「ミラドライを受けたけれど効果がなかった」「ミラドライは再発するって本当?」──インターネットで情報を調べると、こうした声を目にすることがあるかもしれません。ワキガや多汗症に悩み、ミラドライ治療を検討している方にとって、このような否定的な意見は不安の種になることでしょう。
本記事では、「ミラドライ 効果なし」と感じてしまう理由を医学的な観点から詳しく解説し、治療効果を最大限に引き出すためのポイントについてご紹介します。大宮エリアでミラドライ治療を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
- ミラドライとは?治療の基本的な仕組み
- ワキガと多汗症の違いを理解しよう
- ミラドライで期待できる効果と持続期間
- 「ミラドライは効果なし」と感じる5つの原因
- 治療効果を最大化するためのポイント
- ミラドライの副作用とダウンタイム
- 他のワキガ・多汗症治療との比較
- クリニック選びで失敗しないために
- まとめ
ミラドライとは?治療の基本的な仕組み
ミラドライは、2006年に米国のMiramar Labs社によって開発され、2010年に日本に上陸したワキガ・多汗症治療機器です。2018年6月には日本の厚生労働省から「重度の原発性腋窩多汗症」に対する医療機器として薬事承認を取得しており、また米国FDA(アメリカ食品医薬品局)からも腋窩多汗症・腋臭症・減毛の適応で承認を受けています。
従来のワキガ治療といえば、メスによる切開を伴う手術が主流でした。しかしミラドライは、皮膚を切らずに汗腺を破壊できる画期的な治療法として注目を集めています。
マイクロ波による汗腺破壊のメカニズム
ミラドライは、電子レンジと同じ原理であるマイクロ波(5.8GHz)を使用して汗腺を破壊します。マイクロ波には水分に吸収されやすい性質があり、水分を多く含む汗腺に効率的にエネルギーを届けることができます。
治療の流れを詳しく見ていきましょう。
まず、専用のハンドピースが脇の皮膚を吸引し、固定します。その後、マイクロ波が照射され、皮膚の表面から約2~3mmの深さにある汗腺に向けてエネルギーが集中します。マイクロ波は水分を含む汗腺に吸収され、約60~70℃の熱を発生させます。この熱によって汗腺が焼灼・凝固され、機能を停止します。
重要なのは、皮膚表面は「ハイドロセラミック・クーリング」という冷却システムによって保護されているという点です。表皮から真皮にかけての浅い層を冷却することで、火傷や色素沈着のリスクを抑えながら、汗腺がある層にのみ熱エネルギーを集中させることができます。また、脂肪層より深い部位にはエネルギーが届かないよう設計されているため、周辺組織へのダメージは最小限に抑えられます。
治療時間と施術の流れ
ミラドライの施術は、おおよそ以下の流れで進みます。
最初に、治療する範囲をマーキングします。次に、局所麻酔を注射します。麻酔が効いた後、マイクロ波を照射していきます。施術時間は片側約30分、両脇で約60分程度です。治療終了後は、アイスパックで患部を冷却します。
施術中は麻酔が効いているため、激しい痛みを感じることはほとんどありません。ただし、麻酔注射の際にチクッとした痛みを感じる方はいらっしゃいます。
ワキガと多汗症の違いを理解しよう
ミラドライの効果を正しく理解するためには、まずワキガと多汗症の違いを知っておく必要があります。これらは混同されやすいのですが、原因となる汗腺が異なります。
2種類の汗腺とその役割
人間の皮膚には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺という2種類の汗腺が存在します。
エクリン汗腺は全身に分布しており、主に体温調節のために水分の多いサラサラとした汗を分泌します。多汗症の原因となるのは、このエクリン汗腺です。エクリン汗腺から分泌される汗自体はほぼ無臭ですが、放置すると雑菌が繁殖して汗臭くなることがあります。
