はじめに
近年、糖尿病治療薬として注目を集めているマンジャロ(一般名:チルゼパチド)。その優れた血糖降下作用と体重減少効果から、2型糖尿病患者さんの治療選択肢として大きな期待が寄せられています。しかし、どんな薬にも必ずメリットとデメリットが存在します。
この記事では、マンジャロのデメリットや副作用、使用上の注意点について、アイシークリニック大宮院が医学的な根拠に基づいて詳しく解説します。マンジャロの使用を検討している方、現在使用中で不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。
マンジャロとは?基本的な知識
マンジャロは、有効成分チルゼパチドを含む週1回投与の注射薬です。世界で初めて承認されたGIP/GLP-1受容体作動薬として、2つのホルモン(GIPとGLP-1)に同時に作用する画期的な薬剤です。
日本では2023年4月に2型糖尿病治療薬として承認され、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgの6つの用量規格が販売されています。日本糖尿病学会の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」にも記載され、肥満を伴う2型糖尿病患者さんの治療選択肢として位置づけられています。
マンジャロの作用メカニズム
マンジャロは以下の3つの主要な作用により、血糖値を改善し体重を減少させます:
- 血糖依存性のインスリン分泌促進:血糖値が高い時にのみインスリンの分泌を促進
- 食欲抑制作用:脳の視床下部(満腹中枢)に作用し、自然に食欲を低下
- 胃排出遅延作用:胃の動きを緩やかにし、満腹感を持続
これらの作用により、従来のGLP-1受容体作動薬よりも強力な血糖降下作用と体重減少効果が認められています。臨床試験では、HbA1cを約1.9%改善し、体重を約7kg減少させるという驚異的な効果が報告されています。
マンジャロの主なデメリット
1. 消化器系の副作用が高頻度で発現
マンジャロで最も多く報告されているデメリットは、消化器系の副作用です。国内臨床試験では、以下のような頻度で副作用が報告されています:
主な消化器症状
- 吐き気(悪心):約5人に1人(20.4%)が経験
- 下痢:約10〜15%の患者さんに発現
- 便秘:約5〜10%の患者さんに発現
- 嘔吐:約5〜10%の患者さんに発現
- 腹痛・腹部不快感:約5〜10%の患者さんに発現
- 食欲減退:多くの患者さんが経験
- 消化不良・胃もたれ:食後の不快感
これらの症状は、マンジャロが胃腸の動きを緩やかにする作用によって引き起こされます。特に治療開始直後や用量を増量した時に出現しやすく、2〜4週間でピークを迎える傾向があります。
多くの場合、体が薬に慣れるにつれて症状は徐々に軽減していきますが、個人差が大きく、症状が長引いたり、日常生活に支障をきたすケースもあります。仕事や家事に影響が出るほど辛い場合は、決して我慢せず、早めに医師に相談することが重要です。
2. 重大な副作用のリスク
頻度は低いものの、マンジャロには以下のような重大な副作用が報告されています。これらは生命に関わる可能性があるため、十分な注意が必要です。
急性膵炎(0.1%未満)
急性膵炎は、膵臓が急激に炎症を起こす病気で、マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬で注意すべき副作用の一つです。日本イーライリリー株式会社の添付文書によると、発現頻度は0.1%未満とされていますが、発症すると重篤化する可能性があります。
急性膵炎の主な症状:
- 上腹部から背中にかけての持続的な激しい痛み
- 我慢できないほどの強い腹痛
- 吐き気・嘔吐(痛みに伴って発現)
- 発熱
- 腹部の張り
これらの症状が現れた場合は、直ちにマンジャロの使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。特に、過去に膵炎の既往がある方や胆石をお持ちの方は、膵炎のリスクが高まる可能性があるため、マンジャロ投与前に必ず医師に伝えてください。
なお、最近の研究では、GLP-1受容体作動薬と膵炎の因果関係については明確なエビデンスが不足しているとの報告もあり、むしろ膵炎リスクを低減する可能性を示唆する研究結果も発表されています。
胆嚢炎・胆管炎・胆石症
