「ワキガや多汗症を切らずに治療したい」「でも、ミラドライにはデメリットがあるって聞いたけど本当?」このようなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。ミラドライは2018年に厚生労働省から薬事承認を取得した、マイクロ波を用いたワキガ・多汗症治療機器です。皮膚を切らずに汗腺を破壊できる画期的な治療法として注目を集めていますが、メリットだけでなくデメリットについても正しく理解することが、後悔のない治療選択につながります。本記事では、ミラドライのデメリットを中心に、副作用や注意点、他の治療法との比較まで詳しく解説いたします。アイシークリニック大宮院でミラドライ治療を検討されている方は、ぜひ参考になさってください。
目次
- ミラドライとは?治療の仕組みと特徴
- ミラドライの主なデメリット7選
- ミラドライで起こりうる副作用と症状
- ミラドライの効果に関する注意点
- ミラドライと他の治療法との比較
- ミラドライのデメリットを軽減するためのポイント
- ミラドライが向いている人・向いていない人
- よくある質問
- まとめ
ミラドライとは?治療の仕組みと特徴
ミラドライの具体的なデメリットをご説明する前に、まずはミラドライがどのような治療法なのかを理解しておくことが重要です。治療の仕組みを知ることで、なぜデメリットが生じるのかも理解しやすくなります。
ミラドライの治療原理
ミラドライは、マイクロ波と呼ばれる電磁波を皮膚の表面から照射し、ワキガや多汗症の原因となる汗腺を熱エネルギーで破壊する治療法です。マイクロ波は水分に選択的に吸収されて熱を発生する性質があり、この特性を利用して水分を多く含む汗腺をピンポイントで加熱処理します。
人間の汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。エクリン腺は多汗症の原因となり、体温調節のために全身に分布して無色透明の汗を分泌します。一方、アポクリン腺はワキガの原因となり、ワキや陰部など特定の部位に存在し、脂質やタンパク質を含んだ汗を分泌します。このアポクリン腺から分泌された汗が皮膚の常在菌によって分解されることで、ワキガ特有のにおいが発生します。
ミラドライはこれら2種類の汗腺が集中して存在する真皮深層から皮下組織浅層にマイクロ波のエネルギーを集中させ、両方の汗腺を同時に破壊することができます。そのため、ワキガと多汗症の両方に対して効果を発揮することが期待できます。
厚生労働省とFDAの承認について
ミラドライは、米国で開発された医療機器であり、米国FDA(食品医薬品局)において腋窩多汗症、腋臭症(ワキガ)、減毛の適応で承認を取得しています。日本においても2018年6月に厚生労働省から重度の原発性腋窩多汗症を治療することを目的として薬事承認を取得しました。
現在、切らないワキガ・多汗症治療機器として日米両国の認可を得ているのはミラドライのみであり、その効果と安全性が公的機関によって認められた治療法といえます。ただし、厚生労働省の承認はあくまで「腋窩多汗症治療機器」としてのものであり、保険適用には至っていない点は注意が必要です。
ミラドライのメリット
デメリットを理解する前に、まずミラドライの主なメリットを確認しておきましょう。ミラドライには「皮膚を切開しないため傷跡が残らない」「1回の治療で長期的な効果が期待できる」「施術時間が両ワキで約60分程度と短い」「入院の必要がなく日帰りで治療できる」「ダウンタイムが短く翌日から日常生活に戻れる」「ワキガと多汗症の両方に効果がある」といった点が挙げられます。
これらのメリットは従来の切開手術と比較した際に特に際立ちます。切開手術では傷跡が残る、数週間の安静期間が必要、入院を要する場合があるなどのデメリットがありましたが、ミラドライではこれらの負担が大幅に軽減されています。しかし、メリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。次の章から、ミラドライのデメリットについて詳しく解説していきます。
ミラドライの主なデメリット7選
