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母斑(あざ)は形成外科で治療できる?大宮で相談できる母斑の種類・診断・治療法を徹底解説

目次

  1. 母斑とは?あざの基礎知識
  2. 母斑の種類と特徴
  3. 形成外科での診断方法
  4. 形成外科での治療方法
  5. 母斑と悪性腫瘍の鑑別ポイント
  6. 治療のタイミングと年齢別の考え方
  7. 保険適用について
  8. 大宮で形成外科を受診する際のポイント
  9. よくある質問
  10. まとめ

1. 母斑とは?あざの基礎知識

「母斑(ぼはん)」とは、一般的に「あざ」と呼ばれる皮膚の色素異常のことを指します。正常な皮膚とは異なる色調を示す限局性の斑点であり、生まれつき存在するものから、成長過程で出現するものまでさまざまな種類があります。

母斑は、その原因となる細胞や組織によって色調が異なります。赤い母斑は血管の異常が原因であり、青、茶、黒い母斑はメラニン色素が関与しています。メラニン色素は皮膚のどの深さに存在するかによって表面から見える色が変わるという特徴があり、皮膚の浅い部分にあれば茶色に、深い部分にあれば青色に見えます。

母斑の多くは良性であり、必ずしも治療が必要というわけではありません。しかし、整容面での悩みや、まれに悪性化のリスクがある場合には、形成外科での適切な診断と治療が重要となります。

かつては母斑の治療といえば外科的切除が主流でしたが、1990年代以降、レーザー技術の発展により治療の選択肢が大きく広がりました。現在では、母斑の種類や大きさ、部位に応じて、レーザー治療と外科的処置を組み合わせた最適な治療法を選択することが可能です。

大宮エリアにお住まいの方で、お子さんの生まれつきのあざや、成長とともに気になってきた色素斑でお悩みの場合は、形成外科専門医への相談をお勧めします。適切な診断のもと、それぞれの症状に合わせた治療計画を立てることができます。


2. 母斑の種類と特徴

母斑にはさまざまな種類があり、それぞれ原因や特徴、治療法が異なります。ここでは、形成外科で取り扱う主な母斑について詳しく解説します。

2-1. 色素性母斑(黒あざ・ほくろ)

色素性母斑は、母斑細胞と呼ばれるメラニン色素を産生する細胞が増殖することによって形成されます。一般的に「ほくろ」と呼ばれるものもこの色素性母斑に含まれます。

母斑細胞が皮膚のどの層に存在するかによって、組織学的に以下の3つのタイプに分類されます。

  • 接合部型(junctional type):表皮と真皮の境界部に母斑細胞が存在
  • 真皮内型(intradermal type):真皮内に母斑細胞が存在
  • 複合型(compound type):両方の部位に母斑細胞が存在

色素性母斑の多くは良性であり、特別な治療は必要ありません。しかし、急に大きくなった、形がいびつになった、色むらが生じたなどの変化が見られる場合は、悪性黒色腫(メラノーマ)との鑑別が必要となるため、早めの受診をお勧めします。

治療を希望される場合は、大きさや部位に応じて外科的切除やレーザー治療が選択されます。手術では病変を切除して縫い合わせる方法が一般的で、切除した組織は病理検査に提出して悪性でないことを確認します。

2-2. 太田母斑(青あざ)

太田母斑は、主に顔面の片側に現れる青灰色から茶褐色のあざです。メラニン色素が皮膚の深い層(真皮)に沈着することで、独特の青みがかった色調を呈します。

典型的な太田母斑は、額、眼瞼(まぶた)、頬部に多く見られ、日本人では0.1~0.2%の頻度で発生するとされています。生後間もなく出現するもの(早発型)と、思春期以降に出現するもの(遅発型)があり、自然に消退することはありません。むしろ思春期に色調が濃くなったり、範囲が拡大したりすることもあります。

