粉瘤(ふんりゅう)は皮膚の下にできる良性の腫瘍ですが、炎症を起こすと赤く腫れて強い痛みを伴うことがあります。「粉瘤が急に大きくなった」「触ると痛くて熱を持っている」このような症状でお困りの方も多いのではないでしょうか。炎症を起こした粉瘤は、適切な対処をしないと症状が悪化したり、治癒後も傷跡が残りやすくなったりする可能性があります。本記事では、粉瘤が炎症を起こす原因から、自宅でできる応急処置、病院での治療法、そして再発を防ぐ方法まで、アイシークリニック大宮院の専門医が詳しく解説します。粉瘤の炎症でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
- 粉瘤とは|基本的な特徴と症状
- 粉瘤が炎症を起こしたときの原因
- 炎症を起こした粉瘤の症状と見分け方
- 粉瘤が炎症を起こしたときの対処法|応急処置と注意点
- 病院での炎症性粉瘤の治療法
- 治療後の経過と炎症予防方法
- よくある質問
- まとめ
🩺 粉瘤とは|基本的な特徴と症状
粉瘤は、皮膚の下にできる袋状の構造物(嚢腫)の中に、古い角質や皮脂が溜まってできる良性腫瘍です。アテロームや表皮嚢腫とも呼ばれ、皮膚腫瘍の中では最も頻度の高いものの一つです。体のどこにでもできる可能性がありますが、特に顔、首、背中、耳の後ろなどに発生しやすい傾向があります。
🔬 粉瘤ができる仕組み
通常、皮膚の表面にある表皮細胞は、古くなると垢となって自然に剥がれ落ちていきます。しかし、何らかの原因で表皮細胞が皮膚の内側に入り込んでしまうと、袋状の構造を形成します。この袋の中で表皮細胞が増殖を続け、角質や皮脂が溜まっていくことで粉瘤が形成されます。袋の中身は、白〜黄色のペースト状または粥状の物質で、独特の臭いを持つことが特徴です。
👁️ 粉瘤の見た目と特徴
粉瘤は、皮膚の下にできるドーム状のしこりとして触れることができます。表面の皮膚は通常の肌色で、中央に黒い点(開口部)が見られることがあります。この開口部は「へそ」や「中心臍」とも呼ばれ、粉瘤を他の皮膚腫瘍と区別する重要な特徴の一つです。
- 大きさは数ミリメートルから数センチメートルまでさまざま
- 時間の経過とともにゆっくりと大きくなる
- 炎症を起こしていない状態では痛みはほとんどなし
📍 粉瘤ができやすい部位
粉瘤は全身のどこにでもできる可能性がありますが、発生しやすい部位があります。
- 顔面:額、頬、耳の周囲
- 体幹部:背中、胸、お尻
- その他:首、腕、脚
毛穴や皮脂腺が多い部位にできやすいと考えられていますが、手のひらや足の裏など、毛がない部位にも発生することがあります。
🔥 粉瘤が炎症を起こしたときの原因
粉瘤は良性腫瘍であり、そのままの状態であれば痛みもなく、すぐに治療が必要というわけではありません。しかし、さまざまな原因で炎症を起こすことがあります。炎症を起こした粉瘤は「炎症性粉瘤」または「感染性粉瘤」と呼ばれ、赤く腫れて痛みを伴います。
🦠 細菌感染による炎症
粉瘤が炎症を起こす最も一般的な原因は、細菌感染です。
- 粉瘤の表面にある開口部から皮膚の常在菌(黄色ブドウ球菌など)が侵入
- 粉瘤を自分で潰そうとして皮膚に傷がついて細菌が侵入
- 強く押すことで皮膚に損傷が生じて感染
細菌感染を起こすと、粉瘤の中身が化膿して膿が溜まり、強い炎症反応が生じます。
💥 嚢腫壁の破裂による炎症
粉瘤の袋(嚢腫壁)が何らかの原因で破裂し、中身が周囲の組織に漏れ出すことでも炎症が起こります。これは細菌感染がなくても発生する炎症で、異物反応性の炎症と呼ばれます。
- 外部からの圧迫や衝撃
- 粉瘤を無理に絞り出そうとする行為