ミラドライには多くのメリットがある一方で、治療を受ける前に知っておくべきデメリットがあります。ここでは、ミラドライの主要なデメリットを7つに分けて詳しく解説いたします。
デメリット1:保険適用外で治療費が高額
ミラドライの最も大きなデメリットの一つが、保険適用外の自由診療であることです。厚生労働省から薬事承認は取得しているものの、健康保険が適用されないため、治療費は全額自己負担となります。
ミラドライの治療費用はクリニックによって異なりますが、一般的な相場として20万円から50万円程度が必要となることが多いです。これは保険適用で受けられる剪除法(せんじょほう)などの手術治療と比較すると、かなり高額になります。保険適用の剪除法であれば3割負担で2万円から5万円程度で治療を受けることが可能です。
ただし、ミラドライ治療は医療費控除の対象となります。ワキガや多汗症は疾患として認められているため、治療目的でミラドライを受けた場合は確定申告によって医療費控除を受けることができます。また、クリニックによってはモニター制度や分割払いに対応している場合もありますので、費用面で不安がある方は事前に相談されることをお勧めします。
デメリット2:すべての汗腺を破壊できるわけではない
ミラドライは高い効果が期待できる治療法ですが、1回の治療ですべての汗腺を完全に破壊できるわけではありません。一般的に、ミラドライ1回の治療で破壊できる汗腺は全体の約70%から80%程度とされています。最新のミラドライII(高出力バージョン)を使用した場合でも、約90%程度が限界といわれています。
これは、汗腺が皮膚の深さや範囲において個人差があること、マイクロ波が完全に均一に照射されるわけではないことなどが理由として挙げられます。そのため、治療後も2割から3割程度の汗腺は残存することになり、わずかに汗やにおいの症状が残る場合があります。
軽度から中等度の症状の方であれば1回の治療で十分満足できる効果を得られることが多いですが、重度の症状をお持ちの方の場合は、残りの汗腺からの発汗やにおいを強く感じることがあります。このような場合には、2回目の治療を検討する必要が出てくる可能性があります。
デメリット3:一時的な副作用が生じる
ミラドライは皮膚を切開しない低侵襲な治療ですが、マイクロ波による熱エネルギーで汗腺を破壊するため、施術後には一時的な副作用が生じます。主な副作用としては、腫れ、痛み、内出血、しびれ、皮膚の硬化などがあります。
これらの副作用はほとんどの方に見られる症状ですが、一生涯残るような重篤な副作用ではなく、数日から数週間で自然に改善していきます。目立つ腫れや赤みは約1週間程度で落ち着くことがほとんどです。ただし、副作用の程度や回復期間には個人差があり、人によっては数か月間症状が続くケースもあります。
副作用について詳しくは後の章で解説いたしますが、治療を受ける前に起こりうる症状を理解し、適切な術後ケアを行うことが重要です。
デメリット4:効果の実感に個人差がある
ミラドライの治療効果には個人差があり、すべての患者様が同じレベルの満足度を得られるわけではありません。汗腺の数や分布、皮膚の厚さ、体質などは人それぞれ異なるため、同じ治療を受けても効果の感じ方には差が生じます。
特に、治療前の症状が重度であった方は、治療後も一定の症状が残りやすい傾向があります。例えば、治療前に汗の量が非常に多かった方は、70%の汗腺が破壊されても残りの30%からの発汗量がまだ気になるレベルである可能性があります。
また、ワキガのにおいに関しては、主観的な要素も大きく影響します。客観的には十分な効果が出ていても、本人が「まだにおいが気になる」と感じるケースもあります。逆に、わずかな改善でも「すごく楽になった」と満足される方もいらっしゃいます。治療前のカウンセリングで現実的な効果の目安を確認し、過度な期待を持たないことも重要です。
デメリット5:施術から数か月後に症状が戻ったように感じることがある
ミラドライで破壊された汗腺は再生しないため、理論上は半永久的な効果が期待できます。しかし、施術から1か月から半年程度経過すると、「治療直後は汗もにおいもほとんどなくなったのに、再発してきたのでは?」と感じる方がいらっしゃいます。
