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サブシジョンの失敗を防ぐために知っておくべきこと|原因・リスク・クリニック選びのポイント

はじめに

ニキビ跡のクレーター治療において、近年注目を集めているのが「サブシジョン」という治療法です。従来のレーザー治療やダーマペンでは改善が難しかった深いニキビ跡に対して効果が期待できる治療として、多くのクリニックで取り入れられています。

しかし、インターネット上では「サブシジョンで失敗した」「効果がなかった」といった声も見受けられます。これからサブシジョンを検討されている方にとって、こうした情報は不安材料となることでしょう。

本記事では、サブシジョンとはどのような治療なのか、なぜ失敗と感じるケースが生じるのか、そして失敗を避けるためにはどうすべきかについて、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。

サブシジョンとは

治療の基本原理

サブシジョン(Subcision)は、1995年にOrentreichらによって医学論文で発表された、ニキビ跡の陥凹(へこみ)を改善する治療法です。日本語では「真皮切除術」や「皮下無切開手術」とも呼ばれます。

ニキビの炎症が真皮や皮下組織にまで達すると、治癒過程で線維化組織(瘢痕組織)が形成されます。この線維化組織が皮膚の深部にある筋膜や皮下組織と癒着することで、皮膚表面が下に引っ張られ、クレーター状の陥凹が生じます。

サブシジョンでは、専用の医療用針(カニューレ)を皮膚に刺入し、この癒着した線維組織を物理的に切断・剥離します。癒着が解除されることで、引っ張られていた皮膚が解放され、陥凹が改善されるという仕組みです。

どのようなニキビ跡に有効か

サブシジョンは、すべてのニキビ跡に効果があるわけではありません。特に効果が期待できるのは以下のタイプです。

ローリング型(Rolling Type) 幅が4〜5mm以上の緩やかに凹んだタイプで、お皿状の陥凹が特徴です。真皮や皮下組織の線維化により、皮膚が下から引っ張られて形成されます。サブシジョンの最も良い適応とされています。

深いボックスカー型(Boxcar Type) 垂直に凹んでいて底面が平坦なタイプです。貨物列車(boxcar)のような形状に見えることから、この名前が付けられました。ボックスカー型でも深さがあり、癒着が関与しているものはサブシジョンの適応となります。

一方、以下のタイプには効果が限定的です。

アイスピック型(Icepick Type) 開口部が2mm以下と非常に狭く、アイスピックで刺したような深い陥凹です。真皮の深層まで達しているものの、幅が狭いため針が十分に届かず、線維化組織の切断が困難です。

浅いボックスカー型 癒着が少なく、主に表皮や真皮浅層の問題である場合、サブシジョンよりもフラクショナルレーザーやダーマペンの方が適していることがあります。

サブシジョンにおける「失敗」の定義

失敗とはどのような状態か

サブシジョンの「失敗」には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1. 合併症としての失敗

治療後に望ましくない症状が生じた場合です。具体的には以下のようなケースが該当します。

  • しこりの形成(瘢痕組織の過剰な増生)
  • 長期間続く内出血や腫れ
  • 色素沈着の悪化
  • 感染症の発生
  • ケロイド体質の方における瘢痕の肥厚

2. 効果不十分としての失敗

治療自体は問題なく終了したものの、期待したような改善が得られなかった場合です。

  • クレーターがほとんど改善しない
  • 一時的に改善したが元に戻った(再癒着)
  • むしろ目立つようになった

なぜ「効果なし」と感じるのか

サブシジョンで「効果がなかった」と感じる主な理由として、以下の要因が考えられます。

治療の適応外であった 前述のとおり、アイスピック型や浅いボックスカー型など、サブシジョンの適応でないニキビ跡に施術した場合、十分な効果は期待できません。

治療回数が不足している サブシジョンは1回の治療で完璧な結果が得られることは少なく、一般的に3〜5回程度の治療が必要とされています。特に線維化が強い場合や、陥凹が深い場合には、複数回の治療が必要です。

