はじめに
顔や鼻、頬に赤い血管が浮き出て気になる、そんな悩みを抱えている方は少なくありません。この症状は「毛細血管拡張症」と呼ばれるもので、見た目の問題だけでなく、時には心理的なストレスの原因にもなります。
毛細血管拡張症は決して珍しい症状ではなく、年齢や性別を問わず多くの方に見られる皮膚の状態です。幸いなことに、現代の医療技術により、効果的な治療法が確立されています。
この記事では、毛細血管拡張症の基本的な知識から、最新の治療法、予防策まで、包括的に解説していきます。アイシークリニック大宮院での豊富な治療経験をもとに、皆様の不安や疑問にお答えします。
毛細血管拡張症とは
毛細血管拡張症の定義
毛細血管拡張症(telangiectasia)とは、皮膚の表面近くにある細い血管(毛細血管)が拡張して、肉眼で見えるようになった状態を指します。医学的には、直径0.1〜1mm程度の拡張した血管が皮膚表面に透けて見える状態と定義されます。
一般的には「赤ら顔」や「血管が浮き出ている」といった表現で認識されることが多く、主に顔面、特に鼻や頬に現れやすい特徴があります。
毛細血管拡張症の見た目の特徴
毛細血管拡張症は、以下のような外見的特徴を持ちます。
細く赤い線状や網目状の血管が皮膚表面に見える状態が典型的です。色調は明るい赤色から濃い赤紫色まで様々で、血管の太さや深さによって異なります。
触ってみると、通常は平坦で盛り上がりはありません。これは、血管自体が拡張しているだけで、腫瘍のような組織の増殖ではないためです。
押すと一時的に色が消えるのも特徴の一つです。これは、圧迫によって血管内の血液が一時的に押し出されるためで、毛細血管拡張症と他の皮膚疾患を鑑別する際の重要なポイントになります。
好発部位
毛細血管拡張症が最も現れやすいのは顔面です。特に以下の部位に頻繁に見られます。
鼻は最も多い発症部位で、鼻翼(小鼻)や鼻尖(鼻の頭)に細かい赤い血管が網目状に広がることがあります。これは、鼻の皮膚が薄く、毛細血管が表面に近いことが関係しています。
頬も好発部位の一つです。頬骨の高い部分や、頬全体に赤みが広がるケースも見られます。日光の当たりやすい部位であることも、発症リスクを高める要因となっています。
その他、あごや額、首筋などにも現れることがあります。また、脚部、特に太ももや膝の裏側に発症するケースもあり、これは静脈系の問題と関連していることがあります。
毛細血管拡張症の原因
先天的要因
毛細血管拡張症の一部は、遺伝的な要因によって発症します。
家族性の傾向があり、親や祖父母に同様の症状が見られる場合、子供にも発症する可能性が高くなります。これは、血管壁の構造や血管の収縮・拡張を調節する機能に関わる遺伝子が関係していると考えられています。
また、皮膚の色が白く薄い人は、毛細血管が透けて見えやすいため、症状が目立ちやすい傾向にあります。これは人種的な特徴とも関連しており、白人に多く見られる理由の一つとなっています。
後天的要因
生活環境や加齢によって後天的に毛細血管拡張症が発症することも少なくありません。
紫外線の長期的な曝露は、最も重要な環境要因の一つです。紫外線は皮膚のコラーゲンやエラスチンを破壊し、血管壁を支える組織を弱らせます。その結果、血管が拡張しやすくなり、元に戻りにくくなります。環境省の紫外線環境保健マニュアルでも、紫外線による皮膚への影響が詳しく解説されています。
加齢による変化も見逃せません。年齢を重ねると、皮膚の弾力性が失われ、血管を支える結合組織が衰えます。これにより、若い頃には目立たなかった血管が、年齢とともに徐々に拡張して見えるようになることがあります。
気温の変化、特に寒暖差の激しい環境も影響します。急激な温度変化は血管の収縮と拡張を繰り返させ、血管壁に負担をかけます。寒冷地に住む方や、頻繁にサウナと水風呂を行き来するような生活習慣がある方は、注意が必要です。
ホルモンの影響
