はじめに
傷跡が赤く盛り上がり、かゆみや痛みが続いて困っていませんか?手術跡やニキビ跡、ピアス穴などが原因で生じる「ケロイド」は、見た目の問題だけでなく、日常生活にも影響を及ぼすことのある疾患です。
かつては「治らない」と言われることも多かったケロイドですが、医療技術の進歩により、現在では適切な治療を受けることで症状を大きく改善できるようになりました。本記事では、ケロイドの原因やメカニズム、肥厚性瘢痕との違い、そして最新の治療法について、医学的な根拠に基づいて詳しく解説いたします。
大宮エリアでケロイド治療をお探しの方にとって、治療の第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
ケロイドとは何か
ケロイドの定義と特徴
ケロイドとは、皮膚に傷ができた後、その傷が治癒する過程で真皮(皮膚の深い層)に炎症が続き、コラーゲンなどの線維成分が過剰に産生されることで生じる疾患です。傷跡が赤く盛り上がり、元の傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がっていくことが最大の特徴とされています。
「ケロイド」という名称は、ギリシャ語で「カニや鳥獣の爪に似たもの」という意味を持ち、病変がカニの足を広げたような形態に類似することに由来しています。日本語では「蟹足腫(かいそくしゅ)」とも呼ばれることがあります。
ケロイドは腫瘍ではなく、悪性腫瘍のように転移したり命を脅かしたりするものではありません。しかし、赤く盛り上がった見た目の問題に加え、しつこいかゆみや痛みを伴うことが多く、患者さんのQOL(生活の質)を大きく低下させる可能性があります。
ケロイドと肥厚性瘢痕の違い
ケロイドと混同されやすい疾患に「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」があります。どちらも傷跡が赤く盛り上がり、かゆみや痛みを伴うという点では共通していますが、いくつかの重要な違いがあります。
肥厚性瘢痕は、元の傷の範囲内にとどまり、それを超えて拡大することはありません。また、時間の経過とともに(数か月から数年かけて)自然に白く柔らかくなり、平坦化する傾向があります。治療に対する反応も比較的良好です。
一方、ケロイドは元の傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がり、自然に治ることはほとんどありません。放置すると徐々に拡大し続け、治療に対しても抵抗性を示すことがあります。
ただし、両者の区別は必ずしも明確ではなく、中間的な性質を持つ病変も多く存在します。そのため、正確な診断と適切な治療方針の決定には、専門医による診察が重要となります。
ケロイドができるメカニズム
創傷治癒の過程とケロイド発生
私たちの皮膚に傷ができると、それを修復するための創傷治癒過程が始まります。この過程は大きく4つの段階に分けられます。
第1段階は血液凝固期で、傷ができると出血し、その後血が固まります。第2段階は炎症期で、傷とその周囲が赤くなります。第3段階は増殖期で、傷がだんだん浅くなり、新しい組織が作られます。第4段階は再構築期(成熟期)で、傷が皮膚で覆われて治癒し、最終的な傷跡となります。
通常、これらの段階はスムーズに進行し、傷はきれいに治癒します。しかし、再構築期がうまく進まないと、肥厚性瘢痕やケロイドが生じます。この段階では、コラーゲンを代表とする様々な成分が分解と生成を繰り返しながら、創部がより強固に成熟していきます。
ケロイドでは、この炎症が過剰かつ長期間続くことで、線維芽細胞がコラーゲンを過剰に産生し続け、結果として赤く盛り上がった病変が形成されます。血管も増生するため赤く見え、炎症細胞が発する物質によりかゆみや痛みが生じます。
皮膚にかかる張力の影響
近年の研究では、ケロイド発生における皮膚にかかる張力(引っ張られる力)の重要性が注目されています。日本医科大学の研究グループは、コンピューターシミュレーションにより「ケロイドは張力によって形態が変わり、張力こそが拡大の原因である」という重要な発見をしました。