技術的な問題 サブシジョンは医師の技術に大きく依存する治療です。癒着組織を不十分にしか切断できていない場合、効果が限定的となります。

再癒着が生じた サブシジョンで一度剥離した組織が、再び癒着してしまうことがあります。これを防ぐために、ヒアルロン酸注入などの併用療法が推奨されています。

サブシジョンの失敗はなぜ起こるのか

医師の技術と経験の問題

サブシジョンで最も重要なのは、施術を行う医師の技術力です。

外科的経験の重要性 サブシジョンでは、皮膚の表面を皮下組織から鈍針を使って剥がす操作を行います。この技術は外科手術時の組織剥離と非常に似ているため、外科経験がある医師とそうでない医師では、治療の成否に大きな差が生じます。

しかし、サブシジョンを提供している美容皮膚科の中には、外科経験が少ない、あるいは全くない医師が担当していることもあります。その結果、最も重要な剥離操作が不十分となり、効果が出ないという結果につながります。

解剖学的知識の必要性 皮膚の構造や血管・神経の走行を正確に理解していないと、過度の出血や神経損傷のリスクが高まります。また、線維化組織がどの深さ・範囲に存在するかを正確に判断する能力も求められます。

手技のバリエーション サブシジョンには、リニアスレッディング(linear threading)、ファンニング(fanning)、クロスハッチング(cross hatching)など、さまざまな手法があります。ニキビ跡のタイプや場所、硬さ、大きさによって適切な手法を使い分ける必要があります。

患者側の要因

ケロイド体質 サブシジョンは皮膚の下を針で傷つける治療であるため、ケロイド体質の方では、皮膚が傷跡の反応を起こして厚ぼったくなることがあります。これは「肥厚性瘢痕」と呼ばれる状態で、治療前に体質を確認することが重要です。

創傷治癒能力の個人差 ニキビ跡になりやすい方は、皮膚の正常な再生がされにくい傾向があります。そのため、サブシジョン後の創傷治癒過程においても、理想的なコラーゲン産生が起こらない可能性があります。

喫煙 喫煙は血流を悪化させ、創傷治癒を遅延させます。サブシジョンの効果を最大化するためには、禁煙が推奨されます。

不適切なアフターケア 治療後のアフターケアを怠ると、効果が低下したり、炎症などの肌トラブルを引き起こす可能性があります。特に以下の点に注意が必要です。

  • 治療部位を強く擦る
  • 紫外線対策を怠る
  • 保湿が不十分
  • 医師の指示を守らない

設備・機器の問題

針の品質 サブシジョンで使用する針(カニューレ)の品質も重要です。適切な太さや長さ、刃先の形状を持った針を使用しないと、効果的な剥離が困難となります。

なお、サブシジョンで使用されるカニューレの多くは、医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器であり、韓国などから個人輸入されているケースが多いことにも留意が必要です。

サブシジョンの合併症とリスク

よく見られる一般的な副作用

内出血 サブシジョンでは、真皮や皮下組織の線維を切断する際に、小さな血管が損傷されるため、内出血が生じることが多くあります。内出血の程度は個人差がありますが、通常1〜2週間で自然に吸収されて消失します。

紫色から黄色へと変色しながら徐々に薄くなっていきます。広範囲に施術した場合や、血管が豊富な部位では内出血が目立ちやすい傾向があります。

腫れ・むくみ 治療直後から数日間は、治療部位に腫れやむくみが生じることがあります。これは組織の損傷に対する炎症反応として正常な反応です。通常、1週間程度で軽快します。

赤み 治療部位に赤みが生じることがあります。多くの場合、1〜2週間で改善しますが、炎症の程度によっては数ヶ月続くこともあります。

痛み 施術時は局所麻酔を使用しますが、麻酔が切れた後に痛みを感じることがあります。ほとんどの場合、数日で改善します。

重大な合併症

しこり(硬結)の形成 サブシジョンで最も問題となるのが、しこりの形成です。治療中に針で内部の組織を切断する際、内出血を起こして腫れ、それが瘢痕として膨らむことで、しこりとして残るケースがあります。

