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蜂窩織炎の初期症状を見逃さないために|早期発見と適切な対処法

はじめに

皮膚が赤く腫れて熱を持ち、痛みを感じる――こうした症状が突然現れたら、それは「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」かもしれません。蜂窩織炎は、皮膚の深い層に細菌が侵入して起こる感染症で、適切な治療を受けなければ重症化する可能性がある疾患です。

特に初期症状を見逃さず、早期に医療機関を受診することが、重症化を防ぐ鍵となります。本記事では、蜂窩織炎の初期症状に焦点を当て、どのような兆候に注意すべきか、そしていつ医療機関を受診すべきかについて、詳しく解説していきます。

蜂窩織炎とは何か

蜂窩織炎の定義

蜂窩織炎(cellulitis)は、皮膚の真皮深層から皮下脂肪組織にかけて、細菌が感染して炎症を起こす急性の感染症です。「蜂窩」とは蜂の巣のことを指し、感染が広がる様子が蜂の巣のように見えることから、この名前が付けられました。

蜂窩織炎は、丹毒(たんどく)と混同されることがありますが、丹毒が皮膚のより浅い層(真皮上層)に起こる感染症であるのに対し、蜂窩織炎はより深い層まで感染が及ぶ点が異なります。

発症頻度と好発部位

蜂窩織炎は、皮膚感染症の中でも比較的頻度の高い疾患です。年齢や性別を問わず発症しますが、高齢者や糖尿病などの基礎疾患を持つ方に多く見られる傾向があります。

好発部位としては、下腿(すね)が最も多く、全体の約70~80%を占めます。その他、顔面、上肢、臀部など、身体のあらゆる部位に発症する可能性があります。

原因となる細菌

蜂窩織炎の原因菌として最も多いのは、以下の2つです。

1. 溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌) 皮膚の常在菌ではありませんが、小さな傷口などから侵入して感染を引き起こします。溶血性連鎖球菌による蜂窩織炎は、比較的急速に進行する傾向があります。

2. 黄色ブドウ球菌 皮膚や鼻腔に常在する細菌で、傷口などから侵入して感染を起こします。特にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による感染の場合、治療が難航することがあります。

その他、まれに大腸菌やインフルエンザ菌などが原因となることもあります。また、動物咬傷後の蜂窩織炎では、パスツレラ菌やカプノサイトファーガ属菌などが原因菌となることがあります。

蜂窩織炎の初期症状

蜂窩織炎の早期発見には、初期症状を正しく理解することが重要です。以下、代表的な初期症状について詳しく説明します。

1. 局所的な発赤(赤み)

蜂窩織炎の最も特徴的な初期症状は、皮膚の**発赤(赤み)**です。

特徴:

  • 境界が比較的不明瞭で、じわじわと広がっていく
  • 鮮やかな赤色からやや暗い赤色まで、濃淡にばらつきがある
  • 圧迫すると一時的に色が薄くなるが、すぐに戻る
  • 通常、左右対称ではなく、片側性に現れることが多い

丹毒の場合は境界が比較的明瞭で、盛り上がりを伴いますが、蜂窩織炎では境界が不明瞭で、やや深部に感染が広がっているため、発赤の様子が異なります。

2. 腫脹(腫れ)

発赤と並んで重要な初期症状が、**腫脹(腫れ)**です。

特徴:

  • 皮膚が全体的にむくんだように腫れる
  • 患部を指で押すと、圧痕(へこみ)が残ることがある
  • 特に下腿に発症した場合、足首から膝にかけて広範囲に腫れることがある
  • 腫れにより、靴や衣服がきつく感じられることがある

腫脹は、炎症による血管透過性の亢進や、リンパ液の貯留によって生じます。急速に腫れが広がる場合は、感染が急速に進行している可能性があるため、速やかな医療機関の受診が必要です。

3. 熱感

患部に熱感を伴うことも、蜂窩織炎の重要な初期症状です。

特徴:

