです。
一方、病的な赤みは、皮膚の炎症や血管異常、皮膚疾患などによって慢性的または局所的に現れます。この場合は適切な治療が必要となるケースが多くなります。
肌トラブルを繰り返していると、皮膚の毛細血管の拡張が戻らなくなり、赤みが続くようになるという研究結果も報告されています。また、赤みのある肌では水分が蒸散しやすいことも明らかになっており、バリア機能の正常化が重要であることがわかっています。
1-3. 赤みが出やすい人の特徴
赤みの原因の多くは炎症であり、敏感肌の方に多くみられる症状です。ただし、症状が出るのは皮脂の少ない部分とは限らず、逆に皮脂の分泌が激しい部位である場合もあります(脂漏性皮膚炎など)。乾燥した肌を守るために皮脂が過剰に分泌されることもあるため、敏感肌・乾燥肌であるかどうかの判断には注意が必要です。
また、年齢を重ねると皮膚は弾力を失い、水分が抜けて乾燥しがちになります。乾燥した肌は刺激に弱く、少しの刺激に対しても過剰反応してしまい、赤みやかゆみなどの症状が出やすくなります。皮下脂肪も年齢とともに少なくなるため、毛細血管が透けて見えやすくなり、顔の赤みが目立つようになることもあります。
第2章:肌の赤みを引き起こす主な疾患と原因
2-1. 酒さ(しゅさ)
酒さは、30〜50歳代の女性に多く見られる慢性炎症性疾患で、顔面の頬や鼻に赤みが出現し、次第に毛細血管拡張を伴うようになる疾患です。寒暖差や飲酒で症状が強くなり、かゆみやほてりの症状が出ることもあります。
日本皮膚科学会の「尋常性ざ瘡・酒さ治療ガイドライン2023」によると、酒さは以下の4つのタイプに分類されます。
第一に、紅斑毛細血管拡張型酒さがあります。鼻、頬、眉間、顎に赤みが出現し、次第に毛細血管拡張と脂漏を伴うようになります。これが最も一般的なタイプです。
第二に、丘疹膿疱型酒さがあります。紅斑毛細血管拡張型の症状が進行すると、顔全体に症状が広がり、ニキビのような赤い丘疹や膿疱が出現します。
第三に、鼻瘤(びりゅう)型があります。丘疹が増え合わさり腫瘤状になり、特に鼻は凸凹に盛り上がり赤紫色になるのが特徴です。
第四に、眼型酒さがあります。眼瞼結膜炎や角膜炎を伴うタイプで、目のかゆみや異物感、充血などの症状が現れます。
酒さの病因は完全には解明されていませんが、関連性が示唆されている要因として、日光曝露、精神的ストレス、寒冷や高温の気候、アルコール、香辛料の効いた食品、運動、化粧品、熱い風呂、熱い飲み物などがあります。
2-2. 毛細血管拡張症
毛細血管拡張症は、何らかの理由によって毛細血管が拡張したまま元に戻らなくなった状態をいいます。皮膚の下にある毛細血管が拡張しているため、外から見て血管の色が透けて見えてしまい、肌に赤みが見られます。
皮膚に炎症が起きることで一時的に赤くなることはありますが、このような状態は毛細血管拡張症には該当しません。毛細血管拡張症は、炎症とは異なって放置していても自然に治癒することはありません。レーザー治療によって症状を改善させることが可能です。
2-3. アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみのある湿疹ができて、症状が悪くなったり良くなったりを繰り返す病気です。アレルギー体質を持つ方に多く見られ、皮膚のバリア機能が低下して炎症が起きやすくなることが特徴です。
アトピー性皮膚炎の赤みは、かゆみやじゅくじゅくとした液が出てくることと同じく、炎症反応のひとつです。顔では耳や口周りで好発しますが、額や頬、鼻、顎、あるいは顔全体に症状が出ることもあります。
アトピー性皮膚炎の重症度は、軽度の皮疹と強い炎症を伴う皮疹に分類されます。軽度の皮疹とは、軽度の紅斑や皮膚がカサカサした乾燥した状態です。強い炎症を伴う皮疹とは、紅斑や盛り上がった湿疹、皮膚がゴワゴワになる状態(苔癬化)などを指します。
適切な治療により症状がコントロールされた状態が長く維持されると、症状がなくなる寛解が期待できます。
2-4. 脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、皮脂分泌の多い部位に、フケや赤み、鱗屑(白くて細かいカサブタのようなもの)などが見られる皮膚疾患です。頭皮、鼻の両脇、眉毛、眉間、耳の後ろなど、皮脂の多い部位に起こりやすいのが特徴です。
