はじめに
皮膚に赤みやかゆみが出た時、それが蕁麻疹なのか湿疹なのか判断に迷うことはありませんか?「突然肌が赤くなってかゆい」「ブツブツができて不快」といった症状は、どちらの疾患でも現れる可能性があります。しかし、蕁麻疹と湿疹は全く異なる皮膚疾患であり、適切な治療法も異なります。
この記事では、蕁麻疹と湿疹の違いについて、症状の見分け方から原因、治療法まで詳しく解説します。アイシークリニック大宮院では、皮膚科専門医が丁寧に診察し、それぞれの症状に合わせた最適な治療をご提案しています。
蕁麻疹(じんましん)とは?
蕁麻疹の基本的な特徴
蕁麻疹は、皮膚の一部が突然赤く盛り上がり(膨疹)、強いかゆみを伴う疾患です。医学的には「urticaria(ウルチカリア)」と呼ばれ、日本人の約15〜25%が生涯に一度は経験すると言われています。
蕁麻疹の最大の特徴は、症状が数時間で消失するという点です。多くの場合、数分から数時間、長くても24時間以内に膨疹が跡形もなく消えてしまいます。この「出たり消えたりする」という性質が、湿疹との大きな違いです。
蕁麻疹の症状
蕁麻疹の典型的な症状には以下のようなものがあります:
膨疹(ぼうしん) 皮膚が蚊に刺されたように赤く盛り上がります。大きさは数ミリから手のひら大まで様々で、境界がはっきりしているのが特徴です。膨疹の中心部が白っぽくなり、周囲が赤くなる「紅暈(こううん)」と呼ばれる状態が見られることもあります。
強いかゆみ 蕁麻疹のかゆみは非常に強く、夜間に悪化することが多いです。かゆみのために睡眠が妨げられたり、日常生活に支障をきたしたりすることもあります。
移動性 膨疹が体の一部に出現しては消え、別の場所に現れるという「移動性」があります。朝は腕に出ていたものが昼には消えて、夕方には背中に出現するといった具合です。
消失の早さ 個々の膨疹は数時間から24時間以内に跡を残さず完全に消えます。この「跡が残らない」という点も重要な特徴です。
蕁麻疹の種類
蕁麻疹は発症してからの期間によって分類されます:
急性蕁麻疹 発症から6週間以内のもの。食物、薬剤、感染症などが原因となることが多く、原因が特定できる場合もあります。多くの場合、数日から数週間で自然に治癒します。
慢性蕁麻疹 6週間以上症状が続くもの。原因の特定が難しく、ストレスや疲労、温度変化などが悪化因子となることがあります。日本では蕁麻疹患者の約30〜40%が慢性蕁麻疹に該当すると報告されています。
蕁麻疹の原因
蕁麻疹の原因は多岐にわたりますが、主なものには以下があります:
食物 鶏卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、甲殻類(エビ・カニ)、果物などが代表的です。食物アレルギーによる蕁麻疹は、食後数分から2時間以内に発症することが多いです。
薬剤 抗生物質、解熱鎮痛剤、造影剤などが原因となることがあります。薬剤による蕁麻疹は、服用後すぐに出現する場合と、数日後に出現する場合があります。
物理的刺激 日光、寒冷、温熱、圧迫、摩擦、振動などの物理的刺激が原因となる「物理性蕁麻疹」があります。特に寒冷蕁麻疹は冬場に多く見られます。
感染症 ウイルスや細菌による感染症が蕁麻疹の原因となることがあります。特に小児の急性蕁麻疹では、感染症が原因であることが多いです。
ストレスと疲労 精神的ストレスや肉体的疲労が蕁麻疹を誘発・悪化させることがあります。慢性蕁麻疹では、ストレスが重要な悪化因子となっていることが多いです。
自己免疫 自分の体の成分に対する抗体が原因となる「自己免疫性蕁麻疹」もあります。慢性蕁麻疹の約30〜50%がこのタイプと考えられています。
多くの慢性蕁麻疹では、明確な原因が特定できない「特発性蕁麻疹」となります。
湿疹(しっしん)とは?
湿疹の基本的な特徴
湿疹は、皮膚に炎症が起こり、かゆみを伴う赤み、ブツブツ(丘疹)、水ぶくれ(水疱)などが生じる疾患です。医学的には「eczema(エクゼマ)」または「dermatitis(皮膚炎)」と呼ばれ、非常に一般的な皮膚疾患です。
湿疹の最大の特徴は、症状が数日から数週間持続するという点です。適切な治療を行わないと、症状が慢性化し、皮膚が厚く硬くなる「苔癬化(たいせんか)」という状態になることもあります。
湿疹の症状
湿疹の症状は病期によって変化します:
急性期 皮膚に赤み(紅斑)が生じ、小さなブツブツ(丘疹)や水ぶくれ(水疱)が出現します。水疱が破れると、ジュクジュクとした液体が出てくる「滲出(しんしゅつ)」という状態になります。かゆみが強く、掻くことでさらに悪化します。
亜急性期 赤みやブツブツは残りますが、ジュクジュクした状態は落ち着いてきます。皮膚の表面がカサカサと乾燥し、細かい皮がむける(落屑)ようになります。
慢性期 繰り返し掻くことで、皮膚が厚く硬くなり(苔癬化)、ゴワゴワした状態になります。色素沈着が生じて、皮膚が黒ずんで見えることもあります。かゆみは持続し、掻破によってさらに症状が悪化する悪循環に陥ります。
湿疹の種類
湿疹にはさまざまなタイプがあります:
接触皮膚炎(かぶれ) 特定の物質に触れることで発症する湿疹です。アレルギー性接触皮膚炎(金属、化粧品、植物など)と、刺激性接触皮膚炎(洗剤、石鹸など)があります。原因物質に触れた部分にのみ症状が出現するのが特徴です。
アトピー性皮膚炎 遺伝的素因とバリア機能の低下により、慢性的に湿疹が繰り返される疾患です。乳幼児期から発症することが多く、顔や関節の内側(肘や膝の裏)に症状が出やすいのが特徴です。
脂漏性皮膚炎 皮脂の分泌が多い部位(頭皮、顔、耳の周り、胸部、背部)に生じる湿疹です。マラセチアという真菌が関与していると考えられています。フケが多く出る、赤みとかゆみを伴うのが特徴です。
貨幣状湿疹 コインのような円形の湿疹が四肢に多発する疾患です。乾燥肌の方や高齢者に多く見られ、冬季に悪化しやすい傾向があります。
手湿疹(手荒れ) 手に生じる湿疹の総称で、水仕事や洗剤の使用が多い方に発症しやすいです。主婦湿疹とも呼ばれます。
自家感作性皮膚炎 体の一部に生じた湿疹が悪化し、その影響で全身に湿疹が広がる状態です。
湿疹の原因
湿疹の原因も多様ですが、主なものには以下があります:
外的要因
- 物理的刺激:摩擦、圧迫、乾燥、紫外線など
 - 化学的刺激:洗剤、石鹸、化粧品、金属など
 - 生物学的刺激:ダニ、カビ、細菌など
 
