鏡を見たとき、鼻の周りや小鼻に赤みが目立って気になったことはありませんか。メイクで隠そうとしても思うようにカバーできず、人前で顔を合わせることに抵抗を感じている方も少なくないでしょう。実は、このような鼻周辺の持続的な赤みは「毛細血管拡張症」という皮膚疾患である可能性があります。
毛細血管拡張症は自然に治癒することがほとんどなく、適切な治療を受けなければ症状が長引いてしまうケースが多いのが特徴です。しかし、近年はレーザー治療をはじめとするさまざまな治療法が確立されており、専門の医療機関で正しい診断と治療を受けることで、症状の改善が十分に期待できます。
本記事では、鼻の毛細血管拡張症について、その原因やメカニズム、セルフケアの方法、そして医療機関で受けられる治療法まで、幅広く詳しく解説していきます。大宮エリアで鼻の赤みにお悩みの方は、ぜひ最後までお読みいただき、適切な対処法を見つける参考にしてください。
目次
- 毛細血管拡張症とは
- 鼻に毛細血管拡張症が起こりやすい理由
- 毛細血管拡張症の原因とメカニズム
- 毛細血管拡張症と似た疾患との違い
- セルフケアと生活習慣の改善
- 医療機関で受けられる治療法
- Vビームレーザー治療について
- IPL光治療(フォトフェイシャル)について
- 保険適用の条件と費用
- 治療後のケアと注意点
- まとめ
1. 毛細血管拡張症とは
毛細血管拡張症とは、皮膚の真皮層に存在する毛細血管が何らかの原因により拡張し、皮膚表面から透けて見えるようになった状態を指します。通常、毛細血管は非常に細く、肉眼では確認できませんが、血管が拡張して血流量が増加すると、肌に赤みとなって現れます。
この疾患の大きな特徴として、炎症を伴わないことが挙げられます。ニキビや皮膚炎による赤みとは異なり、腫れやかゆみ、痛みなどの炎症症状がないにもかかわらず、赤みが持続するのが毛細血管拡張症の典型的なパターンです。また、一時的な赤みではなく、慢性的に症状が続くこと、そして自然治癒がほとんど期待できないことも重要な特徴です。
毛細血管拡張症は、主に以下のようなタイプに分類されます。
まず「単純型」は、盛り上がりがなく、赤色や青紫色の枝分かれのない血管拡張が見られる状態です。次に「樹枝状型」は、細い血管が樹木の枝のように広がって見えるタイプで、より血管の形状が明確に確認できます。そして「紅斑型」は、淡い発赤が広範囲に広がり、鼻や頬全体が赤みを帯びて見える状態で、複数のタイプが混在していることもあります。
いずれのタイプも、見た目の問題だけでなく、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与えることがあります。人前に出ることへの抵抗感や、コンプレックスによる精神的なストレスを抱える方も少なくありません。
2. 鼻に毛細血管拡張症が起こりやすい理由
顔の中でも特に鼻や頬の周辺は、毛細血管拡張症が発症しやすい部位として知られています。これにはいくつかの解剖学的・生理学的な理由があります。
第一に、鼻や頬は顔の中でも特に毛細血管が密集している部位です。血管が多く集まっているため、拡張が起こった際に赤みとして目立ちやすくなります。
第二に、鼻周辺の皮膚は他の部位と比較して薄いという特徴があります。皮膚が薄いということは、その下にある血管が透けて見えやすいということを意味します。加齢によって皮膚がさらに薄くなると、若い頃には気にならなかった血管拡張が徐々に目立つようになることもあります。
第三に、鼻は顔の中心に位置し、突出した形状をしているため、紫外線や外気温の変化、物理的な刺激(鼻をかむ、こするなど)を受けやすい部位です。これらの外的刺激の蓄積が、毛細血管の機能障害につながることがあります。
第四に、小鼻の周辺は皮脂腺が多く分布しており、皮脂分泌が活発な部位でもあります。過剰な皮脂が酸化して炎症を引き起こしたり、スキンケアの際に過度な摩擦が加わったりすることで、間接的に血管への負担が増加する可能性があります。
このような複合的な要因により、鼻周辺は毛細血管拡張症の好発部位となっています。
3. 毛細血管拡張症の原因とメカニズム
毛細血管拡張症を引き起こす正確なメカニズムは、現時点では完全には解明されていません。しかし、以下のような要因が発症や悪化に関与していると考えられています。
遺伝的要因と体質
