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胆石とは?症状・原因・治療法を徹底解説【アイシークリニック大宮院】

はじめに

「最近、食後に右上腹部が痛む」「油っこいものを食べると気分が悪くなる」そんな症状に心当たりはありませんか?それは、もしかすると胆石(たんせき)が原因かもしれません。

胆石は、胆嚢(たんのう)や胆管にできる石のような固形物で、日本人の約10人に1人が持っているとされる非常に身近な病気です。特に40代以降の女性に多く見られ、近年では食生活の欧米化に伴い、患者数が増加傾向にあります。

本記事では、アイシークリニック大宮院が、胆石の基礎知識から症状、原因、診断方法、治療法、予防法まで、一般の方にもわかりやすく徹底解説します。胆石について正しい知識を身につけ、適切な対応ができるようになりましょう。

目次

  1. 胆石とは何か
  2. 胆石の種類
  3. 胆石の症状
  4. 胆石ができる原因
  5. 胆石になりやすい人の特徴
  6. 胆石の診断方法
  7. 胆石の治療法
  8. 胆石の予防法
  9. 胆石と生活習慣
  10. よくある質問(Q&A)

1. 胆石とは何か

胆石の定義

胆石(gallstones)とは、胆嚢や胆管内に形成される結晶性の固形物のことです。胆汁の成分が何らかの原因で結晶化し、次第に大きくなって石のように固まったものを指します。

胆石は、大きさや形状が様々で、砂粒のように小さなものから、数センチメートルの大きなものまであります。また、1個だけできる場合もあれば、数十個、時には数百個できることもあります。

胆嚢と胆汁の役割

胆石を理解するためには、まず胆嚢と胆汁の働きを知ることが重要です。

胆嚢は、肝臓の下に位置する洋梨型の小さな袋状の臓器で、容量は約50mlほどです。肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵し、濃縮する役割を担っています。

胆汁は、肝臓で1日に約600〜800ml生成される黄褐色の消化液です。主な成分は以下の通りです:

  • 胆汁酸:脂肪の消化・吸収を助ける
  • コレステロール:細胞膜の材料となる脂質
  • ビリルビン:赤血球の分解産物
  • レシチン(リン脂質):脂質の乳化を助ける
  • 水分:約97%

食事をすると、胆嚢が収縮して胆汁が胆管を通って十二指腸に排出され、特に脂肪の消化を助けます。

胆石症の疫学

日本における胆石症の有病率は、年齢とともに増加し、40歳以上では約10〜15%、60歳以上では約20%に達するとされています。特に以下の特徴があります:

  • 男女比:女性が男性の約1.5〜2倍多い
  • 年齢:40代以降に増加
  • 地域差:欧米と比較して日本人はコレステロール結石が多い
  • 無症状:胆石保有者の約70〜80%は無症状

2. 胆石の種類

胆石は、その成分によって大きく3つのタイプに分類されます。

コレステロール結石

日本人の胆石の約70〜80%を占める最も一般的なタイプです。

特徴:

  • 主成分はコレステロール(70%以上)
  • 黄白色〜黄褐色
  • 表面が比較的滑らか
  • X線検査では映りにくい(透亮結石)
  • 胆嚢内にできることが多い

形成メカニズム: 胆汁中のコレステロールが過飽和状態になり、胆汁酸やレシチンとのバランスが崩れることで結晶化します。胆嚢の収縮機能が低下すると、胆汁が停滞し、さらに結石が成長しやすくなります。

色素結石

ビリルビン(胆汁色素)を主成分とする結石で、日本人の約20〜30%を占めます。

ビリルビンカルシウム結石(黒色石):

  • 黒色〜暗褐色
  • 硬くて脆い
  • 胆嚢内にできやすい
  • 溶血性貧血、肝硬変などに合併しやすい

ビリルビンカルシウム結石(褐色石):

