手のひらや脇、足の裏などに大量の汗をかいてしまう多汗症は、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことがあります。制汗剤や内服薬などの保存的治療で効果が得られない場合、手術による治療が選択肢として検討されることがあります。多汗症の手術にはいくつかの種類があり、それぞれ適応となる部位や効果、リスクが異なります。本記事では、アイシークリニック大宮院の専門医の監修のもと、多汗症に対する手術の種類や特徴、メリット・デメリットについて詳しく解説します。ご自身に合った治療法を選択するための参考にしてください。
目次
- 多汗症とは?症状と原因を理解する
- 多汗症の治療法の全体像
- 多汗症の手術の種類
- ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)の詳細
- ミラドライの詳細
- 剪除法(せんじょほう)の詳細
- 吸引法・超音波法の詳細
- 多汗症手術のメリット・デメリット比較
- 手術を受ける前に確認すべきポイント
- 手術後の経過と日常生活での注意点
- 多汗症手術の費用と保険適用について
- よくある質問
- まとめ
🔬 多汗症とは?症状と原因を理解する
多汗症は、体温調節に必要な量を超えて過剰に発汗する疾患です。通常、汗は体温を調節するために分泌されますが、多汗症の方は緊張や不安といった精神的なストレス、あるいは特に明確な原因がない状態でも大量の汗をかいてしまいます。
📊 多汗症の分類
多汗症は発症する部位や原因によって分類されます。
- 全身性多汗症:全身に発汗がみられる
- 局所性多汗症:手のひらや脇、足の裏、顔など特定の部位に限局
- 原発性多汗症:明らかな原因疾患がない
- 続発性多汗症:甲状腺機能亢進症や糖尿病、更年期障害などの基礎疾患や薬剤の副作用として発症
📋 多汗症の症状の特徴
原発性局所多汗症は、思春期前後から発症することが多く、手のひらや脇、足の裏に過剰な発汗がみられます。特に精神的な緊張によって発汗が誘発されることが多いですが、睡眠中は発汗が減少するという特徴があります。
日本皮膚科学会の診断基準(以下の項目のうち2つ以上を満たす場合):
- 6か月以上にわたって過剰な発汗がみられる
- 発症年齢が25歳以下
- 左右対称性に発汗がある
- 週1回以上の発汗エピソードがある
- 家族歴がある
- 睡眠中は発汗が止まる
😰 多汗症が日常生活に与える影響
多汗症は単なる「汗っかき」とは異なり、日常生活に深刻な支障をきたすことがあります。
手のひらの多汗症の場合:
- 書類や紙が濡れてしまう
- 握手ができない
- スマートフォンやパソコンの操作に支障
脇の多汗症の場合:
- 衣服の汗じみが気になる
- 臭いを心配する
- 対人関係や社会生活に影響
これらの症状によって精神的なストレスを抱え、うつ状態や社会不安障害を合併するケースも少なくありません。
🏥 多汗症の治療法の全体像
多汗症の治療は、症状の程度や部位、患者さんの希望に応じて段階的に選択されます。まずは保存的治療から開始し、効果が不十分な場合に手術などの侵襲的な治療を検討するのが一般的な流れです。
💊 外用薬による治療
多汗症の第一選択として用いられるのが、塩化アルミニウム外用薬です。塩化アルミニウムは汗腺の出口を閉塞させることで発汗を抑制します。
主な外用薬:
- ソフピロニウム臭化物(エクロックゲル):原発性腋窩多汗症に対して保険適用
- グリコピロニウムトシル酸塩水和物(ラピフォートワイプ):腋窩多汗症に対して使用可能
💉 内服薬による治療
抗コリン薬の内服は、全身の発汗を抑制する効果があります。プロバンサイン(プロパンテリン臭化物)が多汗症に対して保険適用されていますが、口渇や便秘、眼のかすみなどの副作用があるため、長期間の使用には注意が必要です。
⚡ イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは、水道水に手や足を浸し、微弱な電流を流すことで発汗を抑制する治療法です。手掌多汗症や足底多汗症に対して有効とされていますが、効果を維持するには継続的な治療が必要です。
💉 ボツリヌス毒素注射