これは、ミラドライで完全に破壊しきれなかった汗腺が、マイクロ波によるダメージから回復して再び活動を始めることが原因です。治療直後は破壊しきれなかった汗腺もダメージを受けて一時的に機能が停止していますが、時間の経過とともに回復し、発汗を再開するのです。
これは治療の失敗や再発ではなく、ミラドライの正常な作用です。施術から約半年後の状態が「半永久的に持続する効果」の目安となります。この点を理解していないと、「効果がなくなった」「再発した」と誤解してしまう可能性があるため、事前に正しい知識を持っておくことが大切です。
デメリット6:医師の技術によって効果に差が出る可能性
ミラドライは機器を使用した治療ですが、照射方法や出力設定、麻酔の技術などは施術を行う医師によって異なります。そのため、同じミラドライ治療であっても、クリニックや医師によって効果や副作用の程度に差が生じる可能性があります。
ミラドライの効果を最大限に引き出すためには、汗腺の位置や範囲を正確に把握し、適切な出力で均一にマイクロ波を照射する技術が必要です。照射が不十分だったり、照射漏れがあったりすると、効果が十分に得られない可能性があります。
また、一部のクリニックでは医師ではなく看護師が施術を行っているケースもあると報告されています。ミラドライは医療行為であり、適切な知識と経験を持った医師による施術が望ましいといえます。クリニック選びの際には、医師の経験や症例数、認定医の有無などを確認することをお勧めします。
デメリット7:治療対象部位が限られる
ミラドライは厚生労働省から「腋窩多汗症治療機器」として承認を受けていますが、これは腋窩(ワキ)に対する治療に限定されています。手のひらの多汗症(手掌多汗症)や足の裏の多汗症(足底多汗症)、顔面多汗症などには、現時点では適応外となります。
ワキ以外の部位の多汗症でお悩みの方は、ミラドライ以外の治療法を検討する必要があります。例えば、手のひらや足の裏の多汗症に対しては、イオントフォレーシス療法やボトックス注射、内服療法などが選択肢となります。
また、ワキガ症状がワキだけでなく、陰部(すそワキガ)や乳輪周囲にも及んでいる場合、ワキのミラドライ治療だけでは全体的な改善は期待できません。全身の体臭でお悩みの場合は、複合的な治療アプローチが必要となることがあります。
ミラドライで起こりうる副作用と症状
ミラドライは安全性の高い治療法ですが、医療行為である以上、一定の副作用が生じる可能性があります。ここでは、ミラドライ治療後に起こりうる副作用について、発生頻度や回復期間とともに詳しく解説いたします。
ほとんどの方に見られる一般的な副作用
ミラドライ治療を受けた多くの方に見られる一般的な副作用として、以下のような症状があります。
腫れについては、治療部位が腫れる症状で、多くの患者様に見られます。施術直後から生じ、数日から1週間程度で徐々に落ち着いていきます。冷却パックなどで冷やすことで、腫れの軽減を図ることができます。
痛みや違和感については、治療後にピリピリとした痛みや、つっぱり感、違和感を感じることがあります。これらは通常の鎮痛剤で対処できる程度のものがほとんどで、1週間程度で改善していきます。
内出血については、麻酔注射やミラドライの吸引による内出血が生じることがあります。見た目は気になるかもしれませんが、1から2週間で自然に消失します。
赤みについては、機器の吸引による赤みが施術部位に現れることがあります。こちらも一時的なもので、数日から1週間程度で落ち着きます。
しびれについては、ワキや腕にしびれを感じることがありますが、通常は一時的なものです。神経が熱エネルギーの影響を受けることで生じますが、数週間で自然に改善することがほとんどです。
一部の方に見られる副作用
頻度は低いものの、一部の方に見られる副作用として以下のような症状があります。
皮膚の硬化については、治療部位の皮膚が一時的に硬くなることがあります。これは組織の治癒過程で生じる症状で、数週間から数か月かけて徐々に柔らかくなっていきます。
皮膚の隆起やひきつれについては、治療部位に小さな隆起やひきつれ感が生じることがあります。こちらも時間の経過とともに改善していく一時的な症状です。