太田母斑の特徴として、白眼の部分にも青い色素斑が見られることがあります。これは太田母斑に特徴的な所見であり、診断の助けとなります。

治療にはQスイッチルビーレーザーやピコレーザーが有効で、保険適用となります。複数回のレーザー照射が必要となりますが、適切な治療を行うことで色調の改善が期待できます。治療は早ければ早いほど効果が高いとされており、乳幼児期からの治療開始が推奨されることもあります。

2-3. 異所性蒙古斑(青あざ)

蒙古斑は、日本人を含むモンゴル系東洋人の赤ちゃんのほぼ100%に見られる臀部(おしり)の青あざです。通常は成長とともに10歳頃までに自然消退しますが、臀部以外の部位(腕、足、顔、肩、胸部など)に同様のあざができた場合、これを「異所性蒙古斑」と呼びます。

異所性蒙古斑も太田母斑と同様に、皮膚の深層にメラニン色素が存在するために青く見えます。多くの場合は成長とともに色が薄くなりますが、色調が濃いものは成人まで残ることがあります。

治療が必要かどうかは、以下の3つのポイントで判断されます。

  1. 色の濃さ:色が濃いものは自然消失しにくい
  2. 部位:目立つ場所にあるものは早めの治療を検討
  3. 面積:面積が広すぎると治療負担が大きくなる

異所性蒙古斑のレーザー治療も保険適用となります。年齢が低いほど皮膚が薄く、レーザーが深部まで到達しやすいため、効果が高く副作用も少ない治療が可能です。

2-4. 扁平母斑(茶あざ)

扁平母斑は、いわゆる「茶あざ」と呼ばれるもので、メラニン色素が真皮の浅い部分や表皮の基底層に沈着した場合に茶色く見えます。皮膚から隆起することなく平坦なため「扁平」と名付けられています。

扁平母斑は赤ちゃんの10~20%に見られるとされ、小さいものから非常に大きいものまでサイズはさまざまです。色調も薄い茶色から黒色に近いものまであります。

生まれつき存在するものと、思春期頃に現れるもの(遅発性扁平母斑)があります。遅発性扁平母斑では毛が生えてくることが多く、肩にできる発毛性のものは「ベッカー母斑」とも呼ばれます。

扁平母斑の治療にはQスイッチルビーレーザーが用いられますが、非常に再発しやすいという特徴があります。特に四肢にできているもので毛が生えてしまった場合は、ほぼ100%再発するとされています。レーザー治療に抵抗性で治療を希望される場合は、外科的切除が検討されることもあります。

保険診療では同一部位に対して2回までの照射が適用となります。

2-5. 血管腫・血管奇形(赤あざ)

赤あざは、血管の異常によって生じるあざの総称です。現在は国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)の分類に基づき、「血管腫」と「血管奇形」に大きく分けて考えられるようになっています。

乳児血管腫(苺状血管腫)

生後数日から数週間後に出現し、皮膚から盛り上がるタイプの赤あざです。生後6~12ヶ月で大きさのピークを迎え、その後5~10歳にかけて自然に消退します。

以前は経過観察が主流でしたが、近年は早期治療の重要性が認識されるようになりました。自然消退後にたるみやしわ、瘢痕が残ることがあるため、早期のレーザー治療やプロプラノロール(血管腫治療薬)の内服治療が行われます。

特に目の周り、鼻、口周囲、気道など生命や重要な機能に影響を及ぼす可能性がある部位の血管腫や、潰瘍化しているもの、顔面で広範囲のものは積極的な治療が推奨されます。

毛細血管奇形(単純性血管腫・ポートワイン母斑)

真皮の毛細血管が異常に拡張することで生じる、生まれつきの境界明瞭な赤あざです。色は明るいピンク色から紅色、紫色まであり、自然に消えることはありません。

無治療のまま年齢を重ねると、皮膚が肥厚して紫色でボコボコした状態になることもあるため、乳児期から治療を開始することが推奨されます。

治療には色素レーザー(Vビームなど)が有効で、保険適用となります。皮膚が薄い乳児期から治療を開始することで、より高い効果が期待できます。

サーモンパッチ

正中部母斑とも呼ばれ、顔の真ん中(額、眉間、上唇など)に出現する淡いピンク色のあざです。多くは1~2歳までに自然消退するため、通常は経過観察となります。

2-6. 脂腺母斑

頭部や顔面に生じる黄色調の母斑で、脂腺をはじめとする皮膚の付属器から構成されています。生まれつき存在し、初めは黄色からやや赤みを帯びた毛の生えない斑として現れますが、年齢とともにイボ状に隆起して褐色調に変化します。

