はじめに
股間部分にしこりやできものを見つけて、不安を感じている方は少なくありません。デリケートな部位であるため、人に相談しにくく、一人で悩んでいる方も多いでしょう。股間にできるしこりの原因はいくつか考えられますが、その中でも比較的多く見られるのが「粉瘤(ふんりゅう)」です。
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってしこりを形成する良性腫瘍です。医学用語では「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」とも呼ばれます。身体のどの部位にもできる可能性がありますが、股間や陰部周辺は特に発生しやすい部位の一つとされています。
この記事では、股間にできる粉瘤について、その原因や症状、診断方法、治療法まで、患者さんが知っておくべき情報を詳しく解説します。デリケートな部位の症状だからこそ、正しい知識を持ち、適切な対応をすることが大切です。
股間の粉瘤とは
粉瘤の基本的な特徴
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造(嚢腫)ができ、その中に本来剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が溜まっていく良性の腫瘍です。袋の内側は皮膚と同じ構造になっており、新陳代謝によって絶えず角質が産生されるため、時間とともに袋の中身が増えていき、徐々に大きくなっていく特徴があります。
粉瘤の大きさは数ミリから数センチまで様々で、中には10センチを超える大きさになることもあります。通常は痛みを伴いませんが、細菌感染を起こすと炎症性粉瘤(化膿性粉瘤)となり、赤く腫れ上がり、強い痛みを伴うようになります。
なぜ股間にできやすいのか
股間や陰部周辺は、粉瘤ができやすい部位として知られています。その理由として、以下のような要因が挙げられます。
まず、この部位には毛穴や皮脂腺が多く存在します。粉瘤は毛穴の出口が何らかの原因で詰まり、皮膚の下に袋状の構造ができることで発生するため、毛穴の多い部位ほど発生リスクが高くなります。
また、股間は常に下着に覆われており、蒸れやすく湿度が高い環境です。さらに、歩行時や座位時には摩擦や圧迫を受けやすい部位でもあります。こうした物理的刺激が継続的に加わることで、毛穴が詰まりやすくなり、粉瘤の発生につながると考えられています。
加えて、この部位は汗腺も発達しており、皮脂や汗の分泌が活発です。これらの分泌物が毛穴に溜まりやすい環境であることも、粉瘤の発生要因の一つとなります。
股間の粉瘤の特徴
股間にできる粉瘤には、他の部位とは異なるいくつかの特徴があります。
第一に、感染を起こしやすいという特徴があります。股間は清潔に保つことが難しい部位であり、排泄物や汗、皮脂などが付着しやすい環境です。このため、細菌が繁殖しやすく、粉瘤に感染を起こして炎症性粉瘤となるケースが少なくありません。
第二に、気づきにくいという特徴があります。股間は直接目で見ることが難しい部位であるため、粉瘤ができていても気づかないまま大きくなってしまうことがあります。触れて初めて気づくケースや、痛みや違和感が出てから発見されるケースも多く見られます。
第三に、日常生活への影響が大きいという特徴があります。股間の粉瘤は、歩行時や座位時に圧迫されたり、下着との摩擦で刺激を受けたりするため、違和感や痛みを感じやすい傾向があります。特に炎症を起こした場合は、日常動作に支障をきたすこともあります。
股間の粉瘤の原因
粉瘤ができるメカニズム
粉瘤の発生メカニズムは、現在も完全には解明されていませんが、一般的には以下のようなプロセスで形成されると考えられています。
正常な皮膚では、表皮の細胞が新陳代謝によって角質化し、最終的には垢として自然に剥がれ落ちます。しかし、何らかの原因で毛穴の出口が閉じてしまうと、本来外に排出されるはずの角質が皮膚の下に溜まっていきます。
この時、毛穴の一部が皮膚の内側に入り込むように陥入し、袋状の構造を形成します。この袋の内側は通常の皮膚と同じ構造を持っているため、継続的に角質を産生し続けます。産生された角質は袋の外に出ることができず、袋の中にどんどん溜まっていき、徐々にしこりが大きくなっていくのです。
