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背中が痛い原因と対処法│症状から考えられる病気と受診のタイミング

はじめに

「背中が痛い」という症状は、多くの方が日常生活で経験する身近な不調の一つです。デスクワークによる筋肉の疲労から、内臓疾患のサインまで、その原因は実に多岐にわたります。

背中の痛みは、単なる筋肉痛と軽視されがちですが、時には重大な病気のサインとなることもあります。適切な対処をするためには、痛みの特徴や伴う症状を正しく理解し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。

本記事では、背中の痛みについて、その原因となる病気、症状の見分け方、受診のタイミング、そして日常生活でできる予防法まで、包括的に解説していきます。

背中の構造と機能

背中の痛みを理解するために、まず背中の構造について知っておきましょう。

背骨(脊椎)の構造

背骨は、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎(5個が癒合)、尾椎(3〜5個が癒合)で構成されています。背中の痛みに関係するのは、主に胸椎と腰椎の部分です。

各椎骨の間には椎間板というクッションがあり、脊椎を保護しています。また、脊柱管という管の中には脊髄が通っており、全身に神経を送り出しています。

背中を支える筋肉

背中には、姿勢を保持したり、体を動かしたりするための様々な筋肉があります。主な筋肉には以下があります:

  • 脊柱起立筋群:背骨に沿って縦に走る筋肉で、姿勢の維持に重要
  • 僧帽筋:首から肩、背中の上部を覆う大きな筋肉
  • 広背筋:背中の下部から脇の下にかけて広がる筋肉
  • 菱形筋:肩甲骨と背骨をつなぐ筋肉

これらの筋肉は互いに協調して働き、日常生活の様々な動作を可能にしています。

背中と関連する臓器

背中は体の背面にあり、胸部や腹部の臓器とも近接しています。そのため、内臓の病気が背中の痛みとして感じられることがあります。背中の痛みに関連する主な臓器には、心臓、肺、腎臓、膵臓、胆嚢などがあります。

背中が痛む主な原因

背中の痛みの原因は、大きく分けて以下のカテゴリーに分類できます。

1. 筋肉・骨格系の問題

筋肉痛・筋膜性疼痛

最も一般的な背中の痛みの原因です。長時間の不良姿勢、運動不足、急な運動、重い物を持ち上げるなどによって、背中の筋肉に負担がかかり、痛みが生じます。

主な症状:

  • 動作時や特定の姿勢で痛みが増す
  • 圧痛点(押すと痛む場所)がある
  • 筋肉のこわばりや緊張感
  • 数日から数週間で改善することが多い

椎間板ヘルニア

椎間板の中にある髄核が外に飛び出し、神経を圧迫する状態です。腰椎ヘルニアが有名ですが、胸椎でも起こることがあります。

主な症状:

  • 背中の局所的な痛み
  • 神経が圧迫されると、手足のしびれや痛み
  • 咳やくしゃみで痛みが増す
  • 前かがみの姿勢で痛みが増すことが多い

厚生労働省の統計によると、腰痛を主訴として医療機関を受診する人は年間約2,800万人にのぼるとされており、その中には椎間板ヘルニアの患者も多く含まれています。

脊柱管狭窄症

加齢により脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態です。主に腰部で起こりますが、胸部でも発生することがあります。

主な症状:

  • 長時間立っていたり歩いたりすると痛みやしびれが出る
  • 前かがみになると楽になる
  • 間欠性跛行(しばらく歩くと足が痛くなり、休むと治る)
  • 50歳以上に多い

骨粗鬆症による圧迫骨折

骨がもろくなることで、わずかな衝撃でも背骨が潰れてしまう状態です。特に閉経後の女性に多く見られます。

主な症状:

  • 急激な背中の痛み
  • 身長が縮む
  • 背中が丸くなる(円背)
  • 寝返りや起き上がる時に痛みが強い

日本整形外科学会によると、日本における骨粗鬆症患者は約1,300万人と推定されており、その予防と早期発見が重要とされています。

脊椎炎・脊椎感染症

細菌やウイルスが脊椎に感染し、炎症を起こす状態です。比較的まれですが、重篤化する可能性があります。

主な症状:

  • 持続的で激しい背中の痛み
  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 安静にしていても痛みが改善しない

強直性脊椎炎

自己免疫疾患の一つで、脊椎や仙腸関節に慢性的な炎症が起こります。若い男性に多く見られます。

主な症状:

  • 朝のこわばりが強い
  • 運動すると楽になる
  • 徐々に脊椎の可動域が制限される
  • 40歳以前に発症することが多い

側弯症

脊椎が左右に曲がってしまう状態です。思春期に発症することが多く、進行すると背中の痛みや呼吸困難を引き起こすことがあります。

2. 内臓疾患による関連痛

内臓の病気が背中の痛みとして感じられることがあります。これを「関連痛」と呼びます。

心疾患(狭心症・心筋梗塞)

心臓の病気が背中の痛みとして現れることがあります。特に心筋梗塞は生命に関わる緊急事態です。

主な症状:

  • 胸の圧迫感や締め付けられるような痛み
  • 左肩や背中、顎への放散痛
  • 冷や汗、吐き気
  • 息切れ、動悸
  • 症状は15分以上持続し、安静にしても改善しない

これらの症状がある場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。日本循環器学会では、心筋梗塞の症状について広く啓発活動を行っています。

大動脈解離

大動脈の壁が裂ける非常に危険な状態です。突然の激しい背中の痛みが特徴です。

主な症状:

  • 突然の引き裂かれるような激しい胸背部痛
  • 痛みが背中から腰へ移動する
  • 血圧の異常(左右差がある)
  • 意識障害やショック状態

命に関わる緊急事態のため、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。

肺疾患(肺炎・胸膜炎・気胸)

肺の病気も背中の痛みを引き起こすことがあります。

主な症状:

  • 深呼吸や咳で痛みが増す
  • 発熱、咳、痰
  • 息切れ、呼吸困難
  • 片側の背中の痛み(気胸の場合)

腎臓・尿路系疾患(腎盂腎炎・腎結石・尿管結石)

腎臓や尿路の問題が背中や腰の痛みとして現れることがあります。

主な症状:

  • 腰の片側(または両側)の痛み
  • 発熱、悪寒(腎盂腎炎の場合)
  • 激しい疝痛発作(結石の場合)
  • 血尿
  • 排尿時痛、頻尿

腎結石や尿管結石による痛みは非常に激しく、「七転八倒の痛み」と表現されることもあります。

膵炎

膵臓に炎症が起こる状態で、上腹部から背中にかけての痛みが特徴です。

主な症状:

  • 上腹部から背中にかけての持続的な激しい痛み
  • 前かがみになると少し楽になる
  • 吐き気、嘔吐
  • 発熱
  • アルコール摂取や脂肪の多い食事の後に発症することが多い

急性膵炎は重症化すると命に関わることもあるため、早急な治療が必要です。

胆嚢炎・胆石症

胆嚢や胆管に炎症や結石ができると、右上腹部から背中にかけての痛みが生じます。

主な症状:

  • 右上腹部から右肩甲骨下部への痛み
  • 脂肪の多い食事の後に痛みが出やすい
  • 発熱、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 吐き気、嘔吐

消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)

胃や十二指腸の粘膜に潰瘍ができると、背中の痛みとして感じられることがあります。

主な症状:

  • みぞおちから背中にかけての痛み
  • 空腹時に痛みが出る(十二指腸潰瘍)
  • 食後に痛みが出る(胃潰瘍)
  • 吐き気、胸やけ
  • 黒色便(出血がある場合)

3. その他の原因

帯状疱疹

水痘・帯状疱疹ウイルスが神経に沿って再活性化し、痛みと発疹が出る病気です。

主な症状:

  • 体の片側に沿った痛み
  • 数日後に赤い発疹と水疱が出現
  • ピリピリ、チクチクとした痛み
  • 発疹が出る前から痛みが始まることが多い

50歳以上の方に多く、早期治療が重要です。日本皮膚科学会では、帯状疱疹の早期発見と治療の重要性について情報提供しています。

ストレス・心因性の痛み

精神的なストレスが身体症状として現れることがあり、背中の痛みもその一つです。

主な症状:

  • 検査をしても異常が見つからない
  • ストレスの強い時期に痛みが増す
  • 不安、うつ症状を伴うことがある
  • 痛みの場所や性質が変化する

線維筋痛症

全身の広範囲に慢性的な痛みが生じる病気です。原因はまだ完全には解明されていません。

主な症状:

  • 全身の広範囲にわたる痛み
  • 疲労感、睡眠障害
  • 朝のこわばり
  • 触られるだけで痛い(異痛症)

危険なサインと緊急受診が必要な症状

背中の痛みの中には、すぐに医療機関を受診すべき危険なサインがあります。以下のような症状がある場合は、迷わず救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。

すぐに救急車を呼ぶべき症状

  1. 突然の激しい痛み:突然、引き裂かれるような激痛が走る(大動脈解離の可能性)
  2. 胸痛を伴う:胸の圧迫感や締め付け感、左肩や顎への放散痛(心筋梗塞の可能性)
  3. 呼吸困難:息が苦しい、呼吸ができない
  4. 意識障害:意識がもうろうとする、反応が鈍い
  5. 手足の麻痺やしびれ:急に手足が動かせなくなる、感覚がなくなる
  6. 排尿・排便障害:尿が出ない、便が出ない、失禁する(馬尾症候群の可能性)

できるだけ早く受診すべき症状

以下の症状がある場合は、当日または翌日には医療機関を受診してください:

  1. 発熱を伴う背中の痛み:感染症の可能性
  2. 安静にしていても痛みが改善しない:内臓疾患の可能性
  3. 夜間に痛みで目が覚める:悪性腫瘍の可能性
  4. 体重減少を伴う:悪性腫瘍や慢性疾患の可能性
  5. 血尿や排尿異常:腎臓や尿路の病気の可能性
  6. 痛みが徐々に悪化している:進行性の病気の可能性
  7. 外傷後の痛み:骨折や臓器損傷の可能性

数日様子を見てもよい症状

以下のような場合は、数日間セルフケアを行い、改善しない場合に受診を検討してください:

  1. 運動や作業の後に生じた軽度の筋肉痛
  2. 特定の姿勢や動作で痛むが、安静にすると楽になる
  3. 市販の鎮痛薬で痛みが和らぐ
  4. 数日で痛みが軽減している

ただし、症状が悪化したり、新たな症状が出現したりした場合は、すぐに受診してください。

診断方法

背中の痛みの原因を特定するために、医療機関では以下のような検査が行われます。

問診と身体診察

医師は、まず詳しく症状について質問します:

  • いつから痛みが始まったか
  • どのような痛みか(鈍い、鋭い、刺すようなど)
  • どこが痛むか
  • どのような時に痛みが増すか、楽になるか
  • 他の症状はあるか
  • 過去の病歴や家族歴
  • 生活習慣(仕事、運動、喫煙、飲酒など)

その後、身体診察として以下を行います:

  • 視診:姿勢、背骨の形状の観察
  • 触診:痛みの部位、筋肉の緊張、圧痛点の確認
  • 神経学的検査:感覚、筋力、反射の確認
  • 関節可動域の確認

画像検査

必要に応じて、以下の画像検査が行われます:

X線検査(レントゲン)

骨の状態を確認するための基本的な検査です。骨折、骨の変形、椎間板の狭小化などが分かります。

CT検査(コンピュータ断層撮影)