ボツリヌス毒素(ボトックス)注射は、汗腺を支配する神経の働きを一時的にブロックすることで発汗を抑制します。主に腋窩多汗症に対して行われ、重度の原発性腋窩多汗症に対しては保険適用となっています。効果は4〜9か月程度持続するため、定期的な治療の継続が必要です。
🔧 多汗症の手術の種類
保存的治療で十分な効果が得られない場合や、より根本的な治療を希望される場合には、手術による治療が検討されます。多汗症に対する手術にはいくつかの種類があり、それぞれ適応となる部位や効果、リスクが異なります。
📋 主な手術の種類一覧
多汗症に対する主な手術として以下があります:
- ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術):手掌多汗症に対して高い効果を発揮する神経を遮断する手術
- ミラドライ:マイクロ波を用いて汗腺を破壊する治療、主に腋窩多汗症に適用
- 剪除法:腋窩の汗腺を直接除去する手術
- 吸引法・超音波法:腋窩の汗腺を破壊・吸引する手術
🎯 手術適応の判断基準
手術の適応は、多汗症の重症度や部位、保存的治療への反応、患者さんの希望などを総合的に判断して決定されます。
一般的な適応基準:
- 外用薬やボツリヌス毒素注射などの保存的治療で十分な効果が得られない
- 日常生活への支障が大きい
- 早期の症状改善を希望
特にETS手術については、代償性発汗というリスクがあるため、手術のメリットとデメリットを十分に理解した上で決定することが重要です。
🔍 ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)の詳細
ETS手術(Endoscopic Thoracic Sympathectomy)は、手掌多汗症に対して最も高い効果が期待できる手術です。胸部の交感神経を遮断することで、手のひらへの発汗指令を断ち、発汗を抑制します。
⚙️ ETS手術の原理と方法
人間の発汗は自律神経の一つである交感神経によってコントロールされています。ETS手術では、胸部にある交感神経節を切断または焼灼することで、汗腺への発汗指令を遮断します。
手術の流れ:
- 全身麻酔下で実施
- 脇の下に数ミリの小さな切開
- 胸腔鏡というカメラを挿入
- 内視鏡で胸腔内を観察
- 目的の交感神経節をクリップで遮断または電気メスで焼灼
- 手術時間:片側20〜30分程度、両側で1時間程度
📍 遮断するレベルと効果の違い
交感神経節は脊椎に沿って連なっており、遮断する位置によって効果を発揮する部位が異なります。
- T2遮断:顔面や腋窩への効果も期待できるが、代償性発汗が強く出る傾向
- T3またはT4遮断:現在の主流、代償性発汗のリスクを軽減しながら手掌の発汗を効果的に抑制
📈 ETS手術の効果と成功率
ETS手術の手掌多汗症に対する効果は非常に高く、90%以上の患者さんで手のひらの発汗が著明に減少します。
効果の特徴:
- 手術直後から効果を実感
- 長期的にも効果が持続
- 腋窩多汗症への効果は50〜70%程度
- 足底多汗症への効果は不確実
⚠️ 代償性発汗について
ETS手術を受ける際に最も注意が必要なのが代償性発汗です。これは、手のひらの発汗が減少する代わりに、体の他の部位(特に背中、腹部、太もも、臀部など)の発汗が増加する現象です。
代償性発汗の特徴:
- 50〜90%の患者さんに何らかの代償性発汗
- 多くの場合は軽度で許容できる範囲
- 遮断する神経のレベルが高いほど起こりやすい
- 完全に予防することは困難
🚨 その他の合併症とリスク
ETS手術のその他の合併症として以下があります:
- ホルネル症候群:まぶたの下垂、瞳孔の縮小(現在は非常にまれ)
- 気胸:手術操作に伴って起こることがあるが、多くは軽度で自然改善
- 血胸
- 肋間神経痛
- 心拍数の軽度低下:通常は日常生活に支障なし
📡 ミラドライの詳細
ミラドライは、マイクロ波を用いて汗腺を破壊する治療法です。主に腋窩多汗症やワキガに対して用いられ、切開を行わない低侵襲な治療として注目されています。
🔬 ミラドライの原理
ミラドライは、5.8GHzのマイクロ波を皮膚の上から照射し、汗腺が存在する層(真皮から皮下脂肪の境界部)を選択的に加熱して汗腺を破壊します。