  • 褐色〜茶褐色
  • 比較的柔らかい
  • 胆管内にできやすい
  • 細菌感染が関与することが多い

混合石

コレステロールとビリルビンカルシウムが混在した結石です。日本人では比較的少なく、全体の約10%程度とされています。


3. 胆石の症状

胆石の症状は、胆石の有無、大きさ、位置、個数などによって大きく異なります。

無症状胆石

サイレントストーン(silent stone)とも呼ばれ、胆石保有者の約70〜80%は無症状です。健康診断や他の病気の検査時に偶然発見されることが多く、日常生活に支障はありません。

ただし、無症状であっても、年間約1〜3%の方に症状が出現するとされており、定期的な経過観察が推奨されます。

胆石発作(胆道疝痛)

胆石が胆嚢の出口や胆管に詰まることで起こる激しい痛みです。

典型的な症状:

  • 右上腹部の激しい痛み:みぞおちから右上腹部にかけての持続的な痛み
  • 背中や右肩への放散痛:右の肩甲骨周辺に痛みが広がる
  • 持続時間:数十分から数時間続く(15分以上が典型的)
  • 発症タイミング:食後、特に脂肪分の多い食事の後30分〜2時間
  • 夜間や早朝の発作:睡眠中に起こることもある

随伴症状:

  • 吐き気・嘔吐
  • 冷や汗
  • 顔面蒼白
  • 食欲不振
  • 腹部膨満感

胆嚢炎

胆石が胆嚢の出口に詰まり、胆汁がうっ滞して炎症を起こした状態です。

急性胆嚢炎の症状:

  • 右上腹部の持続的な痛み(6時間以上)
  • 発熱(38℃以上)
  • 悪寒・戦慄
  • 吐き気・嘔吐
  • 右上腹部を押すと強い痛み(Murphy徴候)
  • 白血球数の増加

急性胆嚢炎は重症化すると、胆嚢壊疽や穿孔を起こす可能性があり、緊急治療が必要となります。

胆管炎

胆石が胆管に詰まり、胆管内に細菌感染を起こした状態です。

症状(Charcot三徴):

  1. 発熱・悪寒
  2. 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  3. 右上腹部痛

重症化すると、意識障害やショック状態に陥ることもあり(Reynolds五徴)、命に関わる危険な状態です。早急な治療が必要です。

その他の症状

  • 消化不良:脂っこいものを食べた後の胃もたれ
  • 腹部膨満感:お腹が張る感じ
  • げっぷ:頻繁に出る
  • 胸やけ:酸っぱいものが上がってくる感じ
  • 便の色の変化:白っぽい便(胆汁が腸に流れない場合)
  • 尿の色の変化:濃い茶褐色(黄疸がある場合)

4. 胆石ができる原因

胆石の形成には、複数の要因が複雑に関与しています。

コレステロール結石の原因

1. コレステロールの過飽和

胆汁中のコレステロール濃度が上昇し、胆汁酸やレシチンとのバランスが崩れると、コレステロールが溶けきれずに結晶化します。

コレステロール濃度が上昇する要因:

  • 高脂肪・高カロリーの食事
  • 肥満
  • 急激な体重減少
  • 遺伝的要因
  • 女性ホルモン(エストロゲン)の影響

2. 胆嚢の運動機能低下

胆嚢の収縮力が低下すると、胆汁が停滞し、結晶が成長しやすくなります。

運動機能が低下する要因:

  • 妊娠
  • 長期の絶食
  • 不規則な食生活
  • 全身麻酔や手術後
  • 糖尿病

3. 胆汁酸の分泌低下

肝臓での胆汁酸の合成が減少すると、コレステロールを溶かす力が弱まります。

色素結石の原因

1. ビリルビンの過剰産生

赤血球の破壊が亢進すると、ビリルビンが増加します。

関連する病気:

  • 溶血性貧血
  • 人工心臓弁
  • 鎌状赤血球症

2. 細菌感染

大腸菌などの細菌が産生する酵素により、ビリルビンが不溶性の形に変化し、カルシウムと結合して結石を形成します。

リスク要因:

  • 胆道感染の既往
  • 胆道の解剖学的異常
  • 胆道手術の既往

3. 肝硬変

肝機能の低下により、ビリルビンの代謝異常が起こります。


5. 胆石になりやすい人の特徴

胆石症には、「5F」と呼ばれる典型的なリスク因子があります。

5Fとは

  1. Female(女性):女性ホルモンがコレステロールの分泌を増やす
  2. Forty(40歳以上):加齢により胆嚢機能が低下
  3. Fatty(肥満):コレステロール代謝異常のリスク増加
  4. Fair(白人・色白):遺伝的要因(日本人では該当率が低い)
  5. Fecund/Fertile(多産婦):妊娠により胆嚢機能が低下

その他のリスク因子

生活習慣

  • 食生活:
    • 高脂肪・高カロリー食
    • 不規則な食事時間
    • 朝食抜き
    • 急激なダイエット
  • 運動不足:
    • 座りがちな生活
    • 長時間のデスクワーク
  • 生活リズム:
    • 夜型生活
    • 睡眠不足
    • ストレス過多

疾患

  • 糖尿病
  • 脂質異常症(高コレステロール血症)
  • メタボリックシンドローム
  • 肝硬変
  • クローン病
  • 回腸切除後

薬剤

  • 経口避妊薬
  • ホルモン補充療法
  • フィブラート系脂質異常症治療薬
  • オクトレオチド(ソマトスタチンアナログ)

遺伝的要因

家族歴がある場合、胆石症のリスクが約2倍になるとされています。特に親や兄弟姉妹に胆石症の方がいる場合は注意が必要です。


6. 胆石の診断方法

胆石の診断には、問診、身体診察、画像検査、血液検査などが用いられます。

問診・身体診察

問診のポイント

  • 症状の有無と詳細(痛みの部位、性質、持続時間)
  • 発症のタイミング(食事との関連)
  • 既往歴(胆道系疾患、肝疾患など)
  • 家族歴
  • 生活習慣(食事、運動、飲酒など)
  • 服用中の薬剤

身体診察

  • 視診:黄疸の有無
  • 触診:右上腹部の圧痛、Murphy徴候の確認
  • 打診:肝臓の大きさの評価
  • 聴診:腸蠕動音の確認

画像検査

腹部超音波検査(エコー検査)

胆石診断の第一選択検査です。非侵襲的で、放射線被曝がなく、外来で簡単に実施できます。

検査でわかること:

  • 胆石の有無(感度95%以上)
  • 胆石の大きさ、個数、位置
  • 胆嚢壁の肥厚(炎症の有無)
  • 胆嚢の大きさ
  • 胆管の拡張

特徴的な所見:

  • 胆嚢内の高エコー像
  • 音響陰影(acoustic shadow)
  • 体位変換での移動

制限:

  • 肥満や腸管ガスで見えにくい場合がある
  • 小さな胆石は見逃される可能性がある

CT検査(コンピュータ断層撮影)

目的:

  • 胆石の確認(石灰化した結石は明瞭)
  • 胆嚢炎の評価
  • 周囲臓器への影響の確認
  • 合併症(膿瘍、穿孔など)の診断

特徴:

  • コレステロール結石は映りにくい
  • 造影剤を使用することで、より詳細な情報が得られる

MRI検査・MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)

特徴:

  • 放射線被曝なし
  • 胆管・膵管を立体的に描出
  • 造影剤不要

適応:

  • 胆管結石の診断
  • 胆管の詳細な評価
  • 超音波やCTで判断が困難な場合

内視鏡検査(EUS、ERCP)

EUS(超音波内視鏡検査):

  • 内視鏡の先端に超音波プローブを装着
  • 胃や十二指腸から胆嚢・胆管を観察
  • 小さな胆石の検出に優れる

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影):

