「肌のくすみが気になる」「ニキビ跡がなかなか消えない」「毛穴の開きをなんとかしたい」——こうした肌悩みを抱える方は少なくありません。スキンケアを頑張っても改善が見られないとき、選択肢として挙がるのが「ケミカルピーリング」という美容医療です。
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を用いて古い角質を取り除き、肌の生まれ変わり(ターンオーバー)を促進する治療法です。日本皮膚科学会によってガイドラインが策定されており、医師の管理下で行われる安全性の高い施術として、多くのクリニックで実施されています。
本記事では、ケミカルピーリングの基本的な仕組みから、使用される薬剤の種類、期待できる効果、施術の流れ、注意点まで、詳しく解説していきます。初めてケミカルピーリングを検討される方にも分かりやすい内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- ケミカルピーリングとは
- 肌のターンオーバーの仕組み
- ケミカルピーリングの効果
- ケミカルピーリングの種類と特徴
- マッサージピール(コラーゲンピール)について
- 医療機関とエステ・セルフケアの違い
- 施術の流れ
- 施術頻度と回数の目安
- ダウンタイムと副作用
- 施術を受けられない方(禁忌事項)
- 施術前後の注意点
- 他の施術との併用
- よくある質問
- まとめ
1. ケミカルピーリングとは
ケミカルピーリングとは、皮膚に酸性の薬剤を塗布し、古い角質や表皮を化学的に剥離させることで、肌の再生を促す治療法です。「ケミカル(chemical)」は化学的、「ピーリング(peeling)」は剥がすという意味で、文字通り「化学的に皮膚を剥がす」施術を指します。
日本皮膚科学会は、ケミカルピーリングを「皮膚に化学薬品を塗り、皮膚を剥がすことによって起こりうる現象や効果を利用して行う治療」と定義しています。また、同学会のガイドラインでは、ケミカルピーリングは「皮膚科診療技術を十分に修得した皮膚科専門医ないしそれと同等の技術・知識を有する医師の十分な管理下に行われるべき行為である」とされており、医療行為として位置づけられています。
2000年には厚生省(現・厚生労働省)から「ケミカルピーリングは業として行われれば医業に該当する」との見解が示され、医師のみが行える医療行為であることが明確化されました。
ケミカルピーリングの歴史
ケミカルピーリングの歴史は古く、古代エジプト時代にまで遡ります。クレオパトラが発酵乳(乳酸を含む)で入浴していたという伝承があり、これが最も古いピーリングの記録とされています。
近代的なケミカルピーリングは、1990年代にアメリカを中心に発展し、日本にも導入されました。当初は施術によるトラブルも報告されましたが、2001年に日本皮膚科学会がガイドラインを策定し、2008年には第3版として改訂。現在では安全性と有効性が確立された治療法として広く普及しています。
2. 肌のターンオーバーの仕組み
ケミカルピーリングの効果を理解するためには、まず肌の構造とターンオーバーについて知っておく必要があります。
皮膚の構造
私たちの皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっています。
表皮はさらに4つの層に分かれており、表面から順に「角質層(かくしつそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「基底層(きていそう)」と呼ばれています。表皮の厚さは約0.1~0.3mmと非常に薄く、顔の表皮は0.07~0.2mm程度です。
ターンオーバーとは
ターンオーバーとは、皮膚の細胞が生まれ変わるサイクルのことです。表皮の最も深い部分にある基底層で新しい細胞が生まれ、徐々に上層へと押し上げられながら成熟し、最終的に角質層に到達した後、垢として剥がれ落ちます。
健康な若い肌の場合、このサイクルは約28日間とされています。基底層で生まれた細胞が角質細胞になるまでに約14日、角質細胞が剥がれ落ちるまでにさらに約14日かかります。
年齢によるターンオーバーの変化
ターンオーバーの周期は、年齢とともに長くなっていきます。
| 年代 | ターンオーバー周期の目安 |
|---|---|
| 20代 | 約28日 |
