ミラドライは、マイクロ波を用いて汗腺を破壊し、ワキガや多汗症を改善する画期的な治療法として注目を集めています。しかし、施術を受けた方の中には「ミラドライ後に臭いが強くなった気がする」「治療前より臭いが気になるようになった」という声も聞かれます。せっかく高額な治療を受けたのに、かえって臭いが強くなったと感じるのは非常に不安なことでしょう。本記事では、ミラドライ治療後に臭いが強くなったと感じる原因について医学的な観点から詳しく解説し、その対処法や再発を防ぐためのポイントについてお伝えします。ミラドライを検討中の方や、すでに施術を受けて不安を感じている方にとって、参考となる情報をまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。
目次
- ミラドライとは?基本的な仕組みと効果
- ミラドライ後に「臭いが強くなった」と感じる主な原因
- 施術直後に臭いが気になりやすい理由
- 臭い戻りが起こるメカニズムを理解する
- 心理的要因による臭いの感じ方の変化
- 施術者の技術や照射範囲が効果に与える影響
- ミラドライ後の臭い戻りへの対処法
- 臭い戻りを防ぐための施術選びのポイント
- ミラドライ以外の治療選択肢
- よくある質問
- まとめ
ミラドライとは?基本的な仕組みと効果
ミラドライは、アメリカのMiramar Labs社によって開発されたワキガ・多汗症治療のための医療機器です。日本では2018年6月4日に厚生労働省より「重度の原発性腋窩多汗症」の治療機器として薬事承認を取得しており、マイクロ波を用いたワキ汗治療器として国内唯一の承認機器となっています。また、アメリカのFDA(食品医薬品局)では、腋窩多汗症、腋臭症(ワキガ)、減毛の3つの適応で承認を取得しており、その効果と安全性は国際的にも認められています。
ミラドライの治療原理
ミラドライは、5.8GHzのマイクロ波(電子レンジにも使われている電磁波)を皮膚表面から照射し、汗腺を熱で破壊する治療法です。マイクロ波には水分子に選択的に吸収されて熱を発生させる性質があり、この特性を利用して水分を多く含む汗腺を効率的に加熱します。
皮膚にマイクロ波を照射すると、細胞内の水分子が振動して熱が発生します。この熱は真皮深層から皮下組織浅層、つまり汗腺が多く分布する層に集中し、約60〜70℃に加熱されることで汗腺が焼灼・凝固されます。一度破壊された汗腺は再生しないため、半永久的な効果が期待できるとされています。
2種類の汗腺への効果
人間の汗腺には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2種類があります。エクリン汗腺はほぼ全身に分布し、主に体温調節のために水分を多く含んだサラサラした汗を分泌します。一方、アポクリン汗腺は腋窩(ワキ)、外陰部、乳輪周辺などの限られた部位に存在し、タンパク質、脂質、糖質、アンモニアなどを含む粘性のある汗を分泌します。
日本皮膚科学会によると、ワキガの臭いの原因はアポクリン汗腺から分泌される汗に含まれる脂肪酸が皮膚表面の細菌によって分解され、3メチル2へキセノイン酸などの物質が生成されることで発生します。ワキガ体質の方はアポクリン汗腺が大きく、その数も多い傾向があります。
ミラドライは、このエクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方にダメージを与えることができるため、多汗症とワキガの両方の症状を同時に改善できるという大きなメリットがあります。一度の施術で約70〜80%の汗腺を破壊できるとされており、汗や臭いが施術前の20〜30%程度にまで減少することが期待できます。
ミラドライの安全性
ミラドライには「ハイドロセラミック・クーリングシステム」という独自の冷却機能が搭載されています。この機能により、マイクロ波照射中も皮膚表面は冷却され、表皮から真皮にかけての浅い層は熱から保護されます。そのため、火傷や色素沈着のリスクを最小限に抑えながら、汗腺がある深い層に効率的にエネルギーを届けることができます。