生まれつき皮膚が薄い方や、色白で血管が透けやすい体質の方は、毛細血管拡張症を発症しやすい傾向があります。また、家族に同様の症状を持つ方がいる場合、遺伝的な素因が関係している可能性も指摘されています。
加齢による変化
年齢を重ねるにつれて、皮膚の弾力性は低下し、コラーゲンやエラスチンなどの線維成分が減少します。これに伴い皮膚は薄くなり、皮下脂肪も減少するため、毛細血管がより透けて見えやすくなります。また、血管壁自体も加齢によって弾力を失い、拡張しやすくなると考えられています。
寒暖差による影響
急激な温度変化にさらされると、毛細血管は体温を一定に保つために拡張と収縮を繰り返します。寒冷環境では血管が収縮して末梢への血流を減らし、温かい環境では拡張して熱を放散しようとします。このような拡張と収縮のサイクルを頻繁に繰り返すことで、血管が拡張したまま元に戻らなくなってしまうことがあります。
特に、冬場に暖房の効いた室内と寒い屋外を行き来する機会が多い方や、サウナや熱い湯船に入ることが多い方は、注意が必要です。
アルコールや刺激物の摂取
アルコールを摂取すると血管が拡張し、顔が赤くなることは広く知られています。日常的に飲酒量が多い方は、繰り返し血管が拡張することで、恒久的な毛細血管拡張につながるリスクがあります。
同様に、香辛料やカフェインなどの刺激物も交感神経を刺激して血流を増加させるため、過剰に摂取すると毛細血管拡張症を悪化させる可能性があります。
紫外線の影響
紫外線は皮膚にさまざまなダメージを与えますが、毛細血管にも悪影響を及ぼします。長期間にわたって紫外線を浴び続けると、血管壁がダメージを受けて拡張しやすくなります。また、紫外線による皮膚の光老化は、コラーゲンの減少を促進し、血管を支える組織が弱くなることで赤みが目立ちやすくなります。
ホルモンバランスの変化
妊娠中に顔や胸、首などに毛細血管拡張症が現れることがあり、女性ホルモンが関与していると考えられています。また、経口避妊薬やホルモン補充療法など、女性ホルモンを含む薬剤を使用している方にも同様の症状が見られることがあります。これらの薬剤を中止することで症状が改善するケースもあります。
ストレスと自律神経の乱れ
慢性的なストレスや睡眠不足は、自律神経のバランスを乱します。交感神経が優位になると血管の収縮と拡張のコントロールが適切に行われなくなり、毛細血管拡張症を悪化させる一因となります。
炎症後の変化
ニキビや皮膚炎などの炎症が繰り返し起こった部位では、炎症に伴う血管新生や既存の血管の拡張が起こります。炎症が治まった後も、拡張した血管がそのまま残って赤みとして見えることがあります。これは厳密には原発性の毛細血管拡張症とは異なりますが、見た目には同様の症状として現れます。
4. 毛細血管拡張症と似た疾患との違い
鼻や顔に赤みが生じる疾患は毛細血管拡張症だけではありません。適切な治療を受けるためには、正確な診断が不可欠です。ここでは、毛細血管拡張症と混同されやすい疾患について解説します。
酒さ(しゅさ)
酒さは、顔の中央部(鼻、頬、額、顎など)に持続的な赤みやほてり、ニキビに似た丘疹・膿疱が現れる慢性の炎症性皮膚疾患です。30代から50代の成人に発症しやすく、統計的には女性に多い傾向があります。
酒さと毛細血管拡張症の大きな違いは、酒さには炎症が伴うという点です。酒さでは、赤みに加えてヒリヒリとした刺激感やほてり、敏感肌の症状が現れることが多く、時にはニキビのような発疹を伴います。また、酒さは単なる血管の拡張だけでなく、免疫系の異常やニキビダニ(デモデックス)の関与など、複合的な要因が絡んでいると考えられています。
酒さには主に4つの病型があります。第1型の「紅斑毛細血管拡張型」は、顔の赤みと毛細血管拡張が中心の症状です。第2型の「丘疹膿疱型」は、赤みに加えてニキビのようなブツブツが見られます。第3型の「鼻瘤型」は、主に男性に見られ、鼻が凸凹と肥大して毛穴が目立つ症状です。第4型の「眼型」は、眼の周りの腫れや結膜炎、角膜炎を生じるタイプです。
酒さの原因ははっきりとは分かっていませんが、遺伝的要因、免疫系の異常、ニキビダニの関与などが指摘されています。アルコールや紫外線、寒暖差、ストレスなどで症状が悪化することが知られています。
酒さ様皮膚炎(ステロイド誘発性皮膚炎)
酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用薬を長期間にわたって顔に使用することで発症する皮膚炎です。酒さと同様に、赤み、丘疹、膿疱などの症状が現れます。口の周りや顎に症状が集中する場合は「口囲皮膚炎」と呼ばれることもあります。