| 30~40代 | 約45日 |
| 50~60代 | 約55日~75日 |
| 60代以降 | 約75日~100日 |
年齢を重ねると、基底層で新しい細胞を生み出す力が低下し、古い角質が剥がれ落ちるために必要なタンパク質の働きも弱まります。その結果、古い角質が肌表面に蓄積し、くすみやシミ、肌のごわつきといったトラブルが起こりやすくなります。
ターンオーバーが乱れる原因
ターンオーバーは年齢以外にも、以下のような要因で乱れることがあります。
まず、紫外線は肌へのダメージを与え、防御反応としてターンオーバーを加速させます。急いで作られた角質細胞は形状が不揃いで機能も不十分なため、バリア機能が低下します。
乾燥もターンオーバーを乱す大きな要因です。肌が乾燥すると、角質層のバリア機能が低下し、外部刺激を受けやすくなります。
睡眠不足も問題です。成長ホルモンは睡眠中に多く分泌され、肌の新陳代謝を促進します。睡眠が不足すると、この成長ホルモンの分泌が妨げられ、ターンオーバーが遅くなります。
ストレスは自律神経のバランスを崩し、血流を悪化させることでターンオーバーの乱れを引き起こします。また、偏った食生活やダイエットによる栄養不足、喫煙、過度の飲酒なども、肌の新陳代謝に悪影響を及ぼします。
3. ケミカルピーリングの効果
ケミカルピーリングは、乱れたターンオーバーを正常化させることで、さまざまな肌トラブルの改善が期待できます。
ニキビ・ニキビ跡の改善
ケミカルピーリングが最も効果を発揮するとされているのが、ニキビ治療です。
ニキビは、毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、アクネ菌が増殖することで発生します。ケミカルピーリングは、毛穴に詰まった角栓を除去し、皮脂の排出をスムーズにすることで、ニキビの発生を予防します。また、グリコール酸にはアクネ菌を殺菌する作用があるため、炎症性のニキビにも効果があります。
ニキビ跡(赤み、色素沈着)についても、ターンオーバーを促進することで、徐々に改善が期待できます。日本皮膚科学会のガイドラインでは、中等度のニキビで6回、重度のニキビでは10回程度の施術が目安とされています。
シミ・くすみの改善
紫外線を浴びると、肌を守るためにメラニンが生成されます。通常、メラニンはターンオーバーによって排出されますが、ターンオーバーが乱れていると、メラニンが肌に蓄積してシミやくすみの原因となります。
ケミカルピーリングでターンオーバーを正常化すると、メラニンの排出が促進され、シミやくすみが改善されます。特に、日焼けによる軽度のシミや、炎症後色素沈着(ニキビ跡の茶色いシミなど)に効果が期待できます。
ただし、肝斑(かんぱん)については、ケミカルピーリングによる刺激で悪化する可能性もあるため、医師の判断のもとで慎重に行う必要があります。
毛穴の開き・黒ずみの改善
毛穴の開きや黒ずみは、古い角質や皮脂が毛穴に詰まることで目立ちやすくなります。ケミカルピーリングは、毛穴に詰まった角栓を除去し、過剰な皮脂分泌をコントロールすることで、毛穴を目立ちにくくします。
特に、脂溶性のサリチル酸は、皮脂と馴染みやすく毛穴の奥まで浸透するため、毛穴トラブルに効果的とされています。
小じわ・肌のハリの改善
ケミカルピーリングは、表皮だけでなく、真皮層にも働きかけることで、コラーゲンの生成を促進します。コラーゲンは肌の弾力やハリを保つために重要な成分であり、その生成が促されることで、小じわの改善や肌のハリアップが期待できます。
ただし、深いシワや真皮の弾力線維の変性を伴うシワには効果が限定的です。ケミカルピーリングは主に「小じわ」に対して効果があるとされています。
肌質の改善
ケミカルピーリングによって古い角質が除去されると、肌表面が滑らかになり、透明感が向上します。また、ターンオーバーが整うことで、角質層の水分保持力が高まり、肌のキメが整います。
施術後は、まるで「卵の殻をむいたようなツルンとした肌」になるという表現がよく使われます。
4. ケミカルピーリングの種類と特徴
ケミカルピーリングに使用される薬剤には複数の種類があり、それぞれ特徴や適応が異なります。医療機関では、患者さんの肌の状態や悩みに応じて、最適な薬剤が選択されます。
グリコール酸(AHA)
グリコール酸は、サトウキビなどの植物に含まれるα-ヒドロキシ酸(AHA)の一種で、日本で最も一般的に使用されるピーリング剤です。「フルーツ酸ピーリング」「AHAピーリング」とも呼ばれます。