また、外科手術と異なり皮膚を切開しないため、傷跡が残らず、術後の固定や圧迫も不要です。施術時間は両ワキで約60〜75分程度で、局所麻酔を使用するため施術中の痛みはほとんどありません。ダウンタイムも比較的短く、多くの方が翌日から日常生活に復帰できます。
ミラドライ後に「臭いが強くなった」と感じる主な原因
ミラドライは高い効果が期待できる治療法ですが、施術を受けた方の中には「臭いが強くなった」と感じるケースがあります。この現象にはいくつかの原因が考えられますので、一つずつ詳しく解説していきます。
原因1:施術直後の一時的な反応
ミラドライの施術直後から1〜2週間ほどの間は、「普段よりも臭いが気になる」と感じる方が少なくありません。これは多くの方に見られる自然な反応であり、必ずしも治療が失敗したわけではありません。
施術直後は、マイクロ波による熱刺激を受けた皮膚や汗腺がダメージから回復しようとする修復作業が行われています。この過程で、汗や皮脂の分泌が一時的に増えることがあり、その結果として臭いが強くなったように感じることがあります。また、施術部位には炎症反応が起こっているため、皮膚のバリア機能が一時的に低下し、細菌が繁殖しやすい環境になっている可能性もあります。
多くの場合、体が回復し炎症が落ち着いてくると、臭いも徐々に気にならなくなります。一般的に1〜2か月以内には状態が安定し、治療効果を実感できるようになるとされています。
原因2:残存汗腺の回復による臭い戻り
ミラドライで「臭いが強くなった」と感じる最も一般的な原因の一つが、施術で完全に破壊できなかった汗腺の回復による「臭い戻り」です。
ミラドライは一度の施術で約70〜80%の汗腺を破壊できますが、逆に言えば20〜30%の汗腺は生き残ります。これらの残存汗腺は、施術直後はマイクロ波によるダメージを受けて活動を停止していますが、時間の経過とともにダメージから回復し、徐々に活動を再開します。
施術から約半年ほど経過した頃に「臭いが戻ってきた」と感じる方が多いのはこのためです。施術直後から半年間、臭いがほとんどない状態に慣れていた後で残存汗腺が活動を再開すると、実際の臭いのレベルは施術前より大幅に改善されているにもかかわらず、「臭いが強くなった」と感じてしまうことがあります。
重要なのは、この状態は「再発」ではなく、どなたにでも起こり得る自然な経過だということです。完全に破壊された汗腺は再生しないため、施術から約半年後の臭い・発汗量が「半永久的に持続する効果」となります。
原因3:施術者の技術や経験不足
ミラドライの効果は、施術を行う医師や施術者の技術・経験によって大きく左右されます。「誰が施術しても同じ」というわけではなく、適切な技術と経験がなければ十分な効果が得られない可能性があります。
ミラドライの施術では、ワキの形状や皮膚の厚み、シワの深さなどを考慮しながら、汗腺が多く集まっている領域に正確にマイクロ波を照射する必要があります。患者様一人ひとりの状態に合わせて照射方法を調整しないと、「照射漏れ」が生じ、エネルギーが届かなかった部分の汗腺が生き残ってしまいます。
また、麻酔の打ち方や照射出力の設定が適切でない場合も、効果が十分に得られない原因となります。ミラドライには照射出力を5段階で設定できる機能がありますが、低いレベルで照射すると汗腺に十分なダメージを与えられない可能性があります。
原因4:照射範囲が狭い
ミラドライの効果を最大限に発揮するためには、汗腺が存在する範囲を十分にカバーする「広範囲照射」が重要です。照射範囲が狭いと、ワキの中央部分は治療できても周辺部分に汗腺が残ってしまい、「ドーナツ状に汗が出る」という現象が起こることがあります。
ミラドライの照射範囲は施術者が決定しますが、クリニックによっては施術時間を短縮するために狭い範囲での照射を行っている場合もあります。照射範囲が狭いと、破壊される汗腺が少なくなるため、臭い戻りや再発のリスクも高くなります。
原因5:心理的要因(自臭症)