一方、アポクリン汗腺は脇の下、外陰部、外耳道、乳輪など限られた部位にのみ存在します。アポクリン汗腺から分泌される汗には、脂肪酸・鉄分・色素・蛍光物質・尿素・アンモニアなどの成分が含まれており、粘り気があるのが特徴です。この汗自体に臭いはありませんが、皮膚表面の常在菌(主に表皮ブドウ球菌)によって分解されることで、ワキガ特有の臭いが発生します。具体的には、アポクリン汗腺から分泌された脂肪酸が細菌によって分解され、「3メチル2へキセノイン酸」という物質が生成されることで臭いが発生するとされています。
ワキガは遺伝的な体質
日本皮膚科学会の情報によると、ワキガは顕性(優性)遺伝し、親子ともに現れることが多いとされています。両親ともにワキガ体質である場合は約80%、片親がワキガ体質の場合は約50%の確率で遺伝するといわれています。
興味深いことに、日本人などの黄色人種におけるワキガの頻度は約10%にすぎません。一方、白人や黒人ではほとんどの人が多少なりともワキガを持っているとされています。これは、ワキガが欧米では生理学的現象の一つとして捉えられており、治療対象となることが少ない背景と関係しています。
ワキガの有無は耳垢の状態とも関連があることが知られています。16番染色体にあるABCC11遺伝子がワキガや軟耳垢(湿った耳垢)に関わっていることが解明されており、耳垢が湿っている人はアポクリン汗腺の活動が活発である傾向があります。
原発性腋窩多汗症とは
原発性腋窩多汗症は、汗の量が多くなる原因となる病気や障害がないにもかかわらず、腋窩(脇の下)から過剰な発汗が認められる疾患です。日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」によると、本邦における有病率は約5.9%(約531万人)と推計されています。
診断基準としては、局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6カ月以上認められ、以下の6症状のうち2項目以上があてはまる場合に多汗症と診断されます。
- 最初に症状が出るのが25歳以下であること
- 左右対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
- 家族歴がみられること
- それらによって日常生活に支障をきたすこと
重症度はHDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)という4段階の指標で評価されます。HDSSが3(発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある)または4(発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある)の場合が重症とされます。
ミラドライで期待できる効果と持続期間
1回の治療で7~8割の汗腺を破壊
ミラドライは、1回の治療で約70~80%の汗腺を破壊することができるとされています。つまり、汗の量や臭いを約2~3割程度にまで減少させることが期待できます。
重要な点として、一度破壊された汗腺は再生しないため、治療効果は半永久的に持続すると考えられています。これは、汗腺が体内で再生産されることがない組織であるためです。
臨床研究においても、ミラドライの効果は実証されています。2012年に発表された研究では、ミラドライ治療後1年経過しても81.7%の患者で脇汗の減少効果が持続していることが確認されました。また、ワキガ(臭い)に関しては、治療直後から80%の被験者で臭いが気にならなくなり、2年後でも89%の被験者でその効果が持続していたと報告されています。
エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方に作用
ミラドライの大きな特徴は、多汗症の原因となるエクリン汗腺と、ワキガの原因となるアポクリン汗腺の両方を同時に破壊できる点です。エクリン汗腺とアポクリン汗腺は皮膚内で近い層に存在しているため、マイクロ波のエネルギーが両方の汗腺に届きます。
そのため、「汗の量を減らしたい」という多汗症のお悩みと、「臭いを軽減したい」というワキガのお悩みの両方に対応できます。切開手術(剪除法)の場合、アポクリン汗腺の除去率は80~90%程度ですが、より浅層に存在するエクリン汗腺は50~60%程度しか除去できないとされています。この点でも、ミラドライは両方の汗腺に効率的にアプローチできる優れた治療法といえます。