股間の粉瘤を引き起こす要因
股間の粉瘤発生には、いくつかの要因が関与していると考えられています。
物理的な刺激は、最も重要な要因の一つです。股間は歩行や座位、運動時などに常に摩擦や圧迫を受ける部位です。また、きつい下着の着用や自転車に長時間乗ることなども、継続的な刺激となります。こうした物理的刺激が毛穴を傷つけたり、毛穴の出口を塞いだりすることで、粉瘤の発生につながると考えられています。
毛の処理方法も関係している可能性があります。陰部の毛を剃ったり抜いたりする際に、毛穴や皮膚に傷がつくことがあります。また、埋没毛(埋もれ毛)が発生することもあります。これらが粉瘤の発生要因となることがあります。
ニキビや毛嚢炎などの皮膚炎症も、粉瘤の引き金となることがあります。炎症によって毛穴の構造が変化し、出口が塞がれることで粉瘤が形成されるケースがあります。
外傷も原因の一つとして挙げられます。股間部分をぶつけたり、擦り傷ができたりした際に、皮膚組織の一部が皮下に入り込み、それが粉瘤の袋を形成することがあります。
遺伝的要因と体質
粉瘤のできやすさには、遺伝的要因や体質も関係していると考えられています。家族に粉瘤ができやすい人がいる場合、自身も発症しやすい傾向があるという報告もあります。
また、皮脂の分泌が多い体質の人や、毛穴が詰まりやすい肌質の人は、粉瘤ができやすいと言われています。ただし、これらはあくまで発症リスクを高める要因であり、必ずしも粉瘤ができるわけではありません。
股間の粉瘤の症状
初期症状
股間の粉瘤は、初期段階では目立った症状がないことが多いです。最初は小さなしこりとして触れる程度で、痛みやかゆみなどの不快な症状はほとんどありません。
触診すると、皮膚の下に可動性のある丸いしこりを感じます。表面は通常の肌と同じ色をしていることが多いですが、やや盛り上がっていることもあります。中心部をよく観察すると、黒い点(開口部)が見られることがありますが、これは必ずしも全ての粉瘤に見られるわけではありません。
大きさは数ミリ程度から始まることが多く、この段階では日常生活にほとんど支障はありません。ただし、股間という部位の特性上、下着との摩擦や座位時の圧迫で軽い違和感を覚えることはあります。
粉瘤が大きくなった時の症状
粉瘤は自然に消失することはなく、放置すると徐々に大きくなっていきます。大きくなるスピードは個人差がありますが、数か月から数年かけてゆっくりと成長していくのが一般的です。
大きさが1センチを超えてくると、見た目にも明らかなしこりとして認識できるようになります。この段階になると、歩行時や座位時に圧迫感や違和感を感じることが増えてきます。特に股間という部位の特性上、日常動作で圧迫を受けやすいため、不快感を覚える方が多くなります。
さらに大きくなると、2~3センチ以上のしこりとなり、下着との摩擦で擦れたり、座った時に痛みを感じたりすることもあります。この段階では、患者さん自身が明確に異常を認識し、医療機関を受診するきっかけとなることが多いです。
炎症性粉瘤(感染した粉瘤)の症状
粉瘤に細菌感染が起こると、炎症性粉瘤または化膿性粉瘤と呼ばれる状態になります。股間の粉瘤は清潔を保ちにくい部位にあるため、感染を起こしやすい傾向があります。
炎症を起こした粉瘤は、急速に腫れ上がり、周囲の皮膚が赤くなります。触れると熱感があり、強い痛みを伴います。この痛みは、歩行や座位が困難になるほど強いこともあります。
炎症が進行すると、粉瘤の中に膿が溜まり、さらに腫れが増します。この段階では、発熱を伴うこともあります。最終的には皮膚が破れて膿が自然に排出されることもありますが、これは一時的な改善に過ぎず、根本的な治療にはなりません。
感染した粉瘤から排出される膿は、独特の悪臭を伴うことが特徴です。また、膿と一緒に白いチーズ状や粥状の内容物(角質や皮脂の塊)が出てくることもあります。
炎症性粉瘤は、適切な治療を受けないと再発を繰り返したり、周囲組織に炎症が広がったりする可能性があるため、早急な医療機関の受診が必要です。
