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魚の目(うおのめ)とは?原因・症状・治療法から予防まで徹底解説

足の裏や指に突然現れる硬いしこり、歩くたびにチクチクと刺すような痛み——それは「魚の目」かもしれません。魚の目は医学的には「鶏眼(けいがん)」と呼ばれ、日常生活に支障をきたすほどの痛みを引き起こすことがある、身近な皮膚トラブルのひとつです。

放置すると芯がどんどん深くなり、歩行が困難になるほど悪化することもあります。また、糖尿病をお持ちの方にとっては、小さな足のトラブルが深刻な合併症につながるリスクもあるため、早めの対処が重要です。

本コラムでは、魚の目の原因や症状、タコやイボとの見分け方、そして皮膚科での治療法から日常生活での予防法まで、魚の目に関する情報を詳しく解説します。足の痛みにお悩みの方、魚の目を繰り返している方は、ぜひ最後までご覧ください。


目次

  1. 魚の目とは何か?正式名称と名前の由来
  2. 魚の目ができる原因とメカニズム
  3. 魚の目ができやすい場所と特徴
  4. 魚の目の症状と進行段階
  5. タコ(胼胝)との違い
  6. イボ(疣贅)との違いと見分け方
  7. 魚の目の診断方法
  8. 皮膚科での治療法
  9. 市販薬を使ったセルフケア
  10. 糖尿病の方は特に注意が必要
  11. 魚の目の予防法
  12. よくある質問(FAQ)
  13. まとめ

1. 魚の目とは何か?正式名称と名前の由来

魚の目(うおのめ)は、皮膚の角質が厚く硬くなり、中心部に芯ができて皮膚の深部へと食い込んでいく皮膚疾患です。正式な医学用語では「鶏眼(けいがん)」と呼ばれています。

なぜ「魚の目」と呼ばれるのでしょうか。その由来は、患部の中央にできる白っぽい芯が、まるで魚の眼球のように見えることから来ています。一方、正式名称の「鶏眼」は、ドイツ語で「鶏の目」を意味する言葉に由来します。英語では「corn(コーン)」と呼ばれ、これは穀物の粒を意味し、芯が皮膚の奥に食い込む様子を表現したものです。

魚の目の大きさは一般的に直径5〜7mm程度で、小豆から大豆ほどの大きさです。小さいものでは2〜3mm程度ですが、大きくなると直径1cm以上になることもあります。表面はやや盛り上がり、中心部には半透明で硬い芯が見えます。この芯の先端は円錐状(くさび形)に尖っており、皮膚の奥(真皮層)に向かって食い込んでいくのが特徴です。

魚の目は感染症ではありません。ウイルスや細菌が原因ではないため、他の人にうつることはありませんし、自分の体の他の部位に広がることもありません。これは後述するイボ(疣贅)との大きな違いです。


2. 魚の目ができる原因とメカニズム

魚の目ができる原因は、皮膚への継続的な摩擦や圧迫といった物理的刺激です。私たちの皮膚は、外部からの刺激から体を守るために、最も外側に「角層(かくそう)」という硬い組織を持っています。この角層は、一定の部位に慢性的な刺激が加わり続けると、その部分を守ろうとして厚く硬くなっていきます。これは皮膚の正常な防御反応です。

しかし、皮膚の上からの圧迫が続くと、厚くなった角層は表面に盛り上がることができず、逆に皮膚の下に向かって食い込んでいきます。特に皮膚のすぐ下に骨がある部位では、物理的刺激が骨に阻まれるため、その間にある皮膚の角層がより厚くなり、魚の目が形成されやすくなります。

主な原因

魚の目ができる具体的な原因として、以下のようなものが挙げられます。

足に合わない靴を履き続けることは、魚の目の最も一般的な原因です。サイズが小さすぎる靴は足を締め付けて特定の部分に圧力をかけ、大きすぎる靴は足が靴の中で滑って摩擦を生じさせます。

