はじめに
毎年冬になると流行するインフルエンザ。高熱や関節痛、倦怠感など、つらい症状に悩まされた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。インフルエンザは普通の風邪とは異なり、重症化すると肺炎などの合併症を引き起こし、命に関わることもある感染症です。
そんなインフルエンザから身を守る最も効果的な方法が「インフルエンザ予防接種」です。しかし、「毎年打つ必要があるの?」「副作用は大丈夫?」「いつ頃接種すればいいの?」といった疑問をお持ちの方も少なくありません。
本記事では、インフルエンザ予防接種について、その効果や接種時期、副作用、費用など、気になるポイントを詳しく解説していきます。正しい知識を身につけて、今年の冬を健康に乗り切りましょう。
インフルエンザとは
インフルエンザウイルスの特徴
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3つの型があり、このうち季節性インフルエンザとして流行するのは主にA型とB型です。
A型インフルエンザウイルスは、さらに表面にある2種類のタンパク質(ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ)の組み合わせによって亜型に分類されます。このA型ウイルスは変異しやすく、世界的な大流行(パンデミック)を引き起こす可能性があることで知られています。
普通の風邪との違い
インフルエンザは「ただの風邪」ではありません。普通の風邪との大きな違いは以下の点です。
症状の現れ方
- 風邪:緩やかに症状が進行
 - インフルエンザ:突然、38℃以上の高熱が出る
 
主な症状
- 風邪:鼻水、のどの痛み、くしゃみなど局所症状が中心
 - インフルエンザ:高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感など全身症状が強い
 
重症化リスク
- 風邪:重症化することは稀
 - インフルエンザ:肺炎や脳症などの合併症を起こし、重症化する可能性がある
 
インフルエンザの流行状況
日本では例年、11月下旬から12月上旬頃に流行が始まり、1月から3月頃にピークを迎えます。厚生労働省の報告によると、毎年約1,000万人がインフルエンザに感染し、そのうち数千人から1万人程度が関連死していると推計されています。
特に高齢者や乳幼児、基礎疾患を持つ方は重症化しやすく、注意が必要です。2009年に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)のパンデミックでは、世界中で多くの方が感染し、その脅威が改めて認識されました。
インフルエンザの感染経路
インフルエンザは主に以下の経路で感染します。
飛沫感染 感染者の咳やくしゃみによって飛び散ったウイルスを含む飛沫を、周囲の人が口や鼻から吸い込むことで感染します。飛沫は約1~2メートル飛ぶとされています。
接触感染 感染者がウイルスの付いた手でドアノブや手すりなどに触れ、そこを別の人が触った後、その手で口や鼻、目などを触ることで感染します。
ウイルスは低温・低湿度の環境を好むため、冬季に流行しやすい特徴があります。
インフルエンザ予防接種の基本
ワクチンの種類と製造方法
日本で使用されているインフルエンザワクチンは「不活化ワクチン」です。これはウイルスの感染力をなくしたもので、接種によってインフルエンザに感染することはありません。
ワクチンは毎年、世界保健機関(WHO)の推奨に基づき、その年に流行すると予測されるウイルス株を選定して製造されます。日本では、国立感染症研究所がその選定に関わっています。
現在の季節性インフルエンザワクチンは4価ワクチンとなっており、A型2株とB型2株の合計4株のウイルス株が含まれています。これにより、A型・B型両方のインフルエンザに対応できるようになっています。
ワクチンの作用メカニズム
インフルエンザワクチンを接種すると、体内で抗体が作られます。この抗体がインフルエンザウイルスと結合することで、ウイルスが細胞に侵入するのを防ぎ、感染を予防したり、感染しても症状を軽減したりする効果があります。
ワクチン接種後、抗体ができるまでには約2週間かかります。そのため、流行期に入る前に余裕を持って接種することが推奨されています。
ワクチンの効果
インフルエンザワクチンの効果は、年齢や体調、その年の流行ウイルスとワクチン株の一致度などによって変動しますが、一般的には以下のような効果が期待できます。
発症予防効果 健康な成人の場合、ワクチンの発症予防効果は約40~60%とされています。つまり、完全に感染を防げるわけではありませんが、接種することで発症リスクを大幅に減らすことができます。
重症化予防効果 たとえ発症しても、ワクチン接種により重症化を防ぐ効果が期待できます。高齢者では、インフルエンザによる入院を約30~70%減少させ、死亡リスクを約80%減少させるという報告があります。
集団免疫効果 多くの人がワクチンを接種することで、社会全体での流行を抑制する効果(集団免疫)も期待できます。これにより、ワクチンを接種できない乳幼児や病気の方も間接的に守られることになります。
ワクチンの効果持続期間
インフルエンザワクチンの効果は、接種後2週間頃から現れ始め、約5ヶ月間持続するとされています。そのため、流行期間(12月~3月頃)をカバーするためには、10月~12月上旬の接種が推奨されます。
また、インフルエンザウイルスは毎年変異するため、前年のワクチンでは今年のウイルスに対応できない可能性があります。そのため、毎年接種することが重要です。
インフルエンザ予防接種の時期
最適な接種時期
インフルエンザワクチンの接種は、流行期に入る前の10月から12月上旬までに済ませるのが理想的です。
10月中旬~11月 最も推奨される時期です。ワクチン接種後、抗体ができるまで約2週間かかることを考えると、流行のピークである1月~3月に十分な免疫を持っている状態にするためには、この時期の接種が最適です。
12月上旬~中旬 11月中の接種を逃してしまった場合でも、12月中旬までには接種を完了することをおすすめします。流行のピークには間に合う可能性が高いでしょう。
12月下旬以降 流行が始まってからの接種でも、まったく意味がないわけではありません。インフルエンザの流行は3月頃まで続くため、遅い時期の接種でも重症化予防の効果は期待できます。
13歳未満の子どもの接種スケジュール
13歳未満のお子さんは、免疫がつきにくいため、2回接種が推奨されています。接種間隔は2~4週間(できれば4週間)空けることが望ましいとされています。
推奨スケジュール例
- 1回目:10月中旬~11月上旬
 - 2回目:11月中旬~12月上旬
 