マンジャロの使用により、胆嚢や胆管に関連する疾患のリスクが指摘されています。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の報告によると、以下の症状に注意が必要です:
- 胆嚢炎(頻度不明):右上腹部の痛み、発熱
- 胆管炎(0.1%未満):右上腹部の痛み、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、発熱
- 胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明):黄疸症状
- 胆石症:食欲減退が強い場合、胆汁が停滞して胆石が形成されるリスク
これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、必要に応じて画像検査(超音波検査やCTなど)を受けることが重要です。
低血糖
マンジャロは血糖依存性にインスリン分泌を促進するため、単独使用では低血糖のリスは比較的低いとされています。しかし、他の糖尿病治療薬(特にSU薬やインスリン製剤)と併用する場合は、低血糖のリスクが大幅に上昇します。
低血糖の主な症状:
- 冷や汗、手足の震え
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 強い空腹感
- 脱力感、倦怠感
- 頭痛、めまい
- 顔面蒼白
- 視覚異常(目がかすむ)
- 重症の場合:意識消失
低血糖症状が現れた場合は、直ちにブドウ糖(10g程度)を摂取してください。ブドウ糖がない場合は、糖分を含むジュースやラムネ菓子でも代用できます(ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤を併用している場合は必ずブドウ糖を使用)。
万が一に備えて、低血糖時の対処用にブドウ糖を常に携帯しておくことをお勧めします。
その他の重大な副作用
- 腸閉塞(イレウス)(頻度不明):高度な便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐
- アナフィラキシー・血管性浮腫(頻度不明):呼吸困難、全身の発疹、急激な腫れ
- 糖尿病網膜症の悪化:急激な血糖値の改善により一時的に網膜症が悪化する可能性
3. 注射部位の反応
マンジャロは週1回の皮下注射で投与されるため、注射部位に関連する副作用が発現することがあります:
- 注射部位の痛み:注射時やその後の痛み
- 注射部位の腫れ・赤み:局所的な炎症反応
- 注射部位のかゆみ:アレルギー反応の可能性
- 注射部位の硬結:皮下組織の硬化
多くの場合、これらの症状は一時的で軽度ですが、症状が長引いたり悪化したりする場合は、医師に相談してください。特に、広範囲の腫れや発疹、呼吸困難などが現れた場合は、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応の可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。
4. 注射の手技に関する負担
マンジャロは専用の注入器で簡単に操作できる設計になっていますが、それでも自己注射に慣れていない方にとっては心理的・技術的な負担となる場合があります:
- 注射への恐怖感や不快感
- 注射の手技を習得する必要性
- 週1回の注射を忘れないよう管理する必要性
- 注射針の適切な廃棄方法の理解と実践
ただし、マンジャロの注入器は針が細く、注射の痛みはインスリン注射程度かそれ以下です。多くの患者さんが「思ったより平気だった」とおっしゃっています。不安な場合は、初回時に医師や看護師から丁寧な指導を受けることで、安心して自己注射を始められます。
5. その他の副作用
上記以外にも、以下のような副作用が報告されています:
- 疲労感・倦怠感:体のだるさ、疲れやすさ
- 頭痛:一部の患者さんで報告
- めまい:立ちくらみなど
- 味覚異常:味覚の変化
- 体重減少:治療目的によっては望ましい効果ですが、過度な体重減少は問題
- リパーゼ・膵アミラーゼの上昇:血液検査での異常値
- 発疹・湿疹:皮膚症状
- 筋肉痛:一部の患者さんで報告
副作用が出やすい時期と持続期間
副作用の発現時期
マンジャロの副作用、特に消化器症状は、以下のタイミングで発現しやすいことが知られています:
- 治療開始直後(初回投与から数日〜2週間)
- 用量増量時(増量後の最初の1〜2週間)
これは、体が薬に慣れるまでに時間がかかるためです。多くの患者さんでは、投与開始から2〜4週間で副作用がピークに達し、その後徐々に軽減していきます。