脂漏性皮膚炎の原因は完全には解明されていませんが、皮膚に常在しているマラセチアというカビ(真菌)の一種が発症に関わっていると考えられています。皮脂を栄養源とするマラセチアが皮膚で増殖すること自体が、皮膚の炎症を引き起こすとされています。
思春期以降に見られる成人型の脂漏性皮膚炎は、一度発症するとよくなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的な経過をたどることが多いです。30〜40代に最も多く、女性よりも男性に多く発症します。
脂漏性皮膚炎と酒さは症状が似ていることがありますが、治療法が大きく異なります。脂漏性皮膚炎は眉部、眉間、鼻のわきが赤くがさがさするのが典型的です。酒さの場合は鼻、頬、眉間など顔の中央に近いところに赤みとぼつぼつが出るのが特徴で、毛細血管拡張を伴うことも多いです。
2-5. ニキビ・ニキビ跡の赤み
ニキビの炎症によっても肌の赤みが生じます。毛穴に皮脂や老廃物がつまり、毛穴の中でアクネ菌が増殖すると、身体が排除しようとして炎症を起こし、赤ニキビに発展します。
ニキビ跡の赤みは「炎症後紅斑」と呼ばれ、ニキビができたことでダメージを受けた毛穴周辺の皮膚が修復する過程で、修復箇所に毛細血管が集中的に増殖している状態です。軽度であれば肌のターンオーバーによって徐々に薄れて消えていきますが、炎症がひどく皮膚の深い部分までダメージが与えられている場合は、時間が経ってもなかなか赤みを消すことができません。
2-6. 接触皮膚炎(かぶれ)
接触皮膚炎は、皮膚に何らかの物質が触れ、それが刺激やアレルギー反応となって炎症を起こしたものです。湿疹や赤み、かゆみ、水ぶくれや腫れなどさまざまな症状を伴います。
化粧品や金属、植物、洗剤などが原因となることが多く、最近ではマスクを着け続けることによってかぶれてしまい、赤みに悩まされるケースも増えています。
2-7. その他の原因
物理的な刺激によっても赤みが生じることがあります。肌バリアがきちんと機能していない肌は、本来問題がないと思われるような少しの刺激でも炎症を起こし、赤みに繋がる場合があります。
具体的には、かゆみやちくちくする衣類を身に着けたとき、外気や風に継続して触れたとき、薬品や洗剤などにかぶれたとき、カミソリの刃など鋭利なものを使用したとき、洗顔のしすぎなどでターンオーバーが早まり未熟な肌細胞が表面に出ている場合などが挙げられます。
また、強いストレスを受けたときや、生理中などホルモンバランスが大きく崩れたときにも赤みが発生することがあります。
第3章:肌の赤みを改善するための日常ケア
3-1. 正しい洗顔方法
顔の赤みを防ぐためには、正しいスキンケアの習慣を身につけることが大切です。洗顔は肌ケアの基本であり、以下のポイントを意識しましょう。
まず、洗顔料をよく泡立てて洗うようにします。肌をごしごしこすらず、指の腹を使って優しくなでるように洗います。摩擦を減らすために、たっぷりの泡で洗うことが重要です。
また、肌への刺激を減らすために、ぬるめのお湯(32〜34度程度)ですすぐのがポイントです。熱いお湯は皮脂を落としすぎてしまい、バリア機能の低下につながります。
タオルで顔を拭く際にも、やわらかなタオルを使って優しく顔に当てるような感じで水分をとります。ゴシゴシこするのは厳禁です。
石けんの成分が皮膚に残っていると刺激になり悪化することがあるので、しっかりとすすぐことも大切です。
3-2. 保湿ケアの重要性
肌のうるおいを保つケアは、赤みの予防において非常に重要です。洗顔後の肌は乾燥しやすいため、なるべくすぐに保湿を行います。理想的には入浴後5分以内に保湿剤を塗るのがよいとされています。
化粧水で水分を補給した後は、乳液やクリームで油分を補い、うるおいを逃がさないようにします。乾燥肌がひどいときには、乾燥肌用のスキンケアアイテムや美容液などを併用するのもおすすめです。