ハイヒールやパンプスなど、つま先が細く足指の付け根に大きな負荷がかかる靴を頻繁に履くことも原因となります。特に親指や小指の側面が圧迫されやすく、指の側面に魚の目ができやすくなります。

底が硬い靴やクッション性が十分でない靴も問題です。足底が薄く衝撃吸収が不十分な靴を履いていると、歩行時の衝撃が直接足裏に伝わり、魚の目ができやすくなります。

歩き方や立ち方の癖も原因となることがあります。体重のかけ方が偏っていると、特定の部位に過度な負担がかかります。O脚やガニ股の方、外反母趾や内反小趾をお持ちの方は、足の特定部位に圧力が集中しやすいため注意が必要です。

長時間の立ち仕事やスポーツで特定の部分に圧力がかかり続けることも、魚の目発生の原因となります。足の骨の変形(外反母趾、内反小趾、ハンマートゥなど)があると、骨の突出部分に刺激が集中しやすくなります。

加齢による足裏の皮下脂肪の減少も一因です。年齢とともに足裏のクッション性が低下し、骨の突出が過剰になると、魚の目ができやすくなります。


3. 魚の目ができやすい場所と特徴

魚の目は主に足に発生します。体重がかかり、靴との摩擦や圧迫を受けやすい部位に好発します。特によくできる場所について説明します。

足の裏(足底)

足の裏は最も魚の目ができやすい場所です。特に親指・人差し指・中指の付け根あたり(中足骨頭部)によく発生します。この部位は歩行時に最も圧力がかかる場所で、特にハイヒールを頻繁に履く方では「ヒールダコ」から魚の目に進行するケースが多くみられます。

開帳足(足のアーチが崩れて足幅が広がった状態)の方は、この部位に刺激が集中しやすいため要注意です。

足の指

足の指では、小指の外側、親指の外側、指の先端部などに魚の目ができやすくなっています。つま先が細い靴を履いていると、親指や小指の側面が靴に押し付けられて摩擦を受けるためです。

また、足趾の関節部(特にDIP関節=遠位指間関節)にも発生することがあります。これは力の入れ方の癖や外反母趾などによって指先が浮いてしまい、関節部に荷重が集中するためです。

足の指の間

意外かもしれませんが、足の指と指の間にも魚の目ができることがあります。これは隣り合う指同士が圧迫されることで発生し、靴の中で指が窮屈な場合に起こりやすくなります。

指の間にできた魚の目は、湿潤しやすい環境にあるためふやけて白くなりやすく(マセレーション)、傷や感染につながりやすい特徴があります。

その他の部位

件数は多くありませんが、手の指にできることもあります。筆記用具を強く握る癖がある方の中指などに発生する場合があります。


4. 魚の目の症状と進行段階

魚の目の症状は、進行段階によって異なります。早期に発見して対処することで、重症化を防ぐことができます。

初期段階

魚の目の初期段階では、特定の部位の皮膚が硬くなり、乾燥やざらつきといった違和感を覚える程度です。この時点では芯がまだ小さく浅いため、痛みはほとんどありません。かゆみや赤みなどの炎症症状も通常は見られません。

この段階では、皮膚の表面が少し黄色味を帯びて厚く硬くなり始めます。よく観察すると、中央にやや光沢のある部分が見えることがあります。

中期段階

魚の目を放置していると、芯はどんどん大きく深くなっていきます。くさび形(楔状)の芯が皮膚の奥に食い込み始めると、歩いた時や指で押した時に芯が神経を圧迫し、痛みを感じるようになります。

この段階では、患部の中央に白っぽい芯がはっきりと見えるようになります。歩行時や靴を履いた時に、チクチクとした不快な痛みを感じることが増えてきます。

進行した段階

芯がさらに深く食い込むと、歩くたびに鋭い痛みを感じるようになります。「常に足の裏に石ころをくっつけながら歩いているような痛み」と表現されることもあります。

重症化すると、素足での歩行さえ困難になることがあります。また、痛みをかばって不自然な歩き方を続けると、体にゆがみが生じ、膝や股関節、腰に負担がかかって別の症状が現れる可能性もあります。