  • 患部に触れると、明らかに温かい、または熱い
  • 健康な皮膚と比較すると、温度差を感じる
  • 炎症が広がるにつれて、熱感のある範囲も広がる

熱感は、炎症反応により血流が増加していることを示しています。患部の熱感と同時に、全身的な発熱を伴うこともあります。

4. 疼痛(痛み)

蜂窩織炎では、患部の**疼痛(痛み)**も初期から見られる症状です。

特徴:

  • 自発痛:何もしなくても痛む
  • 圧痛:患部を押すと強い痛みを感じる
  • ズキズキとした拍動性の痛みを感じることがある
  • 動かすと痛みが増すため、患部の動きが制限される

痛みの程度は個人差がありますが、一般的に感染が深部に及ぶほど、痛みは強くなります。夜間に痛みが増強して眠れなくなることもあります。

5. 全身症状

局所症状に加えて、全身症状が現れることもあります。これらの症状は、感染が身体全体に影響を及ぼし始めていることを示しています。

主な全身症状:

発熱・悪寒

  • 38度以上の発熱を伴うことが多い
  • 悪寒や震えを感じることがある
  • 微熱程度の場合もある

倦怠感

  • 全身のだるさや疲労感
  • 普段通りの活動が困難になる

食欲不振

  • 食事が美味しく感じられない
  • 食べる気力が湧かない

頭痛

  • 鈍い頭痛を感じることがある

リンパ節の腫脹

  • 患部に近いリンパ節が腫れて痛むことがある
  • 下腿の蜂窩織炎では、鼠径部のリンパ節が腫れる

これらの全身症状が強い場合は、感染が重症化している可能性があり、緊急の治療が必要です。

6. 初期症状の時間経過

蜂窩織炎の初期症状は、通常、数時間から数日の間に急速に進行します。

典型的な経過:

第1段階(発症初期:0~12時間)

  • 患部に軽い痛みやヒリヒリ感を感じる
  • わずかな発赤や腫れが現れ始める
  • 微熱や倦怠感を感じることがある

第2段階(12~24時間)

  • 発赤と腫脹が明らかになる
  • 熱感が顕著になる
  • 痛みが増強する
  • 発熱が本格化する

第3段階(24~48時間)

  • 発赤と腫脹が広範囲に拡大する
  • 全身症状が顕著になる
  • リンパ節の腫脹が見られる

このように、蜂窩織炎は比較的急速に進行する疾患であるため、初期症状を認識したら、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。

蜂窩織炎の原因とリスク因子

感染の侵入経路

蜂窩織炎を引き起こす細菌は、皮膚のバリア機能が破綻した部位から侵入します。主な侵入経路には以下のようなものがあります。

外傷

  • 擦り傷、切り傷、刺し傷
  • 虫刺され、動物咬傷
  • やけど、日焼け
  • 手術創

皮膚疾患

  • 湿疹、皮膚炎による掻き傷
  • 水虫(足白癬)による皮膚の亀裂
  • 褥瘡(床ずれ)
  • 皮膚潰瘍

その他

  • 注射針の刺入部位
  • 静脈カテーテルの挿入部位
  • 刺青(タトゥー)

ただし、明らかな外傷や皮膚疾患がなくても、肉眼では見えない微小な傷から細菌が侵入することもあります。

蜂窩織炎のリスク因子

以下のような条件を持つ方は、蜂窩織炎を発症しやすいとされています。

1. 皮膚のバリア機能の低下

  • 乾燥肌
  • アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚疾患
  • 加齢による皮膚の薄化