治療の特徴:
- マイクロ波は水分を多く含む組織に吸収されやすい
- 汗腺やアポクリン腺に集中的にエネルギーを与える
- 皮膚表面を冷却システムで保護
- 表皮のやけどを防ぎながら深部の汗腺を効率的に破壊
🏥 ミラドライの治療の流れ
治療は局所麻酔下で行われます。
- 脇の治療範囲にマーキング
- 局所麻酔薬を注射
- 専用のハンドピースを皮膚に密着させてマイクロ波を照射
- 片側の治療時間:20〜30分程度
- 両脇で約1時間
- 当日から日常生活に復帰可能
📊 ミラドライの効果と持続期間
ミラドライによる治療効果は、1回の治療で70〜80%程度の発汗減少が期待できます。
効果の特徴:
- 一度破壊された汗腺は再生しない
- 効果は長期間持続
- アポクリン腺も破壊するため、ワキガの症状改善も同時に期待
- 効果不十分な場合は2回目の治療も可能
⚠️ ミラドライの副作用と注意点
ミラドライの主な副作用:
- 治療部位の腫れ、痛み:通常1〜2週間で軽快
- しびれや硬結(しこり):数か月続くこともある
- まれな合併症:皮膚のやけど、色素沈着、毛嚢炎
注意点:
- 腋窩専用の治療(手掌や足底には適用不可)
- 激しい運動は1〜2週間程度控える
✂️ 剪除法(せんじょほう)の詳細
剪除法は、腋窩多汗症やワキガに対して行われる外科的手術で、皮膚を切開して直視下に汗腺を除去する方法です。最も確実に汗腺を除去できる方法として知られています。
🔧 剪除法の手術方法
剪除法の手術手順:
- 脇のしわに沿って3〜5cm程度の切開
- 皮膚を裏返すように剥離
- 皮膚の裏側に付着している汗腺を直接目で見ながら除去
- はさみやメスでエクリン腺とアポクリン腺を除去
- 手術時間:片側40分〜1時間程度
- 手術後は圧迫固定を実施
🎯 剪除法の効果
剪除法は、汗腺を直接除去するため、最も高い効果が期待できる手術です。
効果の特徴:
- 適切に行われれば80〜90%以上の発汗減少
- ワキガの臭い軽減も同時に実現
- 一度除去した汗腺は再生しないため効果は永続的
- 術者の技量によって結果に差が出ることがある
⚠️ 剪除法のデメリットとリスク
主なデメリット:
- 切開による傷跡:脇のしわに沿って切開するため目立ちにくいが、傷跡は残る
- ダウンタイムが長い:1週間程度は腕を上げる動作を控える必要
合併症のリスク:
- 血腫
- 感染
- 皮膚壊死
- 傷跡の肥厚(ケロイド)
- 知覚異常
🔄 吸引法・超音波法の詳細
吸引法と超音波法は、小さな切開から器具を挿入して汗腺を破壊・吸引する方法です。剪除法に比べて傷跡が小さく、ダウンタイムも短い低侵襲な手術として行われています。
🔧 吸引法の方法と特徴
吸引法は、脂肪吸引と同様の原理で汗腺を吸引除去する方法です。
手術の流れ:
- 脇に数ミリの切開
- カニューレ(細い管)を挿入
- 皮下の汗腺を削り取りながら吸引
メリット:
- 傷跡が小さく目立ちにくい
- 手術後の回復が比較的早い
- 日常生活への復帰が早い
🌊 超音波法の方法と特徴
超音波法は、超音波を発生する器具を皮下に挿入し、超音波の振動で汗腺を破砕してから吸引する方法です。
特徴:
- 超音波による熱エネルギーで汗腺を効率的に破壊
- 吸引法単独よりも効果が高い
- 超音波による止血効果
- 出血が少なく術後の腫れも軽減
- 超音波による熱傷のリスクに注意が必要
⚠️ 吸引法・超音波法の限界
吸引法や超音波法は低侵襲である反面、いくつかの限界があります:
- 効果の限界:剪除法に比べると汗腺の除去率が低くなる傾向
- 再発のリスク:十分な効果が得られず、再手術や追加治療が必要になることも
- 術者による差:経験豊富な医師による手術を受けることが重要
⚖️ 多汗症手術のメリット・デメリット比較
それぞれの手術法にはメリットとデメリットがあり、患者さんの状態や希望に応じて適切な方法を選択することが重要です。
🔍 ETS手術のメリット・デメリット
メリット:
- 手掌多汗症に対して非常に高い効果
- 効果が即座に現れる
- 長期的に効果が持続
デメリット:
- 代償性発汗のリスク
- 全身麻酔が必要
- 入院が必要な場合がある
- 神経を遮断するため不可逆的な治療
📡 ミラドライのメリット・デメリット