保湿剤にはさまざまな種類や剤形があります。白色ワセリンなどの油脂は保湿の基本で、べたべたしますが刺激がほとんどなく保湿効果が持続します。尿素製剤は炎症がある部分で刺激を感じますが、あまりべたつきません。ヘパリン類似物質はわずかに特徴的なにおいがありますが、あまりべたつかず塗りやすい特徴があります。
赤みが出やすい敏感肌の方は、低刺激性のスキンケア製品を選ぶことが重要です。
3-3. 紫外線対策
紫外線は皮膚への刺激となり、赤みを悪化させる可能性があります。外出時は日焼け止めを塗り、帽子や日傘などを活用して紫外線から肌を守りましょう。
日焼け止めは低刺激のもの、かつSPF30以上の製品を選ぶのがおすすめです。塗る日焼け止めでかぶれてしまう場合や、汗ですぐに取れてしまう場合は、飲む日焼け止めを用いてもよいでしょう。
もし日焼けをして肌が赤くなってしまったら、軽いやけどをしたときと同じように、すぐに冷やすようにしましょう。それでも改善しない場合には、皮膚科を受診しましょう。
3-4. 生活習慣の見直し
肌の赤みの改善には、生活習慣の見直しも重要です。
十分な睡眠をとることが大切です。睡眠中は肌の修復が進む時間帯です。寝室の環境を整えたり、スマホは寝る1時間前から使用を控えたりなど、質の良い睡眠をとることを心掛けましょう。
食生活も肌の状態に影響します。ビタミンB群やビタミンCなどの栄養のバランスを考えるようにしましょう。脂っこい食事や刺激物の過剰摂取は控えめにすることが望ましいです。
ストレスも肌に影響を与えます。適度な運動やリラクゼーションを取り入れ、ストレスを溜めないことも大切です。
アルコールや刺激物の摂取、急激な温度変化も赤みを悪化させる要因となりますので、これらを避けることも心がけましょう。
3-5. 刺激を避けるための注意点
肌のバリア機能が低下しているときは、少しの刺激でも赤みがあらわれる可能性があります。以下のような刺激を避けることが重要です。
花粉が多い季節はマスクを着用する、汗をかいたときにはこまめに汗を拭くなど、肌に刺激を与えるものを避けましょう。ただし、マスクによるかぶれにも注意が必要です。
刺激の少ない衣類を選び、毛髪は短く切りそろえるか束ねて、肌への刺激を減らしましょう。
洗顔やスキンケア時の摩擦は避けましょう。また、メイクをする場合は、できるだけ刺激の少ないものを選び、夜にしっかり落とすようにしましょう。
第4章:皮膚科で受けられる肌の赤みの治療法
4-1. 外用薬による治療
ステロイド外用薬
ステロイド外用薬は、炎症を抑える即効性があり、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎などに使われます。強さによって5段階に分類されており、症状や部位に合わせて使い分けることができます。
ステロイド外用薬は医師の指示に従って適切に使用すれば、副作用を最小限に抑えながら効果的に炎症を抑えることができます。ただし、酒さにはステロイド外用薬を塗ると逆に症状が悪化することが多いため、注意が必要です。
抗真菌外用薬
脂漏性皮膚炎に対しては、マラセチア菌の増殖を抑える抗真菌外用薬(ケトコナゾールなど)が使用されます。長期間使用しても副作用が出にくいため使いやすく、ステロイド外用薬と併用して治療を行うことも多いです。
酒さに対する外用薬
酒さの治療には、メトロニダゾール(ロゼックスゲル)が保険適用で使用できます。日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されている治療薬です。
また、アゼライン酸やイベルメクチン含有クリームなども酒さに効果があるとされています。海外ではメトロニダゾールと同程度に推奨されていますが、日本では保険適用外の場合があります。
その他の外用薬
アトピー性皮膚炎に対しては、タクロリムス軟膏(プロトピック)やJAK阻害薬(デルゴシチニブ軟膏)、PDE4阻害薬(ジファミラスト)など、ステロイド以外の選択肢も増えてきています。これらは顔や首など、ステロイドの副作用が出やすい部位での使用に適しています。
4-2. 内服薬による治療
抗ヒスタミン薬
かゆみがある場合には、飲み薬の抗ヒスタミン薬が処方されることがあります。かゆみを抑えることで、掻きむしりによる炎症の悪化を防ぎます。