腕や指先のしびれや感覚変化については、治療部位周辺の神経への影響により、腕や指先にしびれや感覚の変化が生じることがあります。多くの場合は数週間から数か月で回復しますが、まれに長期間続くケースもあります。
一時的な脱毛については、治療部位のワキ毛が一時的に抜けることがあります。これは汗腺と同じ深さに毛根が存在するためで、むしろ脱毛効果としてプラスに捉える方もいらっしゃいます。
非常にまれに起こる可能性のある副作用
発生頻度は非常に低いものの、可能性として知っておくべき副作用があります。
やけど(熱傷)については、約3%程度の確率で軽度の熱傷が生じる可能性があるとの報告があります。ミラドライには皮膚表面を保護するための冷却システムが搭載されていますが、100%の回避は困難です。万が一生じた場合は、外用薬や内服薬による治療で対処します。
腕の筋力低下については、約1万件に1件程度の頻度で、腕や指の力が一時的に低下することがあると報告されています。これは神経の一部がミラドライによって損傷した場合に生じる可能性があります。メーカーのデータでは半年から1年程度で全例が回復したとされています。
膿瘍(膿が溜まる)については、非常にまれですが、治療部位に感染が生じて膿が溜まることがあります。この場合は外科的な処置が必要となることがあります。
代償性発汗について
多汗症治療において心配される副作用の一つに「代償性発汗」があります。これは治療した部位の発汗が抑えられる代わりに、他の部位からの発汗が増加する現象です。
代償性発汗は主に、手掌多汗症に対して行われる内視鏡的胸部交感神経遮断術(ETS)の副作用として知られています。この手術では発汗を命じる交感神経を切断するため、脳からの発汗指令が他の部位に向かい、背中や腹、太ももなどの発汗が増えることがあります。
一方、ミラドライは交感神経に作用する治療ではなく、汗腺そのものを熱で破壊する治療です。そのため、交感神経遮断術のような代償性発汗が起こるリスクは理論的には低いとされています。
ただし、ワキの汗腺が減少することで、体全体の発汗バランスに影響が出る可能性は完全には否定できません。とはいえ、ミラドライで破壊されるワキの汗腺は体全体の2%にも満たないため、仮に影響があったとしても微量であり、日常生活に支障をきたすほどの代償性発汗が生じることはほとんどないと考えられています。
ミラドライの効果に関する注意点
ミラドライの治療効果を正しく理解するために、いくつかの重要な注意点をご説明いたします。これらを把握しておくことで、治療後の経過に対する不安や誤解を減らすことができます。
効果が安定するまでの期間
ミラドライの効果は施術直後が最も高く、時間の経過とともに安定していきます。施術直後は破壊しきれなかった汗腺もダメージを受けて機能が停止しているため、汗もにおいもほとんどなくなったように感じることが多いです。
しかし、施術から1か月から3か月程度経過すると、ダメージを受けた汗腺が徐々に回復し、発汗を再開し始めます。そのため、この時期に「効果が薄れてきた」「再発したのでは」と心配される方がいらっしゃいます。
実際には、完全に破壊された汗腺は再生しないため、これは再発ではありません。残存した汗腺が活動を再開しているだけです。施術から約半年後の状態が「半永久的に持続する効果」の目安となります。この時点で十分な効果を実感できている方が大多数ですが、満足度が低い場合は追加治療を検討することもあります。
2回目の治療が必要になるケース
多くの方は1回のミラドライ治療で十分な効果を実感されますが、以下のようなケースでは2回目の治療を検討することがあります。
治療前の症状が重度であった方は、1回の治療で70%から80%の汗腺を破壊しても、残りの汗腺からの発汗やにおいがまだ気になるレベルである場合があります。より高い効果を求める場合は、初回治療から3か月以上の間隔を空けて2回目の治療を受けることで、さらに多くの汗腺を破壊することが期待できます。
また、初回治療の際に照射漏れがあった場合や、出力設定が十分でなかった場合にも、2回目の治療が有効な場合があります。クリニックによっては保証付きプランを用意しており、一定期間内であれば追加料金なしで2回目の施術を受けられる場合もあります。