メリット:
- 切開が不要で傷跡が残らない
- ダウンタイムが短い
- 局所麻酔で日帰り治療が可能
- ワキガの改善も同時に期待
デメリット:
- 腋窩以外には適用できない
- 費用が高額になりやすい
- 複数回の治療が必要になることがある
- 保険適用外
✂️ 剪除法のメリット・デメリット
メリット:
- 最も確実に汗腺を除去できる
- 効果が永続的
- 保険適用となる場合がある
デメリット:
- 切開による傷跡が残る
- ダウンタイムが長い
- 合併症のリスクがある
🔄 吸引法・超音波法のメリット・デメリット
メリット:
- 傷跡が小さい
- ダウンタイムが比較的短い
- 局所麻酔で行える
デメリット:
- 剪除法に比べて効果が不確実な場合がある
- 再発のリスクがある
- 保険適用外となることが多い
✅ 手術を受ける前に確認すべきポイント
多汗症の手術を受ける前には、いくつかの重要なポイントを確認しておく必要があります。十分な情報収集と準備を行うことで、より良い結果を得ることができます。
🔍 適切な診断を受ける
まず、多汗症の正確な診断を受けることが重要です。
確認すべき点:
- 続発性多汗症の場合は原因となる疾患の治療が優先
- 多汗症の重症度を評価
- 本当に手術が必要な状態かどうかを判断
- 保存的治療の選択肢も含めて検討
皮膚科や多汗症専門の外来で診察を受けることをお勧めします。
⚠️ 手術のリスクを理解する
各手術法のリスクや副作用について十分に理解することが重要です。
特に重要な点:
- ETS手術:代償性発汗のリスクについて具体的に理解
- 不可逆性:手術が不可逆的であることを理解
- 合併症:各手術法の合併症について詳しく説明を受ける
🏥 医療機関と医師の選択
多汗症の手術は、経験豊富な医師による治療を受けることが重要です。
選択の基準:
- 手術の実績が豊富
- 術前の説明が丁寧
- 術後のフォローアップ体制が整っている
- 複数の医療機関でカウンセリングを受けて比較検討
📋 術前の準備
手術前には以下の準備が必要です:
- 喫煙を控える
- 血液をサラサラにする薬を服用している場合は事前に相談
- 手術後の安静期間を確保できるようにスケジュール調整
🏥 手術後の経過と日常生活での注意点
手術後は適切なケアを行い、医師の指示に従って生活することで、良好な結果を得ることができます。
🔍 ETS手術後の経過
入院・回復期間:
- 1〜2日の入院が必要な場合がある
- 手術直後から手のひらの発汗減少を実感
- 術後の痛みは比較的軽度(鎮痛剤で対応可能)
- 胸部の違和感や軽い痛みが数日〜1週間程度
日常生活への復帰:
- 激しい運動は1〜2週間程度控える
- デスクワークなどは比較的早期に再開可能
📡 ミラドライ後の経過
術後の症状:
- 治療部位の腫れや痛みが1〜2週間程度
- しこりや硬結が数か月残ることがある
- しびれや知覚異常が一時的に発生(数週間から数か月で改善)
生活制限:
- 激しい運動は1〜2週間程度控える
- 日常生活は当日から再開可能
✂️ 剪除法・吸引法後の経過
術後管理:
- 脇の圧迫固定を数日〜1週間程度
- この間は腕を上げる動作を控える
- 抜糸は1〜2週間後
回復過程:
- 腫れや内出血が1〜2週間程度
- 完全に落ち着くまで約1か月
- 激しい運動や重いものを持つ動作は2〜4週間程度控える
⚠️ 術後の注意点
重要な注意事項:
- 医師の指示に従い、処方された薬を正しく服用
- 傷口の清潔を保つ
- 感染の兆候(発熱、強い痛み、赤み、膿など)がある場合は速やかに受診
- 術後の経過観察のための定期受診を忘れずに実施
💰 多汗症手術の費用と保険適用について
多汗症の手術費用は、手術の種類や医療機関によって大きく異なります。また、保険適用の有無によっても費用負担が変わってきます。
✅ 保険適用となる手術
ETS手術:
- 重度の手掌多汗症に対して保険適用
- 3割負担で10万円〜15万円程度
剪除法:
- 腋臭症(ワキガ)の診断がついている場合は保険適用
- 3割負担で4万円〜5万円程度
※保険適用の条件や費用は医療機関によって異なる場合があるため、事前に確認することをお勧めします。
💳 自費診療の手術
ミラドライ:
- 現在のところ保険適用外