抗生物質
酒さの丘疹膿疱型に対しては、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリンといった抗生物質の内服が行われることがあります。日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨度は低いものの、実際の臨床では著効する場面も多く報告されています。
ビタミン剤
ビタミンB2やB6を併用することもあります。肌の代謝を改善し、ターンオーバーを整える効果が期待できます。
生物学的製剤
従来の治療でコントロールが難しい重症のアトピー性皮膚炎に対しては、デュピクセント(デュピルマブ)などの生物学的製剤が使用されることがあります。アトピー性皮膚炎の悪化因子となるサイトカインをブロックすることで、症状を改善させます。
4-3. レーザー治療
Vビームレーザー
Vビームは、赤みの治療に最も効果があるといわれているレーザーです。波長595nmのレーザー光は血液中のヘモグロビンに選択的に吸収される特徴があり、毛細血管拡張や血管腫などの肌の赤み治療に最適です。
Vビームレーザーを照射すると、ヘモグロビンにレーザーのエネルギーが吸収され、熱を発生することで周囲の毛細血管を破壊し、赤みを改善します。冷却システムを装備しているため、痛みは輪ゴムでパチンと弾かれる程度で、基本的には傷跡は残りません。
毛細血管拡張症に対するVビームレーザーの治療は、健康保険が適用となる場合があります。保険適用の場合、照射する部位の面積が10cm²までで、3割負担の場合のご負担額は約6,500〜8,000円程度です。3か月に1度の間隔で、3〜5回程度の治療を行うのが一般的です。
ロングパルスYAGレーザー(ジェネシス)
ロングパルスYAGレーザーは、Vビームと同様に血管の赤みに反応するレーザーです。レーザー光をシャワーのように肌に照射することで、表皮に損傷を与えずに深部の毛細血管に作用して赤みを改善します。
Vビームと比べて痛みがほとんどなく、皮下出血のダウンタイムも少ないため、治療直後からメイクが可能です。また、コラーゲンの再生を促す効果もあり、肌のキメが整いハリも戻ります。
4-4. 光治療(IPL/フォトフェイシャル)
IPL(Intense Pulsed Light)治療は、特殊な光を肌に照射することで、シミや赤ら顔などのさまざまな肌トラブルを同時に治療することができます。
IPLの光はメラニン色素やヘモグロビンに反応するため、ニキビ跡の色素沈着やシミ、そばかすの改善と同時に、毛細血管の拡張による肌の赤みやニキビ跡の赤みにも効果的です。余分な血管を縮小させ、赤みを目立たなくすることができます。
また、コラーゲンを作り出す線維芽細胞の働きを活性化させ、内側からキメの整ったハリのある素肌に導きます。肌へのダメージが少なく、治療後すぐに洗顔やメイクができるのも特徴です。
4-5. ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗布して古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進する治療法です。ニキビ跡の赤みや色素沈着の改善に効果があります。
サリチル酸やグリコール酸などが使用され、肌質や症状に合わせて適切な濃度や種類が選択されます。他の治療法と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
4-6. イオン導入・エレクトロポレーション
イオン導入は、専用の機器を使ってイオン化した美容液を皮膚の内部に浸透させる治療法です。ニキビ跡の赤みにはビタミンCを配合した美容液などが有効です。
エレクトロポレーションは、専用の機器で皮膚に微弱の電気を流して一時的に小さな孔を開け、そこに美容液を浸透させる方法です。美容液の浸透率が高いことから、近年注目を浴びています。
ケミカルピーリングの後にイオン導入やエレクトロポレーションを行うことで、より美容液が浸透しやすくなり、効果が高まります。
第5章:疾患別の治療アプローチ
5-1. 酒さの治療