効果を感じにくい要因
ミラドライ治療後に効果を十分に感じられない場合、いくつかの要因が考えられます。
まず、期待値が高すぎる場合があります。ミラドライは汗やにおいを「ゼロ」にする治療ではなく、「大幅に軽減」する治療です。完全に汗をかかなくなる、まったくにおいがしなくなると期待していると、「効果がない」と感じてしまう可能性があります。
次に、もともとの症状が軽度であった場合、改善の幅が小さく感じられることがあります。重度の症状から中等度に改善した場合と、軽度の症状からさらに軽くなった場合では、後者の方が変化を実感しにくい傾向があります。
また、精神的な要因も影響します。長年ワキガや多汗症で悩んできた方の中には、実際には改善しているにもかかわらず、「まだにおいがしているのでは」という不安から改善を実感できない方もいらっしゃいます。客観的な評価を得るために、信頼できる家族や友人に確認してもらうことも一つの方法です。
ミラドライと他の治療法との比較
ワキガや多汗症の治療法は複数あります。ミラドライのデメリットを理解するうえで、他の治療法と比較してみることも重要です。それぞれの治療法の特徴とデメリットを比較していきましょう。
剪除法(切開手術)との比較
剪除法は、ワキの皮膚を切開して汗腺を直接目で確認しながら取り除く手術です。保険適用で受けられるため、費用面では3割負担で2万円から5万円程度とミラドライより安価です。
剪除法のメリットとしては、保険適用で費用が抑えられる点、アポクリン腺を直接除去するため確実性が高い点が挙げられます。一方、デメリットとしては、傷跡が残る、2週間から4週間の安静期間が必要、入院を要する場合がある、術後に血腫ができるリスクがある、などがあります。
また、剪除法ではワキガの原因であるアポクリン腺の80%から90%程度を除去できますが、多汗症の原因であるエクリン腺に関しては50%から60%程度しか除去できないという報告もあります。エクリン腺はアポクリン腺より皮膚の浅い層に存在するため、皮膚へのダメージを考慮すると全て取り除くことが難しいためです。
この点、ミラドライはアポクリン腺とエクリン腺の両方を同時に破壊できるため、ワキガだけでなく多汗症に対しても高い効果が期待できます。「傷跡を残したくない」「仕事を長期間休めない」という方にはミラドライが適しているといえるでしょう。
ボトックス注射との比較
ボトックス注射は、ボツリヌス毒素製剤をワキに注射して神経伝達をブロックし、発汗を抑制する治療です。重度の原発性腋窩多汗症に対しては保険適用が認められています。
ボトックス注射のメリットとしては、注射のみで施術時間が短い(15分から30分程度)、ダウンタイムがほとんどない、保険適用の場合は費用が抑えられる(保険適用で3万円程度)などが挙げられます。
一方、デメリットとしては、効果の持続期間が4か月から6か月程度と限定的で繰り返しの治療が必要になる点、ワキガのにおいに対する効果は多汗症ほど高くない点などがあります。
長期的なコストを考えると、ミラドライは1回の治療で半永久的な効果が期待できるため、ボトックス注射を何度も繰り返すよりも総コストが低くなる場合があります。ただし、まずはボトックス注射で効果を確認してからミラドライを検討するというステップを踏むこともできます。
外用薬・塗り薬との比較
近年、原発性腋窩多汗症に対する外用薬として、エクロックゲルやラピフォートワイプなどの抗コリン薬が保険適用で処方されるようになりました。日本皮膚科学会のガイドラインでも、外用抗コリン薬は推奨度の高い治療として位置づけられています。
外用薬のメリットとしては、手軽に使用できる、保険適用で費用が抑えられる、身体への負担が少ないなどが挙げられます。デメリットとしては、使用を中止すると効果がなくなる、毎日継続して使用する必要がある、効果に個人差があるなどがあります。
外用薬は軽度から中等度の症状の方には有効な選択肢ですが、根本的な治療ではないため、使用を続ける限り費用がかかり続けます。また、重度の症状の方には効果が不十分な場合もあります。外用薬で満足できない場合に、ミラドライなどの根本治療を検討するという流れが一般的です。