副作用の持続期間
マンジャロの消化器系副作用は、多くの場合一時的なものです:
- 軽度の副作用:2〜4週間で自然に軽減することが多い
- 中等度の副作用:1〜2ヶ月程度続くことがある
- 重度の副作用:医師の介入が必要
ただし、個人差が大きく、体質や生活習慣、投与量によっても異なります。症状が長引く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、用量調整や対症療法の検討が必要です。
国内外の臨床試験では、10代の患者さんを対象とした研究でも、副作用は軽度から中等度の胃腸症状であり、治療を続けるうちに時間とともに減少することが確認されています。
マンジャロの費用面でのデメリット
保険適用の場合の費用
マンジャロは2型糖尿病治療薬として保険適用されていますが、使用目的によって費用が大きく異なる点に注意が必要です。
保険適用(3割負担)の場合の月額費用目安:
| 用量 | 薬剤費(月額) | 診察料・検査料込み |
|---|---|---|
| 2.5mg | 約3,000〜5,000円 | 約5,000〜15,000円 |
| 5mg | 約6,000〜10,000円 | 約10,000〜20,000円 |
| 10mg | 約12,000〜20,000円 | 約15,000〜25,000円 |
| 15mg | 約18,000〜30,000円 | 約20,000〜35,000円 |
※初回は検査費用などが加わるため、やや高額になります ※4ヶ月目以降は導入初期加算がなくなり、費用が安定します
保険適用を受けるには、以下の条件を満たす必要があります:
- 医師から「2型糖尿病」と診断されていること
- 食事療法・運動療法だけでは血糖コントロールが不十分であること
- 医師が医学的に必要と判断した場合
保険適用外(自由診療)の場合の高額な費用
美容やダイエット目的でマンジャロを使用する場合は保険適用外となり、全額自己負担となります。これは日本の医療保険制度において、マンジャロは「2型糖尿病治療薬」としてのみ承認されているためです。
自由診療の場合の月額費用相場:
| 用量 | 月額費用(目安) |
|---|---|
| 2.5mg | 約20,000〜30,000円 |
| 5mg | 約30,000〜40,000円 |
| 10mg | 約60,000〜80,000円 |
| 15mg | 約80,000〜100,000円 |
※クリニックによって価格設定が異なります ※診察料、配送料(オンライン診療の場合)、冷蔵保存用の梱包費用などが別途かかる場合があります
保険診療と比較すると、自由診療では4〜6倍以上の費用負担となるケースが一般的です。長期間の使用を考えると、経済的な負担は非常に大きくなります。
日本糖尿病学会の見解
日本糖尿病学会は2023年4月に「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」を公表し、**「糖尿病がない方へのダイエット目的の使用は認められない」**と明確に警告しています。
適応外使用には以下のようなリスクがあります:
- 医学的な適応がない場合の副作用リスク
- 国の医薬品副作用救済制度の対象外となる
- 高額な費用負担
- 科学的なエビデンスの不足
使用上の注意点とデメリット
使用できない方(禁忌)
以下に該当する方は、マンジャロを使用できません:
- マンジャロの成分に過敏症の既往歴がある方
- 1型糖尿病の患者
- 糖尿病性ケトアシドーシスの既往がある方
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者
慎重投与が必要な方
以下に該当する方は、特に慎重な使用が必要です:
- 重度の胃腸障害(重症胃不全麻痺など)がある方
- 胃腸障害の症状が悪化するおそれ
- 膵炎の既往歴がある方
- 膵炎が再発するリスクが高まる可能性
- 国内外の臨床試験では膵炎の既往がある方は除外されており、安全性が十分に確認されていない
- 胆石症や胆嚢疾患の既往がある方
- 症状が悪化するリスク
- 甲状腺疾患がある方
- 症状に影響を与える可能性
- 低血糖を起こしやすい状態にある方
- 脳下垂体機能不全または副腎機能不全
- 栄養不良状態、飢餓状態
- 不規則な食事摂取、食事摂取量不足
- 激しい筋肉運動
- 過度のアルコール摂取
- 糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫がある方
- 急激な血糖改善により一時的に悪化する可能性
- 腹部手術の既往やイレウスの既往がある方
- 腸閉塞のリスク
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方・授乳中の方
- 安全性が確立されていない
- 妊娠を希望する場合は、事前に医師に相談を
- 高齢者
- 腎機能や肝機能が低下していることが多い
- 副作用が出やすい可能性
他の薬との相互作用
マンジャロは他の薬剤と併用する際に、以下のような相互作用に注意が必要です:
- SU薬(スルホニル尿素薬)・インスリン製剤との併用
- 低血糖のリスクが大幅に上昇
- 用量調整が必要な場合が多い
- 経口避妊薬(ピル)
- マンジャロが胃排出を遅延させるため、ピルの吸収が遅れる可能性
- 避妊効果に影響する可能性があるため、他の避妊方法の併用を検討
- ワルファリン(抗凝固薬)
- 出血傾向の報告あり
- 定期的な血液検査でINR値のモニタリングが必要
- DPP-4阻害剤
- 同じ作用機序を持つため、併用の有効性・安全性が確認されていない
- 基本的に併用は推奨されない
- 他のチルゼパチド含有製剤(ゼップバウンド等)
- 重複投与となるため、併用禁止
リバウンドのリスク
マンジャロを使用して体重が減少した後、使用を中止するとリバウンドのリスクがあります。これは、マンジャロによる食欲抑制効果が薬の中止により徐々に失われ、元の食欲が戻るためです。
リバウンドを防ぐための対策
- 段階的な減量・中止
- 突然の中止は避け、徐々に薬を減量
- 医師の指導のもとで計画的に進める
- 生活習慣の改善を定着させる
- マンジャロ使用中に食事療法や運動習慣を身につける
- 減量後も健康的な生活習慣を継続
- 定期的なフォローアップ
- 使用中止後も定期的に医師の診察を受ける
- 体重や血糖値のモニタリングを継続
- 維持期の設定
- 目標体重達成後もすぐに中止せず、維持量での継続を検討
- 体重維持期間を設けることでリバウンドリスクを低減
特に十分な期間継続せず短期間でやめてしまうと、元の食欲が戻ってリバウンドしやすくなります。マンジャロは対症療法であり、根本的な体質改善ではないため、使用中止後の生活習慣管理が非常に重要です。
適応外使用(ダイエット目的使用)の問題点
現在、日本でマンジャロが承認されているのは**「2型糖尿病」のみ**です。しかし、体重減少効果が注目され、美容やダイエット目的で使用を希望する方が増えています。
適応外使用の主なリスクとデメリット
- 安全性・有効性が十分に検証されていない
- 厚生労働省も「適応外の目的での使用について、安全性・有効性が十分に検証されていない」と注意喚起
- 糖尿病でない方への長期使用データが限定的
- 副作用救済制度の対象外
- 保険適用外の使用で副作用が発生しても、国の医薬品副作用救済制度の対象にならない
- 治療費が全額自己負担となる可能性
- 高額な費用負担
- 前述の通り、月額数万円〜十万円程度の費用がかかる
- 長期的な経済的負担が非常に大きい
- 個人輸入のリスク
- インターネットでの個人輸入は偽造品や品質不良品のリスク
- 医師の処方なしでの使用は極めて危険
- 適切な副作用対応ができない
肥満症治療薬「ゼップバウンド」について
なお、マンジャロと同じ成分(チルゼパチド)を含む薬剤として「ゼップバウンド」が2024年に肥満症治療薬として日本で承認されました。ゼップバウンドは以下の条件を満たす場合に保険適用となります:
- BMI 35以上の高度肥満症、または
- BMI 27以上で、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有する肥満症
ただし、ゼップバウンドの処方には厳格な条件があり、日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会のいずれかの教育関連施設など、専門医療機関でのみ処方可能とされています。
副作用を軽減するための対策
マンジャロの副作用、特に消化器症状を軽減するためには、以下の対策が有効です:
1. 用量の段階的な増量
マンジャロは、2.5mgの少量から開始し、4週間ごとに2.5mgずつ増量することが推奨されています。これにより、体が薬に順応する時間を確保でき、副作用のリスクを最小限に抑えられます。
急激な増量は副作用を強く引き起こす可能性があるため、必ず医師の指示に従った用量調整を行ってください。