女性ホルモンの変動も毛細血管拡張症の発症に関与しています。
妊娠中は、エストロゲンなどの女性ホルモンの分泌が増加し、血管が拡張しやすくなります。妊娠中に初めて毛細血管拡張症が現れる方も少なくありませんが、出産後に自然と改善するケースも多く見られます。
更年期においても、ホルモンバランスの変化により毛細血管拡張症が発症したり、既存の症状が悪化したりすることがあります。
経口避妊薬やホルモン補充療法を受けている方も、ホルモンの影響で血管拡張が起こりやすくなる可能性があります。
生活習慣との関連
日常の生活習慣も毛細血管拡張症の発症や悪化に影響を与えます。
アルコールの過剰摂取は、血管を拡張させる作用があります。継続的な飲酒習慣は、一時的な血管拡張を恒久的な状態に変えてしまう可能性があります。特に、顔面の紅潮を伴う飲酒は、毛細血管拡張症のリスクを高めます。
辛い食べ物や熱い飲食物も、顔面の血流を増加させ、血管を拡張させます。頻繁に摂取する習慣がある方は、症状が悪化しやすい傾向にあります。
ストレスや不規則な生活リズムも、自律神経のバランスを乱し、血管の収縮・拡張のコントロールを不安定にさせる要因となります。
皮膚疾患との関連
いくつかの皮膚疾患は、毛細血管拡張症を合併しやすいことが知られています。
酒さ(しゅさ)は、顔面に慢性的な紅斑や丘疹を生じる疾患で、毛細血管拡張症を高頻度で伴います。酒さの患者さんの多くに、頬や鼻に明瞭な血管拡張が見られます。
脂漏性皮膚炎も、炎症による血流増加から毛細血管拡張を引き起こすことがあります。
アトピー性皮膚炎の長期的な炎症も、患部の血管拡張につながることがあります。
薬剤の影響
特定の薬剤の使用も、毛細血管拡張症の原因となることがあります。
ステロイド外用薬を長期間使用すると、皮膚が薄くなり(皮膚萎縮)、同時に毛細血管拡張症が生じることがあります。これは、ステロイドが皮膚のコラーゲン合成を抑制し、血管壁を支える組織を弱らせるためです。
特に顔面への強いステロイド外用薬の長期使用は、避けるべきとされています。
毛細血管拡張症の種類と分類
原発性毛細血管拡張症
特定の基礎疾患がなく、独立して発症する毛細血管拡張症を原発性と呼びます。
単純性毛細血管拡張症は、最も一般的なタイプで、遺伝的素因や環境要因によって発症します。顔面、特に鼻や頬に現れることが多く、外見上の問題以外には健康への影響はほとんどありません。
本態性毛細血管拡張症は、明らかな原因が特定できない毛細血管拡張症の総称です。多くの場合、複数の要因が組み合わさって発症していると考えられています。
続発性毛細血管拡張症
他の疾患や状態に伴って二次的に発症する毛細血管拡張症を続発性と呼びます。
酒さ関連の毛細血管拡張症は、酒さという慢性的な顔面の炎症性疾患に伴って生じます。酒さ患者の60〜80%に毛細血管拡張症が見られるとされています。
放射線治療後の毛細血管拡張症は、がん治療などで放射線を照射した部位に生じることがあります。放射線が血管壁に損傷を与え、拡張を引き起こします。
膠原病に伴う毛細血管拡張症もあり、全身性強皮症などの膠原病患者では、顔面や指先に特徴的な毛細血管拡張が見られることがあります。
クモ状血管腫
クモ状血管腫(spider angioma)は、中心に赤い点があり、そこから放射状に細い血管が広がる特徴的な形態を持つ毛細血管拡張症の一種です。
妊娠中や肝疾患のある方に多く見られ、エストロゲンの過剰が関与していると考えられています。顔面、首、上胸部、腕などに現れやすい傾向があります。
中心部を圧迫すると、放射状の血管の色が消える特徴があり、これが診断のポイントになります。
診断方法
視診による診断
毛細血管拡張症の診断は、主に視診によって行われます。
経験豊富な皮膚科医であれば、特徴的な外見から容易に診断できることが多いです。赤い線状や網目状の血管が皮膚表面に見え、圧迫で一時的に色が消える特徴を確認します。