治療法選択のポイント
どの治療法が最適かは、症状の程度、費用、ダウンタイム、効果の持続性など、様々な要素を総合的に考慮して判断する必要があります。
費用を最優先する場合は、保険適用の外用薬やボトックス注射、剪除法が選択肢となります。ダウンタイムの短さを重視する場合は、ミラドライやボトックス注射が適しています。傷跡を残したくない場合は、ミラドライやボトックス注射、外用薬が候補となります。長期的な効果を求める場合は、ミラドライや剪除法が有力な選択肢となります。
日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドラインでは、患者にとって侵襲が少なく、費用負担が少ない治療から段階的に進めることが推奨されています。まずは外用薬から試してみて、効果が不十分であればボトックス注射やミラドライを検討するというステップが一般的なアプローチといえるでしょう。
ミラドライのデメリットを軽減するためのポイント
ミラドライにはいくつかのデメリットがありますが、適切な対策を講じることでそのリスクを最小限に抑えることができます。ここでは、ミラドライのデメリットを軽減するためのポイントをご紹介します。
信頼できるクリニック・医師を選ぶ
ミラドライの効果や副作用の程度は、施術を行う医師の技術や経験に左右される部分があります。クリニック選びの際には、ミラドライの症例数が豊富であること、医師がミラドライ認定医であること、カウンセリングが丁寧で質問に詳しく答えてくれること、アフターケア体制が整っていること、などをチェックすることをお勧めします。
また、複数のクリニックでカウンセリングを受けて比較検討することも重要です。費用だけでなく、医師の対応や治療方針、クリニックの雰囲気なども確認し、自分に合った医療機関を選びましょう。
事前のカウンセリングで十分な説明を受ける
治療前のカウンセリングでは、期待できる効果だけでなく、デメリットや副作用についても十分な説明を受けることが重要です。メリットばかりを強調し、デメリットの説明が不十分なクリニックには注意が必要です。
カウンセリングで確認すべき事項としては、自分の症状の程度と予想される効果、起こりうる副作用とその発生頻度、副作用が長引いた場合の対応、2回目の治療が必要になる可能性、費用の総額と支払い方法、アフターケアの内容、などがあります。
疑問点があれば遠慮なく質問し、納得したうえで治療を受けることが、後悔のない治療につながります。
術後のケアをしっかり行う
ミラドライの副作用を軽減し、回復を早めるためには、術後のケアが重要です。医師の指示に従い、適切なケアを行いましょう。
術後ケアのポイントとしては、施術後数日間は冷却パックでワキを冷やすこと、激しい運動や入浴は1週間程度控えること(シャワーは当日から可能)、施術部位を清潔に保つこと、痛みがある場合は処方された鎮痛剤を服用すること、腫れや痛みが長引く場合はクリニックに相談すること、などが挙げられます。
適切な術後ケアを行うことで、副作用のリスクを最小限に抑え、より良い治療結果を得ることができます。
現実的な期待値を持つ
ミラドライの効果に対して現実的な期待値を持つことも、満足度を高めるうえで重要です。ミラドライは汗やにおいを完全にゼロにする治療ではなく、大幅に軽減する治療であることを理解しておきましょう。
一般的には、汗の量やにおいが治療前の2割から3割程度に減少するというのが目安です。これは逆に言えば、7割から8割の改善が期待できるということであり、多くの方にとっては日常生活に支障がないレベルまで症状が軽減されます。
また、施術直後と半年後では効果の感じ方が異なることも覚えておきましょう。施術直後は一時的に汗やにおいがほぼなくなりますが、半年後には残存した汗腺が活動を再開するため、やや戻ったように感じることがあります。これは正常な経過であり、再発ではありません。
ミラドライが向いている人・向いていない人