2. 免疫機能の低下

  • 糖尿病:高血糖状態では白血球の機能が低下し、感染しやすくなる
  • HIV感染症
  • 免疫抑制剤の使用(ステロイド、抗がん剤など)
  • 悪性腫瘍

3. 循環障害

  • 静脈瘤
  • 下肢の静脈血栓症
  • リンパ浮腫:乳がん手術後やリンパ節郭清後など
  • 末梢動脈疾患

4. 肥満

  • 肥満により皮膚の皺が増え、細菌が繁殖しやすい環境になる
  • 免疫機能の低下との関連も指摘されている

5. 高齢

  • 免疫機能の低下
  • 皮膚のバリア機能の低下
  • 基礎疾患を有することが多い

6. 生活習慣

  • 喫煙:血流障害を招き、治癒を遅らせる
  • 過度の飲酒:免疫機能を低下させる

7. 既往歴

  • 蜂窩織炎の既往:一度発症すると再発しやすい
  • 水虫(足白癬):皮膚の亀裂から細菌が侵入しやすい

発症しやすい状況

日常生活の中で、以下のような状況では特に注意が必要です。

  • ガーデニングや農作業:土壌中の細菌が傷口から侵入しやすい
  • 海水浴やプール:水中の細菌に接触する機会が増える
  • ペットとの接触:動物の口腔内細菌が傷口から侵入する可能性
  • 裸足での歩行:足底の小さな傷から細菌が侵入しやすい

蜂窩織炎の診断

医療機関での診察

蜂窩織炎の診断は、主に視診問診、そして触診によって行われます。

視診 医師は、患部の発赤、腫脹、熱感の範囲や程度を観察します。発赤の境界をペンでマーキングすることで、その後の拡大や縮小を評価します。

問診 以下のような情報を医師に伝えることが重要です。

  • 症状が始まった時期
  • 症状の経過(急速に悪化したか、緩やかに進行したか)
  • 最近の外傷や虫刺されの有無
  • 基礎疾患(糖尿病、心疾患など)の有無
  • 過去の蜂窩織炎の既往
  • アレルギーの有無(薬剤アレルギーなど)
  • 現在服用している薬

触診 患部に触れて、熱感の有無、腫脹の程度、圧痛の有無を確認します。また、リンパ節の腫脹がないかもチェックします。

検査

蜂窩織炎の診断は主に臨床所見に基づいて行われますが、必要に応じて以下の検査が実施されることがあります。

血液検査

  • 白血球数:感染により上昇
  • CRP(C反応性蛋白):炎症の指標として上昇
  • 血液培養:重症例では、血液中に細菌が侵入していないか確認

画像検査

  • 超音波検査:皮下膿瘍の有無を確認
  • CT検査やMRI検査:深部の感染や膿瘍の評価、壊死性筋膜炎などの重症感染症との鑑別

細菌培養検査

  • 患部からの膿や浸出液がある場合、培養検査を行い、原因菌と薬剤感受性を調べる
  • ただし、蜂窩織炎では表面に膿がないことが多く、培養検査が困難な場合もある

鑑別診断

蜂窩織炎と似た症状を呈する疾患があり、正確な診断のために鑑別が必要です。

丹毒

  • 蜂窩織炎よりも浅い層の感染
  • 発赤の境界が明瞭で、盛り上がりを伴う

深部静脈血栓症

  • 下腿の腫脹と痛みを伴う
  • 超音波検査やDダイマー検査で鑑別

接触性皮膚炎

  • かゆみが主体で、痛みは少ない
  • 発熱などの全身症状は伴わない

虫刺症

  • 局所的な発赤と腫脹
  • かゆみが主体

帯状疱疹

  • 帯状の発赤と水疱形成
  • 神経痛を伴う

壊死性筋膜炎

  • 急速に進行する重症感染症
  • 激しい痛み、皮膚の壊死、ショック症状
  • 緊急の外科的治療が必要

蜂窩織炎の治療

抗菌薬治療

蜂窩織炎の治療の基本は、抗菌薬(抗生物質)の投与です。

軽症~中等症の場合 外来での経口抗菌薬治療が可能です。

  • 第一世代セファロスポリン系:セファレキシン、セファゾリンなど
  • ペニシリン系:アモキシシリン・クラブラン酸配合剤など
  • マクロライド系:クラリスロマイシンなど(ペニシリンアレルギーの場合)