拡大鏡やダーモスコピーを用いることで、より詳細に血管の走行や形態を観察できます。これにより、他の皮膚疾患との鑑別がより正確に行えます。
他の疾患との鑑別
毛細血管拡張症と似た外見を呈する疾患があるため、適切な鑑別が重要です。
血管腫は、血管の増殖や異常によって生じる腫瘍性病変で、毛細血管拡張症とは区別されます。血管腫は通常、盛り上がりがあり、自然に消退しないのが特徴です。
紅斑は、一時的な皮膚の赤みで、炎症や刺激によって生じます。毛細血管拡張症と異なり、原因が除去されれば消失します。
色素沈着は、メラニンの増加による皮膚の変色で、血管とは関係ありません。圧迫しても色が変化しない点で鑑別できます。
必要に応じた追加検査
通常、毛細血管拡張症の診断に特別な検査は必要ありませんが、基礎疾患が疑われる場合には追加の検査を行うことがあります。
肝機能検査は、クモ状血管腫が多発している場合や、肝疾患が疑われる場合に実施します。肝硬変などの慢性肝疾患では、エストロゲンの代謝異常により毛細血管拡張症が生じやすくなります。
膠原病が疑われる場合には、自己抗体検査などの免疫学的検査を行うことがあります。
遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)という稀な遺伝性疾患が疑われる場合には、遺伝子検査を含めた精密検査が必要になることもあります。この疾患では、鼻出血や消化管出血を繰り返すことがあり、全身の管理が重要です。
毛細血管拡張症の治療法
治療の目的と適応
毛細血管拡張症の治療の主な目的は、美容的な改善です。多くの場合、健康上の問題を引き起こすことはありませんが、見た目の悩みや心理的なストレスから治療を希望される方は少なくありません。
治療の適応は、患者さん本人が外見を気にしている場合、症状が広範囲に及んでいる場合、基礎疾患に伴う症状がある場合などです。
ただし、妊娠中に出現した毛細血管拡張症は、出産後に自然に改善することも多いため、経過観察を優先する場合もあります。
レーザー治療
レーザー治療は、現在最も効果的で一般的な毛細血管拡張症の治療法です。
レーザー治療の原理は、特定の波長の光を血管内のヘモグロビンに吸収させ、熱エネルギーによって血管を選択的に破壊することにあります。周囲の正常な組織へのダメージを最小限に抑えながら、拡張した血管だけを処理できる点が大きな利点です。
使用されるレーザーの種類には、いくつかのタイプがあります。
ロングパルスYAGレーザーは、波長1064nmの光を使用し、比較的深い位置にある血管や太い血管の治療に適しています。皮膚の深部まで到達できるため、濃い赤色や青紫色の血管にも効果を発揮します。
色素レーザー(パルスダイレーザー)は、波長585〜595nmの光を使用し、表層の細かい血管の治療に優れています。赤い血管に対する選択性が高く、毛細血管拡張症の標準的治療として広く用いられています。
KTPレーザーは、波長532nmの光を使用し、表在性の血管病変に効果的です。細かい血管の治療に適していますが、皮膚の色が濃い方には注意が必要です。
治療の実際の流れを説明します。
まず、治療前にメイクを落とし、治療部位を清潔にします。痛みを軽減するために、冷却ジェルを塗布したり、冷却装置を併用したりします。
レーザー照射時は、輪ゴムで弾かれるような痛みを感じることがありますが、多くの方が我慢できる程度です。痛みに敏感な方や広範囲の治療が必要な場合には、麻酔クリームの使用も可能です。
照射時間は、治療範囲によって異なりますが、顔全体でも15〜30分程度で終了します。
治療後は、照射部位が赤くなったり、軽い腫れが生じたりすることがありますが、通常は数時間から数日で落ち着きます。
治療効果と必要な回数について、1回の治療で完全に消失することは稀で、通常は複数回の治療が必要です。血管の太さや深さ、範囲によって異なりますが、平均的には3〜5回程度の治療を、4〜8週間の間隔をあけて行うことが一般的です。
