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脂肪肉腫の生存率について:種類別の予後と知っておくべき重要なポイント

はじめに

脂肪肉腫という診断を受けた方、またはそのご家族にとって、最も気になることの一つが「生存率」ではないでしょうか。医療機関で「脂肪肉腫」と告げられた時、多くの方が不安と疑問を抱えることは自然なことです。

脂肪肉腫は、体内の脂肪組織から発生する悪性腫瘍(がん)の一種です。希少ながんとされていますが、軟部組織肉腫の中では最も多く見られるタイプの一つとなっています。この記事では、脂肪肉腫の生存率について、種類別の違いや予後に影響を与える要因を詳しく解説していきます。

正確な情報を知ることは、適切な治療選択や今後の生活設計において非常に重要です。ただし、生存率はあくまで統計的なデータであり、個々の患者さんの状態によって予後は大きく異なることをご理解ください。

脂肪肉腫とは何か

脂肪肉腫の基本知識

脂肪肉腫は、脂肪細胞に似た細胞から構成される悪性軟部腫瘍です。全身のどこにでも発生する可能性がありますが、特に以下の部位に多く見られます。

  • 大腿部(太もも):最も発生頻度が高い
  • 後腹膜(お腹の奥):腎臓や腸の後ろの空間
  • 臀部:お尻の深部
  • 上肢:腕や肩周辺

脂肪肉腫は、良性の脂肪腫(リポーマ)とは全く異なる疾患です。脂肪腫は非常に一般的な良性腫瘍で、がん化することはほとんどありませんが、脂肪肉腫は最初から悪性腫瘍として発生します。

発症頻度と患者層

脂肪肉腫は、人口10万人あたり年間約1〜2人程度の発症率とされており、希少がんに分類されます。日本全体では年間約800〜1,000例程度の新規診断があると推定されています。

発症年齢は幅広く、20代から80代まで見られますが、50〜60代が最も多い傾向にあります。性別による大きな差はありませんが、やや男性に多いとする報告もあります。

脂肪肉腫の種類(病理学的分類)

脂肪肉腫は病理学的特徴に基づいて、主に5つのサブタイプに分類されます。この分類は生存率や治療方針を考える上で極めて重要です。

1. 高分化型脂肪肉腫(Well-differentiated Liposarcoma)

高分化型脂肪肉腫は、最も予後が良好なタイプです。顕微鏡で見ると正常な脂肪細胞に近い構造を保っており、悪性度は比較的低いとされています。

特徴:

  • 成長速度が遅い
  • 局所再発のリスクはあるが、遠隔転移(他の臓器への転移)はまれ
  • 四肢や体幹の深部に多く発生
  • 完全切除できれば予後は良好

発生部位によって、「異型脂肪腫性腫瘍(Atypical Lipomatous Tumor: ALT)」とも呼ばれます。特に四肢発生のものはALTと呼ばれることが多く、これは予後の良さを反映した命名です。

2. 脱分化型脂肪肉腫(Dedifferentiated Liposarcoma)

脱分化型は、高分化型脂肪肉腫の一部がより悪性度の高い細胞に変化したものです。

特徴:

  • 高分化型よりも予後が不良
  • 遠隔転移のリスクが高い(約15〜30%)
  • 後腹膜発生が多い
  • 局所再発率も高い(40〜80%)

脱分化の程度によっても予後が異なり、低悪性度の脱分化型は比較的予後が良好です。

3. 粘液型脂肪肉腫(Myxoid Liposarcoma)

粘液型は、特に若年者(30〜40代)に多く見られるタイプです。

特徴:

  • 大腿部や臀部の筋肉内に多く発生
  • ゼラチン状の外観
  • 中間的な予後
  • 骨や軟部組織への転移が特徴的(肺転移は比較的少ない)
  • 放射線治療に比較的感受性がある

粘液型には、低悪性度のものから高悪性度(円形細胞成分が多い)のものまで幅があり、これが予後に大きく影響します。

4. 円形細胞型脂肪肉腫(Round Cell Liposarcoma)

円形細胞型は、粘液型の中でも特に円形細胞成分が多いタイプで、別に分類されることもあります。

特徴:

  • 粘液型よりも悪性度が高い
  • 転移のリスクが高い
  • 予後は不良
  • 化学療法が検討されることが多い

5. 多形型脂肪肉腫(Pleomorphic Liposarcoma)

多形型は最も悪性度が高く、予後不良なタイプです。

特徴:

