「ミラドライを受けたのに効果がなかった」「ミラドライでワキガが治らなかった」という声をインターネット上で目にすることがあります。ワキガや多汗症に悩む方にとって、ミラドライは切らずに治療できる画期的な方法として注目されていますが、効果に対する不安を感じている方も少なくないのではないでしょうか。実際のところ、ミラドライは厚生労働省やFDA(米国食品医薬品局)から承認を受けた医療機器であり、科学的な根拠に基づいた治療法です。しかし、すべての患者様に100%の効果を保証できるわけではなく、効果を実感しにくいケースや、効果が十分に得られない原因が存在することも事実です。本記事では、「ミラドライは効果なし」と感じてしまう原因やメカニズムを医学的な観点から詳しく解説し、効果を最大限に引き出すためのポイントについてお伝えします。ワキガや多汗症の治療を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- ミラドライとは?基本的な仕組みと特徴
- ワキガと多汗症の原因を理解する
- ミラドライの効果に関する科学的エビデンス
- 「ミラドライは効果なし」と感じる5つの原因
- ミラドライの効果を最大限に引き出すポイント
- 施術後の経過と再発について
- ミラドライと他の治療法との比較
- ミラドライの副作用とダウンタイム
- 治療を検討する際の注意点
- よくある質問
- まとめ
ミラドライとは?基本的な仕組みと特徴
マイクロ波を用いた革新的な治療技術
ミラドライ(miraDry)は、米国のMiramar Labs社が開発したワキガ・多汗症治療のための医療機器です。2018年6月4日に厚生労働省から「マイクロ波による腋窩多汗症治療機器」として正式に承認を取得しており、日本国内では原発性腋窩多汗症の薬事承認を取得している唯一の医療機器となっています。また、米国FDA(食品医薬品局)からは、腋窩多汗症、腋臭症、減毛の適応で承認を取得しています。
ミラドライの最大の特徴は、皮膚を切開することなく、マイクロ波のエネルギーを利用してワキの汗腺を破壊できる点にあります。マイクロ波とは、電子レンジでも使用されている電磁波の一種で、水分に反応して熱を発生させる性質を持っています。ミラドライでは5.8GHzのマイクロ波を照射し、水分を多く含む汗腺に選択的にエネルギーを集中させることで、周囲の組織へのダメージを最小限に抑えながら汗腺を熱破壊します。
ミラドライの作用メカニズム
ミラドライの治療は、主に3つの要素で構成されています。第一に「吸引」があり、ハンドピースに装着されたバイオチップで皮膚と脂肪領域を吸引して持ち上げ、ターゲットとなる領域を固定します。第二に「マイクロ波エネルギーの照射」があり、皮膚表面からマイクロ波を照射すると、皮膚の細胞内の水分子が振動・回転することで熱が発生します。真皮を含む皮膚は高含水組織であり、皮下脂肪は低含水組織であるため、マイクロ波は皮下組織で反射します。これにより、汗腺が多く存在する真皮深層から皮下組織浅層に温度の高いヒートゾーンが形成され、汗腺が焼灼・凝固されます。第三に「冷却」があり、ハンドピース内の冷却板によって皮膚表面がコンタクト・クーリングにより冷却されます。これにより、表皮や真皮浅層の熱損傷を防ぎ、火傷のリスクを低減します。
この独自の技術により、ミラドライは汗腺が存在する層を「点」ではなく「面」で加熱できるため、効率的かつ均一に汗腺を破壊することが可能です。通常、1回の施術で約70〜80%の汗腺を破壊することができるとされています。
ワキガと多汗症の原因を理解する
2種類の汗腺とその役割
ワキガと多汗症を正しく理解するためには、まず汗腺について知ることが重要です。人間の皮膚には「エクリン腺」と「アポクリン腺」という2種類の汗腺が存在しており、それぞれ異なる特徴と役割を持っています。
エクリン腺は全身に広く分布しており、主に体温調節の役割を担っています。エクリン腺から分泌される汗は99%が水分で構成されており、サラサラとした無色透明の汗です。この汗は蒸発しやすく、適切に拭き取れば臭いはほとんど気になりません。多汗症の原因となるのは、このエクリン腺からの過剰な発汗です。