2. 食事内容の工夫
以下のような食事の工夫により、消化器症状を軽減できます:
- 脂肪分の多い食事を避ける:揚げ物、脂っこい料理は胃腸への負担が大きい
- 食事を小分けにする:1回の食事量を減らし、回数を増やす
- ゆっくりよく噛んで食べる:消化を助け、満腹感を適切に感じられる
- 満腹になったら無理に食べない:過食を避ける
- 刺激物を控える:香辛料の強い料理、カフェイン、アルコールを控えめに
3. 水分補給
下痢などの症状が出た場合、脱水症状を防ぐために水分をこまめに摂取することが重要です。ただし、一度に大量の水分を摂ると胃腸に負担がかかるため、少量ずつを意識しましょう。
4. 生活習慣の見直し
- 適度な運動:代謝を促進し、薬の効果をサポート
- 十分な睡眠:体の回復を促進
- ストレス管理:ストレスは消化器症状を悪化させる可能性
- 規則正しい生活リズム:食事や睡眠の時間を一定に保つ
5. 対症療法
副作用の症状が辛い場合、医師の判断により以下のような対症療法が検討されます:
- 制吐剤:吐き気や嘔吐に対して
- 整腸剤:下痢や便秘に対して
- 鎮痛剤:腹痛に対して(医師の指示のもとで)
症状が軽減しない場合や新たな副作用が出現した場合は、速やかに医師に相談しましょう。
6. 定期的な診察・検査
マンジャロ使用中は、定期的に医師の診察や血液検査を受けることが非常に重要です:
- 血糖値や体重の変化をチェック
- 副作用の早期発見
- HbA1c、肝機能、腎機能、膵酵素(リパーゼ・アミラーゼ)などの検査
- 眼底検査(糖尿病網膜症のある方)
自己判断で薬の量を増減したり中止したりすると、血糖コントロールが乱れたり予期せぬ副作用が出るリスクがあります。必ず医師の指示に従い、計画的に治療を進めましょう。
当院でのサポート体制
アイシークリニック大宮院では、マンジャロを使用される患者さんに対して、以下のようなサポート体制を整えています:
1. 丁寧な事前説明とカウンセリング
- マンジャロの効果とリスクについて、わかりやすく説明
- 患者さん一人ひとりの体質や既往歴に応じた適応判断
- 副作用への不安や疑問に丁寧に対応
- 期待できる効果と起こりうるデメリットの両面を説明
2. 定期的なフォローアップ
- 治療開始後の定期的な診察
- 血液検査による安全性のモニタリング
- 副作用の早期発見と迅速な対応
- 体重や血糖値の変化を継続的に評価
3. 副作用への迅速な対応
- 副作用が現れた際の対症療法の提供
- 必要に応じた用量調整
- より適した治療法への変更の検討
- 緊急時の対応体制
4. 生活指導とサポート
- 食事療法や運動療法の具体的なアドバイス
- リバウンドを防ぐための生活習慣改善支援
- 継続的な健康管理のサポート
マンジャロは効果的な薬剤ですが、副作用やデメリットも存在します。当院では、患者さんが安心して治療を受けられるよう、きめ細やかなサポートを提供しています。

よくある質問(FAQ)
A. 消化器系の副作用は、多くの場合、治療開始から2〜4週間でピークを迎え、その後徐々に軽減していきます。個人差はありますが、体が薬に慣れるにつれて症状は改善する傾向があります。症状が長引く場合や日常生活に支障をきたす場合は、医師に相談して用量調整や対症療法を検討してください。
A. 日本でマンジャロが承認されているのは「2型糖尿病」のみです。ダイエット目的での使用は保険適用外となり、全額自己負担(月額数万円〜十万円程度)となります。また、日本糖尿病学会は糖尿病がない方へのダイエット目的の使用を認めていません。安全性・有効性が十分に検証されておらず、副作用が出ても国の救済制度の対象外となります。
肥満症治療を希望される場合は、同じ成分の「ゼップバウンド」が肥満症治療薬として承認されていますが、処方には厳格な条件があります。
Q3. マンジャロの副作用が心配です。安全に使用できますか?
A. マンジャロは適切に使用すれば安全性の高い薬剤ですが、副作用のリスクはゼロではありません。重要なのは、医師の指導のもとで正しく使用し、定期的な診察・検査を受けることです。副作用が現れた場合も、早期に発見して適切に対処すれば、多くの場合、安全に治療を継続できます。
特に以下の点に注意してください:
- 自己判断での用量変更や中止をしない
- 副作用の兆候に注意し、異常を感じたらすぐに医師に連絡
- 定期的な血液検査や診察を必ず受ける
- 他の薬を服用する際は必ず医師に相談
Q4. マンジャロを使用中に注意すべき症状は?