  • 内視鏡を十二指腸まで挿入し、造影剤で胆管を描出
  • 胆管結石の診断と治療が同時に可能
  • 合併症のリスクがあるため、治療目的で実施されることが多い

血液検査

一般的な検査項目

  • 白血球数(WBC):炎症の指標
  • CRP(C反応性蛋白):炎症マーカー
  • 肝機能検査:
    • AST、ALT:肝細胞障害の指標
    • ALP、γ-GTP:胆汁うっ滞の指標
    • 総ビリルビン:黄疸の評価
  • アミラーゼ:膵炎の合併を評価

無症状胆石の場合

通常、血液検査は正常範囲内です。

胆嚢炎・胆管炎の場合

  • 白血球数の増加
  • CRPの上昇
  • 肝機能異常
  • ビリルビン値の上昇(黄疸がある場合)

7. 胆石の治療法

胆石の治療は、症状の有無、胆石の種類や大きさ、合併症の有無などを総合的に判断して選択されます。

無症状胆石の対応

基本方針:経過観察

無症状の胆石(サイレントストーン)については、原則として積極的な治療は行わず、定期的な経過観察が推奨されます。これは、以下の理由によります:

  • 症状が出現するのは年間1〜3%程度
  • 予防的手術のメリットが手術リスクを上回らない
  • 生涯無症状のまま経過する可能性が高い

経過観察の間隔:

  • 最初の1年間:6ヶ月ごと
  • その後:年1回の超音波検査

手術を検討すべき無症状胆石:

  • 胆嚢壁の石灰化(磁器様胆嚢)
  • 3cm以上の大きな胆石
  • 胆嚢ポリープの合併
  • 胆嚢腺筋腫症の合併
  • 将来的に手術が困難になる可能性がある場合

症状のある胆石の治療

症状がある場合や合併症を伴う場合は、積極的な治療が必要です。

1. 手術療法

腹腔鏡下胆嚢摘出術

現在の標準治療であり、胆石症手術の約95%を占めます。

手術方法:

  1. 全身麻酔下で実施
  2. 腹部に3〜4箇所の小さな穴(5〜10mm)を開ける
  3. 腹腔鏡(カメラ)と手術器具を挿入
  4. 胆嚢を肝臓から剥離し、胆嚢管と胆嚢動脈を処理
  5. 胆嚢を摘出

メリット:

  • 傷が小さい(美容的に優れる)
  • 術後の痛みが少ない
  • 入院期間が短い(3〜5日程度)
  • 早期の社会復帰が可能(1〜2週間)
  • 術後の癒着が少ない

デメリット:

  • 全身麻酔が必要
  • 炎症が強い場合は開腹手術に移行することがある
  • 胆管損傷などの合併症のリスク(約0.3〜0.5%)

開腹胆嚢摘出術

腹腔鏡手術が困難な場合に選択されます。

適応:

  • 高度な炎症や癒着がある場合
  • 腹腔鏡手術からの移行
  • 悪性腫瘍が疑われる場合

特徴:

  • 右上腹部を10〜15cm切開
  • 直視下で安全に手術が可能
  • 入院期間が長い(7〜14日程度)
  • 術後の痛みが強い

単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術

へその部分に1箇所だけ穴を開けて行う手術です。

メリット:

  • 傷がほぼ目立たない
  • 整容性に優れる

デメリット:

  • 技術的に難易度が高い
  • 実施できる施設が限られる
  • 炎症が強い場合は困難

2. 内科的治療

経口胆石溶解療法

ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)を服用し、コレステロール結石を溶解する治療法です。

適応条件:

  • コレステロール結石
  • 結石の直径が15mm以下
  • 胆嚢の機能が保たれている
  • 石灰化がない
  • 結石が浮遊している(浮遊石)

治療方法:

  • 1日600〜900mgを分割服用
  • 治療期間:6ヶ月〜2年
  • 定期的な超音波検査で効果判定

効果:

  • 完全溶解率:10〜30%
  • 部分溶解:20〜30%
  • 再発率:30〜50%(5年以内)