脂腺母斑は将来的に皮膚がんを生じる可能性があるため、外科的切除が必要となります。頭部では切開する方向に注意が必要で、傷跡には毛が生えないため、整容面を考慮した手術計画が重要です。

2-7. 表皮母斑

原因不明の、生まれつきまたは幼少時から存在する膨らんだあざです。新生児1000人に1人の割合で発症し、体の成長に合わせて母斑も大きくなります。

限局型(疣状母斑)、広範型、炎症型の3タイプがあり、治療には切除手術、皮膚剥削術、レーザー治療などが用いられます。切除手術は保険適用となります。

2-8. 巨大色素性母斑

成人で直径20cm以上、乳幼児では頭部で直径9cm以上、体幹で直径6cm以上の色素性母斑を「巨大色素性母斑」と呼びます。有毛性母斑や獣皮様母斑とも呼ばれることがあります。

巨大色素性母斑で重要なのは、悪性黒色腫(メラノーマ)を生じるリスクが3%程度あるとされている点です。また、中枢神経系にも同様の細胞が存在する場合があり(神経皮膚黒色症)、MRI検査による確認が必要です。

治療法には、分割切除術、組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を用いた手術、植皮術、自家培養表皮移植術、キュレッテージ(掻爬術)、レーザー治療などがあります。2016年12月より、巨大色素性母斑切除後の皮膚欠損に対する自家培養表皮移植術が保険適用となっています。


3. 形成外科での診断方法

母斑の治療において最も重要なのは、まず正確な診断を行うことです。見た目が似ていても原因や性質が異なる病変が多数存在するため、形成外科専門医による適切な診断が必要です。

3-1. 視診・問診

診断の第一歩は、熟練した医師による肉眼での観察です。母斑の色調、形態、大きさ、分布パターンなどを詳しく観察し、いつから存在するのか、変化はあったかなどの問診と合わせて診断を進めます。

悪性黒色腫との鑑別においては、「ABCDEルール」と呼ばれる観察ポイントが参考になります。

  • A(Asymmetry):形が左右非対称
  • B(Border):境界がギザギザして不整、色のにじみ出しがある
  • C(Color):色調が均一でなく、色むらがある
  • D(Diameter):直径が6mm以上
  • E(Evolution):大きさの拡大、色や形の変化

これらの特徴が複数当てはまる場合は、悪性の可能性を考慮して精密検査が必要となります。

3-2. ダーモスコピー検査

ダーモスコピー検査は、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使用して皮膚の状態を詳しく観察する検査です。ライトを当てながら病変部を10~20倍程度に拡大して観察することで、肉眼では見えにくいメラニン色素のパターンや血管の状態を詳細に確認できます。

この検査は痛みを伴わない簡便な検査で、保険適用となります(3割負担で数百円程度)。良性のほくろと悪性黒色腫の鑑別、色素性母斑の種類の判断などに非常に有用で、手術を行わずにある程度まで悪性か良性かを判断することができます。

足底の母斑では、皮膚の紋理(指紋のような模様)に対する色素沈着のパターンが診断の重要なポイントとなります。色素が皮丘(丘の部分)に強い場合は悪性黒色腫の可能性が高く、皮溝(溝の部分)に強い場合はほとんどが良性の母斑細胞母斑です。

3-3. 皮膚生検・病理検査

ダーモスコピー検査などで悪性が疑われる場合や、診断が確定しない場合は、皮膚生検が行われます。これは病変の一部または全部を外科的に切除し、顕微鏡で組織を詳しく調べる検査です。