このスケジュールであれば、12月中旬頃までに十分な免疫が獲得でき、流行期に備えることができます。
他のワクチンとの接種間隔
2020年10月から、インフルエンザワクチンを含む不活化ワクチンについては、他のワクチンとの接種間隔の制限が撤廃されました。そのため、他の予防接種との間隔を空けずに接種することが可能です。
ただし、新型コロナワクチンについては、インフルエンザワクチン以外のワクチンとは2週間以上の間隔を空けることが推奨されています。インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは同時接種も可能です。
接種のタイミングに関する注意点
以下のような場合は、接種のタイミングを医師に相談しましょう。
- 発熱や体調不良のとき
 - 他の病気で治療中のとき
 - 妊娠中または妊娠の可能性があるとき
 - 授乳中のとき
 
体調が優れない場合は無理に接種せず、回復してから接種することをおすすめします。
接種対象者と優先接種
すべての方に接種が推奨される理由
厚生労働省では、生後6ヶ月以上のすべての方にインフルエンザワクチン接種を推奨しています。その理由は、インフルエンザが誰にでも感染しうる病気であり、重症化のリスクも決して低くないためです。
特に接種が推奨される方
以下に該当する方は、インフルエンザに感染した際の重症化リスクが高いため、特に予防接種が推奨されます。
高齢者(65歳以上) 加齢に伴い免疫力が低下しているため、インフルエンザに感染すると肺炎などの合併症を起こしやすく、重症化しやすいとされています。65歳以上の方は定期接種の対象となり、自治体から助成を受けられる場合が多いです。
乳幼児(生後6ヶ月以上) 免疫が未発達な乳幼児は、インフルエンザに感染すると重症化しやすく、インフルエンザ脳症などの重篤な合併症を起こすリスクがあります。特に保育園や幼稚園に通っているお子さんは、集団生活の中で感染リスクが高まります。
妊婦 妊娠中は免疫系が変化するため、インフルエンザに感染すると重症化しやすくなります。また、妊娠中の高熱は胎児に影響を及ぼす可能性もあります。妊娠中のインフルエンザワクチン接種は安全性が確認されており、妊娠週数に関わらず接種が推奨されています。
基礎疾患のある方 以下のような基礎疾患をお持ちの方は、インフルエンザが重症化しやすいため、予防接種が強く推奨されます。
- 慢性呼吸器疾患(喘息、COPD など)
 - 慢性心疾患(心不全、冠動脈疾患など)
 - 糖尿病などの代謝性疾患
 - 腎機能障害
 - 免疫機能が低下している方(免疫抑制剤使用中、HIV感染症など)
 - ステロイドを長期使用している方
 