- 費用:両脇で25万円〜45万円程度
吸引法や超音波法:
- 多くの場合は自費診療
- 費用:20万円〜40万円程度
自費診療の場合は医療機関によって価格設定が異なるため、複数の医療機関で見積もりを取ることをお勧めします。
🎯 費用以外に考慮すべき点
手術を選択する際は、費用だけでなく以下も総合的に考慮することが重要です:
- 効果の確実性
- リスク
- ダウンタイム
- 医師の技量
安価であることだけを理由に選択すると、期待した効果が得られなかったり、合併症のリスクが高まったりする可能性があります。信頼できる医療機関で、十分な説明を受けた上で治療を受けることをお勧めします。

❓ よくある質問
多汗症の手術は、一般的に思春期以降(15〜16歳以上)から受けることができます。ただし、ETS手術については、代償性発汗などのリスクを十分に理解できる年齢である必要があり、20歳以上を推奨する医療機関も多いです。未成年の方が手術を希望する場合は、保護者の同意が必要となります。また、成長期には症状が変化する可能性もあるため、慎重に判断することが重要です。
代償性発汗に対する根本的な治療法は現在のところ確立されていません。対症療法として、塩化アルミニウム外用薬やボツリヌス毒素注射が用いられることがありますが、効果には限界があります。クリップで神経を遮断した場合、早期であればクリップを除去することで神経機能が回復し、代償性発汗が軽減する可能性がありますが、神経を焼灼した場合は不可逆的です。そのため、手術前に代償性発汗のリスクについて十分に理解しておくことが重要です。
ミラドライは1回の治療で多くの方が効果を実感できます。臨床試験では、1回の治療で平均して約80%の発汗減少が報告されています。ただし、効果の程度には個人差があり、残存した汗腺による発汗が気になる場合は2回目の治療を行うこともあります。2回目の治療は、最初の治療から3か月以上間隔を空けて行われることが一般的です。
手術後も汗が完全にゼロになるわけではありません。どの手術法でも、全ての汗腺を除去・破壊することは技術的に難しく、ある程度の発汗は残ることが一般的です。ETS手術で手のひらの発汗が著しく減少した場合でも、わずかな湿り気は残ることがあります。腋窩の手術でも、70〜90%程度の発汗減少が目標となり、完全に乾燥した状態になることは稀です。ただし、多くの方が日常生活に支障のないレベルまで発汗が軽減することで満足されています。
手術中は麻酔が効いているため、痛みを感じることはありません。ETS手術は全身麻酔で行われるため、手術中は完全に眠った状態です。ミラドライや剪除法、吸引法は局所麻酔で行われますが、麻酔注射時のチクッとした痛み以外は感じません。術後は麻酔が切れると痛みが出てきますが、処方される鎮痛剤で対応可能な程度です。多くの方が術後1〜2日で痛みが軽減し、1週間程度で日常生活に支障のないレベルまで改善します。
📝 まとめ
多汗症の手術には、ETS手術、ミラドライ、剪除法、吸引法・超音波法などの種類があり、それぞれ特徴や適応が異なります。
各手術の特徴:
- ETS手術:手掌多汗症に対して非常に高い効果、ただし代償性発汗のリスク要理解
- ミラドライ:腋窩多汗症に対して切開なしで治療、ダウンタイムも短い
- 剪除法:最も確実に汗腺を除去、ただし傷跡が残る可能性
- 吸引法・超音波法:低侵襲だが効果がやや不確実
手術を検討される際は、まず専門医の診察を受け、ご自身の多汗症の状態や希望に合った治療法を選択することが大切です。保存的治療も含めた様々な選択肢の中から、メリットとデメリットを十分に理解した上で決定してください。
アイシークリニック大宮院では、多汗症でお悩みの方のご相談を承っております。お気軽にご相談ください。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
医師・当院治療責任者
多汗症の治療は段階的に行うことが重要です。まずは外用薬やボツリヌス毒素注射などの保存的治療を十分に試していただき、それでも日常生活に支障がある場合に手術を検討します。特に手術には不可逆的な側面もあるため、メリットとリスクを十分にご理解いただいた上で治療方針を決定することが大切です。