実際の体臭がさほど強くないにもかかわらず、心理的な要因で「臭いがする」「臭いが強くなった」と感じてしまうケースもあります。これは「自臭症」または「自己臭恐怖症」と呼ばれる状態で、ワキガ治療を受ける方に少なからず見られる現象です。
自臭症とは、周囲の人が気になるような臭いがない、あるいは原因となる疾患がないにもかかわらず、「自分は強い体臭を発している」と確信してしまう心理的な症状です。対人恐怖の一種に分類されており、繊細で几帳面な性格の方に多く見られる傾向があります。
長年ワキガの臭いに悩んできた方ほど、施術後も不安が拭えず、「本当はまだ臭っているのではないか」「ちゃんと効果が出ていないのではないか」と過敏に感じてしまうことがあります。周囲の人から「臭わないよ」と言われても、それを信じられず不安が続く場合は、自臭症の可能性を考慮する必要があるかもしれません。
こうした不安が長引くと、ストレスによってホルモンバランスが乱れ、実際に汗をかきやすくなるという悪循環が生じることもあります。臭いへの不安が強い場合は、身体的な治療だけでなく、心療内科や精神科での相談も検討することをお勧めします。
施術直後に臭いが気になりやすい理由
ミラドライの施術直後に臭いが気になりやすい理由について、より詳しく解説します。施術後の経過を正しく理解することで、不必要な不安を軽減できるでしょう。
施術直後の皮膚の状態
ミラドライの施術後は、マイクロ波の熱エネルギーによって皮膚組織が熱ダメージを受けています。このダメージに対する生体反応として、施術部位には炎症反応が起こります。炎症反応は組織修復に必要なプロセスですが、この過程で以下のような変化が生じます。
まず、施術部位には腫れ(浮腫)が生じます。この腫れは通常1週間程度で落ち着きますが、その間は皮膚のバリア機能が低下しています。また、汗腺にダメージを与える過程で周辺の皮脂腺も刺激を受けることがあり、一時的に皮脂分泌が増加することがあります。
さらに、破壊された汗腺からは老廃物が排出される過程があり、これが一時的な臭いの原因となることもあります。これらの反応は正常な回復過程の一部であり、時間とともに落ち着いていきます。
回復期間の目安
ミラドライ施術後の一般的な回復経過は以下のとおりです。施術直後から数日間は、腫れ、赤み、痛み、熱感などが見られることがあります。これらの症状は通常1週間程度で大きく改善します。施術後1〜2週間は、まだ皮膚が回復途中であり、この期間に臭いが気になりやすいと感じる方もいます。
施術後1〜2か月が経過すると、多くの方は皮膚の状態が安定し、治療効果を実感できるようになります。この時点での発汗量や臭いの減少が、長期的に持続する効果の目安となります。
施術後3〜6か月頃には、破壊しきれなかった汗腺の一部がダメージから回復し、活動を再開します。このため、施術直後と比較すると若干の臭いや汗が戻ったように感じることがありますが、これは想定内の経過です。施術から約半年後の状態が、半永久的に持続する効果となります。
臭い戻りが起こるメカニズムを理解する
ミラドライ後の「臭い戻り」について、そのメカニズムをより詳しく理解しておきましょう。
汗腺破壊の限界
ミラドライは非常に効果的な治療法ですが、一度の施術ですべての汗腺を破壊することは技術的に困難です。これはミラドライに限らず、他のワキガ・多汗症治療においても同様です。
汗腺は真皮深層から皮下組織浅層にかけて分布していますが、その分布密度や深さには個人差があります。また、汗腺は点ではなく面的に広がって存在しているため、マイクロ波のエネルギーが均一に届かない部分が生じることもあります。
ミラドライでは、照射部位の約70〜80%の汗腺を破壊できるとされていますが、残りの20〜30%の汗腺は完全に破壊されず、ダメージを受けた状態で生き残ります。これらの汗腺は、施術直後は活動を停止していますが、時間とともにダメージから回復し、発汗機能を取り戻します。
臭い戻りの時期
臭い戻りを感じ始める時期として最も多いのは、施術から約半年が経過した頃です。これは、ダメージを受けた汗腺が回復するのに必要な期間とおおよそ一致しています。