ここまでミラドライのデメリットについて詳しく解説してきましたが、デメリットがあるからといってミラドライが良くない治療というわけではありません。他の治療法と比較して、ミラドライが向いている人とそうでない人の特徴を整理してみましょう。
ミラドライが向いている人
傷跡を残したくない方には、ミラドライは皮膚を切開しないため、傷跡が残りません。見た目を気にする方、ワキを露出する機会が多い方に適しています。
仕事や学校を長期間休めない方には、ミラドライはダウンタイムが短く、翌日から日常生活に戻ることができます。長期の休暇を取りにくい社会人や学生の方に適しています。
ワキガと多汗症の両方で悩んでいる方には、ミラドライはアポクリン腺とエクリン腺の両方を同時に破壊できるため、ワキガと多汗症の両方に効果があります。
1回の治療で長期的な効果を得たい方には、ミラドライは半永久的な効果が期待できるため、ボトックス注射のように繰り返し治療を受ける必要がありません。
手術に抵抗がある方には、ミラドライはメスを使わない治療であるため、手術に対する恐怖心や不安がある方でも受けやすい治療です。
ミラドライが向いていない人
費用を最優先する方には、ミラドライは保険適用外のため、費用面では保険が効く剪除法やボトックス注射、外用薬の方が有利です。費用を最も重視する場合は、他の選択肢を検討した方がよいかもしれません。
100%の効果を求める方には、ミラドライは汗やにおいを完全にゼロにする治療ではありません。わずかでも症状が残ることが許容できない方には、満足度が低くなる可能性があります。
ワキ以外の多汗症で悩んでいる方には、ミラドライはワキに対する治療に限定されています。手のひらや足の裏など、ワキ以外の部位の多汗症には他の治療法を検討する必要があります。
成長期のお子様には、成長期の方は汗腺がまだ発達途中であるため、治療後に新たな汗腺が発達して症状が再発する可能性があります。成長期が終わってからの治療が推奨される場合が多いです。ただし、症状が重度で日常生活に支障をきたしている場合は、成長期でも治療を検討することがあります。
特定の持病がある方には、心臓ペースメーカーを装着している方、治療部位に金属が埋め込まれている方、妊娠中または授乳中の方などは、ミラドライ治療を受けられない場合があります。持病がある方は必ず事前に医師に相談してください。

よくある質問
ミラドライで完全に破壊された汗腺は再生しないため、その効果は半永久的に持続します。ただし、1回の治療で破壊できる汗腺は全体の70%から80%程度であり、残りの汗腺からは発汗が続きます。そのため「汗やにおいが完全になくなる」というわけではなく、「大幅に軽減される」という表現が正確です。また、施術直後は破壊しきれなかった汗腺も一時的に機能が停止しますが、1か月から半年かけて徐々に活動を再開するため、施術直後より効果が弱まったように感じることがあります。これは正常な経過であり、再発ではありません。
ミラドライ治療後のダウンタイムは比較的短く、多くの方が翌日から日常生活に復帰されています。ただし、施術部位には腫れや痛み、内出血などの副作用が生じることがあります。目立つ腫れや赤みは約1週間で落ち着くことがほとんどです。激しい運動や入浴は1週間程度控えることが推奨されますが、シャワーは当日から可能です。デスクワークなどの軽い仕事であれば翌日から可能ですが、肉体労働や腕を使う作業がある方は、治療後数日間は休みを取ることをお勧めする場合があります。
ミラドライの施術は局所麻酔を行ってから実施するため、施術中に痛みを感じることはほとんどありません。麻酔注射の際にチクッとした痛みを感じることがありますが、これも数秒から数分程度です。施術後は麻酔が切れてくるとピリピリとした痛みや違和感、つっぱり感を感じることがありますが、処方される鎮痛剤で十分にコントロールできる程度です。痛みのピークは施術当日の夜から翌朝にかけてで、その後は徐々に軽減していきます。痛みに弱い方や不安がある方は、事前にカウンセリングで相談されることをお勧めします。