内的要因
- 遺伝的素因:アトピー素因など
 - 皮膚のバリア機能低下:乾燥肌、加齢など
 - 免疫機能の異常
 - ストレスや疲労
 - 食生活の乱れ
 - ホルモンバランスの変化
 
多くの湿疹は、これらの外的要因と内的要因が複合的に作用して発症します。
蕁麻疹と湿疹の違い – 見分け方のポイント
蕁麻疹と湿疹は似たような症状を呈することがありますが、以下の点で明確に異なります。
1. 症状の持続時間
蕁麻疹 個々の膨疹は数分から数時間、長くても24時間以内に消失します。朝起きた時に出ていた膨疹が、昼には跡形もなく消えているということが典型的です。ただし、新しい膨疹が次々と出現するため、全体として数日から数週間症状が続くことはあります。
湿疹 一度出現した発疹は、数日から数週間持続します。適切な治療を行わないと、症状は徐々に悪化し、慢性化することもあります。同じ場所に症状が留まり続けるのが特徴です。
2. 皮膚の見た目
蕁麻疹
- 皮膚が蚊に刺されたように盛り上がる(膨疹)
 - 境界がはっきりしている
 - 色は淡い赤色から赤色
 - 中心が白っぽく、周囲が赤い「紅暈」が見られることも
 - 跡を残さずに完全に消失する
 
湿疹
- 赤み(紅斑)、ブツブツ(丘疹)、水ぶくれ(水疱)など多彩
 - 境界が不明瞭なことが多い
 - 滲出液が出ることがある(急性期)
 - 皮膚が厚く硬くなることがある(慢性期)
 - 色素沈着が残ることがある
 