合併症のリスク

年齢とともに皮下組織が萎縮し骨の突出が過剰になると、外力により魚の目の下床が内出血を起こしたり、傷ができたりすることがあります。さらに細菌感染を起こすと、膿瘍(のうよう)を形成することもあります。

特に糖尿病などの基礎疾患があり足の血流が悪い場合は、蜂巣織炎(ほうそうしきえん)やガス壊疽へと進行し、最悪の場合は足趾や足の切断に至る可能性もあります。このため、特にリスクのある方は早めの受診が重要です。


5. タコ(胼胝)との違い

魚の目とよく混同される皮膚トラブルに「タコ」があります。医学的には「胼胝(べんち)」と呼ばれます。魚の目とタコは同じ原因(物理的刺激)で発生しますが、症状には明確な違いがあります。

発生メカニズムの違い

魚の目もタコも、皮膚への慢性的な摩擦や圧迫に対する防御反応として角質が厚くなることで発生します。しかし、角質が厚くなる方向が異なります。

タコは、角質が皮膚の外側(表面)に向かって厚くなります。広い範囲で角質が平坦に盛り上がるのが特徴です。

一方、魚の目は、角質が皮膚の内側(真皮方向)に向かって厚くなり、くさび形の芯を形成して深部に食い込んでいきます。

なぜ同じ刺激で魚の目になる場合とタコになる場合があるのか、その原因ははっきりとわかっていません。ただし、狭い範囲に圧が集中する部位には魚の目が、比較的広い範囲に圧が加わる部位にはタコが形成される傾向があります。

芯の有無

最も明確な違いは芯の有無です。

魚の目には中央部に白っぽい半透明の芯があります。この芯が皮膚の深部に向かって円錐状に食い込んでいます。

タコには芯がありません。全体的に角質が広く一様に厚くなっているだけです。

痛みの違い

魚の目は、芯が神経を圧迫するため、押したり歩いたりすると痛みを感じます。進行すると歩行困難になることもあります。

タコは通常、痛みを伴いません。むしろ刺激に対して鈍感になることが多いです。ただし、タコが極端に厚くなったり、下に骨の突起がある場合は不快感を覚えることもあります。

発生部位の違い

魚の目は主に足の裏や足指に発生します。

タコは足以外にもできることがあります。ペンを持つ手にできる「ペンダコ」、正座を多くする人の足背にできる「座りダコ」など、慢性的な刺激を受ける部位であればどこにでも発生する可能性があります。


6. イボ(疣贅)との違いと見分け方

魚の目と間違えやすいもうひとつの皮膚疾患が「イボ」です。特に足の裏にできる「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」や「足底疣贅(そくていゆうぜい)」は、見た目が魚の目に似ていることがあります。しかし、両者は原因が根本的に異なり、治療法もまったく違うため、正確な鑑別が非常に重要です。

原因の違い

魚の目は物理的な刺激(摩擦・圧迫)が原因であり、感染症ではありません。

イボはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発生するウイルス性の皮膚疾患です。そのため、他の人や自分の体の他の部位にうつる可能性があります。

見た目の違い

魚の目は、中央に透明感のある芯があり、周囲の皮膚紋理(指紋のような皮膚の模様)は消失しています。表面はやや光沢を帯びることがあります。

イボは、表面がざらざらしていることが多く、よく見ると小さな黒い点々(点状出血)が見えることがあります。この黒い点は、イボ内部の毛細血管が血栓を起こしたものです。また、皮膚紋理がイボによって分断されているのが特徴です。