メリット:

  • 非侵襲的
  • 外来通院で可能
  • 副作用が少ない

デメリット:

  • 効果が限定的
  • 治療期間が長い
  • 再発率が高い
  • 適応が限られる

3. 内視鏡的治療

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)関連手技

主に胆管結石の治療に用いられます。

EST(内視鏡的乳頭括約筋切開術):

  • 十二指腸乳頭部を切開
  • 胆管結石を取り出す

EPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術):

  • 乳頭部をバルーンで拡張
  • 結石を除去

EPLBD(内視鏡的大口径乳頭バルーン拡張術):

  • 大きな結石に対応
  • 砕石を併用することもある

適応:

  • 胆管結石
  • 胆管炎を伴う場合
  • 総胆管結石

合併症:

  • 膵炎(約5%)
  • 出血(約2%)
  • 穿孔(約0.5%)

4. 経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)

急性胆嚢炎で全身状態が悪く、緊急手術が困難な場合に実施される応急処置です。

方法:

  • 超音波やCTガイド下で、皮膚から肝臓を通して胆嚢にチューブを挿入
  • 感染した胆汁を体外に排出

目的:

  • 炎症の沈静化
  • 全身状態の改善
  • 待機的手術への橋渡し

治療法の選択

治療法の選択は、以下の要素を総合的に判断して決定されます:

  • 症状の有無と程度
  • 胆石の種類、大きさ、個数、位置
  • 患者さんの年齢、全身状態
  • 合併症の有無
  • 患者さんの希望

医師とよく相談し、自分に最適な治療法を選択することが大切です。


8. 胆石の予防法

胆石は生活習慣と密接に関係しているため、日常生活の改善により予防が可能です。

食生活の改善

1. バランスの良い食事

推奨される食事:

  • 野菜・果物を十分に摂取
  • 食物繊維を多く含む食品(全粒穀物、豆類、海藻)
  • 良質なタンパク質(魚、大豆製品、鶏肉)
  • 適度な脂質(オリーブオイル、ナッツ類、青魚)

避けるべき食事:

  • 高脂肪・高カロリー食
  • 揚げ物、脂身の多い肉
  • 加工食品、ファストフード
  • 過度の糖質摂取
  • 過度のアルコール

2. 規則正しい食事時間

  • 1日3食を規則正しく摂る
  • 朝食を抜かない(胆汁の停滞を防ぐ)
  • 夜遅い食事を避ける
  • ゆっくりよく噛んで食べる

3. 適切なカロリー摂取

  • 総カロリーの管理
  • 急激なダイエットは避ける(月2kg以内の減量が目安)
  • 極端な低カロリー食は胆石のリスクを高める

4. 水分摂取

  • 1日1.5〜2リットルの水分摂取
  • カフェインやアルコールの過剰摂取は避ける

適度な運動

運動の効果

  • 胆嚢の運動機能改善
  • 体重管理
  • 脂質代謝の改善
  • ストレス解消

推奨される運動

  • 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリング
  • 頻度:週3〜5回、1回30分以上
  • 強度:軽く息が上がる程度(中等度)