細い血管ほど早く効果が現れやすく、太い血管や深い血管は、より多くの回数が必要になる傾向があります。
レーザー治療後のダウンタイムは比較的短く、多くの場合、当日からメイクが可能です。ただし、治療直後は日焼け止めの使用が必須です。
治療部位に一時的な色素沈着が生じることがありますが、通常は数ヶ月で自然に消退します。色素沈着のリスクを減らすためには、治療後の紫外線対策が非常に重要です。
光治療(IPL治療)
IPL(Intense Pulsed Light)治療は、レーザーよりも広い波長域の光を使用する治療法です。
複数の波長を含む光を照射することで、血管だけでなく、シミやそばかす、毛穴などの複合的な肌の悩みに同時にアプローチできる利点があります。
レーザー治療と比較して、痛みやダウンタイムが少ない傾向にあり、初めての方でも受けやすい治療です。ただし、レーザーと比べると一回あたりの効果はやや穏やかで、より多くの回数が必要になることがあります。
治療の流れはレーザー治療と似ており、照射部位に冷却ジェルを塗布し、専用のハンドピースで光を照射します。照射時の痛みは、温かく感じる程度で、レーザーよりも軽いことが多いです。
治療後は、軽い赤みが出ることがありますが、通常は数時間で落ち着き、当日からメイクが可能です。
定期的な治療(3〜4週間ごと)を続けることで、徐々に血管が目立たなくなり、肌全体のトーンも均一に整っていきます。
硬化療法
硬化療法は、主に下肢の静脈瘤や細い静脈の治療に用いられる方法ですが、特定のタイプの毛細血管拡張症にも応用されることがあります。
細い針を使って、拡張した血管内に硬化剤という薬剤を注入します。この薬剤が血管内壁を刺激し、血管を閉塞させることで、血管を目立たなくします。
顔面の毛細血管拡張症に対しては、レーザー治療の方が一般的で効果的であるため、硬化療法はあまり選択されません。主に脚の細い血管に対して用いられます。
治療後は、圧迫することで効果を高めるため、弾性ストッキングの着用が推奨されることがあります。
副作用として、注入部位の色素沈着や、まれに潰瘍形成などのリスクがあります。
電気凝固法
電気凝固法は、細い電極を使って血管を熱凝固させる方法です。
非常に細い針電極を皮膚表面から血管に向けて挿入し、高周波電流を流すことで血管を熱凝固させます。
この方法は、かつては広く用いられていましたが、現在ではレーザー治療の普及により、あまり選択されなくなっています。
レーザー治療と比べて、痛みが強く、瘢痕(傷跡)が残るリスクが高いためです。ただし、特定の細い血管に対してピンポイントで治療したい場合などに、今でも用いられることがあります。
保存的治療とスキンケア
積極的な治療を希望しない場合や、治療の補助として、保存的な対応も重要です。
メイクによるカバーは、最も手軽で効果的な対処法の一つです。グリーン系のコントロールカラーを使うことで、赤みを視覚的に抑えることができます。その上から、カバー力のあるファンデーションを使用すれば、かなり目立たなくすることが可能です。
スキンケアでは、血管を刺激しないような優しいケアを心がけることが大切です。洗顔時は、熱いお湯を避け、ぬるま湯を使用します。強くこすることは避け、優しく洗います。
保湿をしっかり行うことで、皮膚のバリア機能を保ち、外的刺激から肌を守ります。
レチノールやビタミンC誘導体などの成分を含むスキンケア製品は、コラーゲンの生成を促進し、血管周囲の組織を強化する可能性があります。ただし、刺激が強すぎる場合は逆効果になることもあるため、肌の状態を見ながら使用することが重要です。
基礎疾患の治療
毛細血管拡張症が他の疾患に伴って生じている場合は、その基礎疾患の治療が優先されます。
酒さに伴う毛細血管拡張症では、酒さ自体の治療(抗生物質の内服や外用、メトロニダゾールの外用など)を行いながら、必要に応じてレーザー治療を併用します。