施術直後は、照射範囲内のほぼすべての汗腺が熱ダメージを受けて活動を停止しています。そのため、施術直後は汗も臭いもほとんど感じられない状態になります。しかし、完全に破壊されなかった汗腺は徐々に回復し、数か月かけて機能を取り戻します。
重要なのは、この「臭い戻り」は施術前の状態に戻ることではないという点です。完全に破壊された汗腺(全体の約70〜80%)は再生しないため、施術前と比較すれば大幅な改善が維持されます。ただし、施術直後のほぼ完全に無臭の状態と比較すると、若干の臭いが感じられるようになるため、「臭いが強くなった」と感じてしまうのです。
嗅覚順応と臭いの感じ方
人間の嗅覚には「順応」という特性があります。同じ臭いに長時間さらされていると、その臭いを感じにくくなるという現象です。逆に、一定期間臭いがない状態に慣れていると、わずかな臭いでも敏感に感じ取るようになります。
ミラドライ施術後の半年間、ほとんど臭いがない状態に慣れていた方にとっては、残存汗腺の回復によるわずかな臭いでも「強くなった」と感じやすくなります。客観的には施術前よりも大幅に臭いが減少していても、主観的には「臭いが戻った」「強くなった」と感じてしまうのです。
このような感覚の変化を理解しておくことで、過度な心配を避け、冷静に状態を判断できるようになります。
心理的要因による臭いの感じ方の変化
ミラドライ後に「臭いが強くなった」と感じる原因として、心理的な要因が関与しているケースについて、さらに詳しく解説します。
自臭症(自己臭恐怖症)とは
自臭症は、原因となる疾患がない、あるいは周囲の人が気になるような臭いがないにもかかわらず、「自分は周りの人に嫌悪感を抱かれるほどの強い臭いを発している」と思い込んでしまう状態です。精神医学的には対人恐怖症の一種に分類されており、「自己臭症」「自己臭恐怖症」とも呼ばれます。
自臭症の方は、他人のちょっとした仕草(鼻に手を当てる、窓を開けるなど)を自分の臭いに対する反応だと解釈してしまったり、人混みを避けるようになったりすることがあります。家族や友人に「臭わないよ」と言われても信じられず、不安が解消されないのが特徴です。
ワキガ治療と自臭症の関係
ワキガの治療を検討される方の中には、長年臭いに悩み、強いコンプレックスを抱えている方が少なくありません。過去に臭いを指摘された経験がトラウマになっていたり、「絶対に臭いをなくしたい」という強い願望を持っていたりする方もいます。
このような心理状態でミラドライを受けると、施術後も「本当に効果があったのだろうか」「まだ臭っているのではないか」という不安が消えない場合があります。実際には臭いが大幅に改善されていても、わずかな臭いを過敏に感じ取り、「効果がなかった」「臭いが強くなった」と認識してしまうことがあります。
また、こうした不安やストレスは自律神経系に影響を与え、実際に発汗量が増加することもあります。緊張や不安を感じると交感神経が優位になり、汗腺の活動が活発になるためです。これが「臭いがないのに汗をかきやすくなる」という悪循環を生み出すこともあります。
心理的要因への対処
ミラドライ施術後に臭いへの不安が続く場合は、まず客観的な評価を得ることが重要です。信頼できる家族や友人に正直に確認してもらったり、施術を受けたクリニックで経過観察を受けたりすることで、実際の状態を把握できます。
それでも不安が解消されない場合は、自臭症の可能性を考慮し、心療内科や精神科への相談を検討することをお勧めします。自臭症は適切な治療やカウンセリングによって改善が期待できる症状です。身体的な治療だけでなく、心理的なケアも含めて総合的に対処することで、より良い結果が得られることがあります。
施術者の技術や照射範囲が効果に与える影響
ミラドライの治療効果は、施術者の技術や経験、そして照射方法の選択によって大きく左右されます。同じ機器を使用していても、クリニックによって結果が異なる理由について解説します。
施術者の技術が重要な理由
ミラドライは一見すると機械を当てるだけの簡単な施術に思えるかもしれませんが、実際には高度な技術と経験が必要です。施術者は、患者様のワキの形状、皮膚の厚み、シワの深さ、汗腺の分布などを考慮しながら、最適な照射を行う必要があります。