- 袋の中身である角質や皮脂が体にとって異物として認識されるため
💪 物理的な刺激や圧迫
粉瘤ができている部位に継続的な刺激や圧迫が加わることで、炎症が起こりやすくなります。
- 背中の粉瘤が椅子の背もたれで圧迫される
- 下着やベルトなどでの擦れ
- 激しい運動による摩擦
- 仕事で特定の部位に負担がかかる場合
🛡️ 免疫力の低下
体の免疫力が低下している状態では、粉瘤が炎症を起こしやすくなります。
- 過度のストレス
- 睡眠不足
- 疲労の蓄積
- 栄養バランスの乱れ
- 糖尿病などの基礎疾患
- 免疫抑制剤の使用
🚨 炎症を起こした粉瘤の症状と見分け方
炎症を起こした粉瘤は、炎症のない粉瘤とは異なる症状を示します。炎症の程度によって症状の強さは異なりますが、早期に気づいて適切に対処することが重要です。
🔴 赤みと腫れ
炎症を起こした粉瘤の最も分かりやすい症状は、皮膚の赤みと腫れです。
- 炎症のない粉瘤:表面の皮膚が通常の肌色
- 炎症を起こした粉瘤:赤く変色
- 炎症反応により組織に液体が溜まり急激に大きくなる
- 腫れが粉瘤の周囲にも広がり、数倍の大きさになることも
😣 痛みと圧痛
炎症性粉瘤は、触らなくても痛みを感じることがあります。これは自発痛と呼ばれ、炎症が進行するにつれて強くなる傾向があります。また、軽く触れただけでも痛みを感じる圧痛も特徴的な症状です。
- ズキズキとした拍動性の痛み
- 痛みの程度は個人差あり
- 日常生活に支障をきたすことも
🌡️ 熱感と発熱
炎症を起こした部位は、局所的に熱を持ちます。粉瘤の表面を触ると、周囲の皮膚よりも温かく感じることができます。これは炎症反応により血流が増加し、組織の代謝が活発になっているためです。
- 局所的な熱感
- 炎症が強い場合は発熱を伴うことも
- 特に大きな粉瘤が感染した場合は38度以上の発熱の可能性
🦠 膿の排出と臭い
炎症が進行すると、粉瘤の表面から膿が排出されることがあります。膿は黄白色〜緑色で、独特の悪臭を伴うことが多いです。膿が自然に排出されると一時的に症状が軽減することがありますが、これは完治を意味するものではありません。
🩹 粉瘤が炎症を起こしたときの対処法|応急処置と注意点
粉瘤が炎症を起こした場合、早めの対処が重要です。ただし、自己判断で間違った処置をすると、症状を悪化させてしまう可能性があります。
🧼 患部を清潔に保つ
炎症を起こした粉瘤の周囲は、常に清潔に保つことが大切です。
- 入浴時には患部を石鹸で優しく洗う
- 清潔なタオルで水分を拭き取る
- 強くこすったり爪で引っ掻いたりしない
- 患部を触る前には必ず手を洗う
❄️ 冷却による応急処置
腫れや痛みが強い場合は、患部を冷やすことで症状を和らげることができます。
- 清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷のうを使用
- 患部に15〜20分程度あてる
- 血管が収縮し腫れや痛みが軽減
- 直接氷を皮膚にあてると凍傷の原因になるため注意
- 1日に数回実施可能
💊 市販薬の使用について
軽度の炎症であれば、市販の抗菌軟膏や消炎鎮痛剤で症状を和らげることができる場合があります。痛みが強い場合は、カロナールやロキソニンなどの鎮痛剤を適切に使用することで症状の軽減が期待できます。
- 抗菌軟膏:細菌の増殖を抑える効果
- 鎮痛剤:アセトアミノフェンやイブプロフェンで痛みを軽減
- 注意:あくまでも対症療法であり根本治療ではない
❌ やってはいけない対処法
炎症を起こした粉瘤に対して、絶対にやってはいけない行為があります。
- 粉瘤を自分で潰す
- 針で刺して中身を出そうとする
- 強く押したり揉んだりする
