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あせも(汗疹)の原因・症状・治療法を皮膚科医が詳しく解説

はじめに

暑い季節になると、多くの方が悩まされる「あせも」。特に赤ちゃんや小さなお子さんに多く見られますが、大人でも汗をかきやすい環境では誰もが発症する可能性があります。赤いぶつぶつができて痒みを伴うあせもは、日常生活に支障をきたすこともあり、適切なケアと予防が重要です。

この記事では、皮膚科医の視点から、あせもの原因、症状、予防法、そして効果的な治療方法について詳しく解説します。

あせも(汗疹)とは

医学的定義

あせも(汗疹:かんしん)は、医学用語では「汗疹」と呼ばれ、大量の発汗により汗の出口(汗腺)や汗管が詰まることで発症する皮膚疾患です。日本皮膚科学会の定義によれば、高温多湿の環境下で汗腺の導管が閉塞し、汗が皮膚内に貯留することで起こる炎症性疾患とされています。

正常な状態では、汗は汗腺から汗管を通って皮膚表面に排出されますが、何らかの原因で汗管が閉塞すると、汗が皮膚内に漏れ出し、周囲の組織に炎症を引き起こします。これがあせもの発症メカニズムです。

発症頻度と好発年齢

あせもは年齢を問わず発症しますが、特に乳幼児に多く見られます。新生児から2歳頃までの乳幼児は、成人と比べて単位面積あたりの汗腺密度が高く、また体温調節機能が未熟なため、あせもを発症しやすいとされています。

また、成人でも夏季の高温多湿環境や、激しい運動、発熱時などに発症することがあります。厚生労働省の統計によると、夏季の皮膚科受診理由として、あせもは常に上位に位置しています。

あせもの発生メカニズム

汗腺の構造と機能

人間の皮膚には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺という2種類の汗腺が存在します。あせもに関わるのは主にエクリン汗腺です。

エクリン汗腺は全身に分布しており、体温調節のために汗を分泌します。汗腺から分泌された汗は、皮膚内部の汗管を通って皮膚表面に排出されます。この汗管は非常に細い管状構造をしており、容易に閉塞しやすい特徴があります。

汗管閉塞のメカニズム

汗管が閉塞する主な原因は以下の通りです。

角質による閉塞 高温多湿の環境下では、皮膚表面の角質層がふやけて柔らかくなり、汗の出口である汗孔を塞いでしまうことがあります。特に、長時間の発汗が続くと、角質が膨潤して汗孔を閉塞しやすくなります。

皮脂や汚れによる詰まり 皮脂や汚れ、化粧品、日焼け止めなどが汗孔を塞ぐことも、あせもの原因となります。特に、オイルベースの化粧品や厚塗りのファンデーションは、汗孔を塞ぎやすいため注意が必要です。

細菌の関与 皮膚表面に常在する黄色ブドウ球菌などの細菌が産生する物質が、汗管の閉塞に関与していることが研究で明らかになっています。特に紅色汗疹(後述)の発症には、細菌の関与が大きいとされています。

あせもの種類と症状

あせもは、汗管の閉塞が起こる部位によって、主に3つのタイプに分類されます。それぞれ症状が異なるため、適切な対処が必要です。

1. 水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)

特徴 水晶様汗疹は、最も表層の角質層内で汗管が閉塞して起こるタイプです。「白いあせも」とも呼ばれます。

症状

  • 直径1〜3mm程度の透明または白色の小さな水疱が多発
  • 炎症反応がほとんどないため、赤みや痒みを伴わない
  • 水疱は簡単に破れ、数日で自然に消失する
  • 主に新生児や乳児、発熱時の成人に見られる

好発部位

  • 胸部
  • 背部上部

水晶様汗疹は、症状が軽く自然に治癒することが多いため、特別な治療を必要としないことがほとんどです。ただし、発症した場合は皮膚を清潔に保ち、涼しい環境で過ごすことが重要です。

2. 紅色汗疹(こうしょくかんしん)

特徴 紅色汗疹は、最も一般的なあせものタイプで、表皮内で汗管が閉塞して起こります。「赤いあせも」と呼ばれ、一般的に「あせも」という場合、このタイプを指すことが多いです。

