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アブに刺された時の症状と対処法|腫れや痛みへの正しい応急処置

夏のアウトドアやキャンプ、川遊びなどで突然激しい痛みを感じたことはありませんか?その原因のひとつとして挙げられるのが「アブ」による刺傷です。アブはハチと並んで刺傷被害が多い昆虫のひとつで、蚊とは比べ物にならないほどの強い痛みをもたらします。刺された後に現れる症状の種類や程度を正しく知っておくことは、適切な対処につながる重要な知識です。今回は、アブに刺された時の症状から応急処置の方法、病院を受診すべきタイミングまで、医療的な観点から詳しく解説します。


目次

  1. アブとはどんな昆虫か
  2. アブに刺された時の主な症状
  3. アブの刺傷が蚊や他の昆虫と異なる点
  4. アブに刺された場合の応急処置
  5. 注意すべき重篤な症状とアナフィラキシー
  6. 病院を受診すべきタイミング
  7. 受診時に適した診療科
  8. 医療機関での治療内容
  9. アブに刺されないための予防策
  10. 症状が長引く場合に考えられること
  11. まとめ

この記事のポイント

アブに刺されると強い痛みや腫れ・かゆみが1週間以上続くことがある。応急処置は流水洗浄・冷却・市販薬使用が基本。呼吸困難など全身症状はアナフィラキシーの疑いがあり即救急要請が必要。症状が長引く場合は皮膚科受診を推奨。

🎯 アブとはどんな昆虫か

アブは、双翅目(ハエ目)アブ科(Tabanidae)に属する昆虫で、世界中に約4,000種以上が確認されています。日本国内でも数十種が生息しており、代表的なものとしてはウシアブ、シロフアブ、ヤマトアブなどが知られています。体長は種類によって異なりますが、一般的には1〜2.5センチメートル程度のものが多く、ハエよりもひと回り大きいサイズ感です。

アブは主に森林、草原、河川沿いなど自然豊かな場所に生息しており、気温が高くなる夏(6月〜9月頃)に活動が活発になります。特に晴れた日中の気温が高い時間帯に活動が盛んで、動物の血を吸うために人間にも積極的に近づいてきます。

重要な点として、血を吸うのは雌のアブだけです。雌は卵を成熟させるために動物(哺乳類・鳥類)の血液中のタンパク質を必要とします。雄のアブは花の蜜や植物の汁を食べており、人を刺すことはありません。

アブが吸血する際の仕組みも重要です。蚊が細い針のような口吻を皮膚に差し込んで吸血するのとは異なり、アブはかみ切るタイプの口器を持っています。皮膚をハサミのような口器で切り裂いて血液を集める「プールフィーディング」という吸血方法をとるため、傷口が大きくなり、強い痛みが生じやすいのです。

Q. アブの吸血方法が蚊と異なる点は?

アブは蚊のように細い口を刺し込むのではなく、ハサミ状の口器で皮膚を切り裂いて血液を集める「プールフィーディング」という方法で吸血します。そのため傷口が大きくなり、刺された瞬間に針で刺されるような鋭い強い痛みが生じます。

📋 アブに刺された時の主な症状

アブに刺された際に現れる症状は、刺された直後から数時間後、さらに数日間にわたって変化することがあります。それぞれの時期にどのような症状が現れるのかを詳しく見ていきましょう。

🦠 刺された直後に現れる症状

アブに刺されると、最初に感じるのは鋭い痛みです。この痛みは蚊に刺された時とは全く異なり、針で刺されたような・あるいはつねられたような強い刺激として感じられます。アブの口器が皮膚を切り裂く際に生じる物理的な痛みに加えて、唾液に含まれる化学物質(抗凝固物質など)が注入されることで、さらなる刺激が加わります。

刺された直後から数分以内には、刺された部位を中心とした発赤(皮膚が赤くなる)と軽度の腫れが生じます。これは皮膚の毛細血管が拡張する炎症反応の初期症状です。

👴 数時間後に現れる症状

刺されてから1〜数時間が経過すると、腫れが広がり、患部全体がふっくらと盛り上がることが多くなります。この時期から強いかゆみが現れることが一般的です。かゆみはアブの唾液中に含まれるアレルゲンに対する免疫反応によって引き起こされます。