X線を使って体の断面画像を撮影します。骨の詳細な構造や、内臓の異常を確認できます。

MRI検査(磁気共鳴画像)

磁気と電波を使って体の内部を画像化します。椎間板、神経、筋肉、内臓などの軟部組織の詳細な観察が可能です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の診断に特に有用です。

超音波検査(エコー)

音波を使って体内を観察します。腎臓や胆嚢などの臓器の状態を確認できます。

血液検査

感染症、炎症反応、内臓の機能、腫瘍マーカーなどを調べます。

その他の検査

  • 心電図・心エコー:心疾患が疑われる場合
  • 骨密度検査:骨粗鬆症が疑われる場合
  • 尿検査:腎臓や尿路の病気が疑われる場合
  • 神経伝導検査・筋電図:神経や筋肉の異常が疑われる場合

治療方法

背中の痛みの治療は、原因によって大きく異なります。

筋肉・骨格系の問題に対する治療

保存的治療

多くの筋骨格系の痛みは、以下の保存的治療で改善します:

1. 安静と活動の調整

  • 痛みが強い時期は無理をせず、適度に休息を取る
  • ただし、長期間の完全安静は逆効果になることもあるため、可能な範囲で日常活動を続ける

2. 薬物療法

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みと炎症を抑える
  • 筋弛緩薬:筋肉の緊張をほぐす
  • 神経障害性疼痛治療薬:神経の痛みに効果的
  • 外用薬:湿布や塗り薬

3. 物理療法

  • 温熱療法:血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる
  • 冷却療法:急性期の炎症を抑える
  • 電気治療:痛みを和らげる
  • 牽引療法:脊椎にかかる負担を軽減する

4. 運動療法

  • ストレッチング:筋肉の柔軟性を高める
  • 筋力強化:体幹の筋肉を強化し、脊椎を支える
  • 有酸素運動:全身の血流を改善する

5. 理学療法・リハビリテーション 理学療法士の指導のもと、適切な運動やストレッチを行います。

6. 装具療法 コルセットなどで脊椎を支えます。

侵襲的治療

保存的治療で改善しない場合、以下の治療を検討します:

1. 注射療法

  • 神経ブロック注射:痛みを伝える神経に局所麻酔薬を注射
  • トリガーポイント注射:筋肉の圧痛点に注射
  • 硬膜外注射:脊椎の硬膜外腔にステロイドなどを注射

2. 手術療法 以下のような場合に検討されます:

  • 保存的治療で改善しない重度の痛み
  • 神経症状(麻痺、しびれ)が進行している
  • 排尿・排便障害がある
  • 日常生活に著しい支障がある

主な手術には以下があります:

  • 椎間板ヘルニア摘出術
  • 脊柱管拡大術
  • 脊椎固定術

内臓疾患に対する治療

内臓が原因の背中の痛みは、原因となる疾患の治療を行います:

  • 心疾患:薬物療法、カテーテル治療、バイパス手術など
  • 大動脈解離:緊急手術
  • 肺炎:抗生物質治療
  • 腎盂腎炎:抗生物質治療
  • 尿路結石:保存的治療、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、内視鏡手術など
  • 膵炎:絶食、輸液、薬物療法
  • 胆石症:薬物療法、内視鏡治療、手術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)など
  • 消化性潰瘍:胃酸分泌抑制薬、除菌治療(ピロリ菌陽性の場合)

その他の原因に対する治療

  • 帯状疱疹:抗ウイルス薬、鎮痛薬(早期治療が重要)
  • 心因性疼痛:認知行動療法、抗うつ薬、抗不安薬
  • 線維筋痛症:薬物療法、運動療法、認知行動療法

日常生活でできる予防とセルフケア

背中の痛みを予防し、痛みがある場合のセルフケア方法をご紹介します。

正しい姿勢を意識する

座る時の姿勢

  • 椅子に深く腰掛け、背もたれに背中をつける
  • 足裏全体が床につくようにする(必要に応じて足置きを使用)
  • 膝と股関節が90度になる高さに調整
  • パソコン画面は目線の高さに
  • 長時間同じ姿勢を続けない(1時間に1回は立ち上がって体を動かす)

