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帯状疱疹は何科を受診すべき?症状別の適切な診療科と治療の流れを解説

はじめに

「体の片側に赤い発疹ができて、ピリピリと痛む」「水ぶくれのような症状が出てきた」——このような症状が現れたとき、多くの方が「これは帯状疱疹かもしれない」と不安になりながらも、「どの診療科を受診すればいいのか分からない」と迷われるのではないでしょうか。

帯状疱疹は、早期に適切な治療を開始することで症状の悪化を防ぎ、後遺症のリスクを大幅に減らすことができる疾患です。しかし、受診する診療科を間違えると、診断や治療開始が遅れてしまう可能性があります。

本記事では、帯状疱疹が疑われる際にどの診療科を受診すべきか、症状の出る部位や状態に応じた適切な診療科の選び方、そして治療の流れまでを詳しく解説します。アイシークリニック大宮院では、皮膚科専門医による帯状疱疹の診断・治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

帯状疱疹とは?基本的な知識

帯状疱疹の原因

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus: VZV)の再活性化によって引き起こされる疾患です。多くの方が子どもの頃に経験する「水ぼうそう(水痘)」と同じウイルスが原因となっています。

水ぼうそうが治った後も、このウイルスは体内から完全に排除されるわけではありません。神経節という場所に潜伏し、長い年月をかけて静かに潜んでいます。そして、加齢やストレス、過労、免疫力の低下などをきっかけに、ウイルスが再び活動を始めることで帯状疱疹が発症します。

帯状疱疹の特徴的な症状

帯状疱疹の最も特徴的な点は、体の片側に帯状に症状が現れることです。主な症状には以下のようなものがあります:

初期症状(発疹出現前)

  • 体の片側の皮膚にピリピリ、チクチクとした違和感や痛み
  • 焼けるような感覚
  • かゆみ
  • 頭痛や発熱を伴うこともある

発疹が出現した段階

  • 赤い発疹が帯状に現れる
  • 小さな水ぶくれ(水疱)が集まって出現
  • 強い痛みを伴うことが多い
  • 発疹は体の片側に限局される

進行期

  • 水疱が破れてただれる
  • かさぶたができる
  • 痛みが持続または増強する

好発部位

帯状疱疹は体のどの部分にも現れる可能性がありますが、特に多く見られる部位は以下の通りです:

  • 胸部から背部(最も多い)
  • 腹部
  • 顔面(三叉神経領域)
  • 頭部

胸部や背部に出現する場合、肋間神経に沿って帯状に症状が現れることが典型的です。

発症しやすい年齢層と背景

帯状疱疹は、50歳以上の方に多く見られる疾患で、80歳までに約3人に1人が発症すると言われています。これは加齢とともに免疫機能が低下することが主な理由です。

ただし、若い世代でも以下のような条件下では発症リスクが高まります:

  • 過度なストレスや疲労が続いている
  • 睡眠不足が慢性的にある
  • 免疫抑制剤を使用している
  • がんの治療中である
  • HIVなど免疫系の疾患がある
  • 糖尿病などの基礎疾患がある

帯状疱疹で受診すべき診療科は?

基本は「皮膚科」が最適

帯状疱疹の症状が体に現れた場合、最も適切な診療科は皮膚科です。皮膚科医は帯状疱疹の診断に慣れており、視診だけで診断できることが多く、速やかに適切な治療を開始することができます。

皮膚科を選ぶべき理由:

  1. 診断の正確性: 皮膚科医は皮膚疾患の専門家であり、帯状疱疹の特徴的な発疹パターンを見慣れています
  2. 迅速な治療開始: 診断が確定すれば、すぐに抗ウイルス薬などの治療を開始できます
  3. 鑑別診断の経験: 帯状疱疹に似た他の皮膚疾患との区別も適切に行えます
  4. 皮膚症状の管理: 発疹や水疱の適切なケア方法を指導できます

アイシークリニック大宮院には皮膚科専門医が在籍しており、帯状疱疹の診断から治療、アフターケアまで一貫して対応可能です。初診の方もお気軽にご相談ください。

内科でも対応可能なケース

内科、特に総合内科やかかりつけ医でも帯状疱疹の診断・治療は可能です。以下のような場合は内科受診も選択肢となります:

内科受診が適している場合

  • すでに基礎疾患で通院中のかかりつけ医がいる
  • 皮膚科が近くにない、またはすぐに受診できない
  • 全身症状(発熱、倦怠感など)が強い
  • 高齢で複数の疾患を抱えている

ただし、内科では皮膚疾患の専門的な知識が限定的な場合もあるため、診断が難しいケースや重症例では、最終的に皮膚科への紹介となることもあります。

症状が出る部位別の診療科選択

帯状疱疹の症状が出現する部位によっては、他の専門診療科を受診すべきケースもあります。

顔面に症状が出た場合

眼科の受診が必要なケース

顔面、特に額やまぶた周辺に帯状疱疹の症状が現れた場合は、眼科の受診が非常に重要です。これは「眼部帯状疱疹」と呼ばれ、以下のような合併症のリスクがあります:

  • 角膜炎
  • 結膜炎
  • ぶどう膜炎
  • 視神経炎
  • 緑内障
  • 失明のリスク

目の周囲に発疹が出た場合は、速やかに眼科を受診するか、皮膚科と眼科の両方を受診することをお勧めします。

耳鼻咽喉科の受診が必要なケース

耳の周囲や耳の中、口腔内に症状が現れる「ラムゼイ・ハント症候群(Hunt症候群)」の場合、以下の症状を伴うことがあります:

  • 顔面神経麻痺
  • 難聴
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 味覚障害

このような症状がある場合は、皮膚科に加えて耳鼻咽喉科の受診も必要となります。顔面神経麻痺は早期治療が重要ですので、症状に気づいたらすぐに医療機関を受診してください。

陰部に症状が出た場合

陰部や臀部に帯状疱疹が出現した場合、泌尿器科や婦人科を受診される方もいますが、まずは皮膚科の受診をお勧めします

陰部の帯状疱疹は、性感染症と間違えられやすいため、正確な診断が重要です。皮膚科医であれば、帯状疱疹の特徴的なパターン(片側性、神経支配領域に沿った分布)から正確に診断できます。

ただし、排尿障害や排便障害を伴う場合は、泌尿器科や肛門科との連携が必要になることもあります。

ペインクリニックや麻酔科が関与するケース

帯状疱疹の痛みが非常に強い場合や、帯状疱疹後神経痛(PHN)が心配される場合、ペインクリニック(疼痛外来)や麻酔科との連携が有効です。

これらの科では、以下のような専門的な痛み管理を行います:

  • 神経ブロック注射
  • 硬膜外ブロック
  • 交感神経ブロック
  • より強力な鎮痛薬の処方

皮膚科で初期治療を受けながら、痛みのコントロールが難しい場合にペインクリニックを併診するという流れが一般的です。

救急外来を受診すべきケース

以下のような症状がある場合は、緊急性が高いため、休日や夜間でも救急外来の受診を検討してください

  1. 目の周囲の帯状疱疹で視力低下や激しい目の痛みがある
  2. 顔面神経麻痺が急に出現した
  3. 激しい頭痛や意識障害を伴う(髄膜炎の可能性)
  4. 広範囲に発疹が広がっている(汎発性帯状疱疹)
  5. 免疫不全状態(HIV、がん治療中など)で帯状疱疹を発症
  6. 耐え難い痛みで日常生活が困難

これらのケースでは、重篤な合併症を起こしている可能性があるため、迅速な対応が必要です。

帯状疱疹の診断方法

視診による診断

帯状疱疹の診断は、多くの場合視診だけで可能です。皮膚科専門医であれば、以下の特徴から帯状疱疹を判断できます:

帯状疱疹の典型的な視診所見

  • 体の片側に限局した発疹
  • 神経支配領域(デルマトーム)に沿った帯状の分布
  • 紅斑(赤み)の上に小さな水疱が群生
  • 水疱は同じ発達段階のものが並ぶ
  • 正常皮膚との境界が比較的明瞭

経験豊富な医師であれば、これらの特徴から数分で診断を確定できます。

検査が必要なケース

典型的な症状でない場合や、確定診断が必要な場合には、以下のような検査が行われることがあります:

ウイルス抗原検査

  • 水疱液や皮膚擦過物を採取
  • 水痘・帯状疱疹ウイルスの抗原を検出
  • 結果が比較的早く出る(数時間~1日)