このことは、ケロイドが胸部、肩、下腹部など、日常生活で頻繁に動かす部位や皮膚が常に引っ張られる部位に発生しやすいことと一致しています。運動などでケロイドの部位が引っ張られると炎症が強くなるため、胸のケロイドがある方が腕立て伏せをしたり、腹部手術後のケロイドがある方が腹筋運動をしたりすると悪化する可能性があります。
ケロイドの原因とリスク因子
ケロイド体質と遺伝
ケロイドの発生には「ケロイド体質」と呼ばれる個人の素因が深く関わっています。同じような傷や手術を経験しても、ケロイドになる人とならない人がいるのは、この体質の違いによるものです。
ケロイド体質は親から子へと遺伝する傾向があり、日本皮膚科学会のガイドラインによると、ケロイド患者さんの約30〜40%に家族歴があると報告されています。また、人種によっても発症率に差があることがわかっており、白色人種には少なく、黒色人種に多い傾向があります。日本人を含む黄色人種はその中間に位置します。
ただし、「ケロイド体質」と自己判断される方の中には、実際には軽度の肥厚性瘢痕を経験した通常の体質の方も多いとされています。ケロイド体質かどうか心配な場合は、専門医に相談することをお勧めします。
ケロイドの原因となる傷
ケロイドは様々な傷がきっかけとなって発生します。主な原因として以下のものが挙げられます。
手術による傷は、帝王切開跡、心臓手術跡、甲状腺手術跡など様々な手術創からケロイドが発生することがあります。近年では、腹腔鏡手術やロボット手術の創がケロイド化する患者さんも増加しています。
やけど(熱傷)は、皮膚の深い層にまで損傷が及ぶと、ケロイドのリスクが高まります。
ニキビは、ケロイドの原因として最も多いものの一つです。特に胸や背中、顎のニキビ跡からケロイドが発生することがあります。
ピアスによる傷は、耳たぶのピアス穴からケロイドが発生し、時にゴルフボール大にまで成長することもあります。
BCG接種痕は、BCGワクチンは皮膚で炎症を起こして免疫反応を誘導するため、ケロイド体質の方では接種痕からケロイドが発生することがあります。
その他にも、虫刺され、毛嚢炎、帯状疱疹、クラゲに刺された傷、リストカットの傷なども原因となり得ます。特に注意すべきは、ケロイド体質の方では、本人が意識していないような小さな傷からもケロイドが発生することがあるという点です。
悪化因子
ケロイドを悪化させる因子として、以下のものが知られています。
女性ホルモンの影響により、特に妊娠後期にはケロイドが悪化しやすく、授乳中は軽快する傾向があります。
高血圧もケロイドの悪化因子として報告されています。
物理的刺激として、運動などで病変部が引っ張られる力が加わると、炎症が強くなり悪化します。サウナ、長風呂、激しい運動なども血流を増加させるため悪化因子となります。
ストレスや睡眠不足も炎症を悪化させる可能性があります。
飲酒は血流を増加させるため、一時的に赤みやかゆみが増すことがあります。
ケロイドができやすい部位
ケロイドには好発部位があり、以下の部位で発生しやすいことがわかっています。
前胸部は最もケロイドができやすい部位の一つです。皮膚の緊張が強く、常に呼吸で動きがあるため、傷の治癒過程で負担がかかりやすいとされています。
肩から上腕にかけても皮膚の動きが大きく、ケロイドができやすい部位です。BCG接種痕、虫刺され跡、ニキビ跡などからケロイドが形成されることがあります。
下腹部、特に帝王切開後の恥骨上部は、ケロイドの好発部位として知られています。
耳たぶはピアス穴からケロイドが発生しやすい部位です。
下顎角部(顎の角の部分)もニキビ跡からケロイドが発生しやすく、若年層に多くみられます。
一方、手のひらや足の裏、顔面(下顎角部を除く)、頭部、下腿などはケロイドが発生しにくい部位とされています。
ケロイドの診断
診察と問診
ケロイドの診断は、主に視診(見て判断する)と問診(症状や経過を聞く)によって行われます。医師は傷跡の部位、形状、色調、硬さ、周囲への広がりなどを観察し、以下のような情報を確認します。
過去の傷やケロイドの既往歴、家族にケロイドがある人がいるかどうか、BCG接種痕の状態、過去の手術歴やその傷跡の経過などを詳しく聴取します。
鑑別診断の重要性
ケロイドは見た目だけで診断できることが多いですが、皮膚線維肉腫などの腫瘍と外観が似ている場合があります。特に、長期間治療を受けてもケロイドとは違う経過をたどる場合は、別の疾患である可能性も考慮されます。