3. かゆみの性質
蕁麻疹
- 突然強いかゆみが出現する
 - かゆみは激しいが、膨疹が消えるとかゆみも消失する
 - 夜間に悪化しやすい
 
湿疹
- 持続的なかゆみ
 - 掻くことで症状が悪化し、さらにかゆくなる悪循環
 - 乾燥によってかゆみが増強する
 
4. 症状の出現パターン
蕁麻疹
- 突然出現し、突然消失する
 - 体のあちこちに移動する(移動性)
 - 出たり消えたりを繰り返す
 - 全身どこにでも出現する可能性がある
 
湿疹
- 徐々に出現し、持続する
 - 同じ場所に留まる
 - 特定の部位に好発する(アトピー性皮膚炎は関節部、脂漏性皮膚炎は皮脂の多い部位など)
 
5. 発症のタイミング
蕁麻疹
- 食事、薬の服用、運動、温度変化などの直後に出現することが多い
 - 原因となる刺激から数分〜数時間以内に発症
 
湿疹
- 繰り返しの刺激や接触により徐々に発症
 - 原因との関連性がわかりにくいことも多い
 - 季節性がある場合も(乾燥する冬に悪化など)
 
6. 跡の残り方
蕁麻疹
- 完全に跡を残さず消失する
 - 色素沈着は起こらない
 
湿疹
- 炎症後色素沈着が残ることがある
 - 掻き壊すと傷跡が残ることもある
 - 慢性化すると皮膚が厚く硬くなる
 
診断方法
蕁麻疹の診断
蕁麻疹の診断は主に症状の観察によって行われます:
問診
- いつから症状が出ているか
 - どのような時に症状が出るか
 - 食事や薬の服用との関連
 - 家族歴やアレルギー歴
 - 日常生活での変化
 
視診
- 膨疹の形状、大きさ、分布
 - 皮膚を圧迫すると一時的に白くなる(圧迫試験)
 
検査 必要に応じて以下の検査を行います:
- 血液検査:アレルギーの有無、感染症の有無などを確認
 - アレルギー検査:特定のアレルゲンに対するIgE抗体を測定
 - 自己血清皮膚テスト:自己免疫性蕁麻疹の診断
 - 誘発試験:物理性蕁麻疹の確定診断(寒冷負荷試験、温熱負荷試験など)
 
湿疹の診断
湿疹の診断も主に症状の観察で行いますが、原因を特定するための検査が重要です:
問診
- 発症時期と経過
 - 生活環境や職業
 - 使用している化粧品や洗剤
 - アレルギー歴や家族歴
 - 悪化因子
 
視診
- 皮疹の種類と分布
 - 急性期、亜急性期、慢性期のどの段階か
 - 掻破痕の有無
 
検査 必要に応じて以下の検査を行います:
- パッチテスト:接触皮膚炎の原因物質を特定
 - 血液検査:アレルギーの有無、アトピー素因の確認
 - 皮膚生検:他の疾患との鑑別が必要な場合
 - 真菌検査:脂漏性皮膚炎やカンジダ性皮膚炎の診断
 
治療法
蕁麻疹の治療
蕁麻疹の治療は、症状を抑えることと原因を取り除くことが基本です。
薬物療法
抗ヒスタミン薬 蕁麻疹治療の第一選択薬です。ヒスタミンの働きを抑えることで、かゆみや膨疹を軽減します。第二世代抗ヒスタミン薬は眠気が少なく、1日1〜2回の服用で効果が持続するため、現在主流となっています。
代表的な薬剤:
- フェキソフェナジン(アレグラ®)
 - ロラタジン(クラリチン®)
 - レボセチリジン(ザイザル®)
 - ビラスチン(ビラノア®)
 
症状が強い場合は、複数の抗ヒスタミン薬を併用したり、通常の2倍量まで増量したりすることもあります。
ステロイド薬 重症の急性蕁麻疹や、抗ヒスタミン薬で効果が不十分な場合に使用します。短期間の使用が原則で、症状が改善したら速やかに減量・中止します。
その他の薬剤
- 抗ロイコトリエン薬:非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)による蕁麻疹に有効
 - シクロスポリン:難治性の慢性蕁麻疹に使用
 - オマリズマブ(ゾレア®):抗ヒスタミン薬で効果不十分な慢性蕁麻疹に対する生物学的製剤
 
原因の除去と回避 可能な場合は原因を特定し、それを避けることが重要です:
- 原因食物の除去
 - 原因薬剤の中止(医師の判断のもと)
 - 物理的刺激の回避
 - 感染症の治療
 