血液検査

  • VZV特異的IgM抗体、IgG抗体の測定
  • 急性期と回復期のペア血清で抗体価の上昇を確認
  • 診断確定までに時間がかかる(数日~1週間)

ウイルス分離・PCR検査

  • 水疱液からウイルスを分離培養
  • ウイルスDNAをPCR法で検出
  • 高精度だが、結果が出るまで時間がかかる

ただし、実際の臨床現場では、検査結果を待たずに治療を開始することがほとんどです。帯状疱疹は早期治療が重要なため、典型的な症状があれば、視診のみで治療を開始します。

鑑別すべき疾患

帯状疱疹と似た症状を示す疾患もあるため、正確な鑑別が重要です:

単純疱疹(ヘルペス)

  • 繰り返し同じ場所に出現
  • 通常は片側だが、帯状疱疹ほど広範囲ではない
  • 口唇や陰部に多い

接触皮膚炎

  • かぶれの原因物質との接触歴がある
  • 左右対称に出ることが多い
  • 水疱より紅斑や丘疹が主体

虫刺症

  • 刺された記憶がある
  • 散在性で、帯状の分布をとらない

汗疱性湿疹

  • 手足に多い
  • かゆみが主体で、痛みは少ない

これらの鑑別診断を適切に行うためにも、皮膚科専門医の受診が推奨されます。

帯状疱疹の治療方法

抗ウイルス薬による治療

帯状疱疹の治療の中心は、抗ウイルス薬の投与です。これらの薬剤は、水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑制し、症状の悪化を防ぎます。

主な抗ウイルス薬

  1. アシクロビル(ゾビラックス®)
    • 最も古くから使用されている薬剤
    • 1日5回の服用が必要
    • 腎機能に応じた用量調整が必要
  2. バラシクロビル(バルトレックス®)
    • アシクロビルのプロドラッグ
    • 1日3回の服用で済む
    • 体内でアシクロビルに変換される
  3. ファムシクロビル(ファムビル®)
    • 1日3回の服用
    • 帯状疱疹後神経痛の予防効果も期待できる
  4. アメナメビル(アメナリーフ®)
    • 最新の抗ウイルス薬
    • 1日1回の服用で効果が持続
    • 腎機能が低下している患者さんにも使いやすい

治療のタイミングが重要

抗ウイルス薬は、発疹出現から72時間以内に開始することが最も効果的です。この時期を過ぎると、ウイルスの増殖は既にピークを過ぎており、薬剤の効果が限定的になります。

そのため、「帯状疱疹かもしれない」と思ったら、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。

治療期間 通常、抗ウイルス薬は7日間服用します。症状が軽快しても、処方された期間は確実に服用を続けることが大切です。

痛みのコントロール

帯状疱疹では、皮膚症状だけでなく痛みの管理も非常に重要です。

鎮痛薬の段階的使用

  1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
    • ロキソプロフェン、セレコキシブなど
    • 軽度から中等度の痛みに使用
  2. アセトアミノフェン
    • カロナールなど
    • NSAIDsが使えない場合の選択肢
  3. 神経障害性疼痛治療薬
    • プレガバリン(リリカ®)
    • ガバペンチン(ガバペン®)
    • デュロキセチン(サインバルタ®)
    • 神経痛に特化した薬剤
  4. オピオイド鎮痛薬
    • トラマドール
    • 強い痛みが持続する場合に使用
  5. 神経ブロック
    • ペインクリニックで実施
    • 硬膜外ブロック、神経根ブロックなど

外用薬・スキンケア

抗ウイルス外用薬

  • アシクロビル軟膏
  • 皮膚症状の改善をサポート

皮膚保護剤

  • 亜鉛華軟膏
  • ワセリン
  • 水疱が破れた後の二次感染予防

日常のケア

  • 患部を清潔に保つ
  • 柔らかいタオルで優しく拭く
  • 強くこすらない
  • 通気性の良い衣服を着用

合併症への対応

細菌感染の予防と治療

水疱が破れてただれた部分から細菌感染を起こすことがあります。感染の兆候(膿、周囲の赤みの拡大、発熱)があれば、抗菌薬の追加投与が必要です。

帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防

帯状疱疹の治療で最も重要な目標の一つが、帯状疱疹後神経痛の予防です。PHNは、皮疹が治癒した後も3ヶ月以上痛みが持続する状態で、生活の質を大きく低下させます。

PHN予防のポイント:

  • 早期に抗ウイルス薬治療を開始する
  • 急性期の痛みを適切にコントロールする
  • 高齢者では特に注意深い管理が必要
  • 必要に応じてペインクリニックと連携する

受診のタイミングと緊急性

できるだけ早い受診が望ましい理由

帯状疱疹では、発症からの経過時間が予後を大きく左右します。

早期受診のメリット

  1. 症状の重症化を防げる
    • ウイルスの増殖を早期に抑制
    • 発疹の広がりを最小限に
  2. 痛みを軽減できる
    • 神経ダメージを最小化
    • 鎮痛薬の効果も高い
  3. 合併症のリスクを下げる
    • 細菌感染の予防
    • 眼合併症、髄膜炎などの重篤な合併症の回避
  4. 帯状疱疹後神経痛の予防
    • 最も重要な予防法は早期治療
    • 72時間以内の治療開始が理想

「様子を見る」が危険な理由

「少し様子を見てから受診しよう」と考えるのは危険です。

遅れることのデメリット

  • 抗ウイルス薬の効果が限定的になる
  • 痛みが強くなり、コントロールが困難になる
  • 皮疹が広範囲に広がる
  • 帯状疱疹後神経痛のリスクが上昇
  • 合併症の発生率が高まる

特に以下のような方は、迅速な受診が特に重要です:

  • 50歳以上の方
  • 糖尿病や自己免疫疾患のある方
  • がん治療中の方
  • 免疫抑制剤を使用している方
  • 顔面、特に目の周囲に症状がある方

「発疹が出る前の痛み」での受診

帯状疱疹では、発疹が出る数日前から、体の片側にピリピリとした痛みや違和感を感じることがあります。この段階で受診しても、まだ診断は難しいのですが、以下のような場合は早めの受診を検討してください:

  • 明らかに片側だけの痛みがある
  • 神経に沿った痛みである
  • 過去に帯状疱疹の経験がある
  • 最近、免疫力の低下を感じている

医師に「帯状疱疹の前駆症状かもしれない」と伝え、経過観察や必要に応じた予防的対応を相談できます。

帯状疱疹の予防

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹は、ワクチン接種によって予防することができます。現在、日本では2種類のワクチンが使用可能です。

1. 生ワクチン(ビケン®)

  • 特徴:従来からある水痘ワクチンと同じもの
  • 接種回数:1回
  • 予防効果:50〜60%程度
  • 持続期間:5年程度
  • 費用:比較的安価(8,000〜10,000円程度)※自費診療
  • 注意点:免疫抑制状態の方には接種できない

2. 不活化ワクチン(シングリックス®)

  • 特徴:より新しいタイプのワクチン
  • 接種回数:2回(2ヶ月間隔)
  • 予防効果:90%以上
  • 持続期間:9年以上(現在も継続調査中)
  • 費用:高額(1回22,000円×2回=44,000円程度)※自費診療
  • 利点:免疫抑制状態の方にも接種可能

接種対象と推奨

  • 50歳以上のすべての方
  • 特に推奨される方:
    • 60歳以上の方
    • 帯状疱疹の既往がある方
    • 免疫力の低下が心配な方
    • 糖尿病などの基礎疾患がある方

厚生労働省のサイトでも帯状疱疹ワクチンに関する情報が提供されています。詳しくは厚生労働省ホームページの予防接種情報をご確認ください。

日常生活での予防

ワクチン接種に加えて、日常生活での免疫力維持も重要です。

免疫力を保つための生活習慣

  1. 十分な睡眠
    • 毎日7〜8時間の睡眠を確保
    • 規則正しい睡眠リズム
  2. バランスの取れた食事
    • タンパク質、ビタミン、ミネラルを十分に
    • 特にビタミンB群、ビタミンC、亜鉛を意識
  3. 適度な運動
    • ウォーキング、ジョギング、水泳など
    • 週3〜4回、30分程度の有酸素運動
  4. ストレス管理
    • 趣味の時間を持つ
    • リラックスする時間を作る
    • 瞑想やヨガなども効果的
  5. 体を冷やさない
    • 特に季節の変わり目は注意
    • 温かい飲み物を摂る
    • 入浴で体を温める
  6. 過労を避ける
    • 仕事とプライベートのバランス
    • 休息日を確保する