- 消毒用アルコールやオキシドールを直接塗る
🏥 医療機関を受診すべきタイミング
炎症を起こした粉瘤は、基本的に医療機関での治療が必要です。特に以下のような場合は、できるだけ早く受診することをお勧めします。
- 赤みや腫れが急速に広がっている
- 痛みが強く日常生活に支障がある
- 38度以上の発熱がある
- 膿が排出されている
- 炎症が1週間以上続いている
- 糖尿病などの基礎疾患がある
- 免疫抑制剤を使用している
🏥 病院での炎症性粉瘤の治療法
炎症を起こした粉瘤の治療は、炎症の程度や状態によって異なります。医療機関では、患部の状態を診察した上で、最適な治療法を選択します。
💉 抗生物質による治療
炎症が比較的軽度で、膿瘍を形成していない段階であれば、抗生物質の内服や外用薬で治療を行うことがあります。
- 目的:細菌感染を抑制し炎症の進行を防ぐ
- 使用薬:黄色ブドウ球菌などに効果のある抗生物質
- 服用期間:通常1〜2週間程度
- 注意点:粉瘤の袋自体はなくならない
炎症が落ち着いた後に根治手術が必要になることがあります。
🔪 切開排膿術
炎症が強く、膿瘍を形成している場合は、切開排膿術が行われます。
- 局所麻酔をした上で粉瘤を切開
- 溜まった膿を排出
- 内部の圧力が下がって痛みが軽減
- 傷口を完全に縫い閉じずに開放創とする
- ガーゼなどを詰めて排膿を続ける
- 定期的な通院で傷の洗浄とガーゼ交換
切開排膿術は炎症を鎮めるための応急的な処置であり、粉瘤の袋は残ったままです。
⚔️ 摘出手術の方法
炎症が落ち着いた後に行う根治手術が、最も確実な治療法です。主な手術法には紡錘形切除法とくり抜き法があります。
- 紡錘形切除法:粉瘤を紡錘形に切開し袋ごと摘出
- くり抜き法:小さな穴から内容物と袋を取り出す
- 傷跡:くり抜き法の方が傷跡が小さい
- 適応:粉瘤の大きさや部位により選択

🩹 治療後の経過と炎症予防方法
炎症性粉瘤の治療を受けた後は、適切なケアを続けることが大切です。治療法によって経過や注意点が異なりますので、担当医の指示に従ってケアを行いましょう。粉瘤手術後の適切なケア方法を理解することで、より良い治癒を促進できます。
🔄 治療後のケアと注意点
治療後の回復期間中は、いくつかの注意点があります。
- 患部の清潔保持:毎日の適切な洗浄と消毒
- 圧迫・摩擦の回避:患部への圧迫や摩擦を避ける
- 入浴について:粉瘤手術後の入浴タイミングを守る
- 運動制限:粉瘤術後の運動再開時期を遵守
🛡️ 粉瘤の炎症を予防する方法
粉瘤が炎症を起こすと、治療が複雑になり、傷跡も残りやすくなります。そのため、炎症を起こす前に予防対策を講じることが重要です。
- 触らない・潰さない:粉瘤を不必要に触らない
- 清潔保持:患部を日頃から清潔に保つ
- 物理的刺激の回避:継続的な圧迫や摩擦を避ける
- 免疫力維持:規則正しい生活習慣
- 予防的摘出:炎症前の摘出手術が最善
🔄 再発の可能性について
粉瘤の治療後に再発する可能性があるかどうかは、袋を完全に取りきれたかどうかによります。粉瘤が再発する原因を理解することで、適切な治療選択ができます。
- 切開排膿のみ:袋が残っているため再発の可能性あり
- 摘出手術後:袋の一部が残っていると再発する可能性
- 炎症期の手術:組織の境界が不明瞭で袋を取り残しやすい
- 再発時:改めて摘出手術が必要
❓ よくある質問
炎症を起こした粉瘤が自然に完治することはありません。膿が自然に排出されて一時的に症状が和らぐことはありますが、袋の構造が残っている限り再び内容物が溜まり、炎症を繰り返す可能性が高いです。根本的な治療のためには、袋ごと摘出する手術が必要です。炎症を起こした場合は、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることをお勧めします。