現状、ミラドライの副作用として一生後遺症が残るような重篤なものは確認されていません。施術後に生じる腫れ、痛み、内出血、しびれなどの副作用はいずれも一時的なもので、数日から数か月で自然に改善していきます。非常にまれに腕や指の筋力低下が生じることがありますが、メーカーのデータによると半年から1年程度で全例が回復したとされています。ミラドライは2018年に厚生労働省から薬事承認を取得しており、安全性が認められた医療機器です。ただし、医療行為である以上、100%のリスク回避は困難であるため、信頼できる医師のもとで治療を受けることが重要です。
現時点ではミラドライ治療は保険適用されておらず、全額自己負担の自由診療となります。これは国内のどのクリニックでミラドライを受けても同じです。ミラドライの治療費用はクリニックによって異なりますが、一般的に20万円から50万円程度が相場となっています。ただし、ワキガや多汗症は疾患として認められているため、治療目的でミラドライを受けた場合は医療費控除の対象となります。確定申告で医療費控除を申請することで、支払った医療費の一部が還付される可能性があります。また、クリニックによってはモニター制度や分割払いに対応している場合もありますので、費用面で不安がある方は事前に相談されることをお勧めします。
多くの方は1回のミラドライ治療で十分な効果を実感されますが、症状の程度や求める効果のレベルによっては2回目の治療を検討することがあります。1回の治療で破壊できる汗腺は全体の70%から80%程度であるため、重度の症状をお持ちの方や、より高い効果を求める方は、初回治療から3か月以上の間隔を空けて2回目の治療を受けることで、さらに多くの汗腺を破壊することが期待できます。クリニックによっては保証付きプランを用意しており、一定期間内であれば追加料金なしで2回目の施術を受けられる場合もあります。治療回数については、カウンセリング時に医師と相談して決めることをお勧めします。
まとめ
本記事では、ミラドライのデメリットについて詳しく解説してきました。ミラドライは厚生労働省から薬事承認を取得した安全性の高い治療法であり、皮膚を切らずにワキガと多汗症の両方を改善できる画期的な治療です。しかし、どのような治療にもメリットとデメリットの両面があり、デメリットを正しく理解したうえで治療を選択することが、後悔のない結果につながります。
ミラドライの主なデメリットとしては、保険適用外で治療費が高額であること、すべての汗腺を破壊できるわけではないこと、一時的な副作用が生じること、効果の実感に個人差があること、施術から数か月後に症状が戻ったように感じることがあること、医師の技術によって効果に差が出る可能性があること、治療対象部位が限られることなどが挙げられます。
一方で、これらのデメリットは適切な対策を講じることで軽減することができます。信頼できるクリニック・医師を選ぶこと、事前のカウンセリングで十分な説明を受けること、術後のケアをしっかり行うこと、現実的な期待値を持つことが重要です。
ミラドライは、傷跡を残したくない方、仕事や学校を長期間休めない方、ワキガと多汗症の両方で悩んでいる方、1回の治療で長期的な効果を得たい方に特に適した治療法です。ご自身の症状や生活スタイル、予算などを総合的に考慮し、専門の医師とよく相談したうえで、最適な治療法を選択されることをお勧めします。
アイシークリニック大宮院では、経験豊富な医師による丁寧なカウンセリングを行っております。ミラドライのメリットだけでなく、デメリットについても正直にご説明させていただき、患者様にとって最適な治療をご提案いたします。ワキガや多汗症でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」
- J-STAGE「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂)」日本皮膚科学会雑誌
- 株式会社ジェイメック「国内初 切らないワキ汗治療器『miraDry(ミラドライ)システム』薬事承認取得に関するご案内」
- 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 汗の病気―多汗症と無汗症―」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務