病理検査により、母斑細胞の種類や分布、悪性所見の有無などを正確に判断することができます。特に悪性黒色腫が疑われる場合は、腫瘍の厚さ(深達度)も同時に評価され、これが治療方針や予後の判断に重要な情報となります。

3-4. 画像検査

巨大色素性母斑では、中枢神経系にも母斑細胞が存在していないかを確認するためにMRI検査が行われることがあります。中枢神経系に同様の病変がある場合は「神経皮膚黒色症」と診断され、神経症状の出現について注意深い経過観察が必要となります。

また、悪性黒色腫と診断された場合は、転移の有無を調べるためにCT、MRI、PET-CTなどの画像検査が行われます。


4. 形成外科での治療方法

母斑の治療法は、その種類、大きさ、部位、患者さんの年齢などによって異なります。ここでは、形成外科で行われる主な治療法について解説します。

4-1. レーザー治療

レーザー治療は、1990年代以降、母斑治療の主役となった方法です。特定の波長のレーザー光を照射することで、正常な皮膚組織へのダメージを最小限に抑えながら、あざの原因となる色素や血管を選択的に破壊することができます。

Qスイッチルビーレーザー

メラニン色素に対して高い選択性を持つレーザーで、太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、外傷性刺青などの治療に使用されます。10億分の1秒(ナノ秒)単位の短い照射時間で高いピーク出力を発生させ、周囲の正常組織へのダメージを抑えながら色素を破壊します。

太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症については保険適用で5回まで、扁平母斑については2回まで保険適用で治療可能です。

ピコレーザー

Qスイッチレーザーよりもさらに短い照射時間(1兆分の1秒=ピコ秒単位)でレーザーを照射する最新の機器です。光熱作用ではなく光音響作用により色素を機械的に砕いて破壊するため、従来のレーザーよりも皮膚へのダメージが少なく、かさぶたができにくいという特徴があります。

保険適用機種として承認されているピコレーザーであれば、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症の治療に保険が適用されます(扁平母斑には保険適用なし)。

色素レーザー(Vビームなど)

血管の中のヘモグロビンに吸収される波長のレーザーで、単純性血管腫(毛細血管奇形)、乳児血管腫、毛細血管拡張症などの赤あざの治療に使用されます。血管を選択的に破壊することで、赤みを改善します。

単純性血管腫、乳児血管腫、毛細血管拡張症の治療には保険が適用されます。

炭酸ガス(CO2)レーザー

水分に吸収される波長のレーザーで、ほくろや表皮母斑などの隆起した病変を蒸散・削除するのに使用されます。

レーザー治療の流れ

  1. カウンセリング:医師と相談し、症状に合わせた治療法を決定
  2. レーザー照射:部位や範囲によって5~20分程度
  3. 術後ケア:かさぶたができるまで患部を保護
  4. 経過観察:3~6ヶ月の間隔で必要に応じて再照射

レーザー治療後は、輪ゴムではじかれたような痛みがありますが、麻酔テープやクリームを使用することで軽減できます。広範囲の場合は局所麻酔を行うこともあります。

4-2. 外科的切除(単純切除)

母斑を手術で切除して縫い合わせる方法です。レーザー治療が効きにくい色素性母斑や、悪性が疑われる病変、脂腺母斑などに対して行われます。

切除した組織は病理検査に提出できるため、悪性かどうかを確認することができます。傷跡は1本の線として残りますが、時間とともに目立たなくなります。

局所麻酔で行う日帰り手術が可能で、切除から縫合までの時間は大きさにもよりますが5~20分程度です。保険適用となります。

4-3. 分割切除

1回の手術で切除できないほど大きな母斑に対して、2~3回に分けて少しずつ切り取っていく方法です。周囲の皮膚が柔らかく、よく伸展する症例に適しています。

数ヶ月~半年ごとに手術を繰り返し、最終的に母斑全体を切除します。1回の切除で縫縮できる母斑の大きさには限界があり、体表面積の9%程度までとされています。

4-4. 植皮術

母斑を切除した後、体の別の部位(わき腹、太もも、おしりなど)から皮膚を採取して移植する方法です。分割切除では対応できない大きな母斑に対して行われます。

皮膚全体を移植する「全層植皮術」と、薄い皮膚を移植する「分層植皮術」があります。全層植皮術の方が見た目は良好ですが、採取できる皮膚の大きさに限界があります。また、皮膚を採取した部位にも傷が残るという欠点があります。