日常生活での工夫

  • エレベーターより階段を使う
  • 一駅分歩く
  • こまめに体を動かす

適正体重の維持

BMI(体格指数)の目安

BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

  • 標準:18.5〜24.9
  • 肥満:25以上

体重管理のポイント

  • 肥満の場合は段階的な減量
  • 急激な体重減少は避ける
  • リバウンドを繰り返さない
  • 長期的な視点で体重管理

ストレス管理

ストレスが胆石に与える影響

  • 自律神経の乱れ→胆嚢機能の低下
  • 暴飲暴食→肥満、脂質異常
  • 運動不足→代謝の低下

ストレス解消法

  • 十分な睡眠(7〜8時間)
  • 趣味やリラックスタイムの確保
  • 適度な運動
  • 深呼吸、瞑想、ヨガなど
  • 親しい人とのコミュニケーション

定期的な健康診断

健康診断の重要性

  • 無症状の胆石の早期発見
  • 肥満、糖尿病、脂質異常症などのリスク因子の管理
  • 肝機能のチェック

推奨される検査

  • 腹部超音波検査(年1回)
  • 血液検査(肝機能、脂質、血糖値)
  • 体重、BMI、腹囲の測定

特にリスク因子(40歳以上、女性、肥満、家族歴など)がある方は、定期的な検査を心がけましょう。


9. 胆石と生活習慣

胆石と食生活

胆石を予防する食品

食物繊維が豊富な食品:

  • 野菜(ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草)
  • 果物(りんご、バナナ、柑橘類)
  • 全粒穀物(玄米、全粒粉パン、オートミール)
  • 豆類(大豆、レンズ豆、ひよこ豆)
  • 海藻類(わかめ、昆布、ひじき)

食物繊維は、コレステロールの吸収を抑え、胆汁酸の排泄を促進します。

良質な脂質:

  • オメガ3脂肪酸(青魚:サバ、イワシ、サンマ)
  • オリーブオイル
  • ナッツ類(アーモンド、くるみ)
  • アボカド

適度な良質な脂質は、胆嚢の収縮を促し、胆汁の停滞を防ぎます。

ビタミンCが豊富な食品:

  • 柑橘類
  • いちご
  • キウイフルーツ
  • ブロッコリー
  • パプリカ

ビタミンCは、コレステロールから胆汁酸への変換を促進します。

胆石のリスクを高める食品

  • 高脂肪食:揚げ物、脂身の多い肉、生クリーム
  • 高糖質食:清涼飲料水、お菓子、精製された炭水化物
  • 加工食品:ファストフード、スナック菓子
  • 過度のアルコール:特に毎日の大量飲酒

胆石とコーヒー

興味深いことに、複数の疫学研究により、適度なコーヒー摂取が胆石のリスクを低減する可能性が示されています。

メカニズム:

  • カフェインが胆嚢の収縮を促進
  • 胆汁の流れを改善
  • 抗酸化作用

推奨量:

  • 1日2〜3杯程度
  • 過剰摂取は避ける
  • ブラックまたは低脂肪ミルクで

ただし、すでに胆石症や胆嚢炎がある場合は、症状を悪化させる可能性があるため、医師に相談してください。

胆石とアルコール

適度な飲酒(1日1杯程度)は胆石のリスクをわずかに低減する可能性が報告されていますが、過度の飲酒は肝機能障害を引き起こし、結果として胆石のリスクを高めます。

推奨:

  • 適量を守る(日本酒1合、ビール中瓶1本程度)
  • 週2日の休肝日を設ける
  • 空腹時の飲酒を避ける

胆石と妊娠

妊娠中は、以下の理由により胆石ができやすくなります:

  • 女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の増加
  • 胆嚢の運動機能低下
  • 胆汁中のコレステロール濃度上昇
  • 体重増加

妊娠中の注意点:

  • 体重管理(急激な増加を避ける)
  • バランスの良い食事
  • 適度な運動(医師の許可の下で)
  • 定期的な健診

妊娠中に胆石発作が起きた場合は、保存的治療(痛み止め、抗生剤など)が優先され、出産後に手術を検討することが一般的です。

胆石術後の生活

胆嚢摘出術後は、胆嚢がなくても胆汁は肝臓から直接十二指腸に流れるため、通常の生活が可能です。

術後の食事:

術後1〜2週間:

  • 低脂肪食から開始
  • 少量ずつ、頻回に食べる
  • 消化の良いものを選ぶ

術後1ヶ月以降:

  • 通常の食事に戻せる
  • ただし、高脂肪食は避ける
  • バランスの良い食事を心がける

注意点:

  • 約10〜15%の方に術後下痢が見られる(一時的)
  • 脂肪分の多い食事で下痢しやすい場合がある
  • 消化吸収に問題はない

10. よくある質問(Q&A)

Q1. 胆石は自然に消えることはありますか?