しこりは、治療の目的である癒着の剥離とは逆の効果をもたらすため、技術だけでなく治療時にはさまざまな工夫が必要です。しこりのリスクを最小限に抑えるため、以下の対策が取られます。

  • 適切な深さでの剥離操作
  • 過度な損傷を避ける丁寧な手技
  • ヒアルロン酸など充填剤の併用
  • 術後の適切な圧迫

感染症 皮膚に針を刺入する治療であるため、細菌感染のリスクがあります。適切な消毒や無菌操作が不可欠です。感染が生じた場合、抗菌薬による治療が必要となります。

セルフでサブシジョンを行うことは、感染症のリスクが極めて高く、絶対に避けるべき行為です。

色素沈着 治療後の炎症が長引いた場合や、紫外線対策が不十分だった場合、炎症後色素沈着が生じることがあります。日本人を含むアジア人の肌は、欧米人と比べて色素沈着を起こしやすい特徴があります。

神経損傷 非常に稀ですが、施術時に神経を損傷する可能性があります。顔面には多くの知覚神経や運動神経が走行しているため、解剖学的知識が不足した施術者による治療は危険です。

血腫の形成 内出血が大量に生じた場合、血液が貯留して血腫を形成することがあります。血腫が大きい場合は、穿刺して血液を排出する処置が必要となることもあります。

日本における位置づけと治療の現状

ニキビ治療のガイドライン

日本皮膚科学会は「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」を策定しており、ニキビの標準的な治療方針を示しています。

ニキビ(尋常性痤瘡)は、日本では約90%の人が経験する非常に頻度の高い疾患です。炎症が長引いたり重症化すると瘢痕を残すことがあり、瘢痕には色素沈着、萎縮性瘢痕、肥厚性瘢痕(ケロイドを含む)があります。

ガイドラインでは、「特に萎縮性瘢痕(クレーター)では有効な治療はないのが現状」とされており、瘢痕形成予防のためには、早期に積極的な痤瘡治療を開始することが最も重要であると強調されています。

サブシジョンの保険適用

サブシジョンは、ニキビ跡の見た目を改善する目的の治療であるため、原則として保険適用外(自費診療)となります。ニキビ跡の治療は美容目的とみなされることが多く、保険診療の対象にはなりません。

ただし、ケロイド体質によるニキビ跡の一部の治療については、保険適用となる場合もあります。

日本での普及状況

サブシジョンは1995年に海外で発表された治療法ですが、日本国内での普及はここ数年のことです。海外の英語文献は1995年以降多数ありますが、日本人によるサブシジョンの医学論文は非常に少ないのが現状です。

海外でも広く普及し始めたのは2010年代後半からで、ニキビ跡の瘢痕を美容外科や美容皮膚科できれいにしようという社会的需要が増えたことで、サブシジョンも注目されるようになったと考えられます。

日本人の肌の特徴と治療選択

日本人の肌は欧米人の肌と比べて、色素沈着を起こしやすく、瘢痕形成によりかえって傷跡が目立ちやすい特徴があります。

そのため、海外のニキビ跡治療では当たり前である「ディープピーリング(フェノールやTCAで真皮まで剥がす)」や「マイクロダーマアブレーション(機械で皮膚の表面を削る)」が、日本では行いづらい傾向があります。

このような理由から、ニキビ跡治療には、高い効果はなくとも低リスクで行えるフラクショナルレーザーやダーマペンが長く続けられてきました。近年、これらの治療で改善が不十分なケースに対して、サブシジョンが選択肢として加わってきたという経緯があります。