一方、アポクリン腺は腋窩(ワキの下)、外陰部、外耳道、乳輪など、体の限られた部位にのみ存在します。アポクリン腺から分泌される汗には、タンパク質、脂質、糖質、アンモニアなどの成分が含まれており、やや粘り気のある乳白色の汗です。この汗自体は無臭ですが、皮膚表面に存在する常在菌によって分解されると、独特の臭いを発するようになります。これがワキガ(腋臭症)の原因です。
ワキガが発症するメカニズム
ワキガは、アポクリン腺から分泌される汗の量が多い体質が原因となっています。アポクリン腺の発達には遺伝的要因が大きく関与しており、親がワキガ体質の場合、子供にも遺伝する可能性があります。また、アポクリン腺は性ホルモンの影響を受けるため、思春期以降(女性の場合は初潮の頃)に発症することが多いという特徴があります。
日本人のワキガの頻度は約10%程度とされており、欧米人と比較すると少ない傾向にあります。これは人種による体質の違いによるものですが、日本人の中でもワキガ体質の方は、アポクリン腺の数が多く、サイズも大きい傾向があります。また、耳垢が湿っている人の約80%にワキガがあるとされており、これは外耳道にもアポクリン腺が存在することと関係しています。
ワキガの臭いは、アポクリン腺の汗に含まれる脂肪酸が皮膚の常在菌によって分解される際に発生する「3メチル2ヘキセノイン酸」という物質が主な原因とされています。この臭いは、酸っぱい臭い、雑巾の臭い、鉛筆の芯の臭い、玉ねぎの臭いなどと表現されることがあります。
多汗症のメカニズム
多汗症は、エクリン腺から過剰に汗が分泌される状態を指します。原発性腋窩多汗症は、日本国内で人口の約5.8%(約531.9万人)の患者がいると推測されており、決して珍しい疾患ではありません。多汗症の原因としては、精神的な影響(緊張やストレス)、食生活、ホルモンバランス、遺伝的要因などが挙げられます。これらの要因により交感神経が過剰に働き、エクリン腺から多量の汗が分泌されると考えられています。
ワキガと多汗症は別々の疾患ですが、両方を併発しているケースも少なくありません。ミラドライは、エクリン腺とアポクリン腺の両方を同時に破壊することができるため、ワキガと多汗症の両方に効果が期待できる治療法です。
ミラドライの効果に関する科学的エビデンス
臨床試験のデータ
ミラドライの効果については、海外で実施された複数の臨床試験で検証されています。代表的な研究では、「多汗症重症度スケール(Hyperhidrosis Disease Severity Scale/HDSS)」を指標として効果が評価されました。HDSSは、原発性局所多汗症の重症度を自覚症状によって4段階に分類する指標で、スコア1は「発汗は全く気にならず、日常生活に支障がない」、スコア4は「発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある」という状態を示します。
HDSSスコア3または4の原発性腋窩多汗症の患者31名を対象にした研究では、6か月間に1〜3回のミラドライ治療を実施した結果、治療後にHDSSスコアが1または2に改善した被験者の割合は、治療後30日で90.3%、3か月で93.6%、6か月で90.3%、12か月でも90.3%と、持続的な効果が確認されました。また、治療に対する全体的な満足度は各評価時点で90%以上と高く、腋の臭いに関しても統計的に有意な改善が見られたと報告されています。
長期的な効果の持続性
ミラドライの大きな特徴の一つは、効果の持続性にあります。ミラドライによって破壊された汗腺は再生することがないため、一度治療を行えば半永久的に効果が持続すると考えられています。これは、汗腺が一度破壊されると再生しないという医学的な事実に基づいています。長期追跡研究では、治療後2〜3年を経過しても効果が維持されていることが報告されており、一度の治療で長期間にわたる効果を期待できます。
ただし、1回の施術ですべての汗腺を100%破壊することは難しく、約20〜30%の汗腺は残存するとされています。このため、施術後数か月を経て、残存した汗腺の活動が回復することで、汗や臭いが若干戻ったように感じるケースがあります。しかし、これは「再発」ではなく、破壊されなかった汗腺の活動再開によるものであり、治療前と比較すれば症状は大幅に改善されています。