A. 基本的には自然に消えることはありません。胆石は一度形成されると、自然に溶けて消失することはほとんどありません。ただし、非常に小さな胆石(砂粒状のもの)が、胆管を通って十二指腸に排出されることはまれにあります。
症状がない場合は経過観察が基本ですが、定期的な検査で大きさや個数の変化を確認することが大切です。

Q2. 胆石があると絶対に手術が必要ですか?

A. いいえ、必ずしも手術が必要というわけではありません。

無症状の胆石:経過観察が基本
症状のある胆石:手術が推奨される
合併症のある胆石:手術が必要

胆石の約70〜80%は無症状で、生涯症状が出ないこともあります。症状の有無、胆石の状態、患者さんの状況を総合的に判断して治療方針が決定されます。

Q3. 胆石の手術は痛いですか?入院期間はどれくらいですか?

A. 現在の主流である腹腔鏡下胆嚢摘出術は、傷が小さく術後の痛みも比較的少ない手術です。

痛みについて:

  • 手術当日〜翌日:中等度の痛み(鎮痛剤で管理可能)
  • 術後2〜3日:徐々に軽減
  • 1週間後:ほとんど痛みはなくなる

入院期間:

  • 腹腔鏡手術:3〜5日程度
  • 開腹手術:7〜14日程度

社会復帰:

  • デスクワーク:1〜2週間
  • 重労働:4〜6週間

Q4. 胆嚢を取ると日常生活に支障はありますか?

A. 胆嚢摘出後も、ほとんどの方は通常の生活を送ることができます。

胆嚢は胆汁を一時的に貯蔵・濃縮する臓器ですが、摘出後は肝臓から胆汁が直接十二指腸に流れ込むため、消化機能に大きな影響はありません。

術後の変化:

  • 約10〜15%の方に一時的な下痢(数週間〜数ヶ月で改善)
  • 脂肪分の多い食事後に下痢しやすい場合がある
  • 徐々に体が適応し、ほとんどの方は問題なく生活できる

注意点:

  • 高脂肪食は避ける
  • バランスの良い食事を心がける
  • 食事は少量ずつ、頻回に摂る(術後数週間)

Q5. 胆石は遺伝しますか?

A. 胆石症には遺伝的要因が関与しています。

家族歴がある場合、胆石症のリスクが約2倍になるとされています。これは、コレステロール代謝や胆汁酸の分泌に関わる遺伝子の影響と考えられています。

ただし、遺伝だけでなく、家族で共有される生活習慣(食事内容、運動習慣など)も大きく影響します。家族に胆石症の方がいる場合は、生活習慣に注意し、定期的な健診を受けることをおすすめします。

Q6. 胆石とがんの関係はありますか?

A. 胆石自体ががんになるわけではありませんが、長期間の慢性炎症により、わずかながら胆嚢がんのリスクが上昇する可能性があります。

リスク要因:

  • 3cm以上の大きな胆石
  • 胆嚢壁の石灰化(磁器様胆嚢)
  • 長期間(20年以上)の胆石保有
  • 高齢者

ただし、胆嚢がんの発生率は胆石保有者の約0.01〜0.3%程度と非常に低く、過度に心配する必要はありません。定期的な検査で経過を観察することが大切です。

Q7. 胆石の再発はありますか?

A. 治療法によって再発率が異なります。

胆嚢摘出術後:

  • 胆嚢自体を摘出するため、胆嚢結石の再発はない
  • ただし、胆管結石ができることはまれにある(約1〜2%)

内科的治療(胆石溶解療法)後:

  • 再発率:30〜50%(5年以内)
  • 生活習慣の改善が重要

内視鏡治療(胆管結石除去)後:

  • 胆嚢が残っている場合、新たな結石ができる可能性がある

再発予防には、生活習慣の改善、特にバランスの良い食事、適度な運動、適正体重の維持が重要です。

Q8. 胆石発作が起きたらどうすればいいですか?