具体的には、適切なマーキング(照射位置の印付け)を行い、皮膚の状態に合わせて麻酔の量や打ち方を調整し、照射出力や照射範囲を適切に設定する必要があります。これらが適切でないと、一部の汗腺にエネルギーが届かずに生き残ってしまい、「照射漏れ」が発生します。
ミラドライの製造元では「公式認定医」制度を設けており、一定の研修と技術基準を満たした医師のみが認定を受けることができます。公式認定医による施術であれば、より安定した効果が期待できます。
照射出力(レベル)の重要性
ミラドライには照射出力を1〜5の5段階で設定できる機能があります。この出力設定は照射時間の長さに関係しており、レベルが高いほど照射時間が長くなり、汗腺に与えるダメージも大きくなります。
レベル5(最大出力)で照射することで、汗腺をより確実に破壊でき、高い効果が期待できます。しかし、一部のクリニックでは施術時間の短縮やリスク軽減を優先して、低い出力で照射している場合があります。低出力での照射は、汗腺に十分なダメージを与えられず、臭い戻りの原因となることがあります。
照射範囲の重要性
ミラドライの照射範囲は、治療効果に直接影響する重要な要素です。照射範囲には複数のサイズ(テンプレート)が用意されており、施術者が患者様の状態に合わせて選択します。
汗腺は腋毛が生えている範囲よりも広い範囲に分布しています。そのため、照射範囲が狭いと、ワキの中央部分は治療できても周辺部分の汗腺が残ってしまいます。この場合、治療後に「ドーナツ状に汗が出る」という現象が起こることがあります。
広範囲照射を行うことで、より多くの汗腺を破壊でき、臭い戻りのリスクを軽減できます。ただし、広範囲照射は施術時間が長くなり、使用する消耗品(バイオチップ)も増えるため、クリニックによっては追加料金が設定されている場合があります。
ダブル照射(重ね打ち)の効果
一部のクリニックでは、より高い効果を得るために「ダブル照射」(重ね打ち)を行っています。ダブル照射とは、同じ部位に対して2回照射を行うことで、より確実に汗腺を破壊する方法です。
通常の1回照射(シングル照射)で約70〜80%の汗腺を破壊できるのに対し、ダブル照射では約90%の効果があるとされています。特に汗の量や臭いが強い方、1回の施術でより高い効果を得たい方には、ダブル照射が適しています。
ダブル照射は施術時間が長くなり、費用も高くなりますが、臭い戻りのリスクを大幅に軽減できるメリットがあります。施術を検討する際は、ダブル照射のオプションがあるかどうかも確認するとよいでしょう。
ミラドライ後の臭い戻りへの対処法
ミラドライ施術後に臭い戻りを感じた場合の対処法について解説します。
まずは経過を見守る
施術から日が浅い場合(特に施術後1〜2か月以内)は、まず経過を見守ることが大切です。施術直後の一時的な反応で臭いが気になっている可能性があり、皮膚の回復とともに改善することが期待できます。
施術後は医師の指示に従い、適切なアフターケアを行いましょう。施術部位を清潔に保ち、処方された抗生物質があれば指示どおりに服用します。また、炎症を抑えるために施術部位を適度に冷却することも効果的です。
クリニックへの相談
施術から十分な期間が経過しても臭いが気になる場合は、施術を受けたクリニックに相談することをお勧めします。多くのクリニックでは術後の経過観察を行っており、必要に応じて追加の対応を提案してもらえます。
クリニックによっては、一定期間内であれば追加照射に対する保証制度を設けている場合があります。例えば、最初の施術から一定期間以内に効果が不十分と判断された場合、割引価格や無料で追加照射を受けられるプランを提供しているクリニックもあります。
追加照射の検討
ミラドライは複数回の施術を受けることが可能です。1回目の施術で残った汗腺に対して追加照射を行うことで、さらなる効果の向上が期待できます。
追加照射を行う場合は、最初の施術から3か月以上の間隔を空けることが推奨されています。これは、皮膚組織が十分に回復し、最初の施術の効果が安定してから追加照射を行う必要があるためです。