失敗しないためのクリニック選び

経験豊富な医師の重要性

サブシジョンは医師の技術に大きく左右される治療です。失敗を避けるために最も重要なのは、経験豊富で技術力の高い医師に施術を受けることです。

確認すべきポイント

  1. 外科経験の有無 形成外科や美容外科での勤務経験があるか、外科手術の実績があるかを確認しましょう。組織の剥離操作は外科的技術が必要です。
  2. サブシジョンの症例数 年間どの程度のサブシジョン治療を行っているか、症例写真を見せてもらえるかを確認しましょう。症例数が多いほど、さまざまなケースに対応できる技術が培われています。
  3. 学会発表や論文執筆の実績 学会での発表や論文執筆を行っている医師は、常に最新の知見をアップデートし、技術向上に努めている証拠です。
  4. 日本皮膚科学会認定専門医かどうか 皮膚科専門医の資格を持っているかも重要な指標です。皮膚の構造や疾患に関する深い知識が必要とされます。

丁寧なカウンセリング

適応の正確な診断 サブシジョンが本当に適した治療法かどうかを、丁寧に診断してくれるクリニックを選びましょう。ニキビ跡にはさまざまなタイプがあり、すべてにサブシジョンが適しているわけではありません。

不適応なケースに対しては、他の治療法(フラクショナルレーザー、ダーマペン、TCAクロス、切除術など)を提案してくれるクリニックは信頼できます。

リスクと合併症の説明 メリットだけでなく、起こりうる合併症やリスクについても詳しく説明してくれるクリニックを選びましょう。「絶対に失敗しない」「必ず綺麗になる」といった過度な保証をするクリニックには注意が必要です。

治療計画の提示 必要な治療回数、治療間隔、併用療法の必要性、総費用などを明確に提示してくれることも重要です。

料金体系の透明性

サブシジョンは自費治療であり、クリニックによって料金設定が大きく異なります。

  • 治療範囲による料金の違い
  • 麻酔代やアフターケア用品の費用
  • ヒアルロン酸などの併用療法の費用
  • 追加料金の有無

これらを事前に明確に説明してくれるクリニックを選びましょう。極端に安い料金を提示するクリニックは、経験の浅い医師が担当したり、適切な器具を使用していない可能性があります。

アフターケア体制

治療後のフォローアップ体制が整っているかも重要なポイントです。

  • 治療後の診察が料金に含まれているか
  • トラブル発生時の対応
  • 連絡可能な時間帯や方法
  • 24時間対応の緊急連絡先の有無

サブシジョンは治療後のダウンタイムがあり、合併症のリスクもゼロではありません。何か問題が生じた際に、すぐに相談・受診できる体制が整っているクリニックを選ぶことが大切です。

サブシジョンと併用される治療法

ヒアルロン酸注入

サブシジョンの効果を最大化し、再癒着を防ぐために、ヒアルロン酸注入との併用が推奨されています。

2022年のEbrahim HMらの医学研究では、ヒアルロン酸とサブシジョンを組み合わせた治療では94.1%の患者に明らかな改善が認められたのに対し、サブシジョン単独では67.3%の効果だったと報告されています。