「ミラドライは効果なし」と感じる5つの原因
ミラドライは科学的なエビデンスに基づいた効果的な治療法ですが、一部の患者様が「効果がない」と感じるケースも存在します。ここでは、その主な原因について詳しく解説します。
原因1:施術者の技術・経験不足
ミラドライは一見「ワキに機械を当てるだけ」という簡単な施術に見えますが、実際には高度な技術と知識が必要です。汗腺を効率的に破壊するためには、十分な照射レベルで、漏れなく広範囲に照射することが求められます。照射レベルが不足していたり、照射範囲が狭かったり、打ち漏れがあったりすると、汗腺を完全に破壊することができません。
照射が不十分な場合でも、汗腺は一時的にダメージを受けるため、施術直後は汗や臭いが減少したように感じます。しかし、しばらく経つと汗腺が回復してしまい、元の状態に戻ってしまうことがあります。このようなケースでは、「最初は効果があったのに再発した」と感じてしまうのです。
また、照射範囲の設定も重要です。ワキの形や幅は個人差があり、適切なサイズのテンプレートを選択しないと、照射漏れが生じる可能性があります。特に麻酔を行うと皮膚が伸展して有毛部の横幅が広がるため、事前のマーキングだけでなく、麻酔後の状態も考慮した照射計画が必要です。
原因2:残存汗腺の活動再開
前述の通り、ミラドライでは1回の施術で約70〜80%の汗腺を破壊しますが、残りの約20〜30%の汗腺は残存します。施術直後は、破壊されなかった汗腺もダメージを受けているため、一時的に活動が停止します。このため、施術直後は汗も臭いもほとんど感じなくなることがあります。
しかし、時間の経過とともに(通常3〜6か月程度)、ダメージを受けた汗腺が回復し、再び活動を始めます。その結果、「施術直後は効果を感じたのに、半年後には汗や臭いが戻ってきた」と感じる方がいらっしゃいます。これは「再発」ではなく、治療のメカニズム上起こりうる正常な経過です。
ただし、完全に元の状態に戻ることは理論上考えにくく、多くの場合、施術前よりも症状は大幅に改善された状態を維持しています。問題は、ワキの感覚はそれほど敏感ではないため、「汗が出たか出ないか」という二元論で判断しがちな点にあります。少しでも汗が出ると「効果がない」「再発した」と感じてしまうことがありますが、客観的に見れば症状は改善されているケースがほとんどです。
原因3:成長期における治療
ミラドライで一度破壊した汗腺は再生しませんが、未成年のうちに施術を受けた場合は、成長とともに新しい汗腺が発達する可能性があります。アポクリン腺は性ホルモンの影響を受けて発達するため、思春期や成長期に治療を受けると、その後の成長に伴って新たな汗腺が形成され、症状が再発したように感じることがあります。
このため、多くのクリニックでは、ミラドライ治療の効果を十分に得られる年齢として、18歳前後を目安としてご案内しています。汗腺の発達が終わってから治療を受けることで、再発のリスクを軽減することができます。ただし、症状が強く日常生活に支障がある場合は、小中学生でも治療を行うことがあります。この場合は、将来的に追加治療が必要になる可能性を理解した上で治療を検討することが重要です。
原因4:期待値とのギャップ
ミラドライの効果に対する期待値が高すぎる場合、治療後に「効果がない」と感じてしまうことがあります。ミラドライは1回の施術で約70〜80%の症状改善が期待できる治療ですが、100%汗や臭いをなくすことは困難です。
ワキガや多汗症の程度は人によって異なり、どの程度まで症状を抑えたいかという主観的な希望も様々です。「7割、8割の改善では不安」「可能な限り臭いや汗の量をゼロにしたい」という方にとっては、1回の施術では期待していたゴールに届かない場合もあります。このような場合は、2回目の施術を検討するか、他の治療法との併用を検討することが選択肢となります。
原因5:ワキガと多汗症の混同
ミラドライは厚生労働省から「腋窩多汗症治療機器」として承認を取得しています。一方で、ワキガ(腋臭症)に対する効果については、議論が分かれる部分があります。一部の専門家からは、ミラドライのマイクロ波はエクリン腺が存在する真皮層に主に作用し、より深い位置にあるアポクリン腺には十分なエネルギーが届きにくいとの指摘もあります。