通常、1~2週間程度の抗菌薬治療が必要です。症状が改善しても、処方された期間はしっかりと内服を継続することが重要です。

重症の場合 入院による静脈内抗菌薬投与が必要です。

  • 高熱が持続する
  • 広範囲の発赤と腫脹
  • 全身状態が悪い
  • 経口摂取が困難
  • 基礎疾患のコントロールが不良

入院治療では、点滴による抗菌薬投与を行い、全身状態の管理も並行して行います。

MRSA感染が疑われる場合

  • バンコマイシン
  • リネゾリド
  • ダプトマイシン

など、MRSAに有効な抗菌薬を使用します。

対症療法

抗菌薬治療と並行して、以下のような対症療法も重要です。

安静と患部の挙上

  • 患部を安静に保つ
  • 下腿の蜂窩織炎の場合、足を心臓より高い位置に保つことで、腫脹の軽減が期待できる

冷却

  • 初期段階では、患部を冷やすことで炎症や痛みを和らげることができる
  • ただし、冷やしすぎは血流を悪化させるため注意が必要

疼痛管理

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):イブプロフェン、ロキソプロフェンなど
  • アセトアミノフェン(カロナール)

水分補給

  • 発熱により脱水になりやすいため、十分な水分補給が必要

外科的治療

膿瘍形成がある場合は、切開排膿が必要になることがあります。膿を排出することで、抗菌薬の効果が高まり、治癒が促進されます。

治療効果の判定

抗菌薬治療を開始して48~72時間以内に、以下のような改善が見られることが期待されます。

  • 発赤の範囲の拡大が停止する
  • 腫脹が軽減する
  • 痛みが和らぐ
  • 発熱が下がる

もし、3日経っても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、以下の可能性が考えられます。

  • 抗菌薬が効いていない(耐性菌の可能性)
  • 膿瘍形成
  • 診断が誤っている
  • 基礎疾患のコントロールが不良

このような場合は、抗菌薬の変更や追加の検査が必要になります。

治療期間

通常、蜂窩織炎の治療期間は1~2週間程度です。ただし、以下のような場合は、より長期の治療が必要になることがあります。

  • 重症例
  • 基礎疾患を有する場合(糖尿病、免疫不全など)
  • MRSA感染
  • 再発性蜂窩織炎

蜂窩織炎の予防

蜂窩織炎は再発しやすい疾患であり、一度発症した方は特に予防に注意が必要です。

スキンケア

皮膚の清潔を保つ

  • 毎日の入浴やシャワーで皮膚を清潔に保つ
  • 汗をかいたら早めに拭き取る
  • 足の指の間もしっかり洗い、乾燥させる

保湿

  • 乾燥は皮膚のバリア機能を低下させるため、保湿剤を使用する
  • 入浴後は特に保湿を心がける

爪の手入れ

  • 爪を短く清潔に保つ
  • 深爪や巻き爪に注意し、必要に応じて専門家に相談する

外傷の予防と適切な処置

外傷の予防

  • ガーデニングや農作業では、手袋や長袖を着用する
  • 裸足で歩かない
  • 足に合った靴を履く

傷の適切な処置

  • 傷ができたら、速やかに流水で洗浄する
  • 消毒液を使用し、清潔なガーゼで保護する
  • 傷が深い場合や汚染されている場合は、医療機関を受診する

基礎疾患の管理

糖尿病

  • 血糖コントロールを良好に保つ
  • 定期的な足のチェックと適切なフットケア

水虫(足白癬)