  • 高齢者(50〜70代)に多い
  • 四肢の深部に多く発生
  • 早期に遠隔転移を起こしやすい(特に肺)
  • 局所再発率も高い(30〜50%)
  • 最も予後が厳しいサブタイプ

脂肪肉腫の生存率:総合的なデータ

全体的な生存率

脂肪肉腫全体としての生存率は、国内外の複数の研究から以下のような数値が報告されています。

5年生存率(全サブタイプ平均):

  • 約60〜70%

10年生存率(全サブタイプ平均):

  • 約50〜60%

ただし、これらは全てのサブタイプ、全てのステージを含めた平均値であり、個々の状況によって大きく異なることに注意が必要です。

生存率の解釈について

医療統計における「5年生存率」とは、診断から5年後に生存している患者さんの割合を示します。これは、がん治療の効果を評価する標準的な指標として国際的に用いられています。

重要なポイント:

  1. あくまで統計値:生存率は過去のデータに基づいた統計であり、個々の患者さんの予後を正確に予測するものではありません
  2. 治療の進歩:医療技術は日々進歩しており、現在の治療を受ける患者さんの予後は、過去のデータよりも改善している可能性があります
  3. 個別要因の影響:年齢、全身状態、腫瘍の大きさや位置、治療への反応性など、多くの要因が予後に影響します

サブタイプ別の生存率詳細

高分化型脂肪肉腫の生存率

高分化型脂肪肉腫は、最も予後が良好なタイプです。

5年生存率:

  • 四肢発生の場合:約90〜95%以上
  • 後腹膜発生の場合:約70〜80%

10年生存率:

  • 四肢発生の場合:約85〜90%
  • 後腹膜発生の場合:約60〜70%

高分化型の特徴は、遠隔転移がほとんど起こらないことです。そのため、完全切除が達成できれば、非常に良好な予後が期待できます。ただし、後腹膜発生のものは局所再発のリスクが高く、これが生存率に影響を与えます。

後腹膜の高分化型脂肪肉腫は、周囲の重要臓器(腎臓、大腸、血管など)との関係から完全切除が困難な場合があり、これが四肢発生のものより予後がやや劣る理由となっています。

脱分化型脂肪肉腫の生存率

脱分化型は、高分化型よりも予後が不良となります。

5年生存率:

  • 全体:約40〜60%
  • 四肢発生:約60〜70%
  • 後腹膜発生:約30〜50%

10年生存率:

  • 全体:約30〜40%

脱分化型では、遠隔転移のリスクが高分化型よりも明らかに高くなります。肺への転移が最も多く、肝臓、骨などへの転移も見られます。

脱分化のグレードによる違い:

脱分化型の中でも、低悪性度(低グレード)の脱分化型は比較的予後が良好で、5年生存率が60〜70%程度とされています。一方、高悪性度(高グレード)の脱分化型では、5年生存率が30〜40%程度とより厳しい数値となります。

粘液型脂肪肉腫の生存率

粘液型は中間的な予後を示します。

5年生存率:

  • 低悪性度(円形細胞成分<5%):約80〜90%
  • 中等度:約60〜70%
  • 高悪性度(円形細胞成分>5%):約40〜50%

10年生存率:

  • 低悪性度:約70〜80%
  • 高悪性度:約30〜40%

粘液型の予後は、円形細胞成分の割合が重要な予後因子となります。円形細胞成分が5%未満の場合は低悪性度とされ、予後は比較的良好です。しかし、円形細胞成分が増えるにつれて予後は不良となります。

また、粘液型脂肪肉腫は、他のサブタイプと異なり、骨や他の軟部組織への転移が比較的多いという特徴があります。肺転移は比較的少なく、代わりに骨盤、脊椎、後腹膜などへの転移が見られることがあります。

円形細胞型および多形型脂肪肉腫の生存率

これらは最も予後が厳しいタイプです。

円形細胞型の5年生存率:

  • 約30〜50%

多形型の5年生存率:

  • 約30〜50%

円形細胞型・多形型の10年生存率:

  • 約20〜30%

これらのタイプは、診断時にすでに転移がある場合も少なくありません。また、治療後の早期に遠隔転移を起こすリスクが高く、特に肺転移が多く見られます。

ただし、近年は化学療法の進歩により、以前よりも予後が改善している可能性があります。特に粘液型/円形細胞型に対しては、アドリアマイシンとイホスファミドの併用療法などが効果を示すことがあります。