グリコール酸は分子量が非常に小さく、皮膚への浸透性が高いのが特徴です。角質層から表皮の最下層である基底層まで作用し、細胞同士の結合を弱めることで角質を剥離します。
主な効果として、ニキビ・ニキビ跡の改善、肌のくすみ改善、毛穴の黒ずみ改善、肌のハリや弾力向上などが挙げられます。また、アクネ菌を殺菌する作用もあるため、ニキビ治療に広く使用されています。
グリコール酸は濃度とpHを調整できるため、肌の状態に合わせた施術が可能です。ただし、濃度が高すぎると赤みやただれが生じる可能性があるため、医師による適切な判断が必要です。
施術頻度は2週間に1回程度が推奨されており、水溶性であるため、洗い流すことで簡単に中和できます。
サリチル酸マクロゴール(BHA)
サリチル酸は、柳の木から抽出されるβ-ヒドロキシ酸(BHA)で、強力な角質溶解作用を持ちます。ただし、従来のサリチル酸ピーリングは、皮膚の深くまで浸透しすぎて痛みや炎症を起こしやすいという問題がありました。
そこで日本で開発されたのが「サリチル酸マクロゴール」です。サリチル酸をマクロゴール(ポリエチレングリコール)という基剤に溶かすことで、薬剤が角質層にとどまり、深部への浸透を防ぎます。これにより、高い効果を維持しながら、副作用を大幅に軽減することに成功しました。
サリチル酸マクロゴールの特徴として、角質層のみに作用するため安全性が高いこと、施術後の赤みや皮むけがほとんどないこと、脂溶性で皮脂と馴染みやすく毛穴の詰まりに効果的なこと、そして抗炎症作用があることが挙げられます。
施術頻度は1ヶ月に1回程度で、グリコール酸ピーリングよりも間隔を空けることが推奨されています。治療回数が少なくて済むため、忙しい方にも適しています。
乳酸ピーリング
乳酸は、グリコール酸と同じAHAの一種ですが、分子量がグリコール酸よりも大きいため、皮膚への浸透が浅く、角質層の表層部にとどまります。そのため、効果はマイルドですが、肌への刺激も少なく、敏感肌の方や初めてピーリングを受ける方に適しています。
乳酸には美白作用があり、くすみやシミの改善、色素沈着のケアに効果的です。また、角質層のセラミド生成を促進し、肌のバリア機能を向上させる効果も期待できます。
グリコール酸ピーリングで角質を除去した後に、乳酸ピーリングで美白ケアを行う「ダブルピーリング」も効果的な方法として知られています。
トリクロロ酢酸(TCA)
トリクロロ酢酸は、強力な剥離効果を持つ薬剤で、皮膚の真皮層まで浸透します。深いシワやニキビ跡のクレーター、傷跡の治療に用いられることがあります。
ただし、効果が高い分、リスクも伴います。特に日本人を含むアジア人は、白色人種と比較して色素沈着が起こりやすいため、医師による慎重な判断と管理が必要です。
トリクロロ酢酸を配合した新しいピーリング剤として「マッサージピール(PRX-T33)」が登場しており、これについては次章で詳しく解説します。
5. マッサージピール(コラーゲンピール)について
近年注目を集めているのが、「マッサージピール」と呼ばれる新しいタイプのケミカルピーリングです。
マッサージピールとは
マッサージピールは、イタリアで開発された「PRX-T33」という薬剤を使用するピーリング治療です。従来のケミカルピーリングとは異なり、皮膚を剥離させずに真皮層に働きかけ、コラーゲンの生成を促進することから、「コラーゲンピール」とも呼ばれています。
PRX-T33は、高濃度のトリクロロ酢酸(TCA、33%)、低濃度の過酸化水素、そして美白成分であるコウジ酸を配合しています。通常、高濃度のトリクロロ酢酸は強い剥離作用を持ちますが、低濃度の過酸化水素と組み合わせることで、皮膚表面へのダメージを抑えながら、真皮深層にまで有効成分を届けることが可能になりました。この独自の配合は国際特許を取得しています。
マッサージピールの効果
マッサージピールには、以下のような効果が期待できます。
肌のハリ・弾力の向上については、トリクロロ酢酸が真皮層の線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の生成を促進します。施術後数ヶ月にわたってコラーゲンが生成されるため、持続的なハリ感の向上が期待できます。