帯状疱疹後神経痛(PHN)について

帯状疱疹後神経痛とは

帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia: PHN)は、帯状疱疹の最も厄介な合併症の一つです。皮膚の発疹が治った後も、3ヶ月以上痛みが持続する状態を指します。

PHNの特徴

  • 持続的な焼けるような痛み
  • 鋭い刺すような痛み
  • 衣服が触れるだけで痛む(アロディニア)
  • 夜間に痛みが増強することが多い
  • 痛みのために睡眠障害、うつ状態を引き起こすことも

発症リスク

帯状疱疹患者の約10〜20%がPHNに移行すると言われています。

リスク因子

  • 高齢:最大のリスク因子(60歳以上で約30〜50%)
  • 急性期の痛みが強い
  • 発疹が広範囲
  • 顔面の帯状疱疹
  • 治療開始が遅れた(72時間以上経過)
  • 糖尿病などの基礎疾患

治療方法

PHNの治療は、通常の鎮痛薬だけでは効果が不十分なことが多く、専門的な治療が必要です。

薬物療法

  1. 神経障害性疼痛治療薬
    • プレガバリン(リリカ®)
    • ガバペンチン
    • デュロキセチン
    • 三環系抗うつ薬
  2. 外用薬
    • カプサイシン軟膏
    • リドカインテープ
    • NSAIDs外用薬
  3. オピオイド
    • トラマドール
    • 他のオピオイド鎮痛薬

非薬物療法

  • 神経ブロック注射
  • 経皮的電気刺激療法(TENS)
  • 認知行動療法
  • 理学療法

生活の質への影響

PHNは、痛みそのものだけでなく、生活全般に大きな影響を及ぼします:

  • 睡眠障害
  • 食欲低下
  • 外出の減少
  • 社会活動の制限
  • うつ状態、不安
  • 生活の質の著しい低下

だからこそ、PHNに移行しないための急性期の適切な治療が極めて重要なのです。

よくある質問(FAQ)

Q1: 帯状疱疹は人にうつりますか?

うにかかったことのない人や免疫のない人に接触すると、その人が水ぼうそうを発症する可能性があります。
特に注意が必要な相手:
妊婦さん(特に妊娠初期)
新生児・乳児
水ぼうそうにかかったことがない子ども
免疫抑制状態の方
水疱がかさぶたになるまでは、これらの方々との接触を避けることが推奨されます。

Q2: 帯状疱疹は繰り返しますか?

A: 帯状疱疹の再発率は比較的低く、約1〜5%程度と報告されています。多くの方は一生に一度の経験で終わります。

ただし、以下のような場合は再発リスクが高まります:

  • 免疫力が著しく低下している
  • がん治療中
  • HIV感染症
  • 重度の糖尿病
  • 長期的な免疫抑制剤の使用

再発を予防するには、免疫力を維持することと、ワクチン接種が有効です。

Q3: 仕事や学校は休む必要がありますか?

A: 法律上の出席停止期間は定められていませんが、以下の点を考慮して判断します:

休むことが望ましい場合

  • 痛みや全身症状が強く、日常生活に支障がある
  • 水疱が多数あり、他者と接触する機会が多い職場・学校
  • 保育園、幼稚園など小さい子どもと接する環境
  • 医療・介護現場で免疫力の低い方と接する

注意すれば出勤・通学可能な場合

  • 症状が軽度で、全身状態が良好
  • 水疱を覆うことができる
  • 水ぼうそうにかかったことがない人との接触を避けられる

主治医と相談して判断することをお勧めします。

Q4: お風呂に入ってもいいですか?

A: はい、入浴は問題ありません。むしろ、患部を清潔に保つために、シャワーや入浴は推奨されます。

入浴時の注意点

  • 患部を強くこすらない
  • 熱いお湯は避け、ぬるめのお湯にする
  • 柔らかいタオルで優しく拭く
  • 入浴後は処方された外用薬を塗る
  • 家族と共用のタオルは避ける

ただし、全身状態が悪い場合(高熱など)は、シャワーのみにするか、体を拭く程度にとどめてください。

Q5: 食事で気をつけることはありますか?