合併症のリスク
股間の粉瘤を放置すると、いくつかの合併症を引き起こす可能性があります。
最も一般的な合併症は、先述した感染による炎症です。感染が繰り返されると、周囲の組織に瘢痕(傷跡)が形成され、治療後も皮膚の変色や凹凸が残ることがあります。
また、長期間放置された大きな粉瘤では、稀ではありますが、悪性化(がん化)のリスクがゼロではありません。特に長年存在する粉瘤や、急速に大きくなる粉瘤、硬さが変化した粉瘤などには注意が必要です。
さらに、股間という部位の特性上、粉瘤が大きくなると排尿や排便時の姿勢、性生活などにも影響を及ぼす可能性があります。
股間の粉瘤の診断
医療機関での診察
股間の粉瘤が疑われる場合、皮膚科や形成外科、または外科での診察が推奨されます。デリケートな部位であるため受診をためらう方もいらっしゃいますが、早期診断・早期治療が重要です。
診察では、まず問診が行われます。いつ頃からしこりがあるか、大きさの変化はあるか、痛みや赤みなどの症状はあるか、過去に同じような症状があったかなどが確認されます。
次に視診と触診が行われます。しこりの大きさ、形状、硬さ、可動性、皮膚の色調変化、開口部の有無などが観察されます。粉瘤の典型的な特徴として、皮膚の下で可動性のある球状のしこりであること、中心部に黒い点(開口部)が見られることなどがあります。
他の疾患との鑑別
股間にできるしこりは粉瘤だけではありません。正確な診断のためには、他の疾患との鑑別が重要です。
脂肪腫は、粉瘤と間違えられやすい良性腫瘍の一つです。柔らかく、可動性があり、痛みを伴わない点は粉瘤と似ていますが、中心部に開口部がなく、感染を起こすことは稀です。
毛巣洞(もうそうどう)は、主に仙骨部(おしりの割れ目上部)にできやすいですが、まれに股間にもできることがあります。埋没毛が原因で形成される膿瘍で、粉瘤と症状が似ていますが、治療法が異なります。
リンパ節の腫れも、股間部にしこりを形成することがあります。感染症や炎症があると、鼠径部(そけいぶ)のリンパ節が腫れることがあります。複数のしこりがある、移動しやすい、痛みを伴うなどの特徴があります。
外陰部嚢腫や前庭大腺嚢腫(女性の場合)など、性器周辺特有の嚢腫もあります。これらは粉瘤とは異なる病態ですが、症状が似ているため専門医による診断が必要です。
また、悪性腫瘍の可能性も完全には否定できません。急速に大きくなる、硬い、不規則な形をしている、皮膚と癒着しているなどの特徴がある場合は、より詳しい検査が必要となります。
画像診断と病理検査
視診と触診だけでは診断が難しい場合や、より詳細な情報が必要な場合には、画像診断が行われることがあります。
超音波検査(エコー検査)は、しこりの大きさ、形状、内部構造、周囲組織との関係などを観察できる有用な検査です。粉瘤の場合、典型的には境界明瞭な嚢腫性病変として描出されます。非侵襲的で短時間で実施できるため、広く用いられています。
MRI検査やCT検査は、大きな粉瘤や深部に及ぶ病変、悪性腫瘍との鑑別が必要な場合などに実施されることがあります。これらの検査により、病変の正確な位置や大きさ、周囲組織への影響などを詳細に評価できます。
摘出した粉瘤は、通常、病理組織学的検査に提出されます。顕微鏡で組織を観察することで、粉瘤であることの確定診断ができるとともに、稀ではありますが悪性化していないかなどを確認することができます。
股間の粉瘤の治療法
保存的治療(経過観察)
小さく、症状のない粉瘤の場合、すぐに治療を行わず経過観察とすることもあります。ただし、粉瘤は自然に消失することはなく、時間とともに徐々に大きくなる傾向があるため、定期的な観察が必要です。
経過観察中は、清潔を保つことが重要です。特に股間は汗や皮脂が溜まりやすい部位なので、毎日の入浴で丁寧に洗浄し、常に清潔な下着を着用するようにします。
また、物理的刺激を避けることも大切です。きつい下着の着用を避け、長時間の座位や激しい運動で圧迫や摩擦を受けないよう注意します。
ただし、以下のような場合は経過観察ではなく、積極的な治療が推奨されます。
- 徐々に大きくなっている
- 痛みや違和感がある