  • 早期に治療し、皮膚の亀裂を防ぐ
  • 足を清潔に保ち、よく乾燥させる

リンパ浮腫

  • 専門的なリンパドレナージや圧迫療法
  • 患肢の保護

静脈瘤

  • 弾性ストッキングの着用
  • 適切な運動

生活習慣の改善

禁煙 喫煙は血流を悪化させ、感染のリスクを高めます。禁煙外来などを利用して、禁煙に取り組みましょう。

適度な運動 適度な運動は、血流を改善し、免疫機能を高めます。ウォーキングや水泳など、無理のない範囲で継続しましょう。

バランスの取れた食事 栄養バランスの良い食事は、免疫機能を維持するために重要です。特に、タンパク質、ビタミン、ミネラルをしっかり摂取しましょう。

適切な体重管理 肥満は蜂窩織炎のリスク因子です。適正体重を維持することが予防につながります。

再発予防

蜂窩織炎は再発しやすい疾患であり、特に以下のような方は注意が必要です。

  • 過去に2回以上蜂窩織炎を発症した方
  • リンパ浮腫がある方
  • 静脈瘤がある方
  • 糖尿病などの基礎疾患がある方

予防的抗菌薬投与 頻回に再発する場合、予防的に抗菌薬を長期間服用することがあります。これは、再発のリスクを大幅に減少させることが報告されています。ただし、耐性菌の問題もあるため、医師とよく相談して決定する必要があります。

早期発見・早期治療 少しでも異常を感じたら、早めに医療機関を受診することが、重症化を防ぐために重要です。

こんな症状があったらすぐに受診を

以下のような症状がある場合は、緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診してください。

緊急受診が必要な症状

  1. 急速に拡大する発赤
    • 1時間ごとに目に見えて発赤の範囲が広がる
    • マジックペンでマーキングして経過を観察する
  2. 激しい痛み
    • 我慢できないほどの強い痛み
    • 痛みのために動けない
  3. 高熱
    • 39度以上の発熱
    • 解熱剤を使用しても下がらない
  4. 全身状態の悪化
    • 意識がもうろうとする
    • 呼吸が苦しい
    • 脈が速い、不規則
    • 血圧が低い
  5. 皮膚の変色
    • 皮膚が紫色や黒色に変色する
    • 水疱(水ぶくれ)が多数できる
  6. 膿の排出
    • 患部から大量の膿が出る
    • 悪臭を伴う

これらの症状は、壊死性筋膜炎などの重症感染症や、敗血症(菌が血液中に入り込んで全身に広がる状態)を示唆している可能性があります。一刻も早く医療機関を受診し、適切な治療を受けることが生命を守るために極めて重要です。

夜間・休日の場合 かかりつけ医が休診の場合でも、救急外来や夜間診療を受診してください。蜂窩織炎は進行が早いため、「明日まで待とう」と様子を見ることは避けるべきです。

よくある質問(Q&A)

Q1. 蜂窩織炎と蜂巣炎は同じものですか?

A. はい、蜂窩織炎と蜂巣炎は同じ疾患を指す言葉です。「蜂窩織炎」の方が一般的に使用されていますが、医療文献によっては「蜂巣炎」と表記されることもあります。英語では「cellulitis」と呼ばれます。

Q2. 蜂窩織炎は人にうつりますか?

A. 蜂窩織炎そのものは、人から人へ直接感染することは基本的にありません。蜂窩織炎は、その人の皮膚に侵入した細菌が引き起こす感染症であり、患部に触れたからといって他の人に移ることはありません。
ただし、原因菌となる細菌(溶血性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌)は、咳やくしゃみ、直接の接触などで広がる可能性があります。特にMRSAなどの耐性菌の場合は、接触感染に注意が必要です。

Q3. 蜂窩織炎になったら入浴は避けるべきですか?

A. 軽症の場合は、入浴しても問題ありません。ただし、以下の点に注意してください。

  • 患部を強くこすらない
  • 熱いお湯は避け、ぬるめのお湯にする
  • 入浴後はタオルで優しく押さえるように拭く
  • 清潔なタオルを使用し、家族とは別にする

高熱がある場合や全身状態が悪い場合は、シャワーで済ませるか、医師に相談してください。

Q4. 蜂窩織炎の治療中、仕事や学校は休むべきですか?