立つ時の姿勢

  • 両足に均等に体重をかける
  • 膝を軽く曲げる
  • お腹に軽く力を入れ、骨盤を立てる
  • 肩の力を抜き、あごを引く

寝る時の姿勢

  • 仰向けの場合:膝の下に枕やクッションを入れると腰が楽
  • 横向きの場合:膝の間に枕を挟むと良い
  • 寝返りが打ちやすい硬さのマットレスを選ぶ
  • 枕の高さは、横向きで寝た時に頭と首、背骨が一直線になる高さが理想

適度な運動を行う

ストレッチング

筋肉の柔軟性を保つことは、背中の痛み予防に重要です。

猫のポーズ(キャット&カウ)

  1. 四つん這いになる
  2. 息を吐きながら背中を丸める(猫のポーズ)
  3. 息を吸いながら背中を反らす(牛のポーズ)
  4. ゆっくり5〜10回繰り返す

チャイルドポーズ

  1. 正座の姿勢から、上体を前に倒し、両手を前に伸ばす
  2. 額を床につけ、深呼吸しながら30秒〜1分キープ
  3. 背中と腰の筋肉が伸びるのを感じる

背中のひねりストレッチ

  1. 仰向けに寝て、両膝を立てる
  2. 両膝を揃えたまま、ゆっくり左右に倒す
  3. 肩は床につけたまま、顔は膝と反対方向を向く
  4. 左右各30秒キープ

筋力トレーニング

体幹の筋肉を強化することで、背骨を支える力が高まります。

プランク

  1. うつ伏せになり、肘とつま先で体を支える
  2. 体を一直線に保つ
  3. 20〜30秒キープ(慣れてきたら時間を延ばす)
  4. 2〜3セット行う

ブリッジ

  1. 仰向けに寝て、両膝を立てる
  2. お尻を持ち上げ、肩から膝まで一直線にする
  3. 10秒キープして下ろす
  4. 10回繰り返す

バードドッグ

  1. 四つん這いになる
  2. 右手と左足を同時にまっすぐ伸ばす
  3. 5秒キープして元に戻す
  4. 反対側も同様に行う
  5. 左右各10回

有酸素運動

ウォーキング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、全身の血流を改善し、筋肉の状態を良好に保ちます。週に3〜5回、1回30分程度を目安に行いましょう。

重い物の持ち上げ方に注意

  • 膝を曲げてしゃがみ、物に近づく
  • 物を体に引き寄せる
  • 足の力を使って立ち上がる(腰の力だけで持ち上げない)
  • 体をひねりながら持ち上げない
  • 重すぎる物は一人で運ばず、誰かに手伝ってもらう

体重管理

適正体重を維持することは、背骨にかかる負担を減らします。バランスの良い食事と適度な運動で、健康的な体重を保ちましょう。

ストレス管理

精神的なストレスは筋肉の緊張を招き、背中の痛みの原因となります。

  • 十分な睡眠を取る(7〜8時間)
  • リラクゼーション法を実践する(深呼吸、瞑想、ヨガなど)
  • 趣味や楽しみの時間を持つ
  • 必要に応じて専門家(カウンセラーなど)に相談する

禁煙

喫煙は血流を悪化させ、椎間板の栄養状態を低下させます。また、骨密度の低下にもつながります。禁煙は背中の健康のためにも重要です。

骨粗鬆症の予防

特に女性は、閉経後に骨粗鬆症のリスクが高まります。

  • カルシウムとビタミンDを十分に摂取する
  • 適度な運動(特に荷重運動)を行う
  • 定期的に骨密度検査を受ける(特に50歳以上)
  • 必要に応じて薬物療法を受ける