症状

  • 直径1〜3mm程度の赤い丘疹(ぶつぶつ)が多発
  • 強い痒みを伴う
  • チクチクとした刺すような痛みや灼熱感を感じることもある
  • 掻きむしることで、二次感染を起こすリスクがある
  • 数日から1週間程度で自然治癒することが多いが、悪化すると長引くことも

好発部位

  • 首周り
  • 肘の内側
  • 膝の裏
  • 脇の下
  • 背中
  • お尻
  • 乳幼児では額やおでこ周辺にもよく見られる

紅色汗疹は痒みが強いため、特に子どもの場合は掻き壊してしまい、細菌感染を起こして「あせものより(汗疹膿痂疹)」に進行することがあります。

3. 深在性汗疹(しんざいせいかんしん)

特徴 深在性汗疹は、真皮内で汗管が閉塞して起こる最も深い層のあせもです。日本では比較的まれですが、熱帯地域では多く見られます。

症状

  • 肌色または白色の平らな丘疹
  • 痒みや痛みはほとんどない
  • 広範囲に及ぶと、発汗機能が低下し体温調節ができなくなる
  • 熱中症のリスクが高まる

好発部位

  • 体幹
  • 四肢

深在性汗疹は、長期間にわたって高温多湿の環境にさらされた場合に発症することが多く、紅色汗疹を繰り返した後に起こることもあります。発汗機能の低下により熱中症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

あせもの原因とリスク要因

環境要因

高温多湿な環境 あせもの最大の原因は、高温多湿な環境です。気温が高く湿度も高い環境では、汗が蒸発しにくく皮膚表面に留まりやすくなります。日本の夏季は特にあせもが発症しやすい気候条件といえます。

通気性の悪い衣服 ナイロンやポリエステルなどの化学繊維の衣服や、体に密着した衣服は通気性が悪く、汗がこもりやすいためあせもを発症しやすくなります。

寝具や寝姿 布団やマットレスとの接触面は、特に汗がこもりやすく、あせもができやすい部位です。特に乳児は長時間仰向けで寝ているため、背中にあせもができやすくなります。

個人的要因

年齢 乳幼児は、成人と比べて単位面積あたりの汗腺密度が高いにもかかわらず、汗管が未発達で細いため、容易に閉塞しやすい傾向があります。また、体温調節機能が未熟なため、過剰に汗をかきやすいという特徴もあります。

発汗過多 元々汗をかきやすい体質の方は、あせもを発症しやすい傾向があります。また、肥満の方は代謝が高く発汗量が多いため、あせもができやすいとされています。

発熱 風邪や感染症などで発熱すると、体温を下げるために大量の汗をかきます。特に布団をかぶって寝ている間は、熱と湿気がこもりやすく、あせもが発症しやすい状態になります。

激しい運動 激しい運動や肉体労働により大量に発汗すると、汗管が閉塞しやすくなります。特にスポーツ後にすぐに汗を拭かない、シャワーを浴びないといった場合、あせもができやすくなります。

皮膚のバリア機能の低下

アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下しているため、汗による刺激を受けやすく、あせもを発症しやすい傾向があります。また、掻き壊しによる二次感染のリスクも高くなります。

乾燥肌 乾燥肌の方は、皮膚のバリア機能が低下しているため、汗による刺激を受けやすい状態です。特に冬季の乾燥した環境から急に暖房の効いた室内に入った場合など、あせもができることがあります。

あせもの予防方法

あせもは、日常生活の工夫で予防できることが多い皮膚疾患です。以下の予防策を実践することで、あせもの発症リスクを大幅に減らすことができます。

環境管理

室温・湿度の調整 エアコンや扇風機を活用し、室温を26〜28℃程度に保ちましょう。湿度は50〜60%が理想的です。特に就寝時は、快適な温度・湿度を保つことが重要です。ただし、エアコンの冷風が直接肌に当たらないよう注意しましょう。

寝具の工夫

  • 通気性の良い寝具を選ぶ(綿や麻素材がおすすめ)
  • 汗取りパッドやタオルを背中に敷く
  • こまめに寝具を洗濯し、清潔に保つ
  • 乳児の場合、仰向けばかりでなく、適度に寝姿を変える