しかし、実際の臨床現場では、多くの患者様がワキガの症状改善を実感されており、臭いに関しても統計的に有意な改善が報告されています。これは、ミラドライが真皮深層から皮下組織浅層にかけての広い範囲にエネルギーを照射できること、また、エクリン腺からの発汗が減ることで、アポクリン腺の汗が拡散しにくくなり、臭いが軽減される効果もあると考えられています。
重要なのは、治療前のカウンセリングで自分の症状がワキガなのか多汗症なのか、あるいは両方なのかを正確に診断してもらい、ミラドライでどの程度の改善が期待できるかを理解することです。
ミラドライの効果を最大限に引き出すポイント
ポイント1:経験豊富なクリニック・医師を選ぶ
ミラドライの効果は、施術者の技術と経験に大きく左右されます。ミラドライ治療に精通した医師やクリニックを選ぶことで、効果が出やすくなるだけでなく、副作用も軽減される可能性が高まります。クリニックを選ぶ際には、ミラドライの症例数や実績、医師の資格や経験年数、アフターケアの体制などを確認することをお勧めします。また、ミラドライ認定医が在籍しているかどうかも重要な判断材料となります。
ポイント2:広範囲照射を選択する
ミラドライの治療では、照射範囲が効果に大きく影響します。照射範囲が狭いと、ワキの中心部は治療できても辺縁部に打ち漏れが生じ、そこから汗や臭いが出続けてしまう可能性があります。効果を最大限に引き出すためには、脇毛の有毛部をしっかりカバーする広範囲の照射が重要です。
クリニックによって「広範囲」の定義は異なるため、カウンセリングの際にはテンプレートのサイズ(横幅と縦幅)を確認することをお勧めします。一般的に、横幅70〜80mm以上、縦幅120〜140mm程度のテンプレートを使用する場合が「広範囲」と言えます。
ポイント3:最大出力での照射
ミラドライの照射出力は、レベル1からレベル5(または8)まで設定可能です。出力が高いほど汗腺への熱エネルギーが大きくなり、より多くの汗腺を破壊できる可能性があります。厚生労働省が認定した機器では、最大出力(レベル5)での施術が可能であり、より高い効果が期待できます。
ただし、照射時の出力と術後のダウンタイム(赤みや腫れ)は比例するため、術後の負担を軽減しようと出力を下げると、効果が十分に得られない可能性があります。効果とダウンタイムのバランスを考慮しながら、最適な出力設定で治療を受けることが重要です。
ポイント4:ダブル照射の検討
通常のミラドライ治療(シングル照射)では、マーキングした箇所に1回の照射を行いますが、「ダブル照射」という方法もあります。これは同じ箇所に2回重ね打ちをする方法で、より多くの汗腺を破壊することが期待できます。研究によると、シングル照射では約70%の汗腺が破壊されるのに対し、ダブル照射では約90%の汗腺が破壊されたという報告もあります。
特に症状が重い方や、より確実な効果を求める方には、ダブル照射がお勧めです。ただし、ダブル照射は施術時間が長くなり、術後のダウンタイムも若干長くなる可能性があります。医師と相談の上、自分に適した照射方法を選択することが重要です。
ポイント5:適切な時期に治療を受ける
前述の通り、成長期に治療を受けると、その後の成長に伴って新たな汗腺が形成される可能性があります。ミラドライの効果を最大限に得るためには、汗腺の発達が完了した18歳以降に治療を受けることが理想的です。ただし、症状が強く精神的な負担が大きい場合は、早期の治療も選択肢となります。未成年の方が治療を検討される場合は、保護者と一緒にカウンセリングを受け、将来的な追加治療の可能性も含めて十分に説明を受けることが重要です。
施術後の経過と再発について
施術直後から数日間の経過
ミラドライの施術後、ほとんどの患者様が翌日から3日程度で効果を実感されます。施術直後は汗も臭いも気にならなくなり、「こんなに効果があるとは思わなかった」という声をいただくことも多いです。一方で、施術部位には赤みや腫れ、軽い痛みが生じることがあります。これらの症状は通常数日から1週間程度で治まります。また、一時的に皮膚の感覚が鈍くなったり、しびれを感じたりすることがありますが、これも時間の経過とともに改善します。