必要に応じて、針生検などで組織の一部を採取し、病理検査によって確定診断を行うこともあります。ケロイドの顕微鏡検査では、特徴的なコラーゲン線維の束(厚い好酸性コラーゲン束)が認められることがあります。
重症度の評価
ケロイドや肥厚性瘢痕の診療をより適切に行うため、瘢痕・ケロイド治療研究会により「JSW Scar Scale(JSS)」という評価基準が作成されています。この評価基準により、病変がケロイド的な性質が強いのか、肥厚性瘢痕的な性質が強いのかを比較的簡単にスコア化して判定することができます。
ケロイドの治療法
ケロイド治療の目的は、かゆみや痛みといった自覚症状を和らげ、赤みや盛り上がりといった見た目を改善し、患者さんのQOLを向上させることです。日本形成外科学会の診療ガイドラインでは、「保存的治療が第一選択である」という基本方針が示されています。
保存的治療(手術をしない治療)
1. 外用療法(塗り薬・貼り薬)
ステロイド含有テープ(エクラープラスター)は、現在のケロイド治療の中心となる薬剤です。ステロイドの抗炎症作用により、皮膚線維細胞の増殖を抑え、赤みやかゆみを改善し、ケロイドを平坦化させる効果があります。
テープは病変の大きさに合わせてハサミでカットし、正常皮膚に影響しないよう病変内に貼ります。通常は24時間ごとに入浴のタイミングで交換します。改善してきたら徐々にテープを貼る時間や間隔を開けていきます。
なお、弱いステロイドテープであるドレニゾンテープは2023年夏に販売中止となり、現在はエクラープラスターが主に使用されています。
ヘパリン類似物質(ヒルドイド)には消炎効果、血行促進効果、保湿効果があり、症状が軽快してきた際にステロイドテープからの移行薬として使用されることがあります。
2. 内服療法(飲み薬)
トラニラスト(リザベン)は、現在国内で唯一保険適用があるケロイド・肥厚性瘢痕に対する内服薬です。抗アレルギー薬としても使用される薬剤で、ケロイドの組織中の炎症細胞が出す伝達物質を抑制し、線維芽細胞のコラーゲン産生を抑える効果があります。
1日3回毎食後の内服を続けることで、数か月後にはケロイドの縮小が期待できます。特にかゆみに対する効果が高く、広範囲にケロイドがある場合や、痛い治療が苦手な患者さんにも適しています。
副作用として膀胱炎様症状(頻尿、排尿痛、残尿感など)が約5%の割合で出現することがあります。また、長期間服用する場合は定期的な肝機能検査が必要です。妊婦の方は使用できません。
柴苓湯(さいれいとう)は、内因性の副腎皮質ステロイドの分泌を促進して症状軽減効果があるとされる漢方薬です。
3. ステロイド注射(ケナコルト注射)
ケナコルト(トリアムシノロンアセトニド)というステロイド剤をケロイドに直接注射する治療法です。ステロイドを使用する保存的治療の中で最も有効とされており、注射後数日から数週間で効果が現れます。
通常は月1回のペースで数回繰り返します。かゆみや痛みなどの症状は早い段階で改善が認められますが、色調や盛り上がりの平坦化などの改善には数か月以上の継続が必要です。
デメリットとしては、硬いケロイド組織に注射するため強い痛みを伴うこと、毛細血管拡張や皮膚の菲薄化、陥凹などの副作用が起こりうることが挙げられます。女性では生理不順が生じることもあります。
なお、2025年7月現在、製薬会社からの供給の問題でケナコルト注射が実施できない医療機関もあります。その場合は、ステロイドテープなどの代替治療が提案されます。
4. 圧迫・固定療法
テープ、スポンジ、サポーター、シリコンジェルシート、コルセットなどにより創部を安静に保ち、絶えず力がかかることを減らす治療法です。
圧迫することでケロイドの過剰な血流を低下させ、皮膚線維細胞の増殖を抑え、炎症を改善する効果があります。また、服や体の動きで傷がこすれる刺激を軽減することもできます。
シリコンジェルシートには保湿効果や創の安静・固定効果があり、素材が柔らかくクッション性もあるため、疼痛が強い部分にやさしく使用できます。
5. レーザー治療(自費診療)
ケロイドや肥厚性瘢痕の中の血管を破壊したり、コラーゲンの分解を促進させる目的でレーザーを使用することがあります。色素レーザー(ダイレーザー)やNd:YAGレーザーなどが用いられます。
現時点では保険適用外であり、自費診療となります。フラクショナルCO2レーザーなども傷跡の質感改善に使用されることがあります。