治療の基本はステロイド外用薬の中止ですが、急に中止すると症状が一時的に悪化する「リバウンド現象」が起こることがあるため、医師の指導のもとで徐々に減量していく必要があります。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が活発な部位に発症する皮膚炎で、赤みやかゆみ、フケのような皮膚の剥離を伴います。マラセチアというカビの一種が発症に関与していると考えられています。
酒さや毛細血管拡張症との違いとして、脂漏性皮膚炎では毛細血管の拡張は見られず、皮膚の表面がガサガサとした状態になることが特徴です。また、酒さが顔の中央部に症状が現れやすいのに対し、脂漏性皮膚炎は眉、眉間、鼻の脇、耳の後ろ、頭皮などに好発します。
ニキビ(尋常性痤瘡)
ニキビは毛穴の詰まりと細菌の増殖によって引き起こされる炎症性疾患です。初期には面皰(コメド)と呼ばれる毛穴の詰まりが見られ、その後炎症を起こすと赤いニキビになります。
毛細血管拡張症やレーザー治療後の赤みは、ニキビ跡(炎症後紅斑)として残ることもありますが、これはニキビそのものとは区別されます。また、酒さの丘疹膿疱型はニキビと見分けがつきにくいことがありますが、酒さでは面皰が見られないという点が鑑別のポイントになります。
これらの疾患は治療法が異なるため、自己判断せずに皮膚科専門医の診察を受けることが重要です。
5. セルフケアと生活習慣の改善
毛細血管拡張症の根本的な治療には医療機関での施術が必要ですが、日常生活でのセルフケアによって症状の悪化を防ぎ、治療効果を高めることができます。
正しい洗顔方法
洗顔は肌を清潔に保つために重要ですが、誤った方法は毛細血管拡張症を悪化させる原因になります。
まず、洗顔料は刺激の少ない弱酸性のものを選び、十分に泡立ててから使用します。泡立てが不十分な状態で顔をこすると、摩擦によって皮膚と血管にダメージを与えてしまいます。指と肌の間に泡のクッションを置くイメージで、やさしくなでるように洗いましょう。
洗顔に使用するお湯の温度も重要です。熱すぎるお湯は血管を拡張させ、冷水は急激な収縮を引き起こします。ぬるま湯(体温と同程度の温度)を使用し、急激な温度変化を避けることが大切です。
スクラブ入りの洗顔料や、毛穴パックなどの刺激の強いケアは避けてください。鼻周辺の皮膚はデリケートなため、過度なケアはかえって症状を悪化させます。
適切な保湿ケア
洗顔後は速やかに保湿ケアを行いましょう。乾燥した肌はバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなります。
化粧水や美容液は、手のひらで温めてから、優しく押さえるようにして肌になじませます。パッティングするように叩きつけたり、強くこすったりすることは避けてください。
保湿成分としては、セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどを含む製品がおすすめです。また、ビタミンC誘導体は毛穴の引き締めや皮脂の酸化防止、抗炎症作用が期待できるため、小鼻の赤みが気になる方に適しています。
ただし、毛細血管拡張症や酒さの方の中には、過剰な保湿がかえって症状を悪化させるケースもあります。肌の状態を見ながら、自分に合ったケアを見つけることが大切です。
紫外線対策
紫外線は毛細血管拡張症を悪化させる大きな要因です。外出時には日焼け止めを塗り、日傘や帽子を活用して紫外線を防ぎましょう。
日焼け止めは、肌に刺激の少ない敏感肌用のものを選び、こすらずにやさしく塗布します。また、曇りの日や室内でも紫外線は降り注いでいるため、日常的に紫外線対策を心がけることが重要です。
寒暖差への対策
急激な温度変化は血管の拡張と収縮を繰り返し引き起こし、毛細血管拡張症の悪化につながります。
冬場は、暖房の効いた室内から外出する際にマフラーやマスクで顔を保護するとよいでしょう。また、サウナや長時間の入浴、熱いシャワーを顔に直接当てることは避けてください。
食事と栄養
バランスの取れた食事は、健康な肌を維持するために欠かせません。特に、肌のターンオーバーを正常化し、皮脂分泌をコントロールするビタミンB群(豚肉、納豆、乳製品などに多く含まれる)は意識して摂取したい栄養素です。