衣服の選び方

素材選び

  • 綿や麻など、天然素材で通気性の良い生地を選ぶ
  • 吸湿速乾性のある素材も効果的
  • 化学繊維の衣服は避けるか、インナーに綿素材を着用

サイズとデザイン

  • 体に密着しすぎないゆったりとしたサイズを選ぶ
  • 首周りや腕周りが締め付けないデザインを選ぶ
  • 乳幼児の場合、重ね着のしすぎに注意

こまめな着替え 汗をかいたら、できるだけ早く着替えることが重要です。特に乳幼児は自分で訴えることができないため、保護者が注意してこまめにチェックし、汗をかいていたら着替えさせましょう。

汗対策

こまめな汗の拭き取り 汗をかいたら、柔らかいタオルやガーゼで優しく拭き取りましょう。ゴシゴシこすると皮膚を傷つけるため、押さえるようにして水分を吸い取るのがポイントです。濡れたタオルで拭くと、汗だけでなく皮脂や汚れも除去できるため、より効果的です。

シャワーの活用

  • 1日1〜2回、ぬるめのシャワーで汗を流す
  • 石鹸は使いすぎず、刺激の少ないものを選ぶ
  • シャワー後は、しっかりと水分を拭き取る
  • タオルで強くこすらず、押さえるように拭く

入浴の注意点

  • 熱いお湯は避け、ぬるめの湯温(38〜40℃)にする
  • 長湯は発汗を促すため避ける
  • ボディソープや石鹸は低刺激性のものを選ぶ
  • 入浴後は、保湿剤で肌を保護する

スキンケア

適切な保湿 皮膚のバリア機能を保つため、適切な保湿が重要です。ただし、あせもができている部分に油分の多い保湿剤を塗ると悪化する可能性があるため、注意が必要です。

日焼け止めの使い方 日焼け止めは、汗孔を塞ぐ原因となることがあります。以下の点に注意しましょう。

  • ノンコメドジェニック処方のものを選ぶ
  • 厚塗りを避ける
  • 帰宅後はすぐに洗い流す
  • 乳幼児には、低刺激性の専用製品を使用

生活習慣

水分補給 適切な水分補給により、体温調節機能が正常に働きます。特に運動時や暑い日は、こまめに水分を摂取しましょう。

適度な運動 適度な運動で汗をかく習慣をつけることで、汗腺の機能が正常に保たれます。ただし、運動後は速やかにシャワーを浴びて汗を流すことが重要です。

エアコンの適切な使用 エアコンを使いすぎると、汗をかく機会が減り、汗腺の機能が低下する可能性があります。適度に汗をかくことも、健康な皮膚を保つためには重要です。

自宅でできるケア方法

症状が軽い場合の対処法

患部の冷却 痒みや炎症がある場合、冷たいタオルや保冷剤(タオルで包む)で患部を冷やすと、症状が和らぎます。ただし、冷やしすぎは皮膚に負担をかけるため、10〜15分程度にとどめましょう。

清潔に保つ 患部を清潔に保つことが最も重要です。ぬるま湯で優しく洗い、しっかりと水分を拭き取りましょう。

掻かないようにする 痒みがあっても、掻き壊すと二次感染のリスクが高まります。

  • 爪を短く切る
  • 乳幼児の場合、ミトンを使用する
  • 痒みが強い場合は、冷やすか、市販の痒み止めを使用

市販薬の使用

あせもの症状が軽い場合、市販薬で対処することも可能です。ただし、症状が改善しない場合や悪化した場合は、速やかに医療機関を受診してください。

推奨される市販薬

  • 非ステロイド系の抗炎症外用薬
  • 弱いステロイド外用薬(短期間の使用に限る)
  • 抗ヒスタミン剤配合の痒み止め
  • カーマインローション(収斂作用があり、炎症を抑える)

使用上の注意

  • 使用前に、患部を清潔にする
  • 用法・用量を守る
  • ステロイド外用薬は長期使用を避ける
  • 乳幼児に使用する場合は、必ず「小児用」と記載のあるものを選ぶ
  • 顔面への使用は慎重に