効果実感の経過
ミラドライ治療後の効果実感には、一定のパターンがあります。
治療直後から数カ月間は、最も効果を実感しやすい時期です。破壊された汗腺に加え、完全には破壊されなかった汗腺もダメージを受けて一時的に活動を停止するため、汗や臭いがほとんど気にならなくなる方が多くいらっしゃいます。
しかし、治療から3~6カ月程度経過すると、ダメージを受けた汗腺が徐々に回復し、活動を再開します。このため、「治療直後は完全に汗が止まったのに、最近少し汗が出てきた」と感じる方がいらっしゃいます。
これは「再発」ではなく、多くの方に起こりうる正常な経過です。約半年後の状態が、長期的に持続する治療効果の目安となります。完全に破壊された汗腺は再生しませんので、治療前と比較すれば確実に汗や臭いは軽減されているはずです。
「ミラドライは効果なし」と感じる5つの原因
インターネット上で「ミラドライは効果がない」「ミラドライで後悔した」という声が見られることがあります。では、なぜそのような感想を持つ方がいるのでしょうか。主な原因を5つ解説します。
原因1:治療効果に対する期待と現実のギャップ
ミラドライは1回の治療で約70~80%の汗腺を破壊できますが、裏を返せば約20~30%の汗腺は残ることになります。「完全に汗が止まる」「臭いが100%なくなる」という期待を持って治療を受けると、残った汗腺による発汗や臭いを「効果がなかった」と感じてしまう可能性があります。
特に、治療直後は残った汗腺もダメージを受けて活動が止まるため、一時的に汗や臭いがほぼゼロになることがあります。その後、数カ月経過してダメージから回復した汗腺が活動を再開すると、「再発した」「効果が消えた」と感じてしまうことがあるのです。
しかし、これは再発ではなく想定内の経過であり、治療前と比較すれば確実に症状は軽減しています。重要なのは、治療前に医師から適切な説明を受け、現実的な期待値を持つことです。
原因2:照射漏れや照射レベルの不足
ミラドライで十分な効果を得るためには、適切な照射レベルで漏れなく照射することが必要です。照射が不十分だったり、照射漏れがあったりすると、汗腺を完全に破壊することができません。
照射が不十分な場合でも、汗腺は一時的にダメージを受けるため、治療直後は効果を感じることがあります。しかし、しばらく経つとダメージから回復し、汗や臭いが元に戻ってしまいます。
これは主に、施術を担当する医師の経験や技術不足が原因で起こります。ミラドライは一見「脇に機械を当てるだけ」の簡単な施術に見えますが、実際には汗腺の位置や範囲を正確に把握し、適切な照射レベルを設定する技術が必要です。
原因3:照射範囲が狭い
ミラドライの効果を最大化するためには、汗腺が存在する範囲を十分にカバーする広範囲の照射が重要です。照射範囲が狭いと、脇の中心部は治療できても辺縁部分が打ち漏れてしまい、そこから汗や臭いが出続ける可能性があります。
ミラドライ治療ではテンプレート(照射の型紙)を使用しますが、その大きさはクリニックによって異なることがあります。「広範囲」を謳っていても、実際の照射面積が異なる場合があるため、カウンセリング時に具体的な照射範囲を確認することが大切です。
原因4:若年での治療による再発
ミラドライで一度破壊した汗腺は再生しませんが、成長期の方が治療を受けた場合、その後の成長に伴って新しい汗腺が発達する可能性があります。
アポクリン汗腺は思春期に性ホルモンの影響で発達するため、汗腺の発達が完了する前に治療を受けると、後から新しい汗腺が形成されてしまうことがあります。これは「再発」というよりも「新たな汗腺の発生」であり、治療時点で存在した汗腺に対する効果は持続しています。
そのため、多くのクリニックでは18歳前後を治療の目安としてご案内しています。
原因5:ワキガと多汗症の混同による誤解
ミラドライは厚生労働省から「重度の原発性腋窩多汗症」の治療機器として承認を受けています。多汗症への効果は臨床試験で実証されており、高い治療効果が認められています。