ステロイド外用薬による毛細血管拡張症では、まずステロイドの使用を中止または減量し、適切な治療に切り替えることが重要です。ステロイドを急に中止すると、リバウンド現象で症状が悪化することがあるため、医師の指導のもとで徐々に減量していきます。
肝疾患に伴うクモ状血管腫では、肝機能の改善が優先されます。肝機能が改善すれば、血管腫が自然に縮小することもあります。
治療のリスクと副作用
レーザー治療のリスク
レーザー治療は比較的安全な治療法ですが、いくつかのリスクや副作用があります。
色素沈着は、最も一般的な副作用の一つです。治療部位が一時的に茶色っぽくなることがありますが、多くの場合は数ヶ月で自然に薄くなります。色素沈着のリスクを減らすには、治療後の紫外線対策が極めて重要です。
色素脱失は、逆に治療部位の色が抜けて白っぽくなる現象です。これは色素沈着よりも発生頻度は低いものの、一度生じると改善が難しい場合があります。
火傷は、レーザーの設定が適切でない場合や、肌の色が濃い方に強いエネルギーを使用した場合などに起こりえます。経験豊富な医師が適切な設定で治療を行えば、リスクは最小限に抑えられます。
内出血や腫れは、治療直後に生じることがありますが、通常は1〜2週間で自然に消失します。
感染は非常に稀ですが、治療後のケアが不適切な場合に起こる可能性があります。治療部位を清潔に保ち、医師の指示に従ったケアを行うことが大切です。
瘢痕形成は、適切な治療であれば極めて稀ですが、過度のエネルギー照射や、治療後の不適切なケアによって生じる可能性があります。
治療効果の個人差
毛細血管拡張症の治療効果には、個人差があることを理解しておく必要があります。
血管の太さや深さ、範囲によって、必要な治療回数や最終的な改善度が異なります。細くて表層の血管は比較的早く改善しますが、太くて深い血管は、より多くの回数を要します。
また、完全に消失させることが難しい場合もあります。特に広範囲に及ぶ場合や、血管が非常に太い場合は、目立たなくすることはできても、完全に見えなくすることは困難なこともあります。
治療前のカウンセリングで、現実的な治療目標を医師と共有することが重要です。
再発の可能性
毛細血管拡張症は、一度治療して改善しても、再発する可能性があります。
治療によって既存の拡張血管は改善しますが、新たな血管拡張が生じることは防げません。特に、紫外線曝露や生活習慣が変わらない場合、数年後に新たな毛細血管拡張症が現れることがあります。
定期的なメンテナンス治療を行うことで、良好な状態を維持しやすくなります。また、日常的な紫外線対策や、血管拡張を招く生活習慣の改善も、再発予防に役立ちます。
予防とセルフケア
紫外線対策
毛細血管拡張症の予防において、最も重要なのが紫外線対策です。
日焼け止めは、一年を通じて毎日使用することが推奨されます。SPF30以上、PA+++以上のものを選び、2〜3時間ごとに塗り直すのが理想的です。特に顔面は常に露出しているため、念入りな対策が必要です。
日本皮膚科学会でも、紫外線対策の重要性について情報が提供されています。
帽子や日傘の使用も効果的です。つばの広い帽子は、顔面への紫外線を大幅に減らすことができます。
サングラスも、目の周りの皮膚を保護するために有用です。紫外線カット機能のあるものを選びましょう。
日中の外出時間を工夫することも一つの方法です。紫外線が最も強い10時から14時の外出を避ける、または短時間にすることで、紫外線曝露を減らせます。
温度刺激の管理
急激な温度変化や、過度の温度刺激を避けることも重要です。
洗顔やシャワーでは、熱いお湯ではなく、ぬるま湯を使用します。熱いお湯は血管を拡張させ、毛細血管拡張症を悪化させる可能性があります。
サウナや熱い風呂への長時間の入浴は、顔面の血管拡張を招くため、頻度を控えめにするか、顔に直接熱気が当たらないように注意します。
寒冷環境から急に暖かい場所に移動する際も、顔を徐々に温めるなどの配慮があると良いでしょう。