生存率に影響を与える重要な因子

脂肪肉腫の予後は、サブタイプだけでなく、様々な要因によって影響を受けます。

1. 腫瘍のサイズ

腫瘍の大きさは、予後に大きく影響する重要な因子です。

  • 5cm未満:比較的予後良好
  • 5〜10cm:中間的な予後
  • 10cm以上:予後不良

一般的に、腫瘍が大きいほど局所再発や遠隔転移のリスクが高まります。大きな腫瘍は、周囲組織への浸潤が広範囲に及んでいる可能性が高く、完全切除が困難になることがあります。

2. 腫瘍の深さと部位

腫瘍の発生部位も予後に影響します。

四肢発生:

  • 表層性(皮下):予後良好
  • 深部(筋膜下):予後やや不良

後腹膜発生:

  • 一般的に四肢発生より予後不良
  • 完全切除が困難
  • 局所再発率が高い(50〜80%)

後腹膜の脂肪肉腫は、周囲に重要臓器が多数存在するため、安全域を確保した完全切除が困難です。そのため、局所再発のリスクが非常に高く、これが生存率に影響します。

3. 組織学的悪性度(グレード)

腫瘍の悪性度は、顕微鏡で観察した際の細胞の形態や増殖活性などから判定されます。一般的にはFNCLCC(French Federation of Cancer Centers Sarcoma Group)グレーディングシステムが用いられます。

  • グレード1(低悪性度):5年生存率 約75〜90%
  • グレード2(中等度悪性度):5年生存率 約50〜70%
  • グレード3(高悪性度):5年生存率 約30〜50%

悪性度が高いほど、転移のリスクが高まります。

4. 切除断端の状態

手術による腫瘍の切除において、断端(切り取った縁)に腫瘍細胞が残っているかどうかは、予後を大きく左右します。

  • R0切除(完全切除):断端に腫瘍細胞なし → 予後良好
  • R1切除:顕微鏡的に断端に腫瘍細胞あり → 再発リスク増加
  • R2切除:肉眼的に腫瘍が残存 → 再発リスク大幅増加

完全切除が達成できた場合の5年生存率は約70〜80%とされていますが、不完全切除の場合は約30〜50%まで低下するとの報告があります。

5. 転移の有無

診断時または治療中に遠隔転移が見られる場合、予後は大幅に不良となります。

  • 限局性(転移なし):5年生存率 約60〜80%
  • 遠隔転移あり:5年生存率 約15〜30%

最も多い転移部位は肺で、その他、肝臓、骨、リンパ節などへの転移も見られます。

6. 年齢と全身状態

患者さんの年齢や全身状態も予後に影響します。

  • 高齢者(70歳以上):合併症のリスクが高く、手術や化学療法の耐容性が低下する可能性
  • 全身状態良好(PS 0-1):積極的治療が可能で予後良好
  • 全身状態不良(PS 2以上):治療選択肢が制限され予後に影響

7. 初発か再発か

初回治療か、再発後の治療かによっても予後が異なります。

  • 初発例:適切な初回治療により良好な予後が期待できる
  • 局所再発例:初発時よりやや予後不良だが、再切除により長期生存も可能
  • 遠隔転移再発例:予後は厳しいが、集学的治療により延命の可能性あり

脂肪肉腫の治療と予後への影響

外科的切除:最も重要な治療

脂肪肉腫の治療において、外科的な完全切除が最も重要です。可能な限り広範囲に正常組織を含めて切除する「広範切除」が推奨されます。

切除マージン:

  • 四肢の場合:腫瘍周囲1〜2cm以上の正常組織を含めて切除
  • 後腹膜の場合:周囲臓器の合併切除が必要になることも

完全切除が達成できれば、特に高分化型や低悪性度の粘液型では長期生存が期待できます。

放射線治療の役割

放射線治療は、以下の場合に検討されます。

術前放射線治療:

  • 腫瘍を縮小させ、切除を容易にする
  • 切除断端陽性のリスクを減らす
  • 照射野が比較的小さくできる利点

術後放射線治療:

  • 局所再発のリスクを減らす
  • 切除断端陽性の場合に特に有効
  • より広い照射野が必要

粘液型脂肪肉腫は、放射線治療に比較的感受性が高いとされています。高分化型は放射線感受性が低く、多形型も限定的な効果とされています。

放射線治療により、局所制御率は向上しますが、全生存率への明確な改善効果は議論が分かれています。

化学療法の効果

脂肪肉腫に対する化学療法の効果は、サブタイプによって異なります。

化学療法が比較的有効なタイプ:

  • 粘液型/円形細胞型脂肪肉腫
  • 多形型脂肪肉腫

使用される主な薬剤:

  • アドリアマイシン(ドキソルビシン)
  • イホスファミド
  • ダカルバジン
  • ゲムシタビン+ドセタキセル併用療法

高分化型や脱分化型脂肪肉腫は、従来の化学療法に対する反応性が低いとされてきました。しかし、近年、分子標的薬の研究が進んでいます。

分子標的治療と新しい治療法

近年、脂肪肉腫の分子生物学的特徴が明らかになり、新しい治療法の開発が進んでいます。

トラベクテジン(ヨンデリス®):

  • 進行性軟部肉腫に対して承認されている薬剤
  • 特に粘液型脂肪肉腫に効果が期待される

エリブリン(ハラヴェン®):

  • 軟部肉腫に対して承認
  • 脂肪肉腫にも一定の効果

CDK4/6阻害薬:

  • 高分化型/脱分化型脂肪肉腫に対する新しいアプローチ
  • パルボシクリブなどが臨床試験中

MDM2阻害薬:

  • 高分化型/脱分化型に特徴的なMDM2遺伝子増幅に着目
  • 新規治療法として期待される

これらの新しい治療法により、従来の治療法では効果が限定的だったサブタイプに対しても、将来的に予後改善が期待されています。

再発と転移への対応

局所再発

脂肪肉腫は局所再発のリスクがあります。特に後腹膜発生のものや、初回手術で不完全切除となった場合にリスクが高まります。

局所再発の頻度:

  • 四肢発生:約10〜30%
  • 後腹膜発生:約50〜80%

局所再発した場合でも、再度の外科的切除により長期生存が可能なケースも多くあります。後腹膜の再発例では、複数回の手術を繰り返しながら長期生存している患者さんもいます。

遠隔転移

遠隔転移が出現した場合、予後は厳しくなりますが、治療オプションは存在します。

肺転移への対応:

  • 転移病巣が少数で切除可能な場合:外科的切除
  • 多発性の場合:化学療法、分子標的薬

その他の部位への転移:

  • 化学療法
  • 放射線治療(症状緩和目的)
  • 緩和ケア

転移があっても、適切な治療により数年以上生存される方もいます。

早期発見の重要性とフォローアップ

なぜ早期発見が重要なのか

脂肪肉腫の予後を改善するために最も重要なのは、早期発見と適切な初回治療です。

腫瘍が小さく、転移がない段階で発見できれば:

  • 完全切除が容易
  • 周囲組織への影響が少ない
  • 術後の機能障害が最小限
  • 局所再発や転移のリスクが低い

そのため、5cm以上の軟部腫瘤や、急速に大きくなる腫瘤に気づいた場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。

こんな症状に注意

以下のような症状がある場合は、医療機関への受診を検討してください。

  • しこり・腫瘤:特に5cm以上のもの
  • 急速な増大:数週間〜数ヶ月で大きくなる
  • 深部の腫瘤:皮下よりも深い位置にある感じ
  • 痛み:腫瘤に伴う痛みや圧迫感
  • 機能障害:腫瘤により関節の動きが制限される

ただし、脂肪肉腫の多くは初期には痛みがなく、大きくなってから気づかれることも多いのが実情です。

治療後のフォローアップ

脂肪肉腫の治療後は、定期的なフォローアップが非常に重要です。

推奨されるフォローアップスケジュール:

初回治療後2〜3年間:

  • 3〜4ヶ月ごと
  • 局所のMRIまたはCT
  • 胸部CT(転移検索)

3〜5年目:

  • 6ヶ月ごと
  • 同様の画像検査

5年以降:

  • 年1回程度
  • ただし、高分化型では長期にわたるフォローが推奨される

再発の約80%は治療後2〜3年以内に起こるとされていますが、高分化型や粘液型では5年以上経過してからの再発も見られるため、長期的なフォローアップが重要です。

生活の質(QOL)への配慮

機能温存と生活の質

脂肪肉腫の治療において、完全切除を目指すことは重要ですが、同時に患者さんの生活の質を保つことも大切です。

四肢の脂肪肉腫:

  • 可能な限り肢温存手術を目指す
  • リハビリテーションの重要性
  • 術後の機能回復プログラム

後腹膜の脂肪肉腫:

  • 周囲臓器の機能温存
  • 栄養管理
  • 術後の消化機能への配慮

心理的サポート

がんの診断を受けることは、患者さんやご家族に大きな心理的負担をもたらします。

  • 医療チームとのコミュニケーション:疑問や不安を遠慮なく相談
  • 心理的サポート:臨床心理士、カウンセラーの活用
  • 患者会・サポートグループ:同じ経験を持つ方々との交流
  • 緩和ケア:早期からの緩和ケアチームの関与

希望を持つことの重要性

統計は個人を表さない

この記事では多くの統計データをご紹介しましたが、最も重要なことは、これらの数字は個々の患者さんの運命を決定するものではないということです。

統計上の生存率が50%であっても、それは「50%の確率で生存する」という意味ではありません。実際には、適切な治療を受けて長期生存される方と、残念ながら予後不良となる方の両方が存在するということです。

医療の進歩

脂肪肉腫の診断・治療は年々進歩しています。

  • 診断技術の向上:MRI、PET-CTなど画像診断の精度向上
  • 病理診断の精緻化:分子生物学的手法による正確な診断
  • 手術技術の発展:より正確で機能温存を目指した手術
  • 新規薬剤の開発:分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの研究

現在治療を受けられている方の予後は、過去のデータよりも改善している可能性があります。

セカンドオピニオンの活用

脂肪肉腫は希少がんであり、経験豊富な専門施設での治療が推奨されます。診断や治療方針について疑問がある場合は、積極的にセカンドオピニオンを求めることも一つの選択肢です。

セカンドオピニオンが有用な場合:

  • 診断に不安がある
  • 提案された治療法について他の選択肢を知りたい
  • より専門的な施設での治療を検討したい

日本では、がん診療連携拠点病院や大学病院などで、軟部肉腫の専門的な診療を行っている施設があります。

患者さんとご家族へのメッセージ

脂肪肉腫という診断は、患者さんやご家族にとって大きな衝撃かもしれません。しかし、適切な治療により良好な予後が期待できるケースも多くあります。

大切なこと:

  1. 正確な情報を得る:信頼できる医療機関や情報源から正確な情報を得ましょう
  2. 医療チームとの協力:担当医や看護師、その他の医療スタッフと良好な関係を築き、疑問や不安を共有しましょう
  3. 希望を持つ:統計は一つの目安であり、個々の状況によって予後は大きく異なります
  4. サポートを受ける:一人で抱え込まず、家族、友人、医療チーム、患者会などのサポートを活用しましょう
  5. 生活の質を大切に:治療だけでなく、日々の生活の質を保つことも重要です

まとめ

脂肪肉腫の生存率は、サブタイプ、悪性度、発生部位、腫瘍の大きさ、治療方法など、多くの要因によって大きく異なります。

重要なポイント:

  • 高分化型脂肪肉腫は最も予後が良好で、特に四肢発生のものは5年生存率が90%以上
  • 脱分化型は中間的な予後で、5年生存率は40〜60%程度
  • 粘液型は円形細胞成分の割合により予後が異なり、低悪性度のものは80〜90%の5年生存率
  • 多形型・円形細胞型は最も予後が厳しく、5年生存率は30〜50%程度
  • 完全切除が達成できるかが最も重要な予後因子
  • 腫瘍の大きさ、深さ、発生部位も予後に影響
  • 早期発見と適切な初回治療が予後改善の鍵

脂肪肉腫は希少がんですが、専門的な知識と経験を持つ医療チームによる適切な治療により、多くの患者さんが良好な経過をたどっています。

アイシークリニック大宮院では、皮膚・軟部組織の腫瘤に関するご相談を承っております。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。ただし、脂肪肉腫の診断・治療には専門的な設備と経験が必要なため、必要に応じて専門施設へのご紹介も行っています。

参考文献

本記事は以下の信頼できる情報源を参考に作成しました。

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス
    https://ganjoho.jp/public/cancer/sarcoma/index.html
    軟部肉腫に関する一般向けの信頼できる情報
  2. 日本整形外科学会 軟部腫瘍診療ガイドライン
    https://www.joa.or.jp/
    軟部腫瘍の診断・治療に関する専門的ガイドライン
  3. 日本癌治療学会
    https://www.jsco.or.jp/
    がん治療に関する学術的情報
  4. 厚生労働省 がん対策情報
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/index.html
    国のがん対策に関する公式情報
  5. 日本サルコーマ治療研究学会(JSTAR)
    http://www.sarcoma.jp/
    肉腫専門の学術団体による情報

監修について
本記事の内容は一般的な医学情報を提供することを目的としており、個別の診断や治療の代替となるものではありません。症状や治療についてのご相談は、必ず医療機関を受診してください。


監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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