酒さの治療は長期戦になりますが、適切な治療法を組み合わせることで改善が期待できます。
紅斑毛細血管拡張型酒さでは、外用療法の推奨度は低く、Vビームなどの色素レーザーや光治療が優先されます。メトロニダゾールゲルやアゼライン酸、イベルメクチン含有クリームなどの外用薬も選択肢となります。
丘疹膿疱型酒さでは、外用薬の推奨度が上がります。メトロニダゾールゲルを中心に、必要に応じて抗生物質の内服を併用します。丘疹や膿疱が収まったら徐々に減量・中止し、紅斑や毛細血管の拡張のみが残る場合にはVビームや光治療を繰り返し行っていくのが一般的です。
重要なのは、酒さにステロイド外用薬やプロトピックを外用すると悪化させることがあるため、これらの薬剤を使用している場合は中止することが最も重要です。
5-2. アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療は、薬物療法、スキンケア、悪化因子の対策の3つを組み合わせて行います。
薬物療法の中心となるのは、ステロイドの外用です。適切な強さのステロイドを適切な量塗布することで、副作用を抑えながら症状を改善します。赤みが取れても、指でつまんで硬いところは柔らかくなるまで、医師の指示に従って10日から2週間くらいはさらに続けて塗ります。
ステロイド以外の外用薬として、タクロリムス軟膏やJAK阻害薬、PDE4阻害薬なども使用されます。これらは顔や首など、ステロイドの副作用が出やすい部位での使用に適しています。
プロアクティブ療法は、十分な抗炎症治療で症状を抑えた後に、保湿外用薬によるスキンケアに加えて、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を定期的(週2〜3回)に塗って症状が抑えられた状態を維持する治療法です。
5-3. 脂漏性皮膚炎の治療
脂漏性皮膚炎の治療は、主に塗り薬を用いて行われます。症状や患部に合わせて、抗真菌薬、ステロイド外用薬、保湿剤などを使い分けます。
赤みが強いときにはステロイド外用薬を1週間程度使用し、症状が治まった時点で抗真菌外用薬に切り替えます。抗真菌外用薬は長期間使用しても副作用が少ないため、維持療法として使いやすいです。
脂漏性皮膚炎は再発しやすい疾患ですが、日々のケアを心がけることで症状を予防・軽減することができます。洗顔や入浴をして皮脂汚れが溜まらないようにすること、低刺激のスキンケア製品を使用すること、生活習慣を整えることが重要です。
5-4. ニキビ跡の赤みの治療
ニキビ跡の赤みは、セルフケアでは改善が難しい場合もあります。皮膚科での治療としては、VビームレーザーやロングパルスYAGレーザー、IPL光治療、ケミカルピーリング、イオン導入などが行われます。
Vビームレーザーは赤い色素に吸収される波長595nmのレーザー光を照射することで、ニキビ跡の赤みや炎症性赤ニキビを改善します。
ケミカルピーリングはターンオーバーを促進し、赤みの軽減に効果があります。イオン導入やエレクトロポレーションでビタミンC誘導体などを導入することで、炎症を抑え、赤みの改善と同時に新たなニキビの発生を抑える効果も得られます。
第6章:治療を受ける際の注意点
6-1. 正確な診断の重要性
肌の赤みは、見た目だけでは原因を特定することが難しい場合があります。酒さと脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎など、症状が似ている疾患があり、それぞれ治療法が異なります。
診断により治療が変わりますので、最初の診断が重要です。自己判断でケアをしたり、市販薬を使ったりしていると、なかなか改善しなかったり症状が悪化したりする可能性があります。気になる赤みが続く場合や広がる場合は、皮膚科での診察をおすすめします。
皮膚科では、皮膚の状態や分布、形状、経過などを詳細に観察し、問診を行います。必要に応じてアレルギー検査(パッチテストや血液検査)や皮膚生検などの検査を組み合わせて診断します。
6-2. 治療期間と継続の大切さ