削った時の違い

魚の目の角質を削ると、白から淡い黄褐色の半透明の芯が現れ、出血することはほとんどありません。

イボを削ると、点状に出血することが多いです。これは内部の血管が露出するためです。

なぜ鑑別が重要か

イボは感染症であるため、自己処置で削ったり触ったりすることで、周囲に感染が広がる可能性があります。また、治療法も異なります。魚の目は角質を削って芯を除去する治療が基本ですが、イボには液体窒素による凍結凝固療法などの治療が必要です。

皮膚科を受診される患者さんの中で、魚の目だと思っていたら実はイボだったというケースは珍しくありません。魚の目が頻繁に再発を繰り返す場合は、イボが合併している可能性もあるため、一度専門医の診察を受けることをおすすめします。


7. 魚の目の診断方法

皮膚科での魚の目の診断は、主に視診(目で見て診断すること)と問診によって行われます。

視診による確認

まず、患部を観察します。魚の目は小豆から大豆くらいの大きさで、中央に透明感のある芯が見えるのが特徴です。周囲の皮膚紋理が消失していることも診断の手がかりになります。

ダーモスコピー(皮膚科用の拡大鏡)を使用して、より詳細に観察することもあります。

削って確認

魚の目かどうかを確実に診断するために、患部の角質を少し削ることがあります。魚の目であれば、削ると黄色から淡黄褐色の半透明の芯が現れます。この芯によって真皮乳頭層の正常構造が分断されているのが確認できます。

一方、イボを削ると点状の出血が見られ、鑑別が可能です。タコを削った場合は、平滑な半透明の皮膚が見えるだけで、芯は見られません。

問診の重要性

診断時には、以下のような点について問診が行われます。

どのような靴を履いているか、職業や生活習慣、運動歴はどうか、これまでにも同様の症状があったか、痛みの程度や症状が出始めた時期、既往症(特に糖尿病などの有無)——これらの情報は、原因の特定と治療方針の決定に重要です。

魚の目ができる原因を明らかにすることで、治療後の再発予防につなげることができます。


8. 皮膚科での治療法

魚の目の治療は皮膚科で受けることができます。症状や魚の目の状態に応じて、いくつかの治療法があります。

角質削除(鶏眼・胼胝処置)

最も一般的な治療法です。皮膚科医がカミソリやメス、専用の器具を使って、肥厚した角質と中央の芯を削り取ります。

魚の目の芯は硬く、真皮側に深く食い込んでいることがあるため、丁寧に少しずつ削っていきます。表層部分が特に硬いことが多く、医師は指で硬さを確認しながら慎重に処置を進めます。

芯を完全に取り除くことが重要で、芯が残っていると再発してしまいます。深い芯を除去した場合でも、正常な皮膚組織を傷つけないように細心の注意を払って行われます。

この処置は保険適用で、月2回を限度として算定することができます。

サリチル酸を含む外用薬(スピール膏)

サリチル酸には角質を軟化させる作用があります。高濃度のサリチル酸を含むスピール膏を患部に貼付し、数日間かけて角質を柔らかくしてから削り取る方法です。

医療機関では、市販のものより高濃度のサリチル酸製剤を使用することがあります。スピール膏を貼った後は、角質が十分に軟化してからでないと芯までくり抜くことが難しいため、計画的な治療が必要です。

液体窒素凍結療法

極低温の液体窒素を患部に当てて、異常な細胞を凍結壊死させる治療法です。主にイボの治療に用いられますが、魚の目の治療にも使用されることがあります。

この治療法は保険適用ですが、複数回の通院が必要になることが多く、また治療時に痛みを伴うことがあります。

レーザー治療

炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)を使用して、魚の目の芯を蒸散させる治療法です。精密な治療が可能で、芯を確実に除去できるとされています。

レーザー治療は自費診療となることが多いですが、深く根付いた魚の目に対して有効で、再発率が比較的低いとされています。

メスによる切除

芯が非常に深く、他の治療法では除去が難しい場合に、局所麻酔下でメスを使って外科的に芯を切除することがあります。

この方法は確実に芯を除去できますが、傷が治るまでに時間がかかる場合があります。

治療後の注意点

どの治療法を選択しても、原因となる物理的刺激を取り除かなければ再発する可能性があります。治療と並行して、靴の選び方やインソールの使用、歩き方の改善など、再発予防の指導も重要です。