数か月後の経過
施術から数か月が経過すると、施術直後よりも汗の量や臭いが少し戻ってきたと感じる方がいらっしゃいます。これは、破壊されずに残った汗腺がダメージから回復し、活動を再開するためです。「もしかして再発した?」と心配される方もいらっしゃいますが、これは再発ではなく、どなたにでも起こり得る正常な経過です。
この状態が「ミラドライの半永久的な効果」であり、治療から約半年後の状態が長期的に維持されると考えてください。多くの場合、施術後半年以降は70〜80%の改善が維持されます。
再発と感じた場合の対応
施術後に「再発した」「効果がなくなった」と感じた場合でも、客観的に見れば施術前よりは症状が改善されているケースがほとんどです。もし改善の程度に満足できない場合は、以下の選択肢を検討することができます。
まず、2回目のミラドライ施術を受けることで、さらに汗腺を破壊し、効果を高めることが可能です。日本では約10%の方が2回目の施術を受けているとされています。通常、1回目の施術から3か月以上、できれば6か月以上の間隔を空けて2回目の施術を行います。多くのクリニックでは、「保証付きプラン」として、施術後1年以内であれば追加料金なしで2回目の施術を受けられるプランを用意しています。
また、ボトックス注射を併用することで、残存するエクリン腺の活動を一時的に抑制し、発汗を軽減することも可能です。ボトックス注射の効果は約4〜9か月程度持続するため、定期的な施術が必要になりますが、ミラドライと組み合わせることでより高い効果が期待できます。
ミラドライと他の治療法との比較
切開手術(皮弁剪除法)との比較
切開手術(皮弁剪除法)は、ワキの皮膚を切開して直接アポクリン腺を除去する方法です。医師が目で確認しながら汗腺を取り除くため、高い効果が期待できます。また、保険適用となる場合があり、費用負担が軽減されることがあります。
一方で、切開手術にはいくつかのデメリットがあります。術後の回復に時間がかかり、数日から数週間の安静が必要です。また、傷跡が残る可能性があり、美容面での負担があります。さらに、切開手術では、アポクリン腺は約80〜90%除去できるものの、多汗症の原因となるエクリン腺はアポクリン腺より皮膚の浅層に存在するため、皮膚へのダメージを考慮すると約50〜60%しか除去できないとされています。
ミラドライは皮膚を切開しないため傷跡が残らず、ダウンタイムも短いというメリットがあります。また、エクリン腺とアポクリン腺の両方を同時に破壊できるため、多汗症への効果も期待できます。
ボトックス注射との比較
ボトックス注射は、ボツリヌストキシンを注入してエクリン腺の活動を抑制する方法です。施術が簡単で、短時間で終わるというメリットがあります。また、重度の原発性腋窩多汗症に対しては保険適用となる場合があります。
しかし、ボトックス注射の効果は一時的であり、約4〜9か月程度で効果が薄れてしまいます。そのため、効果を維持するためには年に1〜2回の定期的な注射が必要になり、長期的にはコストがかかります。また、ボトックス注射は主にエクリン腺に作用するため、ワキガ(臭い)への効果は限定的です。
ミラドライは一度の治療で長期的な効果が期待できるため、繰り返しの通院が難しい方や、トータルコストを抑えたい方には適した選択肢となります。
その他の治療法との比較
その他の治療法としては、塩化アルミニウム液などの外用薬、抗コリン薬などの内服薬、ビューホット(フラクショナルRF高周波を用いた治療)などがあります。外用薬や内服薬は手軽に使用できますが、効果は一時的であり、根本的な治療とはなりません。ビューホットはミラドライと同様に「切らない治療」ですが、日本では厚生労働省の薬事承認を取得していないため、安全性や効果が公式に認められていない点に注意が必要です。
治療法の選択は、症状の程度、ライフスタイル、費用、ダウンタイムの許容度などを総合的に考慮して行うことが重要です。医師と相談の上、自分に最も適した治療法を選択してください。
ミラドライの副作用とダウンタイム
一時的な副作用
ミラドライは厚生労働省に認められた安全性の高い治療ですが、施術に伴う一時的な副作用がみられる場合があります。これらはいずれも施術直後から数日間に現れ、時間の経過とともに自然に改善するものがほとんどです。