6. ボトックス注射
ボトックス(ボツリヌストキシン)は、筋肉をリラックスさせる作用を利用して、傷のある部分の筋肉をゆるめ、皮膚にかかる張力を和らげる効果が期待できます。
皮膚の張力が和らぐことで炎症の悪化を防ぎ、ケロイドの過剰な増殖を抑える効果があるとされています。傷ができてからだけでなく、傷ができそうな場所に事前に注射することでケロイドの発生を予防する効果も期待されています。
通常は2か月に1回の頻度で数回繰り返します。現在は自費診療となります。
手術療法
保存的治療で効果が得られない場合や、瘢痕拘縮(ひきつれ)により関節の動きが障害されている場合、目立つ部位で整容性の問題が大きい場合などには、手術が検討されます。
手術の基本
ケロイドを手術で切除する場合、単純に切り取って縫合するだけでは高い確率で再発し、元のケロイドより大きくなってしまう危険性があります。そのため、形成外科では再発しにくい縫合法の工夫や、術後の再発予防治療を組み合わせることが重要です。
手術法としては、通常の切除縫合に加え、皮弁形成術、Z形成術、W形成術などの高度な手技が用いられることがあります。Z形成術は三角形の皮弁を2つ作成して入れ替えることで、傷の方向を変換させ、拘縮を解除する効果があります。
小さいものであれば局所麻酔で手術可能ですが、大きいものでは全身麻酔が楽な場合もあります。切除する深さは脂肪層や筋膜に達するまで、硬い組織を全て切除します。
術後放射線治療(電子線照射)
かつてケロイドに対して手術することは、「病変を拡大させる」「必ず再発する」などと言われ、禁忌とされてきました。しかし、近年では切除術と術後放射線照射を組み合わせることにより、再発率を大幅に低減できるようになり、ケロイドを完治させられるケースも増えています。
電子線は放射線の一種で、ケロイドの原因となる線維芽細胞の増殖を抑制することにより再発を予防します。電子線の効果は皮膚縫合部付近の浅い部分に限定され、深部の内臓や骨には影響がありません。
通常、手術当日から3〜4日間にわたり電子線照射を行います。1回の照射にかかる時間はわずかで、痛みはありません。形成外科診療ガイドラインでも、ケロイド切除後の放射線治療は有意に再発率を下げることが示されています。
ただし、妊娠を予定している場合や小児には放射線治療は推奨されません。また、長期的には照射部位に皮膚障害や色素沈着が起こる可能性、将来的な発がんリスクのわずかな上昇などについても説明を受けた上で治療を選択することが大切です。
部位別の治療アプローチ
耳のケロイド(ピアスケロイド)
ピアス穴からできた耳のケロイドは、手術が第一選択となることが多い部位です。他の部位より再発率が低いとされていますが、術後は放射線照射が推奨されます。手術が難しい場合は、術後早期からステロイド注射でコントロールを行います。
胸・肩・上腕のケロイド
ニキビや予防接種痕から発生しやすく、手術後に再度増大しやすい部位です。保存的治療(ステロイド注射、エクラープラスター、ボトックスなど)が第一選択となります。難治例ではケロイド部分のみをくり抜く手術も検討されます。
下腹部のケロイド(帝王切開後など)
縦方向の切開創で起こりやすく、妊娠・授乳期に悪化しやすい特徴があります。保存的治療が基本となり、妊娠・授乳中は治療内容を調整します。
顎のケロイド
ニキビが原因のことが多く、若年層に多くみられます。ニキビのコントロールも重要です。治療抵抗性で長期戦になりやすい部位です。
関節部のケロイド
動かすたびに刺激が加わり治りにくい部位です。ステロイド注射とテープ固定を基本に、早期からの集学的治療が必要です。
日常生活での注意点
ケロイドを悪化させないために
日常生活では以下の点に注意することで、ケロイドの悪化を防ぐことができます。
患部への刺激を避けることが重要です。患部を引っ張るような動きや激しい運動は控え、服でこすれる刺激も最小限にしましょう。
サウナ、長風呂、激しい運動、飲酒は血流を増加させるため悪化因子となります。完全に禁止する必要はありませんが、頻度を控えることが推奨されます。
睡眠不足やストレスも炎症を悪化させる可能性があるため、規則正しい生活を心がけましょう。
高血圧がある場合は、適切な血圧コントロールも重要です。
ケロイド体質の方への予防のポイント