肌の赤みの治療は、「1回で劇的に変わる」ものではなく、原因の見極めと継続的な対応がカギです。特に酒さやアトピー性皮膚炎などの慢性疾患は、数か月から年単位の管理が必要になることがあります。
良くなったからと言って自己判断で薬を中止しないようにしましょう。再発を防ぐためには、医師の指示に従って治療を継続することが大切です。
6-3. 治療の副作用とダウンタイム
各治療法には、それぞれ副作用やダウンタイムがあります。事前に確認しておくことが大切です。
Vビームレーザーの場合、施術後に赤みや腫れ、軽い内出血が起こることがありますが、多くは数日〜1週間で自然に落ち着きます。毛細血管拡張症の場合は強い出力でレーザーを照射するため、約1週間はむくみや腫れがあらわれやすくなります。
IPL治療の場合、照射後にシミが一時的に濃くなって見えることがありますが、これは光がターゲットに反応した証拠であり、数日〜1週間ほどで剥がれ落ちていきます。
ステロイド外用薬の長期使用では、皮膚が薄くなったり、毛細血管拡張が目立つようになったりする可能性があります。医師の指示に従って適切に使用することが重要です。
6-4. 費用について
肌の赤みの治療は、疾患や治療法によって保険適用になる場合とならない場合があります。
毛細血管拡張症に対するVビームレーザー治療は健康保険が適用となる場合があり、3割負担で約6,500〜8,000円程度(照射面積による)です。ただし、保険適用の基準は厳しくなっており、鼻や頬などの赤み治療は保険診療の対象外となることもあります。
酒さに対するメトロニダゾールゲルは保険適用です。アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬やタクロリムス軟膏なども保険適用となります。
美容目的の治療(シワ、たるみ、ニキビ跡の赤み、赤ら顔などの改善)は保険が適用されません。実際の料金はクリニックによって異なりますので、事前に確認しましょう。
第7章:皮膚科を受診するタイミング
7-1. このような症状があれば早めに受診を
以下のような場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
セルフケアを続けても赤みが改善しない場合、赤みが広がっている場合、かゆみや痛みを伴う場合、ほてりやヒリヒリ感が続く場合、赤みに加えてブツブツや膿疱ができている場合、市販薬を使っても効果がない場合、赤みの原因がわからない場合などです。
自宅でさまざまな対処をしても肌が赤い状態が続いているときには、「赤ら顔(酒さ)」などの皮膚の病気が関係しているかもしれません。専門的な治療を受けることで、効果的に症状を改善できる可能性があります。
7-2. 受診時に伝えるべきこと
皮膚科を受診する際には、以下の情報を伝えると診断に役立ちます。
いつから赤みが出ているか、どの部位に赤みがあるか、赤みが出るきっかけ(特定の化粧品を使った後、季節の変わり目、ストレスを感じたときなど)、かゆみや痛みの有無、これまでに使用した薬やスキンケア製品、アレルギーの有無、家族にアトピー性皮膚炎やアレルギー疾患がある人がいるかなどです。
可能であれば、症状が出ているときの写真を撮っておくと、診察時に参考になります。
第8章:大宮エリアで肌の赤みの治療を受けるには
8-1. 皮膚科選びのポイント
肌の赤みの治療を受ける際には、以下のポイントを参考にしてクリニックを選びましょう。
まず、専門医が在籍しているかどうかを確認しましょう。皮膚科専門医は日本皮膚科学会が認定した資格であり、専門的な知識と経験を持っています。
次に、赤みの原因に応じた複数の治療法に対応しているかを確認します。外用薬だけでなく、レーザー治療や光治療なども行っているクリニックであれば、症状に合わせた最適な治療を提案してもらえます。
また、カウンセリングが丁寧で、治療の目的や期待できる効果、リスク、費用について詳しく説明してくれるクリニックを選びましょう。疑問や不安を解消してから治療を始めることが大切です。
8-2. 当院での治療について
アイシークリニック大宮院では、肌の赤みでお悩みの方に対して、保険診療から自由診療まで幅広い治療オプションを提供しています。