一方、ワキガ(腋臭症)への効果については、多汗症ほど明確なエビデンスがないという指摘もあります。ワキガの原因となるアポクリン汗腺は、エクリン汗腺よりもやや深い層に存在する場合があり、マイクロ波のエネルギーが十分に届かないケースがあるという見解もあります。
ただし、多くのクリニックでの臨床経験では、ワキガに対しても改善効果が認められています。米国FDAでは腋臭症に対しても承認を取得しており、臨床研究でも臭いの改善効果が報告されています。
重要なのは、ご自身の症状が主に「汗の量」の問題なのか、「臭い」の問題なのか、あるいは両方なのかを正確に把握し、治療に対して適切な期待を持つことです。
治療効果を最大化するためのポイント
ミラドライで満足のいく結果を得るためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
経験豊富な医師・クリニックを選ぶ
ミラドライの治療効果は、施術を担当する医師の技術や経験によって大きく左右されます。同じ機器を使用しても、照射レベルの設定、照射範囲の決定、麻酔の方法などによって結果は異なります。
クリニック選びの際は、ミラドライの症例数や、医師がミラドライ認定医の資格を持っているかどうかを確認することをお勧めします。また、カウンセリングで治療のリスクやデメリットについても正直に説明してくれるクリニックは、信頼性が高いといえます。
広範囲照射を選択する
汗腺が存在する範囲をしっかりカバーするためには、広範囲での照射が推奨されます。脇毛が生えている範囲(有毛部)全体をカバーできる大きさのテンプレートを使用しているか、カウンセリング時に確認しましょう。
体格の大きい方や、脇の範囲が広い方の場合は、標準的なテンプレートでは辺縁部分をカバーしきれないことがあります。そうした場合の対応についても、事前に相談しておくとよいでしょう。
ダブル照射の検討
より高い効果を求める場合は、同一部位に2回照射する「ダブル照射」という方法があります。1パス目と2パス目を少しずらして照射することで、より多くの汗腺を破壊することができます。
ただし、「ダブル照射」の内容はクリニックによって異なる場合があります。2パス目も1パス目と同じ範囲・出力で照射するのか、それとも中央部分のみの照射なのか、出力を下げて照射するのかなど、具体的な内容を確認することが大切です。
適切な年齢で治療を受ける
前述の通り、汗腺の発達が完了していない時期に治療を受けると、その後新しい汗腺が発達して症状が再び現れる可能性があります。一般的には18歳前後以降での治療が推奨されています。
ただし、多汗症やワキガの症状が日常生活に著しい支障をきたしている場合は、それより若い年齢でも治療を検討することがあります。その場合は、再発の可能性についても十分に理解した上で判断することが大切です。
治療前のカウンセリングを活用する
ミラドライ治療を受ける前には、必ずカウンセリングを受けましょう。カウンセリングでは、ご自身の症状が治療の適応であるかどうか、期待できる効果、治療のリスクや副作用、費用などについて詳しく説明を受けることができます。
不安や疑問は遠慮なく質問し、納得した上で治療を受けることが、後悔のない結果につながります。
ミラドライの副作用とダウンタイム
ミラドライは厚生労働省の承認を受けた安全性の高い治療法ですが、医療行為である以上、副作用のリスクはゼロではありません。ここでは、起こりうる副作用とダウンタイムについて解説します。
一般的な副作用
ミラドライ治療後には、以下のような副作用が一時的に現れることがあります。
赤みは、機器の吸引や熱エネルギーの影響で皮膚が赤くなる症状です。通常、数日から1週間程度で落ち着きます。
腫れ(むくみ)は、治療部位やその周辺が腫れる症状です。個人差がありますが、数日から2週間程度で改善することが多いです。
痛みは、治療直後にジンジンするような痛みを感じることがあります。翌日には軽減することがほとんどで、処方された鎮痛剤を服用することで対処できます。
内出血は、ハンドピースによる吸引の影響で、脇に内出血が生じることがあります。1~2週間程度で自然に吸収されます。
しこり感・つっぱり感は、治療部位の皮膚に一時的な硬化やひきつれを感じることがあります。通常、数週間から数カ月で改善します。