また、患部の熱感(触ると熱く感じる)や、周囲の皮膚が硬くなる硬結が見られることもあります。腫れの範囲は個人差がありますが、数センチメートルにわたって広がることも珍しくありません。

🔸 数日間にわたって続く症状

アブによる刺傷の症状は、蚊と比べて長引きやすいのが特徴です。多くの場合、腫れやかゆみは数日間持続し、ひどい場合には1週間以上続くこともあります。皮膚に引っかき傷がつくほどかき続けることで、二次感染(細菌感染)のリスクが高まります。

また、刺された部位に紫色や赤黒い内出血のような変色が見られることもあります。これはアブが皮膚を切り裂くことで微細な出血が生じるためです。この変色は通常、数日から1週間程度で自然に消えていきます。

💧 二次感染による症状

強いかゆみのために刺された部位をかきむしってしまうと、皮膚に傷がつき、そこから細菌が侵入して二次感染を起こすことがあります。二次感染が生じると、腫れが悪化する、患部から膿が出る、発熱が見られるなどの症状が現れます。このような状態になった場合は、速やかに医療機関を受診することが必要です。

💊 アブの刺傷が蚊や他の昆虫と異なる点

アブによる刺傷は、同じ吸血昆虫である蚊や、刺傷被害が多いハチとはいくつかの点で異なる特徴を持っています。

✨ 蚊との違い

蚊は皮膚に細い管状の口吻を刺し込んで吸血するため、刺された瞬間の痛みはほとんどありません。多くの人は刺されたことに気づかないまま、後からかゆみが出て初めて気づくことが多いものです。一方、アブは前述の通り皮膚を切り裂いて吸血するため、刺された瞬間の痛みが強く、ほとんどの場合すぐに気づきます。

また、症状の持続期間にも違いがあります。蚊に刺された場合、適切に対処すれば1〜2日程度でかゆみや腫れが治まることが多いですが、アブに刺された場合は数日から1週間以上症状が続くことがあります。

📌 ハチとの違い

ハチによる刺傷との最大の違いは「毒針の有無」です。ハチは毒針を使って刺すため、毒素の注入量が多く、腫れや痛みが強く現れやすい傾向があります。また、ハチ毒に対するアレルギー反応(アナフィラキシー)が起きやすいことでも知られています。

アブの場合も唾液中にアレルゲンとなる物質が含まれているためアレルギー反応が起こることはありますが、ハチほど重篤なアナフィラキシーを引き起こすことは比較的少ないとされています。ただし、まれに重篤な反応が生じることもあるため、注意は必要です。

▶️ 刺傷跡の特徴

アブによる刺傷跡は、皮膚を切り裂くという吸血方法の特性上、蚊に刺された時のような小さな一点の跡ではなく、わずかに傷口が広がった状態になることがあります。出血が見られる場合もあり、傷口をよく観察すると蚊のものとは明らかに異なります。

Q. アブに刺された直後の応急処置の手順は?

アブに刺されたらまず速やかにその場から離れ、刺された部位を清潔な流水と石けんで十分に洗い流します。次に布で包んだ保冷剤や氷で15〜20分冷やして炎症を抑え、その後は抗ヒスタミン成分やステロイド成分配合の市販虫刺され薬を使用します。かくことは厳禁です。

🏥 アブに刺された場合の応急処置

アブに刺された場合は、できるだけ早く適切な応急処置を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。以下の手順を参考にしてください。

🔹 その場から離れる

まず、アブがいる場所から速やかに離れてください。アブは吸血中に邪魔をされると、再び刺しに来ることがあります。また、アブは複数で活動していることも多く、1匹に刺されたあとに他のアブにも刺されるリスクがあります。

📍 傷口を流水で洗い流す

刺された部位を清潔な流水で十分に洗い流してください。これにより、アブの唾液成分(アレルゲンや細菌など)を洗い流すことができ、感染リスクや症状の悪化を防ぐ効果があります。石けんを使って優しく洗うとさらに効果的です。

💫 冷やして炎症を抑える

患部を清潔な布やタオルで包んだ保冷剤や氷で冷やすことで、炎症(腫れ・赤み・熱感)を軽減させることができます。冷やす際は、凍傷予防のために直接氷を肌に当てることは避け、必ず布などで包んで使用してください。冷やす時間は15〜20分程度を目安にし、その後様子を見て繰り返しましょう。