やってはいけないこと

過度な刺激

  • 強くこする
  • 熱いお湯で洗う
  • アルコール含有の化粧水を使う
  • スクラブ入りの洗浄料を使う

不適切な薬の使用

  • 自己判断で強いステロイド外用薬を長期使用する
  • 抗生物質の内服薬を自己判断で使用する
  • 他人の処方薬を使用する

医療機関での治療

受診の目安

以下のような場合は、医療機関(皮膚科)を受診することをおすすめします。

早めの受診が必要なケース

  • 市販薬を使用しても症状が改善しない
  • 症状が悪化している
  • 広範囲に発症している
  • 強い痒みや痛みがある
  • 膿が出ている、または強い臭いがする
  • 発熱を伴う
  • 乳児に発症した場合
  • アトピー性皮膚炎などの基礎疾患がある

緊急受診が必要なケース

  • 高熱が続く
  • 全身状態が悪い
  • 急速に症状が悪化している
  • 呼吸困難などの全身症状を伴う

診断方法

皮膚科では、以下の方法であせもの診断を行います。

視診 皮膚の状態を詳しく観察し、発疹の形状、色、分布などからあせもの種類を判断します。経験豊富な皮膚科医であれば、視診だけで正確に診断できることがほとんどです。

問診

  • 発症時期と経過
  • 発症した状況(気温、活動内容など)
  • 既往歴(アトピー性皮膚炎など)
  • 使用している薬やスキンケア製品
  • 生活環境(エアコンの使用状況など)

鑑別診断 あせもと似た症状を示す疾患として、以下のようなものがあります。

  • 湿疹
  • 蕁麻疹
  • 毛包炎
  • 接触性皮膚炎
  • 薬疹

これらの疾患を除外し、正確な診断を行います。

治療法

外用療法

ステロイド外用薬 紅色汗疹で炎症が強い場合、ステロイド外用薬が処方されます。症状の程度に応じて、適切な強さのステロイドが選択されます。

  • 弱いステロイド:顔面や乳幼児に使用
  • 中等度のステロイド:体幹や四肢の炎症に使用
  • 使用期間は通常1〜2週間程度

非ステロイド系抗炎症外用薬 症状が軽い場合や、ステロイドの使用を避けたい場合に処方されます。

抗生物質外用薬 二次感染を起こしている場合、抗生物質の外用薬が処方されます。

亜鉛華軟膏 収斂作用と保護作用があり、あせもの治療に古くから使用されています。

内服療法

抗ヒスタミン薬 痒みが強い場合、抗ヒスタミン薬の内服が処方されることがあります。特に夜間の痒みで眠れない場合などに効果的です。

抗生物質 広範囲に二次感染を起こしている場合や、発熱を伴う場合は、抗生物質の内服が必要になることがあります。

その他の治療

冷却療法 クリニックでは、医療用の冷却装置を使用して患部を冷却し、炎症を抑える治療を行うこともあります。

生活指導 あせもの再発を防ぐため、日常生活での注意点について詳しく指導します。

よくある質問

Q1. あせもと湿疹の違いは何ですか?

あせもは、汗管の閉塞により発症する皮膚疾患で、主に高温多湿の環境で発汗した際に起こります。一方、湿疹は様々な原因(アレルギー、刺激物質、乾燥など)により皮膚に炎症が起こる疾患の総称です。
あせもは通常、汗をかきやすい部位(首周り、脇の下、関節の内側など)に小さな赤いぶつぶつができるのに対し、湿疹はより広範囲に赤みやかさつき、水疱などが現れることがあります。ただし、見た目だけでは判断が難しい場合もあるため、正確な診断には皮膚科の受診をおすすめします。

Q2. 赤ちゃんのあせもは、すぐに病院に行くべきですか?

赤ちゃんのあせもは、症状が軽く、機嫌も良い場合は、まず自宅でのケア(清潔に保つ、涼しい環境で過ごす、こまめな着替えなど)を試してみてください。多くの場合、適切なケアで2〜3日で改善します。

ただし、以下の場合は早めに小児科または皮膚科を受診してください。

  • 広範囲に発症している
  • 症状が悪化している
  • 機嫌が悪い、泣き続ける
  • 膿が出ている
  • 発熱している
  • 授乳や水分摂取ができない

生後3ヶ月未満の赤ちゃんの場合は、特に注意が必要です。

Q3. あせもは大人でもできますか?