しびれは、治療部位やその周辺にしびれを感じることがあります。多くの場合、一時的なもので数週間から数カ月で回復します。
稀に起こる副作用
頻度は低いですが、以下のような副作用が報告されることもあります。
水疱は、皮膚に小さな水ぶくれができることがあります。火傷は、照射レベルが高すぎた場合に起こる可能性があります。脱毛は、治療部位の脇毛が一時的または永続的に減少することがあります。これは副作用であると同時に、脱毛効果として歓迎される方もいらっしゃいます。
ダウンタイムについて
ミラドライは切開を伴わない治療のため、ダウンタイムは比較的短いのが特徴です。治療当日から日常生活を送ることができ、翌日から仕事に復帰する方も多くいらっしゃいます。
ただし、以下の点には注意が必要です。
治療当日は車の運転を避け、数日間は激しい運動や大量の飲酒を控えることが推奨されます。シャワーは治療当日から可能ですが、長湯は1週間程度控えることが望ましいです。腫れや痛みがある間は、アイスパックなどで患部を冷やすことで症状を軽減できます。
他のワキガ・多汗症治療との比較
ワキガや多汗症の治療法はミラドライ以外にもいくつかあります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
切開手術(剪除法)
剪除法は、脇を切開してアポクリン汗腺を直接目で確認しながら切除する手術です。ワキガに対して高い効果を発揮し、一度の治療で根本的な改善が期待できます。保険適用となる場合もあり、費用負担が軽減されるメリットがあります。
一方で、切開を伴うため傷跡が残る可能性があること、術後の回復に時間がかかること(通常、数日から1週間程度の安静が必要)、圧迫固定が必要なことなどのデメリットがあります。また、医師が目視で汗腺を除去するため、技術によって効果にばらつきが出やすいという側面もあります。
ミラドライと比較すると、ワキガへの効果は同程度とされていますが、多汗症(エクリン汗腺)への効果はミラドライの方が優れているという見解もあります。これは、エクリン汗腺がアポクリン汗腺よりも浅層に存在するため、切開手術では十分に除去しきれない場合があるためです。
ボトックス注射
ボトックス(ボツリヌストキシン)注射は、神経から汗腺への指令(アセチルコリンの放出)をブロックすることで発汗を抑制する治療法です。主にエクリン汗腺からの発汗を抑制するため、多汗症に対して高い効果を発揮します。
施術は注射のみで、ダウンタイムがほとんどないのが大きなメリットです。また、重度の原発性腋窩多汗症に対しては保険適用となる場合もあります。
ただし、効果は一時的で、通常4~9カ月程度で効果が切れてしまいます。そのため、効果を維持するためには定期的に注射を繰り返す必要があり、長期的なコストが嵩む傾向があります。また、ワキガの原因となるアポクリン汗腺への効果は、エクリン汗腺ほど期待できないという見解もあります。
外用抗コリン薬
2020年以降、日本でも原発性腋窩多汗症に対する外用抗コリン薬(エクロックゲル、ラピフォートワイプなど)が保険適用となりました。これらは汗腺への指令をブロックすることで発汗を抑制する塗り薬です。
自宅で簡単に使用できること、全身性の副作用が少ないことがメリットです。臨床試験では、約80%の方で発汗が抑えられ、約60%の方で日常生活に支障がなくなるまで改善したという結果が報告されています。
ただし、効果を維持するためには継続的な使用が必要です。また、ワキガの原因となるアポクリン汗腺への効果は限定的とされています。
塩化アルミニウム外用
塩化アルミニウム溶液(院内製剤として処方されることが多い)を脇に塗布することで、汗腺の出口を閉塞させて発汗を抑制する方法です。比較的安価で、軽症の多汗症に対しては有効性が認められています。
ただし、効果を維持するためには継続的な使用が必要であること、皮膚刺激(かゆみ、ピリピリ感)が生じる場合があること、重症例では効果が不十分なことがデメリットです。
各治療法の比較まとめ
治療法を選ぶ際は、症状の重症度、ダウンタイムの許容度、費用、効果の持続期間など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