- 炎症を起こしている(赤み、腫れ、熱感、痛みがある)
- 日常生活に支障がある
- 美容的に気になる
- 本人が治療を希望する
炎症性粉瘤の応急処置
粉瘤に感染が起こり炎症を起こしている場合、まず炎症を抑える治療が必要となります。
抗生物質の内服が処方されます。細菌感染を抑えるために、適切な抗生物質を一定期間服用します。炎症の程度によっては、外用薬(塗り薬)も併用されることがあります。
炎症が強く、膿が溜まっている場合は、切開排膿が行われることがあります。局所麻酔を行った後、小さく皮膚を切開して膿を排出させます。これにより痛みや腫れが軽減されます。
ただし、切開排膿は一時的に症状を改善する処置であり、粉瘤の袋が残っている限り再発の可能性があります。炎症が落ち着いた後、根治的な手術(袋ごと摘出する手術)を行うことが推奨されます。
炎症が起きている時期に根治手術を行うと、正常組織と炎症組織の境界が不明瞭で袋を完全に取り除くことが難しく、また術後の創傷治癒も悪くなる可能性があるため、通常は炎症が治まってから手術を計画します。
根治的治療(手術による摘出)
粉瘤を完全に治すためには、袋ごと摘出する手術が必要です。袋が残っていると、中身を出しても再び角質が溜まって再発してしまうからです。
手術方法にはいくつかの種類がありますが、代表的なものを紹介します。
従来法(紡錘形切除法)は、粉瘤とその周囲の皮膚を紡錘形(楕円形)に切除し、袋ごと摘出する方法です。確実に粉瘤を取り除くことができ、再発率が低いという利点がありますが、切開範囲が比較的大きくなり、傷跡が残りやすいという欠点があります。
くり抜き法(へそ抜き法)は、粉瘤の中心部に小さな円形の穴を開け、その穴から内容物を排出した後、袋を裏返すようにして摘出する方法です。切開が小さいため傷跡が目立ちにくく、短時間で手術が終わるという利点があります。ただし、袋を完全に取り除けないケースもあり、従来法と比べるとわずかに再発率が高いとされています。
どちらの方法を選択するかは、粉瘤の大きさや位置、患者さんの希望などを総合的に考慮して決定されます。
手術は通常、局所麻酔下で日帰りで行われます。手術時間は粉瘤の大きさにもよりますが、多くの場合15分から30分程度です。
術後の経過とケア
手術後は、傷口の適切なケアが重要です。
手術当日から翌日にかけては、出血予防のためガーゼで圧迫しておくことが一般的です。翌日からは創部を清潔に保つために、シャワー浴が許可されることが多いですが、湯船に浸かるのは傷が治るまで控えるよう指示されます。
傷口の処置は、医師の指示に従って自宅で行うか、または定期的に通院して処置を受けます。抗生物質や鎮痛剤が処方されることもあります。
抜糸は、部位や創部の状態にもよりますが、通常1~2週間後に行われます。股間という部位は動きが多く、傷が開きやすい部位でもあるため、抜糸までの期間は激しい運動や長時間の歩行を避けるよう指導されることがあります。
術後数日間は、痛みや腫れが続くことがありますが、通常は徐々に軽減していきます。異常な痛みの増強、発熱、創部からの膿の排出などがあれば、すぐに医療機関に連絡する必要があります。
傷跡は時間とともに目立たなくなっていきますが、完全に消えるわけではありません。傷跡を目立たなくするために、テープでの固定や外用薬の使用などが推奨されることもあります。
再発の可能性
適切な手術により袋を完全に摘出できれば、同じ場所に粉瘤が再発することはほとんどありません。しかし、袋の一部が残ってしまった場合や、別の部位に新たな粉瘤ができる可能性はあります。
特に、炎症を起こした粉瘤や、何度も感染を繰り返した粉瘤の場合、周囲組織との癒着が強く、手術時に袋を完全に取り除くことが難しいケースがあります。このような場合、再発のリスクがやや高くなります。
再発を予防するためには、経験豊富な医師による確実な手術と、術後の適切なケアが重要です。
股間の粉瘤の予防と日常生活での注意点
清潔の保持
股間の粉瘤を予防するためには、まず清潔を保つことが基本となります。