ただし、追加照射を重ねることによる皮膚や組織への負担も考慮する必要があります。何度も繰り返し照射することは推奨されておらず、通常は1回または2回の照射で十分な効果を得られる方が多いです。追加照射の必要性については、専門の医師と相談のうえ慎重に判断しましょう。
日常的なケアの継続
ミラドライの施術を受けた後も、日常的なワキのケアを継続することで、臭いをより効果的に抑えることができます。具体的には以下のようなケアが有効です。
ワキを清潔に保つことが基本です。入浴時には石鹸やボディソープでワキを丁寧に洗い、皮膚表面の細菌を減らしましょう。ワキガの臭いは、汗自体の臭いではなく、汗に含まれる成分が皮膚の常在菌によって分解されることで発生するため、細菌を減らすことは臭い対策として有効です。
汗をかいたらこまめに拭き取ることも効果的です。汗が長時間皮膚に留まると、細菌の繁殖が進み臭いが発生しやすくなります。制汗シートや殺菌成分を含むデオドラント製品を活用するのもよいでしょう。
また、生活習慣の改善も臭い対策に役立ちます。脂質やタンパク質を多く含む食事、過度の飲酒や喫煙は、アポクリン汗腺から分泌される汗の成分を変化させ、臭いを強くする可能性があります。バランスの良い食事を心がけ、ストレスを溜めないようにすることも大切です。
他の治療法との併用
ミラドライ単体でも十分な効果が期待できますが、さらに高い効果を求める場合は、他の治療法との併用を検討することもできます。
例えば、ボトックス注射との併用があります。ボトックス注射は、ボツリヌス菌から生成される神経毒素を使用して、エクリン汗腺の活動を一時的に抑制する治療法です。ミラドライで破壊しきれなかった汗腺からの汗や臭いを補助的に抑えることができます。ただし、ボトックスの効果は数か月程度で、定期的な注射が必要です。
臭い戻りを防ぐための施術選びのポイント
ミラドライの施術を検討している方、または追加照射を考えている方のために、臭い戻りのリスクを最小限に抑えるためのクリニック選びのポイントをご紹介します。
ミラドライ公式認定医の在籍
ミラドライの製造元は、一定の研修と技術基準を満たした医師に「公式認定医」の資格を付与しています。公式認定医は、ミラドライの原理や適切な施術方法について専門的なトレーニングを受けており、より安定した効果が期待できます。
クリニックを選ぶ際は、公式認定医が在籍しているか、そして実際に施術を担当するのが認定医かどうかを確認しましょう。クリニックによっては、看護師や認定を受けていないスタッフが施術を行う場合もありますので注意が必要です。
施術実績の確認
ミラドライの効果は施術者の経験によって左右されます。施術実績が豊富なクリニックであれば、さまざまなタイプの患者様に対応した経験があり、より適切な施術を提供できる可能性が高くなります。
クリニックのウェブサイトやカウンセリング時に、これまでの施術実績(症例数)を確認するとよいでしょう。また、症例写真や患者様の声なども参考になります。
照射方法の確認
先述のとおり、ミラドライの効果は照射出力や照射範囲によって変わります。カウンセリング時に、どのような照射方法で施術を行うのかを確認しましょう。
具体的には、照射出力は最大レベル(レベル5)で行うのか、照射範囲はどの程度なのか(テンプレートのサイズ)、ダブル照射(重ね打ち)のオプションはあるのか、といった点を確認します。「広範囲照射」をうたっているクリニックでも、実際のテンプレートサイズは異なる場合がありますので、具体的な数値を確認することをお勧めします。
アフターケアと保証制度
施術後のフォローアップ体制が充実しているクリニックを選ぶことも重要です。施術後の経過観察や、万が一のトラブルへの対応体制が整っているかを確認しましょう。
また、一部のクリニックでは、効果が不十分だった場合の追加照射に対する保証制度を設けています。例えば、「1年以内であれば追加照射の費用が割引になる」「効果保証期間内は無料で再照射を受けられる」といったプランがあるクリニックもあります。このような保証制度があれば、万が一臭い戻りが気になった場合でも安心です。