厚生労働省の健康情報サイトでは、骨粗鬆症予防を含む様々な健康情報が提供されています。

温熱療法と冷却療法

温める(温熱療法):慢性的な痛みに効果的

  • 入浴(ぬるめのお湯にゆっくり浸かる)
  • 温湿布、カイロ
  • 温めたタオル

冷やす(冷却療法):急性期の痛みや炎症に効果的

  • 冷湿布
  • アイスパック(タオルで包んで使用)
  • 15〜20分程度、1日数回

寝具の選び方

  • マットレス:適度な硬さで、体圧を分散できるもの
  • 枕:首と頭をしっかり支え、高すぎず低すぎないもの
  • 定期的に寝具を見直す(マットレスは8〜10年、枕は1〜2年が目安)

職場環境の改善

  • デスクと椅子の高さを調整する
  • パソコンモニターの位置を適切にする
  • 定期的に休憩を取り、ストレッチを行う
  • 人間工学に基づいた器具(椅子、マウス、キーボードなど)を使用する

よくある質問(Q&A)

Q1. 背中の痛みで病院に行くべきか判断できません。目安はありますか?

A. 以下のような場合は医療機関の受診をお勧めします:

激しい痛みや、突然の痛み
発熱、体重減少、夜間痛などを伴う
手足のしびれや麻痺がある
排尿・排便に異常がある
2週間以上痛みが続いている
市販薬や安静で改善しない

特に、胸痛、息切れ、意識障害を伴う場合は、すぐに救急車を呼んでください。

Q2. 背中の痛みには何科を受診すればよいですか?

A. 痛みの原因によって適切な診療科が異なります:

整形外科:筋肉や骨、関節の問題が疑われる場合
内科:内臓疾患が疑われる場合、または原因がはっきりしない場合
循環器内科:胸痛を伴う場合
泌尿器科:背中から腰の片側の痛みで、排尿異常を伴う場合
皮膚科:帯状疱疹が疑われる場合(痛みと発疹)

迷った場合は、まず内科や総合診療科を受診し、必要に応じて専門科に紹介してもらうのも良い方法です。

Q3. 背中の痛みに効く市販薬はありますか?

A. 筋肉痛や軽度の痛みには、以下のような市販薬が効果的です:

  • 内服薬:ロキソプロフェン、イブプロフェンなどのNSAIDs
  • 外用薬:湿布、塗り薬(インドメタシン、ジクロフェナクなど)

ただし、これらは一時的な対症療法です。長期間使用しても改善しない場合や、胃腸障害などの副作用が出た場合は、医療機関を受診してください。

また、内臓疾患が原因の痛みには効果がありません。症状に不安がある場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。

Q4. 背中の痛みで仕事を休むべきでしょうか?

A. 以下のような場合は、無理せず休養を取ることをお勧めします:

  • 激しい痛みで日常動作が困難
  • 発熱や強い倦怠感を伴う
  • 医師から安静が必要と指示された

一方、軽度の痛みであれば、完全に安静にするよりも、可能な範囲で普段の活動を続けた方が回復が早いこともあります。

痛みの程度と仕事の内容によって判断し、必要に応じて医師に相談してください。

Q5. 背中の痛みは冷やすべき?温めるべき?

A. 急性期(痛みが出始めて2〜3日)と慢性期で対応が異なります:

急性期(炎症がある場合):

  • 冷やす(アイシング)
  • 15〜20分程度、1日数回
  • 腫れや熱感がある場合に効果的

慢性期(炎症が落ち着いた後):

  • 温める
  • 入浴、温湿布、カイロなど
  • 血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる

ただし、個人差があるため、気持ちよく感じる方を選んでください。内臓疾患が原因の場合は、温めても冷やしても効果はありません。

Q6. ストレッチや運動はいつから始めてよいですか?