毎日の入浴時には、股間部分を丁寧に洗浄しましょう。ただし、ゴシゴシと強く擦ると皮膚を傷つけてしまうため、優しく洗うことが大切です。石鹸やボディソープをよく泡立て、泡で包み込むように洗い、その後しっかりとすすぎます。
洗浄後は、タオルで押さえるように水分を拭き取ります。湿ったままにしておくと細菌が繁殖しやすくなるため、しっかりと乾燥させることが重要です。
下着の選び方
下着の選び方も、粉瘤の予防に影響します。
通気性の良い素材(綿やシルクなど)の下着を選びましょう。化学繊維は蒸れやすく、細菌の繁殖を促す可能性があります。
また、サイズの合った、締め付けの少ない下着を着用することが大切です。きつい下着は股間部分に継続的な圧迫や摩擦を与え、毛穴を詰まらせる原因となります。
下着は毎日取り替え、常に清潔なものを着用しましょう。
物理的刺激の回避
継続的な摩擦や圧迫は、粉瘤の発生要因となります。
長時間の座位や自転車の使用などで股間部分に圧迫が加わる場合は、適度に姿勢を変えたり、クッションを使用したりして、特定の部位に負担が集中しないよう工夫しましょう。
また、激しい運動時には、適切なサポーターや保護具を使用することも検討できます。
毛の処理方法
陰部の毛の処理は、方法によっては粉瘤のリスクを高める可能性があります。
カミソリでの処理は、皮膚を傷つけやすく、また埋没毛の原因にもなります。処理を行う場合は、清潔なカミソリを使用し、シェービングクリームなどで肌を保護しながら、毛の流れに沿って優しく剃るようにしましょう。
毛抜きでの処理は、毛穴を傷つけたり、炎症を起こしたりする可能性があるため、できるだけ避けた方が良いでしょう。
脱毛を希望する場合は、医療機関でのレーザー脱毛など、安全性の高い方法を選択することをお勧めします。
生活習慣の改善
全身の健康状態が良好であれば、皮膚のバリア機能も正常に保たれ、感染症のリスクも低下します。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動など、基本的な生活習慣を整えることが、間接的に粉瘤の予防にもつながります。
また、ストレスは免疫機能を低下させる可能性があるため、適切なストレス管理も重要です。

よくある質問
粉瘤は自然に消失することはありません。一時的に小さくなることはありますが、袋状の構造が残っている限り、再び大きくなる可能性があります。
炎症を起こした粉瘤が自然に破れて膿が出ると、一時的に腫れが引いて治ったように見えることがありますが、これは根本的な治癒ではありません。袋が残っているため、再び内容物が溜まり、感染を繰り返す可能性が高いです。
完全に治すためには、袋ごと摘出する手術が必要です。
粉瘤を自分で潰すことは絶対に避けてください。
自分で潰すと、細菌感染を起こして炎症性粉瘤となるリスクが非常に高くなります。また、袋が破れて内容物が周囲組織に拡散すると、炎症がさらに広がる可能性もあります。
さらに、不衛生な環境や器具で処置を行うと、別の感染症を引き起こす危険性もあります。
粉瘤が気になる場合は、自己処置をせず、必ず医療機関を受診してください。
股間の粉瘤は何科を受診すれば良いですか?
股間の粉瘤は、皮膚科、形成外科、または外科で診察を受けることができます。
多くの場合、皮膚科が最初の受診先として適していますが、手術が必要な場合は形成外科や外科を紹介されることもあります。
また、アイシークリニックのように粉瘤の診断と治療を専門的に行っているクリニックもあります。
デリケートな部位であるため受診をためらう方もいらっしゃいますが、医師は多くの症例を診ており、プライバシーにも十分配慮していますので、安心して受診してください。
手術は痛いですか?
手術は局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。
麻酔注射時にチクッとした痛みを感じますが、麻酔が効けば手術中は触られている感覚や圧迫感はあっても、痛みを感じることはありません。
術後は、麻酔が切れると痛みを感じることがありますが、通常は処方される鎮痛剤でコントロール可能な程度です。痛みの程度や持続期間には個人差がありますが、多くの場合、数日で軽減していきます。
手術後、どのくらいで日常生活に戻れますか?