🦠 市販薬の使用

ドラッグストアで購入できる虫刺され用の外用薬を使用することで、かゆみや腫れを和らげることができます。一般的に使用される成分としては、抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミンなど)、ステロイド成分(ヒドロコルチゾンなど)、局所麻酔成分(リドカインなど)が含まれるものがあります。症状が強い場合には、ステロイド外用薬を含む製品を選ぶとより効果的です。ただし、使用前に必ず製品の添付文書を確認してください。

👴 かかないようにする

強いかゆみがあっても、患部をかくことは避けてください。かくことで皮膚に傷がつき、細菌感染のリスクが高まります。また、かくことでかゆみの物質(ヒスタミンなど)がさらに広がり、症状が悪化することもあります。かゆみが強い場合は、冷やすか、かゆみ止めの薬を使用して対処しましょう。

⚠️ 注意すべき重篤な症状とアナフィラキシー

アブに刺された後、まれに全身に影響を及ぼす重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こることがあります。アナフィラキシーは生命の危険を伴う緊急事態であるため、その症状を知っておくことが非常に重要です。

🔸 アナフィラキシーとは

アナフィラキシーとは、特定の物質(アレルゲン)に対して免疫システムが過剰に反応することで、全身に急激かつ重篤な症状が現れるアレルギー反応のことです。アブの唾液に含まれるタンパク質が引き金となることがあります。アナフィラキシーは通常、刺されてから数分〜30分以内に症状が現れることが多く、対応が遅れると死に至る可能性があります。

💧 アナフィラキシーの主な症状

アナフィラキシーの症状は全身に及びます。皮膚症状としては、全身に広がるじんましん、顔や喉の腫れ、皮膚の紅潮などが見られます。呼吸器症状としては、喘鳴(ゼーゼーした呼吸)、呼吸困難、喉の締め付け感が現れます。循環器症状では、急激な血圧低下、動悸、脈が弱くなるといった変化が見られ、意識レベルの低下(めまい、失神)が起こることもあります。消化器症状として、吐き気、嘔吐、腹痛が現れる場合もあります。

✨ アナフィラキシーが疑われる場合の対応

上記のような症状が刺された後に現れた場合は、直ちに119番に連絡して救急車を要請してください。可能であれば、アナフィラキシーの既往がある方はエピネフリン自己注射薬(エピペン)を携帯し、処方された場合はすぐに使用してください。救急車を待つ間は、本人を横にして足を少し高くする(ショック体位)か、呼吸が苦しい場合は座った姿勢を保つようにしてください。意識を失った場合は回復体位(横向き)にしてください。

📌 過去にアレルギー反応があった方は特に注意

過去に虫刺されに対して強いアレルギー反応を起こしたことがある方や、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持つ方は、アブに刺された場合にアナフィラキシーを起こすリスクが高まることがあります。このような方は、アウトドア活動の際に特に注意が必要であり、万一に備えてエピペンの処方を医師に相談しておくことも選択肢のひとつです。

🔍 病院を受診すべきタイミング

アブに刺された場合、すべてのケースで医療機関を受診する必要はありませんが、以下のような状況が見られる場合は速やかに受診することをお勧めします。

▶️ 緊急受診(救急)が必要な場合

呼吸困難、意識の混濁・喪失、全身に広がるじんましん、顔や喉の腫れ(特に喉が腫れている感覚)、急激な血圧低下(ふらつき、冷や汗)、動悸・脈の異常など、アナフィラキシーを疑う症状が現れた場合は、直ちに119番に電話して救急車を要請してください。これらは生命に関わる緊急事態です。

🔹 なるべく早く受診した方がよい場合

刺された部位が顔・首など目立つ場所や、腫れが急速に広がっている場合。腫れが特にひどく、患部が大きく膨らんでいる場合。発熱を伴う場合(刺された部位からの感染が疑われます)。患部から膿が出ている、または悪臭がある場合(細菌感染が疑われます)。刺された場所が目の周囲や口唇など、腫れが機能に影響する可能性がある部位の場合。