医療従事者・介護従事者 医療機関や介護施設で働く方は、ハイリスク患者と接する機会が多いため、自身の感染予防だけでなく、患者さんへの感染を防ぐためにも接種が推奨されます。
受験生 受験シーズンとインフルエンザの流行期が重なるため、大事な試験の時期に体調を崩さないよう、予防接種を受けることをおすすめします。
接種を受けられない方・注意が必要な方
以下に該当する方は、ワクチン接種を受けられない、または医師との相談が必要です。
接種できない方
- 明らかに発熱している方(37.5℃以上)
 - 重篤な急性疾患にかかっている方
 - インフルエンザワクチンの成分によって、過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方
 
医師との相談が必要な方
- 鶏卵アレルギーがある方(ワクチンは鶏卵を使って製造されるため)
 - 過去にインフルエンザワクチン接種後2日以内に発熱、全身性発疹などのアレルギー症状が出たことがある方
 - 過去にけいれんを起こしたことがある方
 - 過去に免疫不全の診断を受けたことがある方
 - 心臓、腎臓、肝臓、血液疾患などで治療を受けている方
 
これらに該当する場合は、接種前に必ず医師に相談し、接種の可否や注意点について確認してください。
副作用・副反応について
一般的な副反応
インフルエンザワクチンは比較的副反応が少ないワクチンですが、以下のような症状が現れることがあります。これらは通常、接種後24時間以内に現れ、2~3日で自然に治まります。
局所反応(接種部位の症状)
- 発赤(赤み):接種部位が赤くなる
 - 腫れ:接種部位が腫れる
 - 痛み:接種部位に痛みを感じる
 - 硬結:接種部位が硬くなる
 
これらの症状は接種を受けた方の10~20%程度に見られます。多くの場合、2~3日で自然に改善します。
全身反応
- 発熱:微熱が出ることがある
 - 頭痛
 - 倦怠感(だるさ)
 - 悪寒
 - 筋肉痛
 - 関節痛
 
これらの症状は接種を受けた方の5~10%程度に見られます。通常は軽度で、1~2日で改善します。
まれに起こる重篤な副反応
非常にまれですが、以下のような重篤な副反応が報告されています。
アナフィラキシー 接種直後から30分以内に現れる急性のアレルギー反応です。発生頻度は約100万接種に1回程度とされています。
症状:じんま疹、呼吸困難、血圧低下、意識障害など
医療機関では、万が一のアナフィラキシーに備えて対応できる体制を整えています。接種後30分程度は医療機関内で様子を見ることが推奨されます。
ギラン・バレー症候群 手足の力が入らなくなる神経の病気です。インフルエンザワクチン接種後に発症する頻度は非常に低く、100万接種に1~2人程度とされています。
症状:四肢の脱力、しびれ、歩行困難など
接種後数日から数週間後に症状が現れることがあります。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM) 脳や脊髄に炎症が起こる病気です。発生頻度は極めて低いとされています。
症状:頭痛、発熱、意識障害、けいれんなど
肝機能障害、黄疸 肝臓の機能が低下する症状です。発生頻度は極めて低いとされています。
症状:全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなど
喘息発作 喘息を持っている方に、まれに喘息発作が誘発されることがあります。
副反応が出たときの対処法
軽度の副反応の場合
- 接種部位の痛みや腫れには、冷やしタオルなどで冷やすと楽になります
 - 微熱や倦怠感がある場合は、安静にして様子を見ましょう
 - 症状が強い場合は、市販の解熱鎮痛剤を使用しても構いません
 
以下のような症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診してください
- 接種後すぐに起こる:じんま疹、呼吸困難、顔面蒼白、冷や汗
 - 接種後数日以内に起こる:高熱(38.5℃以上)、けいれん、意識障害
 - その他、普段と明らかに違う症状や、心配な症状
 