手術当日から日常生活を送ることは可能ですが、いくつか制限があります。
デスクワークなど座位での作業は、術後数日から可能ですが、長時間の座位は傷口に負担をかけるため、適度に休憩を取りながら行うことが推奨されます。
立ち仕事や歩行を伴う仕事は、痛みの程度によりますが、多くの場合数日から1週間程度で可能になります。
激しい運動や長時間の歩行、自転車の使用などは、抜糸が終わるまで(1~2週間程度)控えるよう指導されることが一般的です。
入浴は、シャワー浴は翌日から可能なことが多いですが、湯船に浸かるのは傷が治るまで控えます。
具体的な制限期間は、手術の規模や個人の回復状況によって異なるため、担当医の指示に従ってください。
保険は適用されますか?
粉瘤の手術は、基本的に健康保険が適用されます。
診察料、手術費用、病理検査費用などが保険診療の対象となります。自己負担額は、保険の種類や年齢によって異なりますが、3割負担の場合、粉瘤の大きさにもよりますが数千円から1万円程度が一般的です。
ただし、美容目的での手術や、一部の特殊な治療法については自費診療となる場合もあります。詳しくは受診時に医療機関に確認してください。
股間の粉瘤とニキビの違いは?
粉瘤とニキビは、どちらも皮膚にできるしこりですが、まったく異なる疾患です。
ニキビは、毛穴に皮脂や角質が詰まり、そこにアクネ菌が繁殖して炎症を起こした状態です。通常は表面近くにでき、数日から数週間で自然に治ることが多いです。
一方、粉瘤は皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質などが溜まる良性腫瘍です。自然に治ることはなく、放置すると徐々に大きくなります。
見た目では区別が難しいこともありますが、粉瘤の場合は皮膚の下に可動性のある硬いしこりを触れること、中心部に黒い点(開口部)が見られることがあることなどが特徴です。
判断に迷う場合は、医療機関を受診して正確な診断を受けることが重要です。
複数の粉瘤がある場合は、一度に手術できますか?
複数の粉瘤がある場合、一度に手術できるかどうかは、粉瘤の数、大きさ、位置などによって異なります。
小さな粉瘤が数個ある程度であれば、一度の手術で複数箇所を摘出することも可能です。ただし、手術範囲が広くなると身体への負担も大きくなるため、数回に分けて手術を行うこともあります。
また、炎症を起こしている粉瘤と炎症のない粉瘤が混在している場合は、炎症のない粉瘤を先に手術し、炎症粉瘤は炎症が治まってから手術するという方針が取られることもあります。
最適な治療計画は、担当医と相談して決定します。
まとめ
股間の粉瘤は、決して珍しい疾患ではありません。デリケートな部位であるため一人で悩みを抱えてしまいがちですが、適切な診断と治療を受けることで完治が可能な疾患です。
粉瘤の特徴を理解し、早期に気づくことが重要です。股間部分に痛みのないしこりを見つけたら、それが粉瘤である可能性を考慮し、早めに医療機関を受診しましょう。炎症を起こす前の段階で治療を受けることで、より小さな傷で済み、術後の経過も良好になります。
粉瘤は自然に消失することはなく、放置すると徐々に大きくなり、感染を起こすリスクも高まります。特に股間という部位は清潔を保ちにくく、感染しやすい環境にあるため、小さいうちに対処することが推奨されます。
治療は、ほとんどの場合、局所麻酔下での日帰り手術で完了します。手術といっても比較的短時間で終わる処置であり、術後の回復も早いことが多いです。
また、日常生活での予防も大切です。清潔の保持、適切な下着の選択、物理的刺激の回避など、できることから始めてみましょう。
股間の粉瘤で悩んでいる方は、恥ずかしがらずに医療機関を受診してください。医師は多くの症例を診ており、プライバシーにも十分配慮しています。適切な診断と治療を受けることで、不快な症状から解放され、安心して日常生活を送ることができます。
アイシークリニック大宮院では、粉瘤の診断から治療まで、経験豊富な医師が丁寧に対応いたします。股間の粉瘤についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる医療情報源を参考にいたしました。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務