また、肌の健康維持に重要なビタミンAやビタミンCを豊富に含む緑黄色野菜も積極的に取り入れましょう。
一方、アルコールや香辛料などの刺激物、脂っこい食事やジャンクフードは、血管拡張や皮脂分泌の増加を招くため、控えめにすることをおすすめします。
睡眠とストレス管理
十分な睡眠は肌のターンオーバーを促進し、バリア機能の維持に役立ちます。毎日6時間以上の睡眠を確保するよう心がけましょう。
また、慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管のコントロール機能に影響を与えます。適度な運動やリラクゼーション法を取り入れて、ストレスを上手に解消することも大切です。
メイクでのカバー方法
症状が気になる間は、メイクで赤みをカバーすることもできます。グリーンのコントロールカラーは、赤の補色として赤みを打ち消す効果があります。少量を赤みの気になる部分に薄く塗り、上からファンデーションを重ねると自然にカバーできます。
ただし、厚塗りは皮脂と化粧品が混ざって酸化し、かえって肌トラブルを引き起こす可能性があります。できるだけ薄づきを心がけ、帰宅後はすぐにメイクを落とすようにしましょう。
6. 医療機関で受けられる治療法
セルフケアだけでは毛細血管拡張症を根本的に改善することは難しいため、持続する赤みには医療機関での治療が推奨されます。ここでは、主な治療法について解説します。
レーザー治療
毛細血管拡張症の治療において、最も効果的とされているのがレーザー治療です。代表的なものとして「Vビーム(色素レーザー/ダイレーザー)」があります。
Vビームは血液中のヘモグロビンに反応するレーザー光を照射し、拡張した血管を選択的に破壊します。周囲の正常な組織へのダメージが少なく、高い治療効果が期待できます。
Vビームによる治療は、毛細血管拡張症と診断された場合、保険適用で受けることができます(詳細は後述)。
IPL光治療(フォトフェイシャル)
IPL(Intense Pulsed Light:インテンス・パルス・ライト)治療は、複数の波長を含む光を肌に照射することで、さまざまな肌トラブルを改善する治療法です。
IPLの光はメラニン色素やヘモグロビンに反応するため、シミ・そばかすの改善と同時に、毛細血管拡張による赤みにも効果を発揮します。レーザーと比較するとマイルドな治療で、ダウンタイムが少ないのが特徴です。
ただし、毛細血管拡張症に対する効果はVビームレーザーの方が高いとされています。また、IPL治療は保険適用外の自由診療となります。
外用薬による治療
2022年5月、メトロニダゾールを有効成分とする「ロゼックスゲル0.75%」が酒さに対して保険適用となりました。これは世界80カ国以上で承認されている酒さの標準治療薬で、日本でも酒さ治療の選択肢が広がりました。
ロゼックスゲルは、抗菌作用と抗炎症作用を持ち、酒さの丘疹・膿疱(ニキビのようなブツブツ)の改善に効果があります。また、酒さの一因とされるニキビダニ(デモデックス)の過剰繁殖を抑える作用もあります。
ただし、ロゼックスゲルは毛細血管拡張そのものを改善する効果は限定的です。赤みの根本的な改善にはレーザー治療が必要となることが多いため、症状に応じて治療法を組み合わせることがあります。
内服薬による治療
酒さで丘疹や膿疱を伴う場合には、抗生物質(テトラサイクリン系など)の内服が行われることがあります。これは主に抗炎症作用を目的としており、12週間程度の投与が一般的です。
また、漢方薬が処方されることもあります。患者さんの体質や症状に応じて、複数の治療法を組み合わせて対応することが多いです。
7. Vビームレーザー治療について
Vビームは毛細血管拡張症の治療において、最も効果的な治療法の一つとして広く用いられています。ここでは、Vビームの作用メカニズムや治療の流れについて詳しく解説します。
Vビームの作用メカニズム
Vビームは「色素レーザー」または「ダイレーザー」と呼ばれる種類のレーザーで、595nmという波長を持っています。この波長は、血液中の酸化ヘモグロビン(赤血球に含まれる赤い色素)に効率よく吸収されるという特性があります。