生活指導
- 十分な睡眠と休養
 - ストレス管理
 - アルコールや香辛料など、症状を悪化させる食品を控える
 - 入浴時の温度に注意(熱すぎるお湯は避ける)
 - 締め付けの強い衣服を避ける
 
湿疹の治療
湿疹の治療は、炎症を抑えることと原因を取り除くことが基本です。
外用療法
ステロイド外用薬 湿疹治療の中心となる薬剤です。炎症を抑え、かゆみを軽減します。ステロイドの強さは5段階に分類され、症状の程度や部位によって使い分けます。
- ストロンゲスト(最強)
 - ベリーストロング(かなり強い)
 - ストロング(強い)
 - ミディアム(中程度)
 - ウィーク(弱い)
 
顔や陰部などの皮膚が薄い部位には弱いステロイドを、体幹や四肢には強めのステロイドを使用するのが一般的です。
タクロリムス軟膏(プロトピック®) 免疫抑制剤の外用薬で、主にアトピー性皮膚炎に使用されます。ステロイドと異なり、皮膚が薄くなるなどの副作用が少ないのが特徴です。
保湿剤 皮膚のバリア機能を改善するために非常に重要です。ヘパリン類似物質(ヒルドイド®など)、尿素軟膏、白色ワセリンなどが使用されます。炎症が治まった後も保湿を続けることで、再発を予防できます。
内服療法
抗ヒスタミン薬 かゆみを抑えるために使用します。湿疹の炎症自体を治す効果はありませんが、かゆみによる掻破を防ぐことで、悪化を防止します。
ステロイド内服薬 重症の湿疹や、急速に症状が悪化している場合に短期間使用することがあります。長期使用は副作用のリスクがあるため、慎重に判断します。
免疫抑制剤 重症のアトピー性皮膚炎で、他の治療で効果が不十分な場合に使用を検討します。
原因の除去と回避
- 接触皮膚炎:原因物質との接触を避ける
 - アトピー性皮膚炎:ダニ、ハウスダスト対策
 - 手湿疹:手袋の使用、保湿の徹底
 
生活指導
- 適切なスキンケア:保湿の徹底、刺激の少ない石鹸の使用
 - 爪を短く切る:掻破による悪化を防ぐ
 - 室内環境の整備:適度な温度と湿度の維持
 - 規則正しい生活:十分な睡眠、バランスの取れた食事
 - ストレス管理
 
セルフケアと予防法
蕁麻疹のセルフケア
急性期の対処
- 患部を冷やす:冷たいタオルなどで冷やすとかゆみが和らぎます
 - 掻かない:掻くことで症状が悪化します
 - ゆったりした服装:締め付けを避ける
 - 入浴は短時間に:熱いお湯は避け、シャワーで済ませる
 
予防のポイント
- 規則正しい生活:十分な睡眠と休養
 - ストレス管理:リラックスできる時間を作る
 - 体調管理:風邪などの感染症を予防
 - 日誌をつける:症状が出る時の状況を記録し、原因を探る
 
湿疹のセルフケア
スキンケアの基本
- 保湿の徹底:1日2〜3回、入浴後は必ず保湿
 - 優しい洗浄:ゴシゴシ洗わず、泡で優しく洗う
 - 刺激の少ない製品:石鹸、シャンプー、洗剤などは低刺激性のものを選ぶ
 - 適温の入浴:熱すぎるお湯は皮脂を奪うので避ける
 
環境対策
- 室内の湿度管理:冬場は加湿器を使用(湿度50〜60%が理想)
 - ダニ対策:寝具の定期的な洗濯、掃除機がけ
 - 通気性の良い衣服:汗をかいたらすぐに着替える
 - 適度な室温:暑すぎず寒すぎない環境(20〜25℃程度)
 
生活習慣
- バランスの取れた食事:特定の食品の過剰摂取を避ける
 - アルコールや刺激物を控える:症状を悪化させる可能性がある
 - 十分な睡眠:睡眠不足は免疫機能を低下させる
 - 適度な運動:血行を促進し、ストレス解消にもなる
 
いつ医療機関を受診すべきか
以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
緊急性の高い症状
アナフィラキシーの可能性 蕁麻疹に加えて以下の症状がある場合は、すぐに救急車を呼んでください:
- 呼吸困難、息苦しさ
 - 喉の腫れ、声がかすれる
 - 激しい腹痛、嘔吐、下痢
 - めまい、意識障害
 - 血圧低下、ショック状態
 
これらはアナフィラキシーという重篤なアレルギー反応の可能性があります。
広範囲の症状
- 全身に症状が急速に広がる
 - 顔や唇が大きく腫れる(血管性浮腫)
 - 激しい痛みを伴う
 