はい、大人でもあせもはできます。特に以下のような状況で発症しやすくなります。

  • 夏季の高温多湿な環境
  • 激しい運動や肉体労働
  • 発熱時
  • 通気性の悪い衣服の着用
  • 長時間のデスクワークで背中に汗をかいた状態が続く

また、肥満の方、多汗症の方、皮膚のバリア機能が低下している方は、特にあせもができやすい傾向があります。

Q4. あせもはうつりますか?

いいえ、あせもは感染症ではないため、他人にうつることはありません。あせもは、自分の汗が原因で起こる皮膚疾患であり、細菌やウイルスによる感染症ではありません。

ただし、あせもを掻き壊して細菌感染を起こした場合(膿痂疹など)は、その感染症が他人にうつる可能性はあります。

Q5. ベビーパウダーは使った方がいいですか?

ベビーパウダーの使用については、意見が分かれています。以前は広く推奨されていましたが、現在では以下の理由から慎重な使用が求められています。

使用のメリット

  • 汗を吸収し、皮膚をさらさらに保つ
  • 摩擦を軽減する

使用のデメリット

  • パウダーが汗孔を塞ぎ、あせもを悪化させる可能性
  • 吸い込むと呼吸器に影響する可能性
  • 厚く塗りすぎると、かえって通気性が悪くなる

使用する場合は、以下の点に注意してください。

  • 薄く、軽くはたく程度にする
  • 汗をかいている状態では使用しない
  • 乳幼児の顔周辺には使用しない
  • あせもができている部分には使用しない

日本皮膚科学会では、あせもの予防にベビーパウダーを積極的に推奨していません。基本的には、清潔を保ち、通気性の良い衣服を着用することが最も効果的な予防法とされています。

Q6. あせもができやすい体質は変えられますか?

体質を完全に変えることは難しいですが、生活習慣の改善により、あせもができにくい状態を作ることは可能です。

効果的な対策

  • 適度な運動で汗をかく習慣をつける(汗腺の機能を正常に保つ)
  • 皮膚のバリア機能を保つためのスキンケア
  • 適切な室温管理
  • 通気性の良い衣服の選択
  • 規則正しい生活と十分な睡眠
  • バランスの取れた食事

また、多汗症の方は、皮膚科で多汗症の治療を受けることで、発汗量をコントロールすることも可能です。

Q7. あせもの跡は残りますか?

通常、あせも自体の跡が残ることはほとんどありません。適切にケアすれば、数日から1週間程度で跡を残さずに治癒します。

ただし、以下の場合は色素沈着や傷跡が残る可能性があります。

  • 強く掻き壊した場合
  • 二次感染を起こした場合
  • 炎症が長期間続いた場合
  • 不適切な治療を行った場合

色素沈着が残った場合でも、多くは時間の経過とともに徐々に薄くなります。気になる場合は、皮膚科で美白剤などの治療を受けることも可能です。

Q8. 夏場のマスク着用であせもができることはありますか?

はい、マスク着用によりあせもができることがあります。特に夏季は、マスク内が高温多湿になりやすく、口周りや顎、頬などにあせもができやすくなります。

マスクによるあせもの予防

  • 通気性の良い素材のマスクを選ぶ(綿素材など)
  • こまめにマスクを交換する
  • 可能な場合は、人との距離を保ちマスクを外して休憩する
  • 汗をかいたら、優しく拭き取る
  • 帰宅後はすぐに洗顔し、肌を清潔に保つ

Q9. 冬でもあせもはできますか?

はい、冬でもあせもはできます。以下のような状況で発症することがあります。

  • 暖房の効きすぎた室内
  • 厚着や重ね着のしすぎ
  • 運動後の発汗
  • 発熱時

特に乳幼児は、保護者が寒さを心配して厚着させすぎることで、冬でもあせもができることがよくあります。

Q10. あせもができやすい人は、汗かきの人ですか?