炎症を起こした粉瘤は、皮膚科または形成外科を受診してください。どちらの科でも診察と治療を受けることができます。形成外科では、傷跡を目立たなくする技術に特化しているため、顔や目立つ部位にある粉瘤の場合は形成外科がお勧めです。アイシークリニック大宮院では、炎症性粉瘤の治療から根治手術まで、専門的な治療を行っています。
炎症性粉瘤の手術は、局所麻酔を使用して行うため、手術中の痛みはほとんどありません。ただし、炎症を起こしている状態では、麻酔の効きが悪くなることがあります。その場合は、追加で麻酔を行うなどの対応をします。手術後は麻酔が切れると軽い痛みを感じることがありますが、処方される鎮痛剤で十分にコントロールできる程度です。
炎症を起こした粉瘤の治療は、健康保険が適用されます。治療費は、治療内容や粉瘤の大きさによって異なりますが、3割負担の場合、切開排膿術で2000〜5000円程度、摘出手術で5000〜15000円程度が目安です。このほかに、初診料や再診料、処方薬の費用などがかかります。詳しい費用については、受診する医療機関にお問い合わせください。
炎症性粉瘤の治療は、ほとんどの場合、日帰りで行うことができます。切開排膿術は数十分程度の処置で終わり、その後は通常の生活に戻ることができます。摘出手術も同様に日帰りで行えます。ただし、患部の場所や仕事の内容によっては、数日間の安静が必要な場合もあります。治療後の生活制限については、担当医と相談して計画を立てることをお勧めします。
粉瘤が炎症を繰り返す場合は、袋が残っていることが原因です。切開排膿のみでは袋を取り除くことができないため、炎症が落ち着いた後に必ず摘出手術を受けることが重要です。過去に手術を受けていても炎症を繰り返す場合は、袋の一部が残っている可能性があります。この場合も、再度摘出手術を行うことで根治を目指すことができます。
📝 まとめ
粉瘤が炎症を起こすと、赤み、腫れ、痛みなどの症状が現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。炎症の原因は、細菌感染や嚢腫壁の破裂、物理的な刺激などさまざまです。炎症を起こした場合は、患部を清潔に保ち、冷却するなどの応急処置を行いつつ、早めに医療機関を受診することが大切です。自分で潰したり、中身を絞り出そうとしたりする行為は、症状を悪化させるため絶対に避けてください。
病院での治療は、炎症の程度によって異なります。軽度であれば抗生物質で治療し、膿瘍を形成している場合は切開排膿術が行われます。根本的な治療のためには、炎症が落ち着いた後に袋ごと摘出する手術が必要です。炎症を起こす前に摘出手術を受けることが、傷跡を最小限に抑え、再発を防ぐ最善の方法です。
粉瘤の炎症でお悩みの方は、アイシークリニック大宮院にご相談ください。経験豊富な専門医が、患者様の状態に合わせた最適な治療をご提案いたします。炎症を起こしている粉瘤の治療から、炎症のない粉瘤の予防的な摘出手術まで、幅広く対応しております。お気軽にお問い合わせください。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
医師・当院治療責任者
粉瘤の炎症は予防可能なケースが多くあります。特に、粉瘤を触らない・潰さないことが最も重要です。当院では炎症を起こす前の予防的な摘出手術を推奨しており、小さな傷跡での治療が可能です。炎症を起こしてからの治療は複雑になるため、早めのご相談をお勧めします。