カウンセリングの質
カウンセリング時に、医師が丁寧に説明を行い、患者様の質問に適切に答えてくれるかどうかも重要なポイントです。ミラドライの効果やリスク、術後の経過について正直に説明してくれるクリニックは信頼できます。
逆に、「100%治ります」「絶対に再発しません」といった過度な期待を持たせるような説明をするクリニックは注意が必要です。どのような治療法にも限界やリスクはあり、それを正直に伝えてくれるクリニックを選びましょう。
ミラドライ以外の治療選択肢
ミラドライ以外にも、ワキガ・多汗症の治療にはさまざまな選択肢があります。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
外用薬(塗り薬)
原発性腋窩多汗症に対しては、保険適用の外用薬(エクロックゲル5%やラピフォートワイプなど)が使用できます。これらは抗コリン作用により、汗腺からの発汗を抑制する薬剤です。
外用薬は手軽に使用できるメリットがありますが、効果は一時的であり、継続的に使用する必要があります。また、主にエクリン汗腺からの発汗を抑制するため、多汗症には効果がありますが、ワキガ(アポクリン汗腺による臭い)への効果は限定的です。
ボトックス注射
ボトックス注射は、ボツリヌス菌由来の神経毒素を汗腺に注射し、一時的に発汗を抑制する治療法です。効果は数か月から1年程度持続し、定期的な注射が必要です。
ボトックスは主にエクリン汗腺の活動を抑制するため、多汗症に対しては高い効果が期待できます。ただし、アポクリン汗腺への効果は限定的であり、ワキガの根本的な治療にはなりません。また、効果が永続しないため、長期的には費用がかさむ可能性があります。
剪除法(手術)
剪除法は、ワキの皮膚を切開して汗腺を直接目視しながら除去する外科手術です。保険適用となる場合があり、費用を抑えられるメリットがあります。また、汗腺を直接除去するため、確実性に優れた治療法です。
ただし、皮膚を切開するため傷跡が残り、術後のダウンタイムも長くなります。術後は数日間の圧迫固定が必要で、日常生活への復帰にも時間がかかります。また、術後の合併症(血腫、感染、皮膚壊死など)のリスクもあります。
治療法の選択について
日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」においても、ミラドライは腋窩多汗症の治療選択肢の一つとして記載されています。治療法の選択にあたっては、症状の程度、生活スタイル、費用、ダウンタイムの許容範囲などを総合的に考慮し、専門医と相談のうえ決定することが推奨されます。
まずは外用薬やボトックスなどの保存的治療から試し、それでも効果が不十分な場合にミラドライや手術を検討するという段階的なアプローチも一つの選択肢です。

よくある質問
ミラドライ後に臭いが強くなったと感じても、必ずしも治療が失敗したわけではありません。施術直後から1〜2週間程度は、皮膚の回復過程で一時的に臭いが気になることがあります。また、施術から数か月経過して感じる「臭い戻り」は、破壊しきれなかった約20〜30%の汗腺が回復したことによる自然な経過です。施術前と比較すれば大幅な改善が維持されていることがほとんどですので、まずは施術を受けたクリニックに相談されることをお勧めします。
ミラドライは一度の施術で約70〜80%の汗腺を破壊できますが、すべての汗腺を100%破壊することは技術的に困難です。そのため、完全に無臭になることは難しく、「大幅に臭いが軽減される」と理解していただくのが現実的です。より高い効果を求める場合は、広範囲照射やダブル照射(重ね打ち)を行っているクリニックを選ぶことで、より多くの汗腺を破壊でき、臭い戻りのリスクを軽減できます。