早めの受診が望ましい場合
蕁麻疹の場合
- 症状が数日間続いている
 - 繰り返し症状が出る
 - 市販薬で改善しない
 - 日常生活に支障がある
 - 原因が不明で不安がある
 
湿疹の場合
- 症状が1週間以上改善しない
 - かゆみが強く、睡眠が妨げられる
 - 患部から液体が出る、化膿している
 - 広範囲に広がっている
 - 顔や首など目立つ部位に症状がある
 - 市販薬で改善しない
 

よくある質問
A: はい、併発することがあります。例えば、アトピー性皮膚炎の方が食物アレルギーによる蕁麻疹を起こすこともあります。また、湿疹を掻き壊すことで蕁麻疹が誘発されることもあります。症状が複雑な場合は、専門医の診察を受けることをお勧めします。
A: 軽症の場合は市販の抗ヒスタミン薬や保湿剤で改善することもありますが、症状が続く場合や悪化する場合は医療機関を受診してください。特に蕁麻疹で呼吸困難などの症状が出た場合は緊急対応が必要です。また、湿疹に対してステロイド外用薬を使用する場合は、適切な強さや使用方法について医師の指導を受けることが重要です。
A: 小児の場合、成人に比べて皮膚が薄く、症状が悪化しやすい傾向があります。また、掻き壊しによる二次感染のリスクも高いです。爪を短く切り、掻かないよう注意が必要です。小児の蕁麻疹は感染症が原因のことが多く、多くは自然に治癒しますが、繰り返す場合は受診をお勧めします。
A: 妊娠中や授乳中でも安全に使用できる薬剤はあります。ただし、使用できる薬剤に制限があるため、必ず医師に妊娠・授乳中であることを伝えてください。保湿剤や弱いステロイド外用薬、一部の抗ヒスタミン薬は使用可能です。
Q5: 症状が出たり消えたりするのはどちらですか?
A: 「出たり消えたりする」のは蕁麻疹の特徴です。個々の膨疹は数時間で跡形もなく消え、別の場所に新しい膨疹が出現します。湿疹の場合は、同じ場所に症状が持続します。
Q6: ストレスで蕁麻疹や湿疹は悪化しますか?
A: はい、ストレスは両方の疾患の悪化因子となります。ストレスによって免疫機能が変化したり、皮膚のバリア機能が低下したりすることが原因です。十分な休養とストレス管理が重要です。
Q7: 食事制限は必要ですか?
A: 明確な原因食物が特定されている場合を除き、過度な食事制限は推奨されません。特に成長期の子どもでは、不必要な除去食はかえって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。アレルギー検査で陽性でも、実際に症状が出ない場合は除去の必要はありません。医師と相談しながら判断することが大切です。
まとめ
蕁麻疹と湿疹は、どちらも皮膚にかゆみを伴う発疹が出る疾患ですが、その性質は大きく異なります。
蕁麻疹の特徴
- 突然出現し、数時間から24時間以内に跡を残さず消失する
 - 皮膚が蚊に刺されたように盛り上がる(膨疹)
 - 体のあちこちに移動する
 - 強いかゆみを伴う
 - 原因は食物、薬剤、物理的刺激、ストレスなど多岐にわたる
 - 治療は主に抗ヒスタミン薬
 
湿疹の特徴
- 症状が数日から数週間持続する
 - 赤み、ブツブツ、水ぶくれなど多彩な症状
 - 同じ場所に留まる
 - 掻くことで悪化する
 - 原因は接触物質、アトピー素因、乾燥など
 - 治療は主にステロイド外用薬と保湿剤
 
どちらの疾患も、適切な診断と治療により症状をコントロールすることが可能です。自己判断で治療を続けるのではなく、症状が続く場合や悪化する場合は、早めに専門医を受診することをお勧めします。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる医療機関・学会の情報を参考にしました:
- 日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/
 - 日本アレルギー学会 https://www.jsaweb.jp/
 - 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/
 - 日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/
 - 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/
 - 日本アレルギー学会「アレルギー総合ガイドライン」 https://www.jsaweb.jp/modules/guideline/
 
免責事項 本記事は一般的な医療情報を提供することを目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の診察を受けてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
 - 2009年 東京逓信病院勤務
 - 2012年 東京警察病院勤務
 - 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
 - 2019年 当院治療責任者就任
 
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
 - 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
 - 2012年 東京逓信病院勤務
 - 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
 - 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務