まずは丁寧な診察を行い、赤みの原因を正確に診断します。酒さ、毛細血管拡張症、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ニキビ跡など、原因に応じた適切な治療法をご提案いたします。
外用薬による治療はもちろん、レーザー治療や光治療など、患者様の症状やご希望に合わせた治療が可能です。治療の効果やリスク、費用についても詳しくご説明いたしますので、安心してご相談ください。
大宮駅から徒歩2分とアクセスも便利です。肌の赤みでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
肌の赤みは、見た目の問題だけでなく、かゆみやほてりなどの不快な症状を伴うこともあり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。しかし、原因を正しく特定し、適切な治療を受けることで、多くの方が症状の改善を実感されています。
本記事でご紹介したように、肌の赤みの原因は酒さ、毛細血管拡張症、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ニキビ跡など多岐にわたります。それぞれの原因によって治療法が異なるため、自己判断でケアを続けるのではなく、皮膚科専門医による正確な診断を受けることが重要です。
日常生活では、正しい洗顔と保湿、紫外線対策、生活習慣の見直しなど、肌に優しいケアを心がけましょう。それでも改善しない場合や、症状が悪化する場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
皮膚科での治療には、外用薬、内服薬、レーザー治療、光治療など、さまざまな選択肢があります。症状や原因、患者様のご希望に合わせて、最適な治療法を選択することができます。
肌の赤みでお悩みの方は、一人で悩まずに、ぜひ専門医にご相談ください。適切な治療により、健康で美しい肌を取り戻すことができます。
参考文献
- 日本皮膚科学会「尋常性ざ瘡・酒さ治療ガイドライン2023」日皮会誌: 133(3), 407-450, 2023 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
- 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
- 日本アレルギー学会「アレルギーポータル – アトピー性皮膚炎」 https://allergyportal.jp/knowledge/atopic-dermatitis/
- 厚生労働省「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「酒さ」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/14-皮膚疾患/ざ瘡および関連疾患/酒さ
- MSDマニュアル家庭版「酒さ」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/にきびと関連疾患/酒さ
- 田辺三菱製薬「ヒフノコトサイト – 脂漏性皮膚炎」 https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/solution/757
- 田辺三菱製薬「ヒフノコトサイト – アトピー性皮膚炎」 https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/solution/740
- 持田ヘルスケア「スキンケア基礎知識 – 敏感肌の方に知ってほしい顔・肌の赤み」 https://hc.mochida.co.jp/basic_skincare/facecare/redness.html
- 大正製薬「TAISHO BEAUTY ONLINE – 肌の赤み」 https://taisho-beauty.jp/TB/shop/pages/article016.aspx
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務