ヒアルロン酸併用の利点

  • 剥離した組織の間にスペースを作り、再癒着を防ぐ
  • コラーゲン産生を促進する
  • 即座のボリュームアップ効果
  • より平坦な皮膚面を実現

クロスリンク(架橋)されたヒアルロン酸は、体内で徐々に吸収されながら、その間に新しいコラーゲンの産生を促します。

フラクショナルレーザー・CO2レーザー

サブシジョンで癒着を解除した後、皮膚表面の質感や細かい凹凸を改善するために、フラクショナルレーザーやCO2レーザーを併用することがあります。

併用の利点

  • サブシジョンで深部の問題を解決
  • レーザーで表層の問題を改善
  • コラーゲンリモデリングの促進
  • より滑らかな皮膚質感の実現

一部のクリニックでは、サブシジョンと炭酸ガスレーザーを組み合わせた治療で、1回の治療で大幅な改善を実現している症例も報告されています。

ダーマペン・ポテンツァ

マイクロニードル治療であるダーマペンやポテンツァも、サブシジョンとの併用が効果的です。

併用の利点

  • 皮膚の創傷治癒反応を促進
  • 成長因子や薬剤の導入が可能
  • 表皮から真皮浅層の改善
  • 毛穴の開きの改善

特にポテンツァは高周波(RF)を組み合わせることで、ダウンタイムを短縮しながら効果を高めることができます。

PRP(多血小板血漿)療法・成長因子

ニキビ跡になりやすい方は、皮膚の正常な再生がされにくい傾向があります。そのため、サブシジョン治療後に、PRP(多血小板血漿)療法や成長因子を追加することで、皮膚のターンオーバーに強く働きかけ、正常な再生を促す効果が期待できます。

TCAクロス

アイスピック型など、サブシジョンでは改善が難しい狭くて深いニキビ跡に対しては、TCAクロス(トリクロロ酢酸による化学剥離)を併用することがあります。

ただし、TCAクロスは酸の作用で皮膚に障害を与えるため、範囲の微調整が難しく、効果が乏しい、あるいは逆に悪化や色素沈着を起こすリスクもあるとして、採用していないクリニックもあります。

治療スケジュールと経過

必要な治療回数

サブシジョンは、1回の治療で完璧な結果を得ることは難しい施術です。

一般的な治療回数

  • 軽度〜中等度:1〜3回
  • 重度・深いニキビ跡:3〜5回
  • 非常に深い瘢痕:5回以上

治療回数が少ないと、効果が実感できない可能性があります。特に線維化が強い場合は、1回では十分に取り除けないこともあります。

部位による違い

  • こめかみ:1回で効果を実感される方が多い
  • 頬の内側:必要回数が多くなりやすい傾向

治療間隔

推奨される間隔 一般的には1ヶ月ごとの治療が推奨されます。これは、再癒着が起こる前に、さらにサブシジョンで線維組織を切ることができるためです。

ただし、3ヶ月や半年間隔が空いても効果が落ちるわけではないため、患者さんの都合に合わせた治療計画を立てることも可能です。

ダウンタイム

一般的な経過

  • 施術直後〜3日目:腫れ、むくみ、内出血が最も目立つ時期。患部を冷やすことで症状を和らげることができます。
  • 4日目〜1週間:腫れやむくみは徐々に引いていきますが、内出血は紫色から黄色へと変色しながら残ります。
  • 1〜2週間:ほとんどの内出血は吸収されて消失します。赤みはまだ残っていることがあります。
  • 1ヶ月:赤みも徐々に落ち着き、効果が実感できるようになります。
  • 3ヶ月:コラーゲンリモデリングが進み、最終的な効果が現れます。

日常生活への影響

  • 洗顔:当日から可能(針穴を避けて優しく)
  • メイク:当日から可能(治療部位を避けて)
  • 入浴:当日から可能(長時間の入浴は避ける)
  • 運動・飲酒:腫れや赤みが引いてから(通常翌日以降)