あせもは、汗をかきやすい人に多く見られますが、必ずしも「汗かき=あせもができやすい」というわけではありません。

あせもができやすい条件

  • 大量に発汗する
  • 汗をかいた状態が長時間続く
  • 通気性の悪い環境や衣服
  • 皮膚を清潔に保てていない
  • 皮膚のバリア機能が低下している

普段あまり汗をかかない人でも、急に暑い環境に入ったり、激しい運動をしたりすると、汗腺が急激な発汗に対応できず、あせもができることがあります。

特殊な状況でのあせも

職業性のあせも

特定の職業の方は、職業環境が原因であせもを発症しやすい傾向があります。

高リスク職業

  • 屋外作業員(建設業、農業など)
  • 調理師、パティシエ
  • 工場勤務者
  • スポーツインストラクター
  • 消防士、自衛隊員
  • 防護服を着用する職業(医療従事者、研究者など)

対策

  • 休憩時間にこまめに汗を拭く
  • 吸湿速乾性のあるインナーを着用
  • 可能な限り通気性を確保
  • 勤務後は速やかにシャワーを浴びる
  • 職場環境の改善(換気、冷房設備の設置など)

スポーツとあせも

運動やスポーツにより大量に発汗すると、あせもができやすくなります。

スポーツ時の予防策

  • 吸湿速乾性のあるスポーツウェアを着用
  • こまめに汗を拭く
  • 水分補給を十分に行う
  • 運動後は速やかにシャワーを浴びる
  • 濡れたウェアを長時間着たままにしない

特に注意が必要なスポーツ

  • マラソン、トライアスロンなど長時間の持久系スポーツ
  • ウェットスーツを着用する水上スポーツ
  • プロテクター類を着用するスポーツ(ホッケー、アメフトなど)

海外旅行とあせも

熱帯地域への旅行では、あせもに注意が必要です。

旅行時の対策

  • 通気性の良い衣服を持参
  • こまめにシャワーを浴びる
  • 冷房の効いた部屋で休憩時間を確保
  • 抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬を携帯(処方薬がある場合)
  • 現地の気候に体を慣らすため、到着直後の激しい活動は避ける

予防のための長期的な取り組み

汗腺機能のトレーニング

現代の快適な生活環境は、汗腺の機能を低下させる可能性があります。適度に汗をかく習慣をつけることで、汗腺の機能を正常に保つことができます。

汗腺トレーニング方法

  • 週に2〜3回、軽い運動で汗をかく
  • サウナや半身浴を活用(ただし、長時間の入浴は避ける)
  • 夏季でもエアコンの設定温度を下げすぎない
  • 季節に応じた適切な服装

スキンケアの習慣化

健康な皮膚を保つことは、あせもの予防にもつながります。

日常のスキンケア

  • 優しい洗浄(ゴシゴシこすらない)
  • 適切な保湿(季節や肌質に応じて)
  • 紫外線対策(適切な日焼け止めの使用)
  • 十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事

生活環境の整備

住環境の工夫

  • 適切な温度・湿度管理
  • 通気性の確保(換気)
  • 寝具の定期的な洗濯と天日干し
  • エアコンのフィルター清掃

衣類の管理

  • 季節に応じた適切な衣類の選択
  • 綿素材の衣類を十分に揃える
  • 洗濯を小まめに行い、清潔を保つ

まとめ

あせも(汗疹)は、高温多湿の環境で汗腺や汗管が詰まることで発症する皮膚疾患です。乳幼児に多く見られますが、成人でも発症する可能性があります。

あせも予防の基本

  1. 清潔を保つ(こまめな着替えとシャワー)
  2. 涼しく快適な環境を維持する
  3. 通気性の良い衣服を選ぶ
  4. 汗をかいたら速やかに拭き取る

症状が出た場合の対処

  • 軽症の場合は、清潔と冷却で様子を見る
  • 痒みが強い場合は、市販の痒み止めを使用
  • 症状が改善しない、悪化する場合は皮膚科を受診

医療機関受診のタイミング

  • 広範囲に発症している
  • 市販薬で改善しない
  • 膿が出ている
  • 発熱を伴う
  • 乳児の場合

あせもは適切な予防とケアで十分に対処できる疾患ですが、症状が長引く場合や悪化する場合は、迷わず皮膚科を受診してください。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 汗疹(あせも)」
    https://www.dermatol.or.jp/qa/qa34/
  2. 厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/
  3. 日本小児皮膚科学会「こどもの皮膚疾患」
    https://www.jspd.or.jp/
  4. 環境省「熱中症予防情報サイト」
    https://www.wbgt.env.go.jp/
  5. 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」
    https://www.dermatol.or.jp/

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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