4-5. 組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を用いた手術

母斑の周囲の正常な皮膚の下にシリコン製の袋(エキスパンダー)を埋め込み、徐々に生理食塩水を注入して皮膚を伸展させる方法です。数ヶ月かけて十分に皮膚が伸びたら、エキスパンダーを取り出すと同時に母斑を切除し、伸びた正常な皮膚で傷を覆います。

植皮と比べて見た目が自然になるという利点がありますが、複数回の手術が必要となります。

4-6. 自家培養表皮移植術

患者さん自身の正常な皮膚の一部を採取し、専門の施設で約3週間かけて表皮シートを培養します。2回目の手術で母斑を削り取った後、この培養表皮シートを移植します。

2016年12月より、巨大色素性母斑切除後の皮膚欠損に対する自家培養表皮移植術が保険適用となりました。皮膚を採取する範囲が小さくて済むという大きなメリットがありますが、見た目は通常の植皮には劣ります。

4-7. キュレッテージ(掻爬術)

巨大色素性母斑に対して行われる方法で、全身麻酔下に特殊な器械を使って母斑の表層を削り取ります。新生児~1歳程度までの乳児に対して行われることが多く、植皮をせずに約2週間で自然に傷が治ります。

ただし、効果には個人差が大きく、色調が十分に軽減する症例がある一方、まったく効果がない症例や早期に再発する症例もあります。また、顔や手など露出部には不適とされています。

4-8. 薬物療法

乳児血管腫に対しては、プロプラノロール(β遮断薬)の内服治療が有効です。血管を収縮させ、新しい血管の形成を抑制することで血管腫を縮小させます。

2013年に日本で認可されて以来、乳児血管腫治療の第一選択薬として推奨されるようになりました。ただし、もともと高血圧治療薬であるため、血圧低下などの副作用に注意が必要で、通常は入院して安全性を確認してから治療を開始します。


5. 母斑と悪性腫瘍の鑑別ポイント

母斑の多くは良性ですが、まれに悪性腫瘍との鑑別が必要となる場合があります。特に注意が必要な悪性黒色腫(メラノーマ)について解説します。

5-1. 悪性黒色腫(メラノーマ)とは

悪性黒色腫は、皮膚の色素細胞(メラノサイト)が悪性化してできる皮膚がんです。日本人での発症率は10万人あたり1~2人とされ、希少がんとして扱われますが、転移を起こすと治療が困難になるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。

日本人の悪性黒色腫の約50%は手足に発生し、特に足の裏や手のひら、爪に生じることが多いのが特徴です(末端黒子型)。

5-2. 注意すべき症状

以下のような変化がある場合は、早めに形成外科や皮膚科を受診しましょう。

  • ほくろが急に大きくなった(特に直径6mm以上)
  • 形がいびつで左右非対称になった
  • 境界がギザギザして不明瞭になった
  • 色むらがある(複数の色が混在)
  • 出血したり、かさぶたができたりする
  • 爪に黒い線が入り、幅が広がってきた
  • 爪の周りの皮膚にもシミが広がってきた

特に皮膚科を受診すべきポイントは、思春期以後に気づいた黒~茶色のシミが数ヶ月以内に大きくなって6~7mmを超えてきたとき、または成人以後に1本の指の爪に黒い線が入り幅が広がってきたときです。

5-3. 良性のほくろとの違い

「ほくろのがんは危ない」という言葉を耳にすることがありますが、これは「ほくろと思っていたらがん(メラノーマ)だった」という意味であり、医学的にはほくろ自体ががん化することは非常にまれとされています。

良性のほくろは通常、円形や楕円形で均一な色調をしており、境界が明瞭です。急激な変化がなければ心配する必要はありませんが、少しでも気になる変化があれば専門医に相談することをお勧めします。