ミラドライは、切らずに半永久的な効果が期待できること、ダウンタイムが短いこと、多汗症とワキガの両方に対応できることが大きなメリットです。一方、保険適用外のため費用が高額になること、すべての汗腺を破壊できるわけではないことがデメリットといえます。
どの治療法が最適かは、症状や生活スタイル、予算などによって異なります。医師と相談の上、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。
クリニック選びで失敗しないために
ミラドライで満足のいく結果を得るためには、適切なクリニック選びが非常に重要です。以下のポイントを参考にしてください。
治療実績と経験を確認する
ミラドライの治療効果は、医師の技術や経験に大きく左右されます。クリニックのウェブサイトやカウンセリングで、ミラドライの症例数や、医師の経歴・資格を確認しましょう。ミラドライ認定医の資格を持つ医師が在籍しているかどうかも、一つの判断材料になります。
カウンセリングの質を重視する
信頼できるクリニックは、治療のメリットだけでなく、リスクやデメリットについても正直に説明してくれます。「必ず治る」「100%効果がある」といった過度な表現を避け、患者さん一人ひとりの症状に合わせた説明をしてくれるクリニックを選びましょう。
カウンセリングで確認すべきポイントとしては、治療の具体的な内容(照射範囲、照射レベル、シングル照射かダブル照射か)、期待できる効果と限界、起こりうる副作用とその対処法、費用の総額(追加料金の有無)、アフターケアの内容などが挙げられます。
価格だけで判断しない
ミラドライは自費診療のため、クリニックによって価格が異なります。しかし、安さだけで選ぶと、アフターフォローが不十分だったり、十分な効果が得られなかったりするリスクがあります。
価格だけでなく、クリニックの評判、医師の経験、アフターケアの内容なども総合的に判断することが大切です。
アフターケア体制を確認する
治療後に気になる症状が出た場合の対応体制も重要です。定期的な経過観察を行っているか、追加治療が必要な場合の保証制度があるかなども確認しておくとよいでしょう。
一部のクリニックでは、治療後一定期間内であれば追加費用なしで再照射を受けられる保証付きプランを用意しているところもあります。

まとめ
本記事では、「ミラドライ 効果なし」という声の真相と、治療効果を最大化するためのポイントについて詳しく解説しました。
ミラドライは、厚生労働省および米国FDAの承認を受けた、安全性と有効性が認められた治療法です。1回の治療で約70~80%の汗腺を破壊し、半永久的な効果が期待できます。切開を伴わないためダウンタイムが短く、多汗症とワキガの両方に対応できるのが大きなメリットです。
「効果がない」と感じてしまう主な原因としては、期待と現実のギャップ、照射漏れや照射レベルの不足、照射範囲の狭さ、若年での治療、症状への誤解などが挙げられます。これらは、適切なクリニック選び、事前のカウンセリング、現実的な期待値を持つことで、多くの場合回避することができます。
大宮エリアでミラドライ治療をご検討の方は、複数のクリニックでカウンセリングを受け、治療内容や費用、アフターケアなどを比較検討されることをお勧めします。医師との十分なコミュニケーションを通じて、ご自身の症状や希望に合った治療を選択していただければ幸いです。
ワキガや多汗症の症状は、日常生活の質を大きく低下させることがあります。適切な治療を受けることで、汗や臭いの悩みから解放され、より快適な毎日を送ることができるようになります。本記事が、治療を検討されている皆さまの参考になれば幸いです。
参考文献
- 汗の病気―多汗症と無汗症― Q5 腋臭症(ワキガ)はどんな病気ですか?|日本皮膚科学会Q&A
- 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版|日本皮膚科学会
- 原発性腋窩多汗症 診療のいろは|マルホ株式会社 医療関係者向けサイト
- 診断・検査(原発性腋窩多汗症)|マルホ株式会社 医療関係者向けサイト
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務