A: 帯状疱疹そのものに対する食事制限は特にありません。ただし、免疫力を高めるバランスの良い食事を心がけることが重要です。

積極的に摂りたい栄養素

  • タンパク質:肉、魚、卵、大豆製品
  • ビタミンB群:豚肉、レバー、納豆、玄米
  • ビタミンC:野菜、果物
  • 亜鉛:牡蠣、牛肉、ナッツ類
  • ビタミンE:ナッツ、植物油、かぼちゃ

避けたほうが良いもの

  • 過度のアルコール(免疫力を低下させる)
  • 過度の糖分(免疫機能に影響)

Q6: 市販薬で治せますか?

A: いいえ、市販薬だけでの治療は推奨されません。帯状疱疹の治療には抗ウイルス薬が必須ですが、これは医師の処方箋がなければ入手できません。

市販の痛み止めや外用薬で一時的に症状を和らげることはできますが、根本的な治療にはなりません。帯状疱疹が疑われる場合は、必ず医療機関を受診してください。

市販薬使用時の注意

  • あくまで一時的な対処と考える
  • できるだけ早く医療機関を受診する
  • 市販薬の使用を医師に報告する

Q7: 帯状疱疹ワクチンは必ず打つべきですか?

A: ワクチンは任意接種(自費)ですが、50歳以上の方には強く推奨されています

ワクチン接種を特に検討すべき方

  • 60歳以上の方
  • 過去に帯状疱疹にかかったことがある方
  • 糖尿病、自己免疫疾患などの基礎疾患がある方
  • 家族に帯状疱疹で苦しんだ人がいる方
  • 帯状疱疹後神経痛を心配される方

費用は自己負担となりますが、帯状疱疹の発症を予防し、特に帯状疱疹後神経痛という長期間の苦痛を避けられる可能性を考えると、価値のある投資と言えます。

日本皮膚科学会のガイドラインでも、帯状疱疹ワクチンの有効性が認められています。詳細は日本皮膚科学会の公式サイトをご参照ください。

Q8: 痛みだけで発疹がない場合、帯状疱疹の可能性はありますか?

A: はい、可能性があります。帯状疱疹では、発疹が出る数日前から痛みや違和感が先行することがよくあります。これを前駆期と呼びます。

前駆期の特徴

  • 体の片側だけの痛みや違和感
  • ピリピリ、チクチク、ジンジンといった神経痛様の痛み
  • 神経の走行に沿った痛み
  • 数日〜1週間程度続く

この段階では診断が難しいですが、「片側だけ」という点が重要な手がかりです。数日様子を見て、発疹が出たらすぐに受診してください。

また、まれに「無疹性帯状疱疹」という、発疹を伴わない帯状疱疹も存在します。痛みが強く続く場合は、医療機関で相談することをお勧めします。

まとめ

帯状疱疹は、適切な診療科を早期に受診し、迅速に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、帯状疱疹後神経痛などの後遺症のリスクを大幅に減らすことができる疾患です。

本記事の重要ポイント

  1. 受診すべき診療科
    • 基本は「皮膚科」が最適
    • 顔面、特に目の周囲の場合は「眼科」も受診
    • 耳や顔面神経麻痺を伴う場合は「耳鼻咽喉科」も
    • 強い痛みには「ペインクリニック」との連携も
  2. 早期受診の重要性
    • 発疹出現から72時間以内の治療開始が理想
    • 早ければ早いほど、症状の軽減と後遺症予防に効果的
    • 「様子を見る」は危険
  3. 症状が疑われたら
    • 体の片側に痛みや発疹がある
    • ピリピリとした神経痛様の痛み
    • 赤い発疹や水ぶくれ
    • これらの症状があれば、すぐに医療機関へ
  4. 治療の中心
    • 抗ウイルス薬の早期投与
    • 痛みの適切なコントロール
    • 皮膚症状のケア
    • 帯状疱疹後神経痛の予防
  5. 予防の重要性
    • 50歳以上の方はワクチン接種を検討
    • 日常生活で免疫力を維持
    • 規則正しい生活、バランスの良い食事、十分な睡眠

参考文献・情報源

本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました:

  1. 厚生労働省
  2. 国立感染症研究所
  3. 日本皮膚科学会
  4. 日本ペインクリニック学会
  5. 日本眼科学会

※本記事の情報は、2025年10月時点のものです。医療情報は常に更新されますので、最新の情報については医療機関にご相談ください。


本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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