6. 治療のタイミングと年齢別の考え方

母斑の治療タイミングは、母斑の種類や部位、患者さんの年齢によって異なります。

6-1. 乳幼児期の治療

レーザー治療の場合

太田母斑や異所性蒙古斑のレーザー治療は、年齢が低いほど効果が高いとされています。これは以下の理由によります。

  • 乳幼児は皮膚が薄く、レーザーが深部まで到達しやすい
  • 乳児期は肌色の色素(メラニン)が未発達で白いため、副作用が生じにくい
  • 母斑の面積が小さいうちに治療できる

ただし、乳幼児のレーザー治療には痛みを伴うため、広範囲の場合は全身麻酔が必要となることもあります。

血管腫の場合

乳児血管腫は生後早期から治療を開始することで、増殖期のピークを抑え、将来の瘢痕を最小限にすることができます。特に生命や重要な機能に影響を及ぼす可能性がある部位の血管腫は、早期のプロプラノロール内服療法が推奨されます。

単純性血管腫も乳児期から治療を開始することで、皮膚が薄い分、高い効果が期待できます。

6-2. 学童期の治療

扁平母斑のレーザー治療は、幼少期に行うと再発率が低いとされています。ただし、思春期に発生する遅発性扁平母斑もあり、個々の症状に応じた判断が必要です。

色素性母斑の外科的切除は、通常、思春期頃を目安に行われることが多いですが、悪性が疑われる場合や整容面での問題がある場合は、より早期に治療が行われることもあります。

6-3. 思春期以降の治療

太田母斑や異所性蒙古斑は、小さい頃にレーザー治療を受けてきれいになっていても、思春期になって再び色が出てくることがあります。このような場合は追加のレーザー治療が必要となります。

成人になってからでもレーザー治療は可能ですが、治療後にガーゼを1~2週間貼る必要があり、一時的にあざが濃くなる時期もあるため、社会生活への影響を考慮した治療計画が必要です。

6-4. 巨大色素性母斑の治療時期

巨大色素性母斑は悪性黒色腫発症のリスクがあるため、早期に母斑を切除することが望ましいとされています。ただし、過剰な切除・縫縮は長期的に骨格の成長に影響を及ぼす可能性もあり、幼少期に無理に皮膚を切除しすぎることは避けた方がよいとも考えられています。

治療法の選択は、母斑の大きさ、部位、患者さんの年齢、悪性化リスク、整容面などを総合的に考慮して決定されます。


7. 保険適用について

母斑の治療は、種類や治療法によって保険適用の可否が異なります。

7-1. レーザー治療の保険適用

以下の母斑に対するレーザー治療は保険適用となります。

Qスイッチルビーレーザー・ピコレーザー

  • 太田母斑:5回まで
  • 異所性蒙古斑:5回まで
  • 外傷性色素沈着症(外傷性刺青):5回まで
  • 扁平母斑:2回まで(Qスイッチルビーレーザーのみ)

色素レーザー

  • 単純性血管腫
  • 乳児血管腫(苺状血管腫)
  • 毛細血管拡張症

7-2. 手術の保険適用

以下の母斑に対する手術は保険適用となります。

  • 色素性母斑の切除
  • 脂腺母斑の切除
  • 表皮母斑の切除
  • 巨大色素性母斑の切除と皮膚欠損に対する自家培養表皮移植術

7-3. 自己負担額の目安

保険適用での治療費の目安は、3割負担の場合で以下の通りです。

  • レーザー治療(1回):7,000~13,000円程度(面積による)
  • ダーモスコピー検査:数百円程度

お子さんの場合は、自治体によって乳幼児医療費助成制度が利用でき、自己負担が軽減されることがあります。詳しくはお住まいの自治体や医療機関にご確認ください。

7-4. 自費診療となるケース

以下の場合は自費診療となります。

  • 保険適用の回数制限を超えた追加治療
  • 老人性色素斑(しみ)やそばかすのレーザー治療
  • 美容目的でのほくろ除去

8. 大宮で形成外科を受診する際のポイント

母斑の治療を検討されている方に、形成外科を受診する際のポイントをお伝えします。

8-1. 形成外科専門医への相談

母斑の診断と治療には専門的な知識と技術が必要です。日本形成外科学会認定専門医は、医師全体の約0.6%しか取得していない高度な専門資格であり、確かな診断と治療を提供することができます。