主な一時的な副作用としては、機器の吸引による赤み、ワキの腫れ、ピリピリとする痛み、ワキの違和感・つっぱり感・しびれ、小さな水膨れ、麻酔注射による内出血、ワキや周辺のむくみ、ワキの一時的な脱毛などが挙げられます。これらの症状は通常、数日から1週間程度で治まります。痛みを感じる場合は、ワキを保冷剤などで冷やすことで軽減することができます。
やや長引く可能性のある症状
一部の症状は、数週間から数か月続くことがあります。具体的には、ワキの硬化やしこり、皮膚の隆起や硬縮、腕や指先の不快感・しびれ・感覚の変化、腕の筋肉や指の力の減少、腕や胴の腫れ・むくみなどが挙げられます。ミラドライ後にできるしこりは、照射によって汗腺周辺の組織が熱に反応し硬くなって生じるもので、多くの場合1〜3か月程度で改善します。しこりが生じるのは、汗腺がしっかりと破壊されている証拠でもあります。
ダウンタイムと日常生活への影響
ミラドライの大きなメリットの一つは、ダウンタイムが短いことです。施術当日からシャワー浴が可能であり、翌日から通常の日常生活を送ることができます。入院や長期の通院も不要です。ただし、術後1〜2週間は激しい運動、重い荷物を持つ行為、長時間の入浴、飲酒などは控えることが推奨されます。これらの行為は、治療部位の血行を促進し、腫れや痛みを増強させる可能性があるためです。
仕事への影響については、デスクワークであれば翌日から復帰が可能なケースがほとんどです。ただし、腕を頻繁に動かす仕事や、力仕事をされている方は、数日から1週間程度の休暇を取ることをお勧めする場合もあります。
治療を検討する際の注意点
治療を受けられない方
以下に該当する方は、ミラドライの施術を受けられない場合があります。心臓ペースメーカーや除細動器などの電子機器を体内に埋め込んでいる方、妊娠中または妊娠の可能性がある方、授乳中の方、酸素補給が必要な方、施術部位に感染症や炎症がある方、局所麻酔薬にアレルギーがある方などです。また、過去にワキの手術を受けたことがある方は、治療の可否を医師に相談する必要があります。
カウンセリングで確認すべきポイント
ミラドライ治療を検討される際は、複数のクリニックでカウンセリングを受け、比較検討することをお勧めします。カウンセリングでは、以下のポイントを確認することが重要です。
まず、自分の症状がワキガなのか多汗症なのか、あるいは両方なのかを正確に診断してもらうことが大切です。症状によって期待できる効果が異なるため、事前に理解しておくことでギャップを防ぐことができます。次に、照射範囲や出力レベル、シングル照射かダブル照射かなど、具体的な施術内容を確認します。また、施術を担当する医師の経験や資格、クリニックの症例数なども重要な判断材料となります。費用についても、追加料金の有無や保証プランの内容を含めて確認しておきましょう。
費用について
ミラドライ治療は自由診療(保険適用外)となるため、全額自己負担となります。費用はクリニックによって異なりますが、一般的に20万円から40万円程度が相場です。価格だけで選ぶのではなく、医師の技術や経験、アフターケアの体制なども含めて総合的に判断することが重要です。安さを優先してしまうと、十分な効果が得られなかったり、追加の施術が必要になったりして、結果的にコストがかさむ可能性もあります。

よくある質問
基本的には1回の施術で効果を実感される方がほとんどです。1回の施術で約70〜80%の汗腺を破壊することができ、多くの方が症状の大幅な改善を実感されます。ただし、症状が重い方や、より確実な効果を求める方は、2回目の施術を検討されることもあります。日本では約10%の方が2回目の施術を受けているとされています。2回目の施術は、1回目から3〜6か月以上の間隔を空けて行います。
ミラドライによって破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的に持続します。ただし、1回の施術ですべての汗腺を破壊することはできず、約20〜30%の汗腺は残存します。施術後数か月で残存汗腺の活動が回復し、汗や臭いが若干戻ったように感じることがありますが、これは再発ではありません。長期的には施術前と比較して70〜80%程度の改善が維持されます。