美白・くすみ改善については、配合されているコウジ酸がメラニン生成を抑制し、シミやくすみを改善します。また、加齢による黄ぐすみの原因となる糖化を抑える作用もあります。
小じわ・たるみの改善については、コラーゲン増生効果により、小じわや軽度のたるみの改善が期待できます。
マッサージピールの特徴
マッサージピールは、従来のケミカルピーリングと比較して、以下のような特徴があります。
皮むけが少ないという点が大きな特徴です。従来のケミカルピーリングは、皮膚を剥離させることで効果を発揮しますが、マッサージピールは皮膚表面を傷つけずに深部に作用するため、施術後の皮むけがほとんどありません。
即効性も特徴の一つです。施術直後から肌のハリ感やツヤ、透明感を実感できることが多いです。これは、PRX-T33が皮膚内で水分を発生させるためと考えられています。
ダウンタイムが少ないことも利点です。施術後すぐにメイクが可能で、日常生活に支障をきたしません。
施術可能部位が広いことも特徴で、顔だけでなく、首、デコルテ、手の甲、腹部など全身に施術可能です。妊娠線や肉割れの改善にも用いられます。
施術の流れと推奨回数
マッサージピールの施術は、薬剤を顔全体にマッサージしながら塗り込み、浸透させた後に拭き取るという流れで行われます。施術時間は約10~15分程度です。
推奨される施術頻度は1~3週間に1回で、まずは5回程度を1クールとして継続することが効果的です。その後は、効果を維持するために月1~2回程度のメンテナンスが推奨されます。
6. 医療機関とエステ・セルフケアの違い
ケミカルピーリングは、医療機関だけでなく、エステサロンや自宅でのセルフケアでも行うことができます。しかし、使用できる薬剤や効果には大きな違いがあります。
薬剤の濃度の違い
医療機関とエステ・セルフケアで使用できる薬剤の濃度には、法律による規制があります。
アメリカの基準では、AHAピーリング(グリコール酸など)の場合、エステなどでは30%未満・pH3.0以上の薬剤のみ使用可能とされています。一方、医師が行う場合は30%以上・pH3.0以下の高濃度薬剤を使用できます。
日本でも、サリチル酸は化粧品への配合が0.2%までと規制されており、高濃度のサリチル酸マクロゴールピーリングは医療機関でのみ受けることができます。また、グリコール酸は3.6%以上が劇物に指定されているため、市販の化粧品に含まれる濃度は低く抑えられています。
効果の違い
薬剤の濃度が異なれば、当然効果も異なります。
医療機関で行うケミカルピーリングは、高濃度の薬剤を使用するため、角質層の奥深くまで作用し、明確な効果が得られます。また、医師が肌の状態を診察した上で、最適な薬剤と濃度を選択するため、個々の肌悩みに対して的確なアプローチが可能です。
一方、エステや自宅でのピーリングは、低濃度の薬剤を使用するため、効果はマイルドです。肌表面のくすみやざらつきの改善には一定の効果がありますが、ニキビやシミなどの根本的な改善は難しいとされています。
安全性の違い
医療機関でのケミカルピーリングは、医師の管理下で行われるため、万が一肌トラブルが生じた場合でも、適切な治療を受けることができます。
エステサロンでは医療行為が法律で禁止されているため、トラブルが起きても治療することができません。また、一部のエステでは(違法ですが)高濃度のピーリング剤を使用しているケースもあり、肌荒れやトラブルの原因となる可能性があります。
自宅でのセルフピーリングも、使用頻度や時間を誤ると、かえって肌を傷める原因となります。「やりすぎ」による肌荒れで、「ケミカルピーリングは効果がない」と誤解してしまうケースも少なくありません。
7. 施術の流れ
医療機関でケミカルピーリングを受ける場合の一般的な流れをご紹介します。
カウンセリング・診察
まず、医師によるカウンセリングと診察が行われます。現在の肌の状態、気になる症状、過去の治療歴、アレルギーの有無などを確認し、ケミカルピーリングが適応かどうかを判断します。適応と判断された場合は、使用する薬剤の種類や濃度、施術回数などの治療プランが提案されます。
この段階で、施術のメリット・デメリット、注意点なども詳しく説明されますので、不明な点があれば遠慮なく質問しましょう。
クレンジング・洗顔
施術前に、メイクや肌の汚れ、余分な皮脂をしっかりと落とします。薬剤を均一に浸透させるために、クレンジングと洗顔は丁寧に行われます。
薬剤の塗布