アイシークリニック大宮院では、形成外科専門医が丁寧なカウンセリングと適切な治療を行っています。

8-2. 初診時に準備すること

初診時には、以下の情報を医師に伝えられるようにしておくと診察がスムーズです。

  • 母斑に気づいた時期(生まれつきか、後から出現したか)
  • これまでの変化の有無(大きくなった、色が変わったなど)
  • 気になる症状(かゆみ、痛み、出血など)
  • これまでに受けた治療がある場合はその内容

8-3. 治療前の注意点

レーザー治療を予定している場合は、以下の点に注意しましょう。

  • 日焼けは避ける:日焼けした肌はレーザーの効果が低下し、副作用のリスクも高まります
  • 化粧・日焼け止めは落とす:レーザー照射部位の化粧や日焼け止めはしっかり落として受診してください
  • 体調管理:特にお子さんの場合は、体調の良い日に治療を受けましょう

8-4. 治療後のケア

治療後は医師の指示に従ってケアを行うことが重要です。

  • 患部を強くこすらない
  • 直射日光を避け、日焼け止めを使用する
  • 処方された軟膏やテープを正しく使用する
  • 異常を感じたら早めに受診する

9. よくある質問

Q1. 母斑は放置しても大丈夫ですか?

多くの母斑は良性であり、必ずしも治療が必要というわけではありません。ただし、巨大色素性母斑など一部の母斑は悪性化のリスクがあるため、定期的な経過観察が必要です。また、急激な変化がある場合は早めに受診してください。

Q2. レーザー治療は何回くらい必要ですか?

母斑の種類や大きさ、色の濃さによって異なります。太田母斑は通常3~5回程度、異所性蒙古斑は3~5回程度の治療が必要です。扁平母斑は1~2回で効果が出ることもありますが、再発しやすい傾向があります。

Q3. レーザー治療は痛いですか?

輪ゴムではじかれたような痛みがあります。麻酔テープやクリームを使用することで痛みを軽減できます。広範囲の場合や小さなお子さんの場合は局所麻酔を行うこともあります。

Q4. 子どもの母斑はいつから治療できますか?

レーザー治療は0歳から可能です。太田母斑や異所性蒙古斑は早期治療の方が効果が高いとされています。血管腫も生後早期からの治療が推奨されます。

Q5. 治療費はどのくらいかかりますか?

保険適用の治療であれば、3割負担で1回7,000~13,000円程度が目安です。お子さんの場合は自治体の医療費助成制度が利用できることがあります。

Q6. 治療後、日常生活に制限はありますか?

レーザー治療後は当日からシャワー浴が可能です。ただし、患部を強くこすることや過度な運動は避けてください。かさぶたが自然に剥がれるまで(1~2週間程度)は患部を保護し、その後も日焼けには注意が必要です。


10. まとめ

母斑(あざ)は、色素性母斑、太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、血管腫などさまざまな種類があり、それぞれ原因や特徴、最適な治療法が異なります。

形成外科では、視診やダーモスコピー検査による正確な診断のもと、レーザー治療や外科的切除など、患者さん一人ひとりの症状に合わせた最適な治療を提供しています。多くの母斑治療は保険適用となり、特にお子さんは医療費助成制度を利用できる場合があります。

大宮エリアでお子さんの生まれつきのあざや、成長とともに気になってきた色素斑でお悩みの方は、まずは形成外科専門医にご相談ください。早期の適切な治療により、整容面での改善だけでなく、将来的な悪性化リスクの軽減にもつながります。

アイシークリニック大宮院では、経験豊富な形成外科専門医が丁寧なカウンセリングと最新の治療を提供しています。母斑について気になることがあれば、お気軽にご来院ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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