ケロイド体質の方は、傷を作らないことが最も重要な予防策です。
不必要なピアスや美容的な処置は慎重に判断し、必要な場合は必ず医療スタッフにケロイド体質であることを伝えましょう。
手術が必要になった場合も、事前にケロイド体質であることを担当医に伝え、術後の予防的治療について相談しましょう。形成外科では、手術の際に最後の皮膚縫合を担当したり、傷が硬くなりつつある段階で早期に治療を開始したりすることで、ケロイドの発生を予防することができます。
ニキビができやすい方は、ニキビを早期に適切に治療し、跡が残らないようにすることも大切です。特に胸部や肩、顎のニキビは注意が必要です。
傷ができた場合は、早期に清潔に保ち、適切な処置を受けることで治癒期間を短くし、ケロイドのリスクを減らすことができます。
治療期間と通院の目安
ケロイドの治療は、長期間にわたることが多い疾患です。保存的治療のみでケロイドを完治させられることは稀であり、治療・通院期間は数か月から数年にわたることもあります。
一般的な通院頻度の目安として、ステロイド注射は月1回を3〜6か月以上継続することが多く、ステロイドテープは毎日の貼り替えを自宅で行いながら、定期的に外来でフォローします。内服治療は数か月以上の継続が必要です。
手術を行った場合も、術後の再発予防のために最低3年程度は保存的治療を継続することが推奨されています。
治療を中途半端にやめてしまうと再発してしまう可能性があるため、根気よく治療を続けることが大切です。専門医と相談しながら、無理なく継続できる治療プランを立てましょう。
保険適用について
ケロイドは疾患として認められており、多くの治療が健康保険の適用となります。
保険適用となる治療は、内服薬(トラニラスト)、外用薬(ステロイドテープ・軟膏)、ステロイド注射(ケナコルト)、手術療法、術後放射線療法などです。
自費診療となる治療は、レーザー治療、ボトックス注射などです。
症状が落ち着いた成熟瘢痕を美容目的で治療する場合は保険適用外となることがあります。また、病的でない瘢痕に対しては保険を適用できない場合もありますので、詳しくは受診時に医師にご確認ください。
何科を受診すべきか
ケロイドの治療は、主に形成外科または皮膚科で行われます。
形成外科は傷跡の治療を専門とする診療科であり、手術療法や術後の放射線治療、レーザー治療など、幅広い治療オプションを提供できます。特に、手術を検討している場合や、見た目の改善を重視する場合は形成外科の受診がお勧めです。
皮膚科でもケロイドの診断・治療は可能です。軽症例や保存的治療を希望する場合は、まず皮膚科を受診するのもよいでしょう。
日本形成外科学会専門医や、瘢痕・ケロイド治療研究会に所属している医師は、この分野のスペシャリストといえます。
大宮でケロイド治療を受けるなら
大宮エリアでケロイド治療をお探しの方は、形成外科・皮膚科を標榜する医療機関を受診されることをお勧めします。
ケロイドの治療は、患者さんの体質、年齢、ケロイドのできた場所によって最適な治療法が異なるため、専門の知識と経験を持つ医師に相談することが重要です。
アイシークリニック大宮院では、形成外科専門医による診察のもと、患者さん一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法をご提案しています。保険診療による治療から自費診療まで、幅広い選択肢の中から、ダウンタイムが少ない治療や痛みの少ない治療など、患者さんのご希望に沿った治療を行うことが可能です。
赤く盛り上がった傷跡でお悩みの方、かゆみや痛みにお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。早期に適切な治療を開始することで、より良い治療効果が期待できます。

よくある質問
A: 残念ながら、ケロイドは自然に治ることはほとんどありません。放置すると徐々に拡大し続ける傾向があります。一方、肥厚性瘢痕は時間の経過とともに自然に改善することがあります。症状がある場合は、早めに専門医を受診されることをお勧めします。
A: 完全に傷跡をなくすことは困難ですが、適切な治療により、赤みや盛り上がりを平らにし、かゆみや痛みをコントロールして目立ちにくくすることは可能です。治療開始が早ければ早いほど、より良い効果が期待できます。
Q: 治療は痛いですか?