サブシジョン以外の治療選択肢

サブシジョンが適さない場合や、より軽度のニキビ跡に対しては、他の治療法が選択されます。

フラクショナルレーザー

CO2レーザーやエルビウムヤグレーザーを用いて、皮膚に微細な穴を無数に開けることで、創傷治癒反応を促し、コラーゲン産生を増やす治療です。

適応

  • 浅いボックスカー型
  • 瘢痕形成の少ないニキビ跡
  • 毛穴の開き
  • 皮膚の質感改善

特徴

  • 2〜4週間ごとに5回程度の治療が必要
  • ダウンタイムは1週間程度
  • サブシジョン後の質感改善にも有効

ダーマペン

極細の針を電動でコントロールし、皮膚に微細な穴を開けることで、創傷治癒を促す治療です。

適応

  • 軽度〜中等度のニキビ跡
  • 毛穴の開き
  • 肌質改善

特徴

  • レーザーより痛みが少ない
  • ダウンタイムは1週間程度
  • 薬剤導入と組み合わせることで効果向上

ピーリング治療

化学薬品を用いて古い角質を除去し、ターンオーバーを促進する治療です。

適応

  • 軽度のニキビ跡
  • 色素沈着
  • 肌質改善
  • ニキビの予防

特徴

  • 2〜4週間ごとに複数回必要
  • ダウンタイムは軽度
  • 他の治療との併用が効果的

手術的治療

非常に深いニキビ跡や、限られた数のニキビ跡に対しては、手術的な切除が有効な場合もあります。

パンチエキシジョン(Punch Excision) 円形のメスで陥凹部を切り取り、縫合する方法です。アイスピック型や深いボックスカー型に適応されます。

パンチエレベーション(Punch Elevation) 陥凹部の底部を切り取り、持ち上げて固定する方法です。

治療後のセルフケア

サブシジョンの効果を最大化し、合併症を防ぐためには、治療後の適切なケアが重要です。

紫外線対策

治療後の肌は非常にデリケートで、紫外線による色素沈着のリスクが高まっています。

具体的な対策

  • SPF30以上、PA+++以上の日焼け止めを毎日使用
  • 2〜3時間ごとに塗り直す
  • 帽子や日傘を活用する
  • 可能な限り直射日光を避ける

色素沈着は一度生じると改善に時間がかかるため、予防が最も重要です。

保湿ケア

治療後は皮膚のバリア機能が低下しているため、十分な保湿が必要です。

推奨される保湿剤

  • セラミド配合クリーム
  • ヒアルロン酸配合化粧水
  • ワセリンなどのオクルーシブ剤

刺激の少ない、低刺激性の製品を選びましょう。

避けるべき行為

以下の行為は、治療効果を低下させたり、合併症のリスクを高めるため避けましょう。

  • 治療部位を強く擦る・触る
  • ピーリング製品の使用
  • レチノール製品の使用(医師の指示があれば別)
  • サウナや激しい運動
  • 飲酒(血流が増加し、腫れや内出血が悪化)
  • 喫煙(創傷治癒を遅延させる)

処方薬の適切な使用

クリニックから処方された薬は、指示通りに使用しましょう。

  • 抗菌薬:感染予防のために指示された期間しっかり服用
  • 鎮痛薬:痛みがある場合に適宜使用
  • トラネキサム酸:色素沈着予防のために処方されることがある

よくある質問

Q1. サブシジョンは痛いですか?

A. 施術時は局所麻酔を使用するため、強い痛みを感じることはほとんどありません。麻酔注射時にチクッとした痛みがある程度です。痛みに弱い方には、麻酔クリームの事前塗布や笑気麻酔などのオプションを用意しているクリニックもあります。

Q2. 1回の治療でどのくらい改善しますか?

A. 個人差が大きいですが、1回の治療で20〜30%程度の改善が期待できます。深いニキビ跡や広範囲の場合は、3〜5回の治療で50〜70%程度の改善を目指すことが一般的です。完全に平らにすることは難しいケースもありますが、目立たなくなる程度の改善は多くの方で実感できます。

Q3. 内出血が消えない場合はどうすればいいですか?

A. 通常、内出血は1〜2週間で自然に消失します。2週間を過ぎても改善しない場合や、痛みを伴う場合は、治療を受けたクリニックに相談しましょう。血腫が形成されている可能性もあり、適切な処置が必要となることがあります。

Q4. サブシジョン後、すぐにレーザー治療を受けられますか?

A. 多くのクリニックでは、サブシジョンと同日にレーザー治療を行うプロトコルを採用していますが、これはクリニックの方針や患者さんの状態によって異なります。別々に行う場合は、サブシジョンから1ヶ月程度空けることが推奨されます。

Q5. 効果はどのくらい持続しますか?

A. サブシジョンで剥離した癒着は、基本的に元に戻ることはありません。ただし、新たに線維化が進行したり、加齢による皮膚の変化により、徐々に陥凹が目立つようになることはあります。適切なスキンケアと紫外線対策を続けることで、効果を長期間維持できます。

Q6. ニキビができている状態でサブシジョンを受けられますか?