📍 数日様子を見ても改善しない場合

市販薬を使用しても、3〜5日経過しても症状(腫れ・かゆみ・赤み)が改善しない、あるいは悪化している場合。刺された部位が硬くなり、しこりのように残っている場合(昆虫刺咬症後の肉芽腫形成の可能性があります)。かゆみが我慢できないほど強く、日常生活や睡眠に支障をきたしている場合。

Q. アブ刺傷後にアナフィラキシーが疑われる症状は?

アブに刺された後、呼吸困難・喉の締め付け感・全身に広がるじんましん・顔や喉の腫れ・急激なふらつきや冷や汗・意識の混濁などが現れた場合はアナフィラキシーが疑われます。これらは生命に関わる緊急事態のため、直ちに119番へ連絡し救急車を要請してください。

📝 受診時に適した診療科

アブに刺された際に受診する診療科は、症状の内容によって異なります。

💫 皮膚科

皮膚の腫れ・かゆみ・赤み・発疹などの局所症状が主な場合は、皮膚科への受診が適しています。皮膚科では、症状の程度に応じてステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬(内服・外用)を処方してもらうことができます。刺傷跡の炎症が強い場合や、感染が疑われる場合の抗菌薬処方なども行います。

🦠 内科・アレルギー科

全身症状(発熱、倦怠感など)を伴う場合や、アレルギー反応が疑われる場合は内科やアレルギー科への受診が適しています。過去に虫刺されで強いアレルギー反応を経験したことがある方は、アレルギー科で検査を受けてリスクを評価してもらうことも有益です。

👴 救急科・救急外来

アナフィラキシーを疑う重篤な症状が現れた場合は、診療科にかかわらず最寄りの救急外来や救急病院を受診してください。時間外の場合でも救急外来での対応が可能です。

🔸 形成外科・美容外科

刺傷跡が長期間残ってしまい、色素沈着や瘢痕(傷跡)が気になる場合は、形成外科や美容外科に相談することも選択肢のひとつです。かゆみのために掻き続けた跡が色素沈着として残ってしまうケースも見られます。

💡 医療機関での治療内容

アブに刺された際に医療機関を受診した場合、医師による診察のもとで以下のような治療が行われることが一般的です。

💧 外用薬(塗り薬)の処方

最も一般的に処方されるのは、ステロイド外用薬です。市販薬に含まれるステロイド成分よりも強力なものが処方されることが多く、炎症を効果的に抑える効果があります。症状の強さや部位(顔など皮膚が薄い部位には弱いステロイドを使用)に応じて、医師が適切な強さのステロイド外用薬を選択します。

✨ 内服薬の処方

かゆみや腫れが強い場合は、抗ヒスタミン薬の内服薬が処方されることがあります。抗ヒスタミン薬はかゆみの原因物質であるヒスタミンの働きを抑え、かゆみや腫れを軽減します。なお、一部の抗ヒスタミン薬には眠気を引き起こす副作用があるため、車の運転をする方などは医師に相談してください。

二次感染(細菌感染)が疑われる場合は、抗生物質(抗菌薬)が処方されます。また、全身症状が強い場合にはステロイドの内服薬が短期間処方されることもあります。

📌 注射による治療

症状が強く、早急な対応が必要な場合は、抗ヒスタミン薬やステロイドの注射が行われることがあります。アナフィラキシーが発症した場合は、エピネフリン(アドレナリン)の注射が第一選択の治療となります。

▶️ 傷口の処置

掻きむしりによる傷がある場合や、二次感染が疑われる場合は、傷口の消毒・洗浄・ドレッシング(傷の保護)が行われます。必要に応じて抗菌外用薬が使用されます。

Q. アブ刺傷後に症状が長引く場合に考えられる原因は?

アブに刺された後も症状が長引く場合、虫の唾液成分への慢性炎症で硬いしこりが残る「昆虫刺咬症後の肉芽腫」、市販薬成分によるアレルギー性接触皮膚炎、かきむしりによる細菌の二次感染、炎症後の色素沈着などが考えられます。3〜5日改善しない場合は皮膚科への受診が推奨されます。