清潔になった肌に、選択されたピーリング剤を塗布します。薬剤の種類によって塗布方法や時間は異なりますが、一般的には5~10分程度肌に浸透させます。
グリコール酸ピーリングの場合、施術中にヒリヒリ感やピリピリ感を感じることがありますが、これは薬剤が浸透している証拠です。痛みが強い場合は、医師や看護師に伝えましょう。
サリチル酸マクロゴールピーリングの場合は、刺激が少なく、痛みをほとんど感じないことが多いです。
マッサージピールの場合は、薬剤をマッサージしながら浸透させます。施術中に温かい感覚やピリピリ感を感じることがあります。
中和・拭き取り
所定の時間が経過したら、薬剤を中和または拭き取ります。グリコール酸の場合は、アルカリ性の溶液で中和することで作用を止めます。サリチル酸マクロゴールの場合は、中和剤は不要で、拭き取るだけで作用が止まります。
洗顔・保湿
薬剤を完全に除去した後、丁寧に洗顔を行います。その後、保湿剤や日焼け止めを塗布して施術終了です。
施術時間
施術時間は、カウンセリングを除くと15~30分程度です。施術後すぐにメイクをして帰宅できる場合がほとんどです(サリチル酸マクロゴールピーリングの場合は、施術後12時間程度メイクを控える必要がある場合があります)。
8. 施術頻度と回数の目安
ケミカルピーリングは、1回の施術でも肌の変化を感じることができますが、継続して受けることでより高い効果が得られます。
推奨される施術頻度
施術頻度は、使用する薬剤や肌の状態によって異なります。
グリコール酸ピーリングの場合は、2週間に1回程度が推奨されます。効果が現れてきたら、4週間に1回、6週間に1回と間隔を空けていきます。
サリチル酸マクロゴールピーリングの場合は、1ヶ月に1回程度が推奨されます。効果が高い分、施術間隔を十分に空けることが重要です。
マッサージピールの場合は、1~3週間に1回程度で、5回程度を1クールとして継続することが推奨されます。
効果が現れるまでの回数
肌の悩みによって、効果を実感できるまでの回数は異なります。
くすみや肌のざらつきの改善は、1~2回の施術で効果を感じることが多いです。毛穴の開き・黒ずみの改善は、3~5回程度の継続が目安です。ニキビ・ニキビ跡の改善は、中等度で6回、重度で10回程度が目安とされています。シミ・色素沈着の改善は、5~10回以上の継続が必要な場合があります。
効果を維持するために
一定期間施術を受けて効果が出た後も、月に1回程度のメンテナンスを続けることで、効果を維持しやすくなります。また、日常的なスキンケア(保湿、紫外線対策)を怠らないことも重要です。
9. ダウンタイムと副作用
ケミカルピーリングは比較的ダウンタイムが少ない施術ですが、使用する薬剤や個人の肌質によって、一定の症状が現れることがあります。
一般的なダウンタイム
施術後に現れる可能性のある症状として、赤み、ヒリヒリ感・ほてり、乾燥、薄皮がむける、一時的なニキビの増悪などがあります。
これらの症状は通常、2~3日で落ち着きます。サリチル酸マクロゴールピーリングは特にダウンタイムが少なく、施術後の赤みや皮むけがほとんど見られません。
敏感肌の方や、初めてピーリングを受ける方は、症状が強く出る場合があります。心配な症状がある場合は、施術を受けたクリニックに相談しましょう。
注意すべき副作用
稀ではありますが、以下のような副作用が起こる可能性があります。
色素沈着については、特にアジア人は起こりやすいとされています。施術後の紫外線対策を怠ると、シミが濃くなってしまうことがあります。
アレルギー反応として、薬剤に対するアレルギーで、強い赤みや腫れ、かゆみが生じることがあります。過去にピーリング剤でアレルギーを起こしたことがある方は、事前に医師に伝えてください。
炎症・びらんについては、高濃度の薬剤を使用した場合や、施術時間が長すぎた場合に起こる可能性があります。医療機関では医師が肌の状態を見ながら適切に調整するため、リスクは最小限に抑えられています。
10. 施術を受けられない方(禁忌事項)
以下に該当する方は、ケミカルピーリングを受けられない場合があります。必ず施術前に医師に相談してください。
皮膚感染症にかかっている方は施術を受けられません。具体的には、ヘルペス、とびひ、ウイルス性のいぼなどの感染症がある場合です。
皮膚に損傷や炎症がある方も施術を避ける必要があります。傷口がある場合、日焼け直後、脱毛・剃毛処理の直後などが該当します。