A. 以下のような症状が現れた場合は、直ちに使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください:
- 激しい腹痛(特に上腹部から背中にかけての痛み)→ 急性膵炎の可能性
- 右上腹部の痛み、発熱、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)→ 胆嚢炎・胆管炎の可能性
- 高度な便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐→ 腸閉塞の可能性
- 呼吸困難、全身の発疹、急激な腫れ→ アナフィラキシーの可能性
- 低血糖症状(冷や汗、震え、動悸、強い空腹感)→ 特に他の糖尿病薬と併用時
Q5. マンジャロ使用後、やめるとリバウンドしますか?
A. マンジャロの使用を中止すると、食欲抑制効果が失われるため、リバウンドのリスクがあります。リバウンドを防ぐためには:
- 突然の中止を避け、医師の指導のもと段階的に減量
- マンジャロ使用中に食事療法や運動習慣を身につける
- 使用中止後も健康的な生活習慣を継続
- 定期的なフォローアップを受ける
特に短期間で使用をやめると、リバウンドしやすくなります。目標達成後も維持期を設け、徐々に薬を減量・中止することが推奨されます。
Q6. マンジャロの費用はどのくらいかかりますか?
A. 費用は使用目的によって大きく異なります:
保険適用(2型糖尿病治療)の場合(3割負担):
- 月額約5,000〜35,000円程度(用量により異なる)
- 診察料・検査料込み
保険適用外(ダイエット目的)の場合:
- 月額約20,000〜100,000円程度(用量により異なる)
- クリニックによって価格設定が異なる
- 診察料、配送料などが別途かかる場合がある
保険診療と比較すると、自由診療では4〜6倍以上の費用負担となります。
Q7. 他の薬と一緒に使用できますか?
A. 他の薬との併用には注意が必要です。特に以下の薬剤との併用時は注意してください:
- SU薬・インスリン製剤:低血糖のリスク増大
- 経口避妊薬:吸収が遅れる可能性
- ワルファリン:出血傾向のリスク
- DPP-4阻害剤:併用は基本的に推奨されない
現在服用中の薬がある場合は、必ず医師に伝えてください。
Q8. 妊娠中や授乳中でも使用できますか?
A. 妊娠中・授乳中のマンジャロ使用は推奨されていません。安全性が確立されていないためです。妊娠を希望する場合や、妊娠の可能性がある場合は、事前に必ず医師に相談してください。妊娠が判明した場合は、直ちに医師に連絡し、使用の継続について相談する必要があります。
まとめ
マンジャロは、2型糖尿病治療において優れた効果を発揮する革新的な薬剤ですが、以下のようなデメリットや注意点があることを理解しておく必要があります:
主なデメリット
- 消化器系副作用が高頻度(吐き気、下痢、便秘など:20〜30%の患者さんが経験)
- 重大な副作用のリスク(急性膵炎、胆嚢炎、低血糖など)
- 注射による負担(週1回の自己注射が必要)
- 高額な費用(特に保険適用外の場合、月額数万円〜十万円程度)
- 適応外使用のリスク(ダイエット目的での使用は安全性が未確立)
- リバウンドの可能性(使用中止後に体重が戻るリスク)
- 長期使用データの限定性(新しい薬剤のため長期的な影響が不明)
安全に使用するために
マンジャロを安全に使用するためには、以下の点が重要です:
- 医師の診断と指導のもとで使用する
- 定期的な診察・検査を必ず受ける
- 副作用の兆候に注意し、異常を感じたらすぐに医師に相談する
- 自己判断での用量変更や中止をしない
- 他の薬を服用する際は必ず医師に相談する
- 生活習慣の改善を並行して行う(食事療法・運動療法)
最後に
マンジャロは、適切に使用すれば2型糖尿病患者さんにとって非常に有益な治療選択肢です。しかし、すべての患者さんに適しているわけではなく、副作用やデメリットも存在します。
アイシークリニック大宮院では、患者さん一人ひとりの状態に応じて、マンジャロが適切な治療法かどうかを慎重に判断し、安全で効果的な治療を提供しています。マンジャロの使用を検討している方、現在使用中で不安や疑問をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
医師が丁寧に診察し、最適な治療法をご提案いたします。皆さまが安心して治療に取り組めるよう、スタッフ一同、全力でサポートいたします。
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
- 日本糖尿病学会「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」
- 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「マンジャロ皮下注 添付文書」
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注)」
- 糖尿病リソースガイド「GIP/GLP-1受容体作動薬関連情報」
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン」
※本記事の情報は2025年11月時点のものです。最新の情報については、主治医にご確認ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務