副反応に関する誤解
「ワクチンを打つとインフルエンザにかかる」は誤り 日本で使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、ウイルスの感染性はありません。ワクチン接種によってインフルエンザに感染することはありません。
接種後に風邪症状が出る場合がありますが、これはワクチンの副反応か、たまたま接種時期に別の風邪ウイルスに感染したと考えられます。
「副反応が強いほど効果がある」は誤り 副反応の程度とワクチンの効果には相関関係はありません。副反応が軽くても、しっかりと免疫はつきます。
インフルエンザ予防接種の費用
定期接種(公費補助あり)
65歳以上の高齢者 65歳以上の方は、予防接種法に基づく定期接種の対象となり、自治体から費用の一部または全額が助成されます。
- 自己負担額:無料~2,500円程度(自治体により異なる)
 - 接種期間:10月1日~12月31日(自治体により多少前後)
 
また、60~64歳で心臓、腎臓、呼吸器の機能に重い障害がある方や、ヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に障害がある方も定期接種の対象となります。
子どもへの助成制度 多くの自治体では、13歳未満の子どもに対して接種費用の一部を助成する制度を設けています。助成内容は自治体によって大きく異なります。
- 助成額:1回あたり1,000円~3,000円程度
 - 助成回数:2回まで
 - 対象年齢:生後6ヶ月~小学6年生など
 
任意接種(自費)
定期接種の対象とならない方は、任意接種として全額自己負担で接種を受けることになります。
一般的な費用
- 成人(13歳以上):3,000円~5,000円程度(1回)
 - 小児(13歳未満):2,500円~4,000円程度(1回)
 
医療機関によって費用が異なりますので、事前に確認することをおすすめします。
費用を抑える方法
自治体の助成制度を確認する お住まいの自治体のホームページや広報誌で、インフルエンザワクチン接種の助成制度を確認しましょう。定期接種の対象でなくても、何らかの助成が受けられる場合があります。
職場の健康保険組合の補助 企業の健康保険組合によっては、インフルエンザワクチン接種費用の補助を行っている場合があります。勤務先の総務部や人事部に確認してみましょう。
医療費控除の対象になるか 基本的に予防接種費用は医療費控除の対象外ですが、医師が治療の一環として必要と判断した場合は対象となることがあります。ただし、一般的な予防目的の接種は対象外です。