はい、ミラドライは複数回の施術を受けることが可能です。追加照射を行う場合は、最初の施術から3か月以上の間隔を空けることが推奨されています。通常は1回または2回の施術で十分な効果を得られる方が多いですが、症状が強い場合や1回目の効果が不十分だった場合は、追加照射により更なる改善が期待できます。ただし、何度も繰り返し照射することは皮膚への負担となりますので、専門医とよく相談のうえ判断してください。
ミラドライは汗腺を直接破壊する治療法であり、神経を遮断する外科手術とは異なります。そのため、手のひらの多汗症手術後に見られるような「代償性発汗」(他の部位からの発汗が増える現象)は起きにくいとされています。ワキの汗腺は全身の約2%程度に過ぎないため、この部分の汗腺を減らしても他の部位への影響は限定的です。ただし、個人差はありますので、気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
ミラドライの効果は施術直後が最も高く、その後徐々に安定していきます。施術から1〜2か月で皮膚の状態が落ち着き、多くの方が効果を実感できるようになります。その後、3〜6か月かけて破壊しきれなかった汗腺の一部が回復し、約半年後の状態が「半永久的に持続する効果」となります。施術直後と比較すると若干の臭いや汗が戻ったように感じることがありますが、これは想定内の経過であり、施術前と比べれば大幅な改善が維持されています。
周囲の方が臭わないと言っているにもかかわらず、ご自身だけが臭いを感じ続ける場合は、「自臭症」という心理的な状態の可能性があります。長年ワキガに悩んでこられた方ほど、施術後も不安が拭えず、わずかな臭いでも過敏に感じてしまうことがあります。まずは施術を受けたクリニックで客観的な評価を受けることをお勧めします。それでも不安が解消されない場合は、心療内科や精神科への相談も検討してみてください。適切なカウンセリングや治療によって改善が期待できます。
まとめ
ミラドライは、厚生労働省の薬事承認を取得した安全性の高いワキガ・多汗症治療法であり、多くの方が効果を実感しています。しかし、施術後に「臭いが強くなった」と感じるケースがあることも事実です。
その原因としては、施術直後の一時的な反応、残存汗腺の回復による臭い戻り、施術者の技術や照射範囲の問題、そして心理的要因(自臭症)などが考えられます。重要なのは、「臭いが強くなった」と感じることと、実際に施術前より臭いが増えていることは必ずしも同じではないという点です。
ミラドライは一度の施術で約70〜80%の汗腺を破壊でき、施術前と比較すれば大幅な改善が期待できます。ただし、100%の汗腺を破壊することは困難であり、「完全に無臭になる」というよりは「大幅に臭いが軽減される」と理解していただくのが現実的です。
臭い戻りのリスクを最小限に抑えるためには、ミラドライ公式認定医が在籍し、広範囲照射やダブル照射を行っているクリニックを選ぶことが重要です。また、施術後のアフターケアを適切に行い、気になることがあれば早めにクリニックに相談することをお勧めします。
アイシークリニック大宮院では、ミラドライ公式認定医による施術を提供しており、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療をご提案しています。ワキガや多汗症でお悩みの方、ミラドライ後の臭い戻りが気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
- 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版 – 日本皮膚科学会
- 汗の病気―多汗症と無汗症― Q5 – 公益社団法人日本皮膚科学会
- 【腋窩多汗症】miraDry – 株式会社ジェイメック
- 国内初 切らないワキ汗治療器「miraDry(ミラドライ)システム」薬事承認取得に関するご案内 – 株式会社ジェイメック プレスリリース
- 自臭症をご存知ですか? – 総合南東北病院
※本記事は2025年12月時点の情報に基づいて作成しています。最新の情報については、医療機関にお問い合わせください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務