✨ アブに刺されないための予防策

アブによる刺傷を防ぐためには、アブが多く生息する環境に出かける際に適切な予防策を講じることが最も効果的です。

🔹 肌の露出を減らす

アブが活発に活動する夏のアウトドアでは、長袖・長ズボン・帽子・靴下などで肌の露出を最小限にすることが基本の予防策です。アブは露出した皮膚に直接吸血行動をとるため、物理的に肌を覆うことは非常に有効です。特に足首・手首・首元などの露出しやすい部位は注意が必要です。

📍 虫よけスプレーを使用する

ディートやイカリジン(ピカリジン)を有効成分とする虫よけスプレーは、アブに対しても一定の忌避効果があるとされています。特にディートは濃度が高いほど効果が高く持続しますが、小児への使用には濃度や使用頻度に関する制限があるため、製品の使用上の注意を必ず確認してください。肌に直接塗布するタイプと、衣服にかけるタイプがあります。

ディートやイカリジン(ピカリジン)を有効成分とする虫よけスプレーは、アブに対しても一定の忌避効果があるとされています。特にディートは濃度が高いほど効果が高く持続しますが、小児への使用には濃度や使用頻度に関する制限があるため、製品の使用上の注意を必ず確認してください。肌に直接塗布するタイプと、衣服にかけるタイプがあります。

💫 色の選択に注意する

アブは黒や濃い色(紺・茶色など)に引き寄せられる性質があると言われています。アブが多い場所に出かける際は、白・ベージュ・淡いグレーなどの明るい色の衣服を選ぶことも予防策のひとつです。

🦠 アブが好む場所・時間帯を避ける

アブは湿度が高く水辺に近い場所(川沿い、湖畔、湿原など)や、牧場・農場の周辺に多く生息します。また、晴れた日の気温が高い時間帯(特に正午前後)に活動が活発になります。アブが多いことが予想される場所では、特に万全な対策をとることが大切です。

👴 香りの強い化粧品・香水を避ける

甘い香りや花の香りはアブを含む昆虫を引き寄せることがあります。アウトドア活動の際は、香りの強いコスメや香水の使用を控えることをお勧めします。また、汗の臭いもアブを引き寄せる要因になることがあるため、汗をかいたらこまめに汗を拭くことも有効です。

📌 症状が長引く場合に考えられること

アブに刺された後、適切な応急処置や市販薬による対処を行っても症状が長引く場合は、いくつかの可能性が考えられます。

🔸 昆虫刺咬症後の肉芽腫(グラニュローマ)

虫に刺された部位に、長期間(数週間〜数ヶ月)にわたって硬いしこりが残ることがあります。これは昆虫の唾液成分に対する慢性的な炎症反応によって生じる「肉芽腫」と呼ばれる状態です。かゆみを伴うことも多く、一般的な虫刺され薬では改善しにくいため、皮膚科での診察・治療が必要です。治療にはステロイドの局所注射や凍結療法などが行われる場合があります。

💧 アレルギー性接触皮膚炎

虫刺され用の市販薬を使用した後に、皮膚の症状が悪化・長期化する場合は、薬の成分に対するアレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)が生じている可能性があります。使用した薬剤の成分に対するアレルギー反応が原因で、使用を中止して皮膚科を受診することが必要です。

✨ 二次感染の遷延(ちょうえん)

刺された部位をかきむしることで二次感染が生じ、細菌感染が遷延(長引く)することがあります。腫れが引かない、膿が出る、発熱が続くなどの症状がある場合は、抗菌薬による治療が必要です。自己判断で様子を見続けることは避け、早めに医療機関を受診してください。

📌 色素沈着

刺された部位の炎症が治まった後も、色素沈着として茶色や黒ずんだ跡が残ることがあります。これは炎症によってメラニン色素が増加するためで、特に肌が黒くなりやすい体質(褐色人種など)の方や、日光に当たりやすい部位(手や足など)に起きやすい傾向があります。色素沈着は時間の経過とともに薄くなることが多いですが、気になる場合は皮膚科や美容皮膚科に相談することもできます。

▶️ 稀な感染症(ヌカカやアブが媒介する感染症)

日本国内ではアブが感染症を媒介するリスクは低いとされていますが、海外では一部の地域でアブがロア糸状虫症などの寄生虫感染症を媒介することが知られています。海外でアブに刺された後に、刺された部位以外にも症状が出る(皮下を何かが移動するような感覚、眼の下に何かが見えるなど)場合は、感染症内科への受診を検討してください。

👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

高桑康太 医師(当院治療責任者)より

「当院では、夏のアウトドアシーズンになるとアブ刺傷によるご相談が増える傾向にあり、「蚊に刺されたと思っていたが全然治らない」という患者様が少なくありません。アブは皮膚を切り裂いて吸血する性質から症状が長引きやすく、適切なステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を早めに使用することが早期回復の鍵となりますので、市販薬で改善が見られない場合はどうぞお気軽にご相談ください。また、刺された後に呼吸困難や全身のじんましんなどが現れた際はアナフィラキシーの可能性もありますので、迷わず救急車を要請していただくようお願いします。」

🎯 よくある質問

アブに刺されたかどうか、蚊との見分け方は?

アブに刺された場合は、刺された瞬間に針で刺されるような鋭い痛みを感じるのが大きな特徴です。蚊は刺された時にほとんど痛みがなく、後からかゆみで気づくことが多いですが、アブはほぼ必ずその場で気づきます。また、傷口がわずかに広がっていたり、出血が見られる場合もアブの可能性が高いです。

アブに刺された後、すぐにやるべき応急処置は?

まずアブのいる場所から速やかに離れ、刺された部位を清潔な流水と石けんで十分に洗い流してください。その後、布で包んだ保冷剤や氷で15〜20分程度冷やして炎症を抑えます。市販の虫刺され用外用薬(抗ヒスタミン成分やステロイド成分配合)を使用することも効果的です。かゆくても患部はかかないようにしましょう。

アブに刺された後、どんな症状が出たら救急車を呼ぶべき?

刺された後に呼吸困難、喉の締め付け感、全身に広がるじんましん、顔や喉の腫れ、急激なふらつきや冷や汗、意識の混濁などが現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があります。これらは生命に関わる緊急事態ですので、迷わず119番に連絡して救急車を要請してください。

アブに刺されてから何日も症状が続く場合、受診すべき診療科は?

腫れ・かゆみ・赤みなど皮膚の局所症状が主であれば、皮膚科への受診が適しています。市販薬を使用しても3〜5日経過しても改善しない場合や、膿が出る・発熱があるなど感染が疑われる場合は、早めにご受診ください。

アブに刺されないための効果的な予防策は何ですか?

長袖・長ズボン・帽子などで肌の露出を最小限にすることが基本です。加えて、ディートやイカリジンを含む虫よけスプレーを使用することも有効です。アブは黒や濃い色の衣服に引き寄せられる性質があるため、明るい色の服を選ぶことも効果的です。また、アブが多い水辺や、活動が活発な晴れた日の正午前後はとくに注意しましょう。

📋 まとめ

アブに刺された時の症状は、強い痛みから始まり、腫れ・赤み・かゆみ・熱感へと移行します。症状は数日間から1週間以上続くことがあり、蚊に刺された時よりも明らかに強く長引く傾向があります。まれにアナフィラキシーを起こすこともあるため、刺された後に呼吸困難や全身症状が現れた場合は直ちに救急受診が必要です。

応急処置としては、流水で洗い流す・冷やす・市販の虫刺され薬を使用するという基本的な対処が効果的です。症状が長引く場合や悪化する場合、または感染症状が現れた場合は、皮膚科などの医療機関を受診することをお勧めします。

アブによる刺傷は、適切な予防策(肌の露出を減らす・虫よけスプレーの使用など)によって大幅にリスクを軽減することができます。夏のアウトドアを楽しむために、事前の準備と知識を整えておくことが大切です。万が一刺されてしまった場合は、今回ご紹介した応急処置を正しく実践し、必要に応じて医療機関への受診を検討してください。

📚 関連記事

📚 参考文献

  • 日本皮膚科学会 – 昆虫刺咬症(アブ刺傷)に対するステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬の適応、皮膚炎・肉芽腫の診断と治療指針に関する参照
  • 厚生労働省 – 虫刺されの予防・応急処置・受診の目安に関する公式情報、およびディート等虫よけ成分の安全使用基準に関する参照
  • 国立感染症研究所 – アブが媒介する感染症(ロア糸状虫症等)の国内外リスク評価、およびアナフィラキシーを含む虫刺され関連疾患の疫学情報に関する参照

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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