妊娠中または妊娠の可能性がある方も、施術を控えることが推奨されています。
ケロイド体質の方は、傷跡が盛り上がって残りやすいため、注意が必要です。
特定の薬剤を使用している方も注意が必要です。特に、イソトレチノイン(ニキビ治療薬)を内服している場合、または6ヶ月以内に使用していた場合は、瘢痕化や治癒の遅延が起こる可能性があるとされています。
ピーリング剤にアレルギーがある方も施術を受けられません。過去にピーリングでアレルギー反応を起こしたことがある方は、必ず事前に申告してください。
また、湿疹、乾癬、白斑、酒皶(しゅさ)、脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患がある方は、ケミカルピーリングによって症状が悪化する可能性があるため、医師の判断が必要です。
11. 施術前後の注意点
ケミカルピーリングの効果を最大限に引き出し、トラブルを防ぐために、施術前後には以下の点に注意してください。
施術前の注意点
施術の数日前から、顔剃りや脱毛、スクラブ洗顔、ピーリング効果のある化粧品の使用は控えてください。角質にダメージを与えていると、薬剤が必要以上に深く浸透し、肌トラブルの原因となります。
パックやマッサージなど、肌に刺激を与える行為も避けましょう。
日焼けをしている状態での施術は避けてください。日焼け直後の肌は敏感になっており、ピーリングによる刺激が強く出る可能性があります。
施術後の注意点
紫外線対策は施術後最も重要なケアです。ケミカルピーリング後の肌は、角質層が薄くなりバリア機能が低下しているため、紫外線の影響を受けやすい状態です。SPF30以上の日焼け止めを必ず使用し、外出時は帽子や日傘で肌を守りましょう。
保湿を徹底することも重要です。施術後の肌は乾燥しやすいため、化粧水や乳液、クリームなどでしっかりと保湿してください。いつもより多めに保湿剤を使用することをおすすめします。
肌への刺激を避けてください。施術後1週間程度は、スクラブ洗顔、ピーリング効果のある化粧品、レチノール製品、ハイドロキノンなどの使用は控えてください。また、タオルで肌をゴシゴシこするなどの摩擦も避けましょう。
過度な飲酒や長時間の入浴も控えてください。血行が促進されることで、赤みやヒリヒリ感が強くなる可能性があります。
12. 他の施術との併用
ケミカルピーリングは、他の美容医療と組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
イオン導入との併用
イオン導入とは、微弱な電流を用いてビタミンCやトラネキサム酸などの美容成分を肌に浸透させる施術です。ケミカルピーリング後は、古い角質が除去されて美容成分が吸収されやすい状態になっているため、イオン導入との併用は非常に効果的です。
美白やニキビ跡の改善を目指す方には、ビタミンCイオン導入との組み合わせがおすすめです。
ダーマペンとの併用
ダーマペンは、極細の針で肌に微細な穴を開け、自然治癒力を利用してコラーゲンの生成を促す施術です。ケミカルピーリングと併用することで、薬剤がより深く浸透し、肌質改善効果が高まります。
特に、マッサージピールとダーマペンを組み合わせた「ベルベットスキン」は、ハリ・ツヤの向上に効果的として人気があります。
レーザー治療との併用
ケミカルピーリングは、レーザー治療やIPL(光治療)との併用も可能です。ピーリングで古い角質を除去してからレーザー治療を行うことで、レーザーの効果が高まるとされています。
ただし、施術の順序や間隔については、医師の指示に従ってください。
併用を避けるべき施術
マッサージピールを受ける場合、同日に他のケミカルピーリングやアクアフェイシャル(水流を使ったピーリング)、レチノールイオン導入を行うことは避けてください。2週間以上の間隔を空けることが推奨されています。

13. よくある質問
ケミカルピーリングについて、よく寄せられる質問にお答えします。
薬剤の種類や濃度、個人の肌質によって異なりますが、多くの場合、軽いヒリヒリ感やピリピリ感を感じる程度です。サリチル酸マクロゴールピーリングは特に刺激が少なく、痛みをほとんど感じません。痛みに敏感な方は、事前に医師に相談してください。
1回の施術でも、くすみや肌のざらつきの改善、透明感の向上など、一定の効果を感じる方は多いです。ただし、ニキビやシミ、毛穴の開きなどの改善には、複数回の継続が必要です。