食生活の見直し
食生活も毛細血管拡張症に影響を与えます。
アルコールの過剰摂取は避けるべきです。特に、飲酒で顔が赤くなりやすい方は、毛細血管拡張症のリスクが高いため、注意が必要です。
辛い食べ物や熱い飲食物も、顔面の血流を増加させるため、頻繁な摂取は控えめにします。
カフェインの過剰摂取も、血管に影響を与える可能性があるため、適量を心がけます。
逆に、血管の健康を保つために良いとされる食品もあります。ビタミンCやビタミンKを豊富に含む野菜や果物、オメガ3脂肪酸を含む青魚などは、血管壁の強化に役立つ可能性があります。
スキンケアの工夫
日々のスキンケアも、毛細血管拡張症の予防と管理に重要です。
肌への刺激を最小限にすることが基本です。洗顔時は、優しく丁寧に行い、強くこすることは避けます。洗顔料も、刺激の少ないマイルドなものを選びます。
保湿をしっかり行うことで、皮膚のバリア機能を維持します。乾燥は肌を敏感にし、血管拡張を招きやすくするため、季節を問わず保湿ケアを心がけます。
ピーリングや角質ケアは、やりすぎると皮膚を薄くし、毛細血管拡張症を悪化させる可能性があります。頻度を控えめにし、優しい製品を選ぶことが大切です。
ビタミンC誘導体やナイアシンアミドなど、血管周囲の組織を強化する可能性のある成分を含むスキンケア製品の使用も一つの選択肢です。ただし、肌質によっては刺激になることもあるため、パッチテストを行い、慎重に導入します。
ストレス管理
ストレスは自律神経のバランスを乱し、血管の収縮・拡張のコントロールを不安定にします。
十分な睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを保つことが、自律神経の安定につながります。
適度な運動は、全身の血行を促進し、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。ただし、激しい運動直後は顔面の紅潮が起こりやすいため、運動後のクールダウンを丁寧に行います。
瞑想や深呼吸、ヨガなどのリラクゼーション法も、ストレス軽減に効果的です。
定期的な肌のチェック
毛細血管拡張症の早期発見と適切な管理のために、定期的に自分の肌の状態をチェックすることも大切です。
鏡で顔をよく観察し、新たな血管拡張が現れていないか、既存の血管が拡大していないかを確認します。
変化に気づいたら、早めに皮膚科医に相談することで、適切な対応ができます。

よくある質問
妊娠中に出現した毛細血管拡張症は、出産後に自然に改善することがあります。これは、妊娠中に増加していたホルモンが出産後に正常化するためです。
しかし、一般的には、一度拡張した血管が自然に元に戻ることは少なく、治療なしで完全に消失することは期待できません。時間の経過とともに、むしろ徐々に範囲が広がったり、血管が太くなったりすることが多いです。
そのため、気になる場合は、早めに治療を検討することをお勧めします。早期の段階で治療を始めれば、より少ない回数で効果的に改善できる可能性が高まります。
レーザー治療の痛みは、よく「輪ゴムで弾かれるような感覚」と表現されます。個人差がありますが、多くの方が我慢できる程度の痛みです。
痛みに敏感な方や、広範囲の治療が必要な場合は、麻酔クリームを使用することで、痛みを大幅に軽減できます。麻酔クリームは治療の30分〜1時間前に塗布し、その効果で治療中の痛みをほとんど感じなくなる方も多いです。
また、最新のレーザー機器には冷却装置が組み込まれており、照射と同時に皮膚を冷却することで、痛みと熱感を和らげる工夫がされています。
IPL治療は、レーザー治療よりもさらに痛みが少ない傾向があり、温かく感じる程度で済むことが多いです。
痛みの感じ方は個人差が大きいため、治療前のカウンセリングで不安な点を医師に相談し、自分に合った痛み対策を選択することができます。
保険は適用されますか?