ミラドライは局所麻酔を行った後に施術を行うため、照射中の痛みはほとんど感じません。ただし、麻酔の注射時に針のチクッとした痛みを感じることがあります。施術後は、ピリピリする痛みや違和感、つっぱり感が出ることがありますが、通常1週間程度で治まります。痛みに不安がある方は、笑気麻酔の併用が可能なクリニックを選ぶことをお勧めします。
ミラドライはダウンタイムが短いのが特徴で、施術当日からシャワー浴が可能であり、翌日から通常の日常生活を送ることができます。デスクワークであれば翌日から仕事に復帰できるケースがほとんどです。ただし、1〜2週間程度は激しい運動、重い荷物を持つ行為、長時間の入浴、飲酒などは控えることが推奨されます。
ミラドライには明確な年齢の上限はありませんが、成長期の方は施術後に新たな汗腺が発達する可能性があるため、効果を十分に得るためには18歳前後からの治療が推奨されています。ただし、症状が強く日常生活に支障がある場合は、小中学生でも治療を行うことがあります。未成年の方が治療を受ける場合は、保護者の同意が必要であり、将来的に追加治療が必要になる可能性についても理解した上で検討することが重要です。
はい、ミラドライはワキガと多汗症の両方に効果が期待できる治療法です。ミラドライのマイクロ波は、ワキガの原因となるアポクリン腺と、多汗症の原因となるエクリン腺の両方を同時に破壊することができます。厚生労働省からは腋窩多汗症治療機器として承認されていますが、臨床的にはワキガ(臭い)に対しても高い効果が報告されています。ただし、ワキガと多汗症では原因となる汗腺が異なるため、カウンセリングで自分の症状を正確に診断してもらうことが重要です。
いいえ、ミラドライは皮膚を切開しない治療法のため、傷跡は残りません。皮膚の表面からマイクロ波を照射するだけなので、施術部位に目立つ傷跡ができることはありません。これはミラドライの大きなメリットの一つであり、美容面での負担が少ない治療法として選ばれています。施術後は一時的に赤みや腫れが生じることがありますが、通常は数日から1週間程度で治まります。
まとめ
本記事では、「ミラドライは効果なし」と感じてしまう原因やメカニズムについて、医学的な観点から詳しく解説してきました。ミラドライは厚生労働省やFDAから承認を受けた医療機器であり、科学的なエビデンスに基づいた効果的な治療法です。臨床試験では、90%以上の患者様が治療効果に満足しており、その効果は長期間にわたって持続することが確認されています。
しかし、「効果がない」と感じるケースも存在し、その主な原因としては、施術者の技術・経験不足、残存汗腺の活動再開、成長期における治療、期待値とのギャップ、ワキガと多汗症の混同などが挙げられます。これらの要因を理解した上で、経験豊富なクリニック・医師を選ぶこと、広範囲かつ最大出力での照射を受けること、適切な時期に治療を受けることなどが、効果を最大限に引き出すポイントとなります。
ミラドライは、切らずに治療できるという大きなメリットを持ち、ダウンタイムも短いため、多くの方にとって魅力的な選択肢です。ワキガや多汗症でお悩みの方は、まずは専門のクリニックでカウンセリングを受け、自分の症状や期待する効果について医師と十分に相談することをお勧めします。正しい知識を持って治療に臨むことで、満足のいく結果を得ることができるでしょう。
アイシークリニック大宮院では、経験豊富な医師がミラドライ治療を行っております。ワキガや多汗症でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。患者様一人ひとりの症状や希望に合わせた最適な治療プランをご提案いたします。
参考文献
- 厚生労働省
- 済生会「ワキガの悩みとさようなら!今すぐ試せるケア方法」
- 日本皮膚科学会「汗の病気―多汗症と無汗症― Q5」
- 日本形成外科学会「腋臭症(わきが)」
- 日本医科大学武蔵小杉病院「ワキガ(腋臭症)の治療〜ニオイの診断と手術~」
- JMEC「miraDry(ミラドライ)」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務