A. 活動性のニキビがある状態では、サブシジョンは推奨されません。まず保険適用の標準的なニキビ治療(アダパレン、過酸化ベンゾイルなど)で炎症を抑えてから、ニキビ跡の治療に移行することが望ましいとされています。新しいニキビができている状態でニキビ跡の治療を始めても、さらにニキビ跡ができてしまうためです。

Q7. 男性でもサブシジョンを受けられますか?

A. もちろん可能です。ニキビ跡は男女問わず生じる問題であり、サブシジョンの効果に性別による差はありません。男性の場合、ヒゲ剃りによる刺激で炎症が起こりやすいため、治療後のケアには特に注意が必要です。

まとめ

サブシジョンは、従来の治療法では改善が難しかった深いニキビ跡に対して、高い効果が期待できる治療法です。しかし、すべてのニキビ跡に適しているわけではなく、また医師の技術に大きく依存する治療でもあります。

「失敗」を避けるためには、以下のポイントが重要です。

1. 適切な診断を受ける 自分のニキビ跡のタイプがサブシジョンに適しているかを、経験豊富な医師に診断してもらいましょう。

2. 技術力の高いクリニックを選ぶ 外科経験があり、サブシジョンの症例数が豊富な医師を選ぶことが最も重要です。料金だけで選ばず、実績や症例写真を確認しましょう。

3. 現実的な期待値を持つ 1回の治療で完璧になることは難しく、3〜5回程度の治療が必要なケースが多いことを理解しましょう。完全に平らにすることは難しくても、目立たなくなる程度の改善は多くの方で実感できます。

4. 併用療法を検討する ヒアルロン酸注入やレーザー治療など、サブシジョンと併用することで、より高い効果が期待できます。

5. 適切なアフターケアを行う 紫外線対策や保湿、医師の指示を守ることで、効果を最大化し、合併症のリスクを最小限に抑えることができます。

6. 新しいニキビを作らない ニキビ跡の治療と並行して、新しいニキビができないよう、保険適用の標準的なニキビ治療を継続することも大切です。

サブシジョンは適切に行えば、ニキビ跡に悩む方にとって非常に有効な治療選択肢となります。しかし、誰にでも適している治療ではないこと、医師の技術が結果を大きく左右することを理解し、慎重にクリニックを選ぶことが成功への鍵となります。

ニキビ跡でお悩みの方は、まず信頼できる皮膚科専門医に相談し、ご自身のニキビ跡のタイプや状態を正確に診断してもらうことから始めましょう。

アイシークリニック大宮院のニキビ跡治療

アイシークリニック大宮院では、専門医による丁寧な診察とカウンセリングを行い、一人ひとりの肌の状態に最適な治療をご提案しています。

サブシジョンをはじめとするニキビ跡治療について、不安な点や疑問点がございましたら、お気軽にご相談ください。患者様が安心して治療を受けていただけるよう、メリットだけでなくリスクについても丁寧にご説明いたします。

参考文献・参考サイト

  1. 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
    https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/
  2. Mindsガイドラインライブラリ「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
    https://minds.jcqhc.or.jp/
  3. 日本皮膚科学会 一般公開ガイドライン
    https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=2
  4. Orentreich DS, Orentreich N. Subcutaneous incisionless (subcision) surgery for the correction of depressed scars and wrinkles. Dermatol Surg. 1995;21(6):543-549.
  5. Dadkhahfar S, Robati RM, Gheisari M, Moravvej H. Subcision: Indications, adverse reactions, and pearls. J Cosmet Dermatol. 2020;19(5):1029-1038.
  6. Ebrahim HM, Nassar A, ElKashishy K, et al. A combined approach of subcision with either cross-linked hyaluronic acid or threads in the treatment of atrophic acne scars. J Cosmet Dermatol. 2022;21(8):3334-3342.

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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