9. 市販薬を使ったセルフケア

軽度の魚の目で、芯がまだ浅く痛みがあまりない場合は、市販薬を使ったセルフケアを試みることもできます。ただし、正しい方法で行わないと悪化や感染のリスクがあるため、注意が必要です。

市販薬の種類

市販されている魚の目治療薬には、サリチル酸を主成分とするものが一般的です。角質軟化溶解作用があり、厚く硬くなった皮膚を柔らかくして取り除きやすくします。

絆創膏タイプのものは、患部に貼り付けて使用します。有効成分が患部に密着して浸透効果を高め、保護用パッドが外部からの刺激による痛みを和らげます。

液体タイプのものは、患部に直接塗布して使用します。速乾性があり、塗った部分に膜を形成します。

使用方法のポイント

サリチル酸製剤を使用する場合は、魚の目やタコの部分よりも小さく切って貼ることが重要です。正常な皮膚に付着すると、健康な皮膚まで軟化してしまうことがあります。

貼り付けたあとは、2〜3日間そのままにしておきます。入浴時もそのままで構いません。角質が白く柔らかくなったら、その白い部分を取り除きます。

一度で芯まで取り除けない場合は、この作業を繰り返します。ただし、無理に深く削ろうとしないことが大切です。

セルフケアの限界と注意点

市販薬でのセルフケアには限界があります。以下のような場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。

芯が深く、痛みが強い場合は自己処置では完全に除去できないことが多いです。何度治療しても再発を繰り返す場合は、イボが合併している可能性や、根本的な原因が解決されていない可能性があります。

患部が赤く腫れている、膿が出ているなど感染の兆候がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。また、糖尿病をお持ちの方は、自己処置による傷や感染のリスクが高いため、必ず医療機関での治療を受けるようにしてください。

カッターやカミソリ、はさみ、爪切りなどを使って自分で魚の目を削ろうとするのは危険です。傷を作ってしまうリスクがあり、感染の原因にもなります。また、むやみに刺激を与えると悪化することもあるため、避けるようにしましょう。


10. 糖尿病の方は特に注意が必要

糖尿病をお持ちの方にとって、足のトラブルは特に注意が必要です。魚の目やタコは単なる皮膚のトラブルとして見過ごされがちですが、糖尿病の方の場合は深刻な足病変につながるリスクがあります。

なぜ糖尿病患者は足のトラブルに注意が必要なのか

糖尿病が進行すると、末梢神経障害と血管障害という2つの合併症が起こりやすくなります。

末梢神経障害が進むと、足の感覚が鈍くなります。痛みや違和感を感じにくくなるため、魚の目やタコができ始めても気づきにくくなります。また、熱さや冷たさも感じにくくなるため、やけどなどの傷にも気づかないことがあります。

さらに、自律神経障害により皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥した皮膚はひび割れを起こしやすく、傷の原因になります。

血管障害が起こると、足の血流が悪くなります。足は心臓から遠いため、特に血流が滞りやすい部位です。血流が悪くなると、傷が治りにくくなり、免疫力も低下して感染症にかかりやすくなります。

魚の目から壊疽に至るリスク

健康な方であれば、魚の目は適切な治療で改善する比較的軽度の皮膚トラブルです。しかし、糖尿病の方の場合、魚の目を放置したり、誤った自己処置を行ったりすると、小さな傷から感染が起こり、潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)に進行してしまうことがあります。