治療のメカニズムは以下の通りです。まず、Vビームのレーザー光を皮膚に照射すると、光は表皮と真皮を透過して毛細血管内の血液に到達します。次に、レーザー光が血液中のヘモグロビンに吸収されると、光エネルギーが熱エネルギーに変換されます。この熱によって血管内壁が損傷を受け、血管が閉塞します。損傷を受けた血管組織は、やがてマクロファージによって貪食され、正常な組織に置き換えられていきます。
重要な点は、Vビームは赤い色素に選択的に反応するため、周囲の正常な皮膚組織へのダメージが最小限に抑えられるということです。これにより、安全性の高い治療が可能になっています。
また、Vビームには「DCD(Dynamic Cooling Device)」と呼ばれる皮膚冷却システムが搭載されています。レーザー照射の直前に冷却ガスが噴射されることで、皮膚表面を保護しながら効果的な治療を行うことができます。これにより、痛みやダウンタイムが軽減されるとともに、安全に高い出力で治療することが可能になりました。
治療の流れ
Vビーム治療は通常、以下のような流れで行われます。
最初に診察を行い、医師が患部の状態を確認します。毛細血管拡張症かどうかの診断を行い、治療の適応があるかを判断します。また、治療内容やリスク、保険適用の有無などについて説明を受けます。
治療当日は、まず洗顔やクレンジングでメイクや汚れを落とします。必要に応じて局所麻酔(麻酔クリームなど)を使用することもありますが、Vビームは冷却システムを搭載しているため、多くの場合は麻酔なしでも耐えられる程度の痛みです。
レーザー照射は、照射範囲にもよりますが5〜10分程度で終了します。照射時には「ゴムで弾かれたような」軽い刺激を感じますが、強い痛みはほとんどありません。
照射後は、必要に応じて冷却やケアを行います。洗顔・メイク・入浴は当日から可能なことが多いですが、紫外線対策をしっかり行うことが重要です。
ダウンタイムと副作用
Vビーム治療後には、以下のような症状が現れることがありますが、いずれも一時的なものです。
治療直後から数時間〜2日程度は、照射部位に赤みやほてりが生じることがあります。保冷剤などでクーリングすると症状が和らぎます。また、むくみや腫れが1日〜1週間程度続くことがありますが、鼻への照射ではあまり目立たないことが多いです。
出力を上げて照射した場合や、血管壁が弱い方では、紫斑(内出血)が生じることがあります。これは1〜2週間程度で自然に消退します。血液サラサラのお薬を服用している方は、紫斑が出やすい傾向があります。
稀に、水疱やかさぶたが形成されることがあります。もとの赤みが強い場合や、高出力で照射した場合に起こりやすく、炎症後色素沈着を予防するために慎重なアフターケアが必要です。
治療回数と間隔
1回のVビーム治療で完全に赤みが消失することは稀で、通常は複数回の照射が必要です。
保険適用で治療を受ける場合、治療間隔は3カ月に1回と定められています。一般的には3〜5回程度の治療で効果を実感できることが多いですが、症状の程度によってはそれ以上の回数が必要になることもあります。
自由診療の場合は、1カ月程度の間隔で治療を受けることが可能です。より短期間で治療を終えたい方には適していますが、費用は全額自己負担となります。
Vビームによる治療は毛細血管拡張症の根本原因に対する治療ではなく、症状を改善する対症療法です。そのため、一度改善しても時間の経過とともに再発する可能性があります。治療終了後も、生活習慣の改善や適切なスキンケアを継続することが大切です。
8. IPL光治療(フォトフェイシャル)について
IPL治療は、レーザーとは異なる「複数の波長を含む広帯域の光」を使用した治療法です。フォトフェイシャルやフォトRFなどの名称で呼ばれることもあります。
IPL治療の特徴
IPLはIntense Pulsed Light(インテンス・パルス・ライト)の略で、カメラのフラッシュのような光を肌に照射します。この光は500〜1200nm程度の幅広い波長を含んでおり、フィルターを使い分けることで、さまざまな肌トラブルにアプローチすることができます。
IPLの光は、メラニン色素とヘモグロビンの両方に反応します。そのため、シミ・そばかす・くすみの改善と、毛細血管拡張による赤みの改善を同時に行うことができます。また、真皮層に届いた光が線維芽細胞を刺激し、コラーゲンの産生を促すことで、肌のハリや毛穴の引き締め効果も期待できます。
Vビームとの違い
Vビームが単一波長(595nm)のレーザー光を使用するのに対し、IPLは複数の波長を含む光を使用します。そのため、以下のような特徴の違いがあります。