Q. 施術後すぐにメイクできますか?
多くの場合、施術直後からメイクが可能です。ただし、サリチル酸マクロゴールピーリングの場合は、施術後12時間程度メイクを控えることが推奨される場合があります。詳しくは施術を受けるクリニックで確認してください。
Q. 敏感肌でも受けられますか?
敏感肌の方でも、薬剤の種類や濃度を調整することで施術を受けられる場合があります。乳酸ピーリングやサリチル酸マクロゴールピーリングは比較的刺激が少なく、敏感肌の方にも適しています。医師の診察を受けて、適切な治療法を相談してください。
Q. 市販のピーリング剤との違いは何ですか?
市販のピーリング剤は、医療機関で使用される薬剤と比較して濃度が低く設定されています。そのため、効果はマイルドで、根本的な肌悩みの改善は難しいとされています。明確な効果を求める場合は、医療機関でのケミカルピーリングをおすすめします。
Q. どのくらいの間隔で通えばいいですか?
使用する薬剤によって異なりますが、一般的にはグリコール酸ピーリングで2週間に1回程度、サリチル酸マクロゴールピーリングで1ヶ月に1回程度が目安です。効果が現れてきたら、徐々に間隔を空けていきます。
Q. 日焼けしていても施術を受けられますか?
日焼け直後の肌は敏感になっているため、施術を避けることが推奨されます。また、施術後に日焼けをすると色素沈着のリスクが高まるため、施術前後ともに紫外線対策が重要です。
14. まとめ
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を用いて古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進する美容医療です。日本皮膚科学会によってガイドラインが策定されており、医師の管理下で安全に行われる治療法として確立されています。
ケミカルピーリングで期待できる効果として、ニキビ・ニキビ跡の改善、シミ・くすみの改善、毛穴の開き・黒ずみの改善、小じわ・肌のハリの改善、そして肌質の改善(透明感、キメ)が挙げられます。
主な薬剤の種類として、グリコール酸(AHA)、サリチル酸マクロゴール(BHA)、乳酸、トリクロロ酢酸などがあり、肌の状態や悩みに応じて最適な薬剤が選択されます。
近年では、皮膚を剥離させずにコラーゲンの生成を促す「マッサージピール(コラーゲンピール)」も注目を集めています。
医療機関で行うケミカルピーリングは、エステや自宅でのセルフケアと比較して、高濃度の薬剤を使用できるため、明確な効果が期待できます。また、万が一トラブルが起きた場合も、適切な治療を受けることができます。
施術後は紫外線対策と保湿を徹底することで、効果を最大限に引き出し、トラブルを防ぐことができます。
肌のくすみやニキビ、毛穴の開きなどでお悩みの方は、ぜひ一度医師に相談してみてください。あなたの肌の状態に合った最適な治療法を、一緒に見つけていきましょう。
参考文献
- 日本皮膚科学会 ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケミカルピーリング
- ケミカルピーリング – Wikipedia
- くすりと健康の情報局(第一三共ヘルスケア)肌あれの症状・原因
- J-STAGE 日本皮膚科学会雑誌 ケミカルピーリング
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務