毛細血管拡張症の治療は、基本的には美容目的とみなされるため、保険適用外(自費診療)となることがほとんどです。
ただし、特定の疾患に伴う毛細血管拡張症の場合、その基礎疾患の治療として保険が適用されることがあります。例えば、病的な酒さに伴う毛細血管拡張症の治療などです。
保険適用の可否は、個々のケースによって異なるため、診察時に医師に確認することをお勧めします。
自費診療の場合、治療費はクリニックによって異なりますが、一般的にレーザー治療は1回あたり数万円程度が相場です。治療範囲や使用する機器によって費用は変動します。
治療後のメイクはできますか?
多くの場合、レーザー治療やIPL治療の当日からメイクが可能です。ただし、治療直後は皮膚が敏感になっているため、低刺激の化粧品を使用することが推奨されます。
治療部位に赤みや腫れがある場合は、カバー力のあるファンデーションやコンシーラーを使って自然にカバーできます。
メイクの際は、優しく塗布し、強くこすらないように注意します。また、メイク落としも、刺激の少ないクレンジング剤を使い、優しく行います。
治療後数日間は、治療部位への摩擦を最小限にすることが、良好な治療結果を得るために重要です。
どのくらいで効果が出ますか?
レーザー治療の効果は、治療直後から徐々に現れ始めます。
照射直後は、治療部位が赤くなったり、わずかに腫れたりしますが、これは正常な反応です。この赤みや腫れは、通常、数時間から数日で落ち着きます。
治療した血管が徐々に体内に吸収されていくため、効果の実感には個人差がありますが、多くの場合、2〜4週間後に改善が明らかになってきます。
複数回の治療が必要な場合、各治療の間隔を4〜8週間程度あけます。この間に、前回の治療効果がしっかり現れるのを待ってから、次の治療を行うことで、効果的に改善を積み重ねていきます。
最終的な効果は、すべての治療を終えてから2〜3ヶ月後に評価することが一般的です。
再発することはありますか?
毛細血管拡張症は、治療で改善した血管が再び拡張することはあまりありませんが、新たな血管拡張が生じる可能性はあります。
再発を防ぐためには、日常的な予防ケアが重要です。特に、紫外線対策を徹底することが最も効果的です。また、血管拡張を招く生活習慣(過度の飲酒、極端な温度刺激など)を避けることも大切です。
定期的なメンテナンス治療を受けることで、新たな血管拡張が目立つ前に対処でき、良好な状態を長く維持できます。
年に1〜2回程度のメンテナンス治療を継続している方も多くいらっしゃいます。
男性でも治療を受けられますか?
もちろんです。毛細血管拡張症は、男性にも女性にも発症する症状であり、治療に性別の制限はありません。
実際に、多くの男性が毛細血管拡張症の治療を受けています。特に、鼻の赤みが気になる男性は少なくありません。
治療方法や効果に男女差はほとんどなく、同様の治療プロトコルで良好な結果が得られます。
男性の場合、メイクでカバーすることが一般的ではないため、根本的な治療を希望される方が多い傾向にあります。
子供でも治療できますか?
毛細血管拡張症は成人に多い症状ですが、稀に子供にも見られることがあります。
子供に対する治療の適応は、症状の程度や心理的な影響を考慮して慎重に判断されます。軽度の場合は、成長に伴う変化を見守ることもあります。
しかし、範囲が広く、いじめなどの心理的な問題を引き起こしている場合や、遺伝性出血性毛細血管拡張症のような特定の疾患に伴う場合は、積極的な治療が検討されます。
レーザー治療は、子供にも適用可能ですが、痛みに対する理解や協力が必要なため、ある程度の年齢(一般的には思春期以降)が望ましいとされています。
治療の可否や適切な時期については、小児の皮膚疾患に詳しい医師に相談することをお勧めします。
他の美容治療と併用できますか?