A. 胆石発作が起きた場合の対処法:

直ちに医療機関を受診すべき症状:

  • 激しい腹痛が1時間以上続く
  • 発熱(38℃以上)を伴う
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 嘔吐を繰り返す
  • 冷や汗、顔面蒼白、意識がもうろうとする

応急処置:

  1. 食事を中止する
  2. 安静にする
  3. 痛む部位を温めない(炎症を悪化させる可能性)
  4. 水分は少量ずつ摂取可能
  5. 市販の鎮痛剤は自己判断で服用しない

夜間・休日の場合:

  • 救急外来を受診
  • 痛みが激しい場合は救急車を呼ぶ

急性胆嚢炎や胆管炎は、重症化すると命に関わることもあります。我慢せず、早めに医療機関を受診してください。

Q9. 胆石の予防にサプリメントは有効ですか?

A. 一部のサプリメントには予防効果が示唆されていますが、基本は生活習慣の改善です。

可能性が示唆されているもの:

  • ビタミンC:コレステロールから胆汁酸への変換を促進
  • オメガ3脂肪酸:胆石形成の抑制
  • 食物繊維サプリメント:コレステロールの排泄促進

注意点:

  • サプリメントだけでは予防は不十分
  • あくまで補助的な役割
  • 過剰摂取は避ける
  • 医師や薬剤師に相談してから使用

最も重要なのは、バランスの良い食事、適度な運動、適正体重の維持などの基本的な生活習慣です。

Q10. 胆石症はどの診療科を受診すればいいですか?

A. 消化器内科または消化器外科を受診してください。

診療科の選び方:

初診・検査:

  • 消化器内科
  • 内科
  • かかりつけ医

治療方針の決定:

  • 消化器内科:内科的治療、経過観察
  • 消化器外科:手術が必要な場合

緊急時:

  • 救急外来
  • 救急科

症状がある場合や健診で胆石を指摘された場合は、まず消化器内科を受診するのが一般的です。そこで検査を受け、治療方針を相談することになります。


まとめ

胆石は、胆嚢や胆管にできる結晶性の固形物で、日本人の約10人に1人が持っているとされる身近な病気です。多くは無症状ですが、発作を起こすと激しい痛みを伴い、時には胆嚢炎や胆管炎などの合併症を引き起こすこともあります。

胆石の重要ポイント:

  1. 無症状胆石は経過観察が基本
  2. 症状がある場合は積極的な治療を検討
  3. 腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準治療
  4. 生活習慣の改善で予防が可能
  5. 定期的な健診で早期発見

胆石は、食生活の欧米化、肥満、運動不足などの生活習慣と密接に関係しています。バランスの良い食事、適度な運動、適正体重の維持など、日常生活を見直すことで、胆石の予防や進行の抑制が期待できます。

こんな症状があれば受診を:

  • 右上腹部の激しい痛み
  • 食後の持続的な腹痛
  • 発熱を伴う腹痛
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 繰り返す吐き気・嘔吐

健康診断で胆石を指摘された方、リスク因子(40歳以上、女性、肥満、家族歴など)に当てはまる方は、定期的な検査を受けることをおすすめします。

早期発見・早期対応により、重症化を防ぎ、より良い健康状態を維持することができます。胆石について正しい知識を持ち、自分の健康を守りましょう。


参考文献

  1. 日本消化器病学会「胆石症診療ガイドライン2021」
    https://www.jsge.or.jp/
  2. 日本肝胆膵外科学会
    https://www.jshbps.jp/
  3. 厚生労働省「生活習慣病予防」
    https://www.mhlw.go.jp/
  4. 日本消化器内視鏡学会
    https://www.jges.net/
  5. 国立国際医療研究センター「胆石症について」
    https://www.ncgm.go.jp/

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療の代わりとなるものではありません。症状がある方は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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