壊疽は組織が腐ってしまう状態で、治療が非常に困難です。最悪の場合、足を切断せざるを得なくなることもあります。実際に、糖尿病で足を失う方は珍しくありません。

糖尿病の方のフットケア

糖尿病と診断された方は、日頃からフットケアを心がけることが大切です。

毎日、足の状態を観察しましょう。傷ややけど、タコ、魚の目、水虫、皮膚の変色、足の変形などがないかチェックします。視力が低下している場合は、ご家族に確認してもらったり、鏡を使ったりして観察してください。

足を清潔に保つことも重要です。毎日足を洗い、指の間もていねいに洗いましょう。洗った後は水分をよく拭き取り、乾燥しやすい方は保湿クリームを塗ってください。

爪は正しく切りましょう。深爪は傷の原因になります。タコや魚の目、踵の角質は自己流で削らず、医療機関で適切な処置を受けてください。

糖尿病の方は、足に異変を見つけたら、軽度なものでもすぐに主治医や皮膚科に相談することが重要です。多くの医療機関では糖尿病患者向けのフットケア外来を開設しており、専門的なケアを受けることができます。


11. 魚の目の予防法

魚の目は一度できてしまうと自然治癒することはなく、治療しても原因を取り除かなければ再発しやすい疾患です。予防のためには、根本的な原因である物理的刺激を減らすことが重要です。

足に合った靴を選ぶ

魚の目予防の最も重要なポイントは、足に合った靴を履くことです。

まず、足のサイズを正確に把握しましょう。足の大きさには左右差があることが多いため、両足を測定することが大切です。靴を選ぶ際は、大きいほうの足に合わせます。

小さすぎる靴は足を締め付けて特定の部分に圧力をかけ、大きすぎる靴は足が靴の中で滑って摩擦を生じさせます。どちらも魚の目の原因になります。

つま先が細すぎる靴、足幅の狭い靴は避けましょう。足指が自由に動かせる程度の余裕があるものを選んでください。

靴底は適度なクッション性があるものがおすすめです。硬すぎる靴底は足裏への衝撃が大きくなります。

ハイヒールを履く場合は、できるだけ履く時間を短くしましょう。また、ヒールの高さは3cm以下が足への負担が少ないとされています。

正しい靴の履き方

足に合った靴を選んでも、履き方が正しくないと効果が半減します。

靴を履くときは、まず足の後ろ(かかと)部分を靴のヒールカウンターにしっかり合わせます。その後、靴紐をきちんと締めて足を靴に固定します。

足が靴の中で固定されていないと、歩行時に足が前に滑ってつま先に圧力がかかり、魚の目の原因になります。紐のない靴(サンダル、スリッパ、スリッポンなど)は、足が固定されにくいため注意が必要です。

インソールやパッドの活用

靴の中敷き(インソール)や保護パッドを使用することで、足にかかる圧力を分散させることができます。

特に、足のアーチが崩れている方(扁平足、開帳足など)は、アーチをサポートするインソールを使用することで、足裏の特定部位への負担を軽減できます。

魚の目ができやすい部位には、クッション性のあるパッドを当てて保護することも効果的です。

歩き方の改善

歩き方に癖があると、足の一部分に負荷が集中し、魚の目ができやすくなります。正しい歩き方を意識することで、予防効果が期待できます。

正しい歩き方のポイントは、かかとから着地し、つま先で地面を蹴るという一連の動作をスムーズに行うことです。体重を足裏全体に均等にかけるように意識しましょう。

猫背にならないよう姿勢を正し、視線は前方に向けます。腕は自然に振りましょう。

足のケアと保湿

足の皮膚が乾燥していると、角質が硬くなりやすく、魚の目やタコができやすくなります。入浴後に保湿クリームを塗り、足の皮膚を柔らかく保ちましょう。

また、定期的に軽石やフットファイルで足裏の角質をケアすることも効果的です。ただし、削りすぎは逆効果ですので、やさしくケアしてください。

足のストレッチ

足が凝り固まっていると、歩行時のバランスが崩れ、魚の目ができやすくなります。日常的に足のストレッチを行い、柔軟性を保ちましょう。

足指を1本ずつ動かしたり、手の指を足の指の間に入れて回したりするストレッチが効果的です。ゴルフボールなど小さくて硬いボールを足裏で転がすマッサージもおすすめです。


12. よくある質問(FAQ)

ここでは、魚の目に関してよくいただく質問にお答えします。

Q1. 魚の目は自然に治りますか?