毛細血管拡張症の治療は、他の多くの美容治療と併用可能です。
ただし、治療の種類やタイミングには配慮が必要です。例えば、フェイシャルピーリングやダーマペン、レーザートーニングなどの治療を同時期に受ける場合は、肌への負担を考慮して、適切な間隔をあけることが推奨されます。
一般的には、毛細血管拡張症のレーザー治療の前後2週間程度は、他の刺激的な治療を避けることが望ましいです。
逆に、IPL治療のように、毛細血管拡張症と同時にシミやくすみにもアプローチできる治療もあり、これらは効率的な選択肢となります。
治療の組み合わせについては、診察時に総合的な肌の状態を評価し、医師が最適なプランを提案します。
アイシークリニック大宮院での治療
当院の特徴
アイシークリニック大宮院では、最新のレーザー機器を完備し、患者さん一人ひとりの症状に合わせた最適な治療を提供しています。
経験豊富な医師が、丁寧なカウンセリングを通じて、患者さんの悩みや希望を詳しくお伺いします。治療のメリットだけでなく、リスクや注意点についても分かりやすく説明し、十分にご理解いただいた上で治療を進めます。
また、治療後のアフターケアも充実しており、不安なことがあればいつでもご相談いただける体制を整えています。
治療の流れ
当院での毛細血管拡張症治療は、以下のような流れで進みます。
初診時には、まず医師が症状を詳しく診察し、毛細血管拡張症の程度や範囲を評価します。必要に応じて、最新の医療機器を用いた詳細な観察も行います。
診断後、患者さんの症状や肌質、ご希望に合わせて、最適な治療法を提案します。治療の内容、回数、費用、リスクなどについて、詳しくご説明します。
治療当日は、メイクを落としていただき、治療部位を清潔にします。必要に応じて麻酔クリームを塗布し、十分な時間をおいてから治療を開始します。
レーザーやIPLの照射は、通常15〜30分程度で終了します。治療後は、クーリングを行い、肌を落ち着かせます。
治療後の注意事項やアフターケアについて詳しくご説明し、次回の予約日を決定します。
アフターケアとフォロー
治療後は、以下のようなアフターケアが重要です。
当日から翌日にかけては、治療部位を清潔に保ち、刺激を避けます。洗顔は優しく行い、熱いお湯や強いこすり洗いは避けます。
紫外線対策は必須です。日焼け止めを必ず使用し、帽子や日傘なども活用します。治療後の肌は紫外線の影響を受けやすく、色素沈着のリスクが高まるためです。
保湿もしっかり行います。治療後の肌は乾燥しやすくなっているため、低刺激の保湿剤を使用して、肌のバリア機能を保ちます。
治療後に気になる症状が現れた場合は、すぐにクリニックにご連絡ください。迅速に対応し、適切なケアをご案内します。
次回の治療までの経過を見守り、効果や肌の状態を定期的に確認しながら、治療を進めていきます。
ご来院をお考えの方へ
毛細血管拡張症でお悩みの方は、一人で悩まずに、まずは専門医にご相談ください。
アイシークリニック大宮院では、患者さんの立場に立った丁寧な診療を心がけています。どんな些細なことでも、遠慮なくお尋ねください。
初診のご予約は、お電話またはウェブサイトから承っております。ご都合の良い日時をお選びいただけます。
大宮駅からのアクセスも良好で、通院にも便利な立地です。
皆様のご来院を、スタッフ一同心よりお待ちしております。
まとめ
毛細血管拡張症は、多くの方が経験する一般的な皮膚の状態ですが、適切な治療により効果的に改善できます。
レーザー治療をはじめとする現代の医療技術は、目覚ましい進歩を遂げており、安全で効果的な治療が可能になっています。
治療を成功させるためには、早期の対応、適切な治療法の選択、そして治療後の継続的なケアが重要です。
また、日常生活での紫外線対策や生活習慣の改善など、予防的なアプローチも症状の進行を抑え、治療効果を長持ちさせるために欠かせません。
毛細血管拡張症でお悩みの方は、専門医に相談し、自分に最適な治療法を見つけることをお勧めします。適切な治療により、多くの方が肌の悩みから解放され、自信を取り戻しています。
美しく健康な肌を保つために、正しい知識と適切なケアを心がけましょう。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしています。
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル」(PDF)
- 厚生労働省「健康情報」
※ 本記事の情報は、2025年11月時点のものです。医療情報は常に更新されていますので、実際の診療においては、最新の情報を参考にしてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務