よくある質問(Q&A)
A: はい、毎年接種することが推奨されます。
理由は2つあります。1つ目は、インフルエンザウイルスは毎年変異するため、前年のワクチンでは今年のウイルスに対応できない可能性があることです。ワクチンは毎年、その年に流行すると予測されるウイルス株で作られています。
2つ目は、ワクチンの効果が約5ヶ月間しか持続しないため、前年の接種では今シーズンの流行期をカバーできないことです。
A: 残念ながら、100%の予防効果はありません。
ワクチンの発症予防効果は40~60%程度です。ただし、たとえ発症しても、ワクチンを接種していれば重症化を防ぐ効果が期待できます。特に高齢者では、入院や死亡のリスクを大幅に減らすことができます。
ワクチン接種は「かからないようにする」ためだけでなく、「かかっても重症化しない」ための重要な手段です。
Q3: 卵アレルギーがあっても接種できますか?
A: 軽度の卵アレルギーであれば、多くの場合接種可能です。
インフルエンザワクチンは鶏卵を使って製造されるため、微量の卵成分が含まれています。しかし、精製技術の向上により、卵成分の含有量は非常に少なくなっています。
卵を食べると口の周りが赤くなる程度の軽度のアレルギーであれば、通常は接種できます。ただし、卵を食べるとアナフィラキシーを起こすような重度のアレルギーがある場合は、慎重な判断が必要です。
いずれの場合も、事前に医師に相談し、接種の可否を判断してもらいましょう。
Q4: 妊娠中でも接種できますか?
A: はい、妊娠中でも安全に接種できます。
むしろ、妊婦さんはインフルエンザに感染すると重症化しやすいため、予防接種が推奨されています。世界中の多くの研究により、妊娠中のインフルエンザワクチン接種の安全性が確認されています。
妊娠週数に関わらず、いつでも接種可能です。また、妊娠中に接種することで、生まれてくる赤ちゃんにも移行抗体による一時的な保護効果があることが分かっています。
Q5: 授乳中でも接種できますか?
A: はい、授乳中でも問題なく接種できます。
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、母乳を通じて赤ちゃんに影響を与えることはありません。むしろ、お母さんが接種することで、赤ちゃんへの感染を防ぐことができます。
Q6: 接種後にお風呂に入ってもいいですか?
A: はい、接種当日から入浴できます。
ただし、接種部位を強くこすったり、長時間の入浴は避けましょう。また、接種後は激しい運動は控えることが推奨されます。
Q7: 他の予防接種と同時に受けられますか?
A: はい、同時接種が可能です。
2020年10月から、インフルエンザワクチンを含む不活化ワクチンについては、他のワクチンとの接種間隔の制限が撤廃されました。医師が必要と判断した場合、同時に複数のワクチンを接種することができます。
新型コロナワクチンとの同時接種も可能です。
Q8: インフルエンザにかかった後、どのくらいで接種できますか?
A: 完全に回復してから接種することが推奨されます。
インフルエンザに感染した場合、自然に免疫がつくため、その年のシーズンは予防接種を受けなくても重症化リスクは低いと考えられます。ただし、完全に回復した後であれば接種することも可能です。
具体的な時期については、医師に相談してください。
Q9: 持病があっても接種できますか?
A: 多くの場合、接種が推奨されます。
基礎疾患がある方こそ、インフルエンザによる重症化リスクが高いため、予防接種が重要です。ただし、病状が安定していることが前提となります。
接種の可否や時期については、主治医とよく相談して決めましょう。
Q10: 2回接種すれば効果は上がりますか?
A: 13歳以上の方では、1回接種で十分な効果が期待できます。
13歳未満の子どもは免疫がつきにくいため2回接種が推奨されますが、13歳以上の方は1回の接種で十分な免疫が得られるとされています。
ただし、高齢者や免疫力が低下している方では、医師の判断により2回接種が勧められることもあります。
ワクチン以外のインフルエンザ予防法
ワクチン接種は最も効果的な予防法ですが、日常生活での予防対策も重要です。
手洗い・手指消毒
帰宅時、食事前、トイレ後など、こまめに手を洗いましょう。石鹸を使って30秒程度、指の間、爪の先、手首までしっかり洗うことが大切です。アルコール消毒液も効果的です。
マスクの着用
人混みや医療機関を訪れる際は、マスクを着用しましょう。また、自分が咳やくしゃみをする際は、他の人にウイルスを飛ばさないよう、マスクを着用するか、ティッシュや袖で口と鼻を覆う咳エチケットを守りましょう。
適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。室内では加湿器を使用するなどして、湿度50~60%を保つよう心がけましょう。
十分な休養とバランスの取れた栄養
体の抵抗力を高めるためには、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事が大切です。特にビタミンCやビタミンD、亜鉛などは免疫機能を維持するのに重要です。
人混みを避ける
流行期には、不要不急の外出を控え、特に人混みは避けるようにしましょう。外出する際は、マスクを着用し、帰宅後はすぐに手洗い・うがいをしましょう。
まとめ
インフルエンザ予防接種は、インフルエンザの発症を予防し、重症化を防ぐ最も効果的な方法です。完全に感染を防げるわけではありませんが、接種することで発症リスクを大幅に減らし、万が一発症しても軽症で済む可能性が高くなります。
本記事のポイント
- インフルエンザは普通の風邪とは異なり、重症化のリスクがある感染症
 - ワクチン接種は10月~12月上旬までに済ませるのが理想的
 - 13歳未満の子どもは2回接種が推奨される
 - 65歳以上の方や基礎疾患のある方は特に接種が推奨される
 - 一般的な副反応は軽度で、2~3日で改善する
 - 65歳以上の方は公費補助により自己負担が軽減される
 - 卵アレルギーが軽度であれば接種可能(要相談)
 - 妊娠中・授乳中でも安全に接種できる
 - ワクチン接種と合わせて、手洗いやマスク着用などの日常的な予防対策も重要
 
インフルエンザから自分自身と大切な家族を守るため、早めの予防接種をご検討ください。ご不明な点や心配なことがある場合は、お気軽に当院スタッフにご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html - 国立感染症研究所「インフルエンザとは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html - 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html - 日本感染症学会「インフルエンザ診療ガイド」
http://www.kansensho.or.jp/ - 日本小児科学会「インフルエンザワクチンについて」
https://www.jpeds.or.jp/ - 厚生労働省「予防接種情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/index.html - 国立感染症研究所「インフルエンザ流行レベルマップ」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-map.html 
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
 - 2009年 東京逓信病院勤務
 - 2012年 東京警察病院勤務
 - 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
 - 2019年 当院治療責任者就任
 
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
 - 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
 - 2012年 東京逓信病院勤務
 - 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
 - 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務