A. 痛みの状態によって異なります:

激しい痛みがある時期:

  • 無理に動かさず、安静を保つ
  • ただし、完全に動かないのも良くないため、痛みの出ない範囲で日常動作は続ける

痛みが軽減してきたら:

  • 軽いストレッチから始める
  • 痛みが出ない範囲で行う
  • 徐々に運動量を増やす

慢性的な痛みの場合は、適度な運動が推奨されます。ただし、医師や理学療法士の指導のもとで行うのが理想的です。

Q7. 背中の痛みは再発しやすいですか?予防法はありますか?

A. 筋骨格系の痛みは再発することがあります。予防には以下が効果的です:

  1. 正しい姿勢の維持:日常生活で意識する
  2. 定期的な運動:筋力とバランスを保つ
  3. 適正体重の維持:背骨への負担を減らす
  4. ストレス管理:筋肉の緊張を防ぐ
  5. 十分な休息:疲労を溜めない

一度痛みが改善しても、これらの予防策を継続することが大切です。

Q8. 高齢の親の背中が丸くなってきました。病気でしょうか?

A. 加齢に伴う変化の可能性がありますが、以下の病気が隠れていることもあります:

  • 骨粗鬆症による圧迫骨折:痛みを伴うことが多い
  • 変形性脊椎症:徐々に進行
  • 筋力低下:姿勢を保持する筋力の低下

急に背中が丸くなった場合や、痛みを伴う場合は、医療機関(整形外科)の受診をお勧めします。骨粗鬆症の検査や適切な治療を受けることで、進行を防ぐことができます。

Q9. 妊娠中の背中の痛みは大丈夫ですか?

A. 妊娠中の背中の痛みは比較的よくある症状です:

原因:

  • ホルモンの影響で靭帯が緩む
  • お腹が大きくなることで姿勢が変化
  • 体重増加による負担

対処法:

  • 適度な運動(マタニティヨガ、ウォーキングなど)
  • 正しい姿勢を意識する
  • マタニティベルトの使用
  • 十分な休息

ただし、以下の場合はすぐに医師に相談してください:

  • 激しい痛み
  • 出血や破水を伴う
  • お腹の張りが強い
  • 赤ちゃんの動きが少ない

Q10. 子供が背中の痛みを訴えます。大丈夫でしょうか?

A. 子供の背中の痛みは、大人とは異なる原因が考えられます:

考えられる原因:

  • 運動による筋肉痛
  • 姿勢の問題(重いランドセル、長時間のゲームなど)
  • 成長痛
  • 側弯症
  • まれに:感染症、腫瘍

受診の目安:

  • 痛みが2週間以上続く
  • 発熱や体重減少を伴う
  • 夜間痛がある
  • 姿勢の異常が見られる(背骨が曲がっているなど)
  • 日常生活に支障がある

子供は痛みの表現が苦手なこともあるため、様子をよく観察し、心配な場合は小児科や整形外科を受診してください。

まとめ

背中の痛みは、単純な筋肉痛から重大な内臓疾患まで、様々な原因で起こります。多くの場合は適切なセルフケアと生活習慣の改善で改善しますが、危険なサインを見逃さないことが重要です。

背中の痛みで特に注意すべきポイント:

  1. 突然の激しい痛み、胸痛、呼吸困難などがあれば、すぐに救急車を
  2. 発熱、体重減少、夜間痛などを伴う場合は、早めに医療機関を受診
  3. 予防には、正しい姿勢、適度な運動、ストレス管理が効果的
  4. 2週間以上続く痛みや、日常生活に支障がある場合は専門医に相談

痛みは体からの大切なサインです。自己判断で我慢せず、必要に応じて医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

参考文献

  1. 日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン」 https://www.joa.or.jp/
  2. 日本循環器学会「循環器病ガイドライン」 https://www.j-circ.or.jp/
  3. 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 帯状疱疹」 https://www.dermatol.or.jp/
  4. 厚生労働省「健康情報サイト」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/index.html
  5. 日本ペインクリニック学会「痛みの治療」 https://www.jspc.gr.jp/

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療の代わりとなるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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