A. 症状の程度によります。

軽症の場合

  • 発熱がなく、全身状態が良好であれば、仕事や学校に行くことも可能です
  • ただし、患部を安静に保ち、無理をしないことが重要です
  • 下腿の蜂窩織炎の場合、長時間の立ち仕事は避けた方が良いでしょう

中等症~重症の場合

  • 発熱や強い倦怠感がある場合は、安静が必要です
  • 医師の診断書をもらい、休養を取りましょう

Q5. 蜂窩織炎は何度も繰り返すことがありますか?

A. はい、蜂窩織炎は再発しやすい疾患です。特に以下のような方は注意が必要です。

  • リンパ浮腫がある
  • 静脈瘤がある
  • 糖尿病などの基礎疾患がある
  • 過去に蜂窩織炎を発症したことがある

再発予防のためには、前述した予防策を日常的に実践することが重要です。頻繁に再発する場合は、予防的抗菌薬投与を検討することもあります。

Q6. 蜂窩織炎の治療費はどのくらいかかりますか?

A. 治療費は症状の程度や治療期間によって異なります。

外来治療の場合(健康保険3割負担)

  • 初診料、検査費、薬代など含めて、1回あたり数千円程度
  • 通院回数は2~3回程度

入院治療の場合(健康保険3割負担)

  • 1週間の入院で、10万円前後
  • 重症度や入院日数によって変動します

高額療養費制度により、一定額を超えた医療費は払い戻しを受けることができます。詳しくは、加入している健康保険組合や市区町村の窓口にお問い合わせください。

Q7. 蜂窩織炎は自然に治ることがありますか?

A. 蜂窩織炎は細菌感染症であり、抗菌薬による治療が必要です。自然治癒を期待して放置すると、以下のようなリスクがあります。

  • 感染が広範囲に拡大する
  • 深部組織への感染(筋膜炎、骨髄炎など)
  • 敗血症(血液中に細菌が侵入し、全身に広がる)
  • 壊死性筋膜炎(急速に進行する重症感染症)

これらの合併症は生命を脅かす可能性があるため、症状を認めたら速やかに医療機関を受診してください。

Q8. 抗菌薬を飲み忘れた場合、どうすればいいですか?

A. 飲み忘れに気づいた時点で、できるだけ早く服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、飲み忘れた分は飛ばして、次回から通常通り服用してください。2回分をまとめて飲むことは避けてください。

抗菌薬は、決められた用法・用量を守って服用することが非常に重要です。不規則な服用は、耐性菌を生じさせる原因となります。

まとめ

蜂窩織炎は、皮膚の深い層に細菌が感染して起こる疾患で、放置すると重症化する可能性があります。初期症状を正しく理解し、早期に適切な治療を受けることが重要です。

蜂窩織炎の初期症状(まとめ)

  1. 局所的な発赤(境界不明瞭な赤み)
  2. 腫脹(むくんだような腫れ)
  3. 熱感(患部が温かい、または熱い)
  4. 疼痛(ズキズキとした痛み)
  5. 全身症状(発熱、倦怠感、リンパ節の腫脹)

これらの症状が急速に進行する場合は、特に注意が必要です。少しでも異常を感じたら、自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。

また、蜂窩織炎は再発しやすい疾患であるため、予防も重要です。日常的なスキンケア、外傷の適切な処置、基礎疾患の管理などを心がけましょう。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会『皮膚科診療ガイドライン』
    https://www.dermatol.or.jp/
  2. 厚生労働省『感染症情報』
    https://www.mhlw.go.jp/
  3. 国立感染症研究所『感染症発生動向調査』
    https://www.niid.go.jp/
  4. 日本化学療法学会『抗菌薬適正使用の手引き』
    http://www.chemotherapy.or.jp/
  5. 日本感染症学会『感染症診療ガイドライン』
    http://www.kansensho.or.jp/

※本記事の情報は2025年10月時点のものです。診断や治療については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。


監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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