A: ステロイド注射は硬いケロイド組織に注入するため、痛みを伴うことがあります。しかし、麻酔の併用や細い針の使用など、痛みを最小限にする工夫が行われています。テープ治療や内服治療は痛みを伴いません。痛い治療が苦手な方は、その旨を医師にお伝えください。
Q: 妊娠中でも治療できますか?
A: ステロイド注射やレーザー治療は妊娠中はできませんが、エクラープラスター(ステロイドテープ)は使用可能です。妊娠中はケロイドが悪化しやすい時期でもあるため、担当医と相談しながら適切な治療を選択しましょう。
Q: 手術をすると再発しませんか?
A: 単純な手術のみでは高い確率で再発し、元より大きくなってしまうことがあります。しかし、術後の放射線治療やステロイド注射・テープ療法を併用することで、再発率を大幅に下げることができます。手術後も予防治療を継続することが重要です。
Q: 入浴や飲酒で赤くなるのは悪化ですか?
A: 一時的な血流反応であり、必ずしも悪化ではありません。ただし、赤みが長期間続く場合は治療の見直しが必要かもしれません。また、赤みは数年かかって改善することもあります。
まとめ
ケロイドは、傷跡が赤く盛り上がり、かゆみや痛みを伴う疾患です。かつては「治らない」と言われることも多かったですが、現代の医療技術により、適切な治療を受ければ症状を大きく改善できるようになりました。
治療の第一選択は保存的治療(ステロイドテープ、内服薬、ステロイド注射など)であり、これらで効果が不十分な場合や瘢痕拘縮がある場合には手術が検討されます。手術を行う場合は、術後放射線治療の併用により再発率を大幅に下げることが可能です。
ケロイドの治療は長期間にわたることが多いですが、根気よく治療を続けることで、赤みや盛り上がりを平らにし、かゆみや痛みをコントロールして、日常生活への影響を最小限にすることができます。
傷跡でお悩みの方は、一人で悩まず、まずは形成外科または皮膚科の専門医にご相談ください。早期に適切な治療を開始することが、より良い治療効果への第一歩です。
参考文献
- 日本皮膚科学会「ケロイド – 皮膚科Q&A」 https://qa.dermatol.or.jp/qa26/index.html
- 日本形成外科学会「ケロイド・肥厚性瘢痕」 https://jsprs.or.jp/general/disease/kega_kizuato/kizuato/keloid.html
- 日本医科大学形成外科学教室「ケロイド・傷あと外来」 https://www.nms-prs.com/outpatient/09/index.html
- 慶應義塾大学医学部形成外科「ケロイド・肥厚性瘢痕」 http://prs.med.keio.ac.jp/menu/keroido/
- 東京大学大学院医学系研究科形成外科学分野「ケロイド・肥厚性瘢痕について」 https://plastic.m.u-tokyo.ac.jp/clinical/748/
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院形成外科「瘢痕、ケロイド、肥厚性瘢痕の治療」 https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/keisei/disease.html/disease03.html
- 自治医科大学形成外科学講座「ケロイド」 https://www.jichi.ac.jp/keisei/surgery/disease9.html
- 日本創傷外科学会「形成外科診療ガイドライン」 https://www.jsswc.or.jp/guideline.html
- 田辺三菱製薬「ケロイドの種類と症状、原因、治療法|ヒフノコトサイト」 https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/solution/1941
- 関東労災病院「目立つきずあと〜ケロイドと肥厚性瘢痕〜」 https://kantoh.johas.go.jp/column/20210609.html
※本記事は医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の診察を受けてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務