まず、血管病変に対する効果という点では、Vビームの方がヘモグロビンへの選択性が高く、毛細血管拡張症に対しては高い効果を発揮します。一方、IPLは効果がマイルドですが、赤みだけでなくシミや肌質改善など複合的なアプローチが可能です。
ダウンタイムについては、IPLの方が一般的に少なく、施術後すぐにメイクが可能なことが多いです。Vビームは症状や出力によっては紫斑が出ることがありますが、IPLではそのリスクは低くなります。
保険適用の面では、Vビームは毛細血管拡張症と診断された場合に保険適用となりますが、IPL治療は美容目的とみなされ、保険適用外(自由診療)となります。
治療の選択は、症状の程度、優先したい効果、費用、ダウンタイムの許容度などを考慮して、医師と相談のうえで決定することをおすすめします。
IPL治療の流れと回数
IPL治療は通常、3〜4週間に1回のペースで、5回以上の施術が推奨されています。1回の施術でも改善を実感できる方もいますが、肌のターンオーバーを促しながら徐々に症状を改善していく治療法のため、継続して通うことが効果を実感する鍵となります。
施術時間は顔全体で15〜20分程度です。痛みは「ゴムで軽く弾かれる程度」と表現されることが多く、冷却機能を備えた機器では痛みがさらに軽減されます。
9. 保険適用の条件と費用
毛細血管拡張症の治療において、費用は多くの患者さんにとって重要な関心事です。ここでは、保険適用の条件と費用の目安について解説します。
保険適用となる疾患
Vビームレーザー治療が保険適用となるのは、以下の3つの疾患と診断された場合です。
1つ目は「毛細血管拡張症」で、何らかの原因により毛細血管が拡張し、皮膚表面から赤みとして見える状態です。炎症を伴わない持続的な赤みが特徴です。
2つ目は「単純性血管腫(ポートワイン血管腫)」で、生まれつき存在する赤や紫色の平らなあざです。自然に治癒することはなく、放置すると色が濃くなったり、血管が浮き出て肥厚したりすることがあります。
3つ目は「乳児血管腫(いちご状血管腫)」で、生後間もなく赤ちゃんに発症するあざです。自然に消退する可能性もありますが、早期からの治療が推奨されています。
これらの疾患であると医師に診断された場合、保険適用でVビーム治療を受けることができます。
保険適用外となるケース
一方、以下のような場合は保険適用外(自由診療)となります。
酒さ、赤ら顔、アトピー性皮膚炎に伴う赤みは保険適用外です。酒さについては、Vビーム治療ではなくロゼックスゲル(外用薬)や内服薬による治療が保険適用となります。
ステロイドの長期使用による毛細血管拡張(酒さ様皮膚炎)も保険適用外となります。また、老人性血管腫、ニキビやニキビ跡の赤み、傷跡の赤み、シミ・くすみ・小じわの改善など、美容目的の治療も自由診療となります。
保険適用と定められた治療間隔(3カ月に1回)を守らず、より短い間隔で治療を希望する場合も自由診療となります。
保険適用の場合の費用
保険適用でVビーム治療を受ける場合、費用は国で定められているため、どのクリニックでも同じです。
3割負担の場合、照射面積が10cm²以内であれば1回あたり約6,510円となります。面積が10cm²を超える場合は、10cm²ごとに約1,500円が加算されます。上限は180cm²で、その場合は約33,640円となります。
このほか、初診料・再診料、麻酔料などが別途必要となります。
自由診療の場合の費用
自由診療の場合は、クリニックによって料金設定が異なります。一般的な目安としては、顔全体で1回あたり15,000〜40,000円程度、部分的な照射で5,000〜20,000円程度となります。
自由診療では治療間隔に制限がないため、1カ月程度の間隔で治療を受けることができます。短期間で治療を終えたい方には適していますが、費用は全額自己負担となることを理解しておく必要があります。
IPL治療の費用
IPL治療は保険適用外のため、すべて自由診療となります。費用はクリニックや使用機器によって異なりますが、顔全体で1回あたり15,000〜40,000円程度が一般的です。5回以上のコースで割引が適用されることもあります。
10. 治療後のケアと注意点
レーザーやIPL治療後の肌は一時的にデリケートな状態になっています。治療効果を最大限に引き出し、副作用を防ぐために、以下の点に注意してケアを行いましょう。
紫外線対策