残念ながら、魚の目は一度できてしまうと自然に治ることはありません。原因となる物理的刺激が続く限り、芯はどんどん大きく深くなっていきます。
軽度のうちに適切な対処をすることで、治療も楽になりますので、気づいたら早めにケアしましょう。

Q2. 魚の目は何科を受診すればよいですか?

皮膚科を受診してください。皮膚科では、魚の目の正確な診断と、イボなど他の疾患との鑑別、適切な治療を受けることができます。
整形外科や形成外科でも治療を受けられる場合があります。また、フットケア外来を設けている医療機関もあります。

Q3. 魚の目の治療は痛いですか?

皮膚科での角質削除処置は、通常ほとんど痛みはありません。皮膚科医は患者さんの痛みを最小限にするよう配慮しながら、熟練した技術で処置を行います。

深い芯を除去する際に多少の違和感を感じることはありますが、我慢できないほどの痛みではありません。ご心配な方は、事前に医師にご相談ください。

液体窒素凍結療法は、治療時にやや痛みを伴うことがあります。

Q4. 魚の目の治療費はどのくらいですか?

皮膚科での鶏眼・胼胝処置は保険適用です。3割負担の場合、処置料は数百円程度です。これに初診料または再診料、必要に応じて薬の処方料などが加わります。

レーザー治療は自費診療となることが多く、費用は医療機関によって異なります。

Q5. 市販のスピール膏を使っていますが、なかなか治りません。どうすればよいですか?

市販薬で効果が見られない場合は、芯が深くなっている可能性があります。皮膚科を受診して、専門的な治療を受けることをおすすめします。

また、繰り返し治療しても再発する場合は、イボが合併している可能性や、原因となる靴や歩き方の問題が解決されていない可能性があります。専門医に相談し、適切な診断と対策を受けてください。

Q6. 子どもにも魚の目はできますか?

魚の目は成人に多く見られますが、子どもにもできることがあります。ただし、子どもの足裏にできた硬いしこりは、イボ(尋常性疣贅)である可能性も高いです。

子どもの場合、自己判断せずに皮膚科で診察を受けることをおすすめします。

Q7. 魚の目の芯に黒い部分があります。大丈夫でしょうか?

魚の目の芯が黒っぽくなっている場合、内出血を起こしている可能性があります。これは、魚の目が深くなり、真皮の血管にまで影響が及んでいるサインです。

黒い芯がある場合は、自己処置せずに早めに皮膚科を受診してください。


13. まとめ

魚の目(鶏眼)は、足への慢性的な物理的刺激によって角質が厚くなり、芯が皮膚の深部に食い込むことで痛みを引き起こす皮膚疾患です。

主な原因は、足に合わない靴、ハイヒールの常用、歩き方の癖、足の変形などです。治療は皮膚科で受けることができ、角質削除、サリチル酸製剤による軟化、液体窒素凍結療法、レーザー治療などの方法があります。

タコ(胼胝)やイボ(疣贅)と似ていますが、原因や治療法が異なるため、正確な診断を受けることが重要です。特にイボはウイルス性で感染するため、鑑別が必要です。

糖尿病をお持ちの方は、小さな足のトラブルが深刻な合併症につながるリスクがあるため、自己処置を避け、医療機関でのケアを受けるようにしてください。

予防のためには、足に合った靴を選ぶこと、正しい靴の履き方をすること、インソールやパッドで圧力を分散させること、歩き方を改善すること、足の保湿やストレッチを心がけることが大切です。

魚の目でお悩みの方は、放置せず、お早めに皮膚科を受診されることをおすすめします。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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