治療後の肌は紫外線の影響を受けやすくなっています。治療前後1カ月間は特に注意が必要です。
日焼け止めを毎日欠かさず塗り、日傘や帽子を活用して紫外線を避けましょう。日焼け止めは低刺激性のものを選び、こすらずにやさしく塗布することが大切です。
過度に日焼けしている場合は、施術自体をお断りされることもあります。
保湿ケア
治療後は肌が乾燥しやすくなるため、十分な保湿を心がけましょう。ただし、レチノールや高濃度ビタミンC、アルコールなど刺激の強い成分を含む製品は避け、低刺激で保湿力の高いアイテムを使用することをおすすめします。
摩擦を避ける
治療部位を強くこすったり、ピーリングやスクラブなどの刺激の強いケアを行ったりすることは避けてください。かさぶたが形成された場合も、無理に剥がさず自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。
入浴・運動について
治療当日は長湯や激しい運動、飲酒を避けることをおすすめします。これらは血流を増加させ、赤みやむくみ、内出血を悪化させる可能性があります。
シャワーや軽い入浴は当日から可能なことが多いですが、熱いお湯を直接患部に当てることは避けてください。
経過観察と再受診
治療後に予期しない症状(強い痛み、水疱、ひどい腫れなど)が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡しましょう。
次回の治療は、保険適用の場合は3カ月後、自由診療の場合は医師の指示に従って予約を取ります。

まとめ
鼻の毛細血管拡張症は、多くの方が悩んでいる肌トラブルですが、近年は治療法が確立され、適切な医療機関で診断と治療を受けることで症状の改善が十分に期待できるようになっています。
毛細血管拡張症は自然に治癒することがほとんどなく、セルフケアだけでは根本的な改善は難しい疾患です。持続する赤みが気になる場合は、まず専門医の診察を受けて、正確な診断を得ることが重要です。毛細血管拡張症と酒さ、脂漏性皮膚炎などは症状が似ていても治療法が異なるため、自己判断は避けましょう。
Vビームレーザー治療は毛細血管拡張症に対して高い効果を発揮し、条件を満たせば保険適用で治療を受けることができます。複数回の治療が必要となりますが、着実に症状の改善が期待できます。
日常生活では、紫外線対策、寒暖差への対応、適切なスキンケア、バランスの取れた食事、十分な睡眠など、悪化要因を避ける生活習慣を心がけることで、治療効果を高め、再発を予防することができます。
大宮エリアで鼻の赤みや毛細血管拡張症にお悩みの方は、ぜひ専門の医療機関にご相談ください。アイシークリニック大宮院では、経験豊富な医師が患者さん一人ひとりの症状に合わせた最適な治療プランをご提案いたします。
参考文献
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」日本皮膚科学会雑誌 133(3), 407-450, 2023 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/133/3/133_407/_article/-char/ja
- 日本皮膚科学会 一般公開ガイドライン https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=2
- 三村秀文ほか「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形 診療ガイドライン 2017 第2版」平成26-28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業, 2017
- 清水宏「あたらしい皮膚科学 第3版」中山書店, 2018
- 厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要」2024
- Mindsガイドラインライブラリ「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」 https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00827/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務