「鼻血がまた出た…」「しかも、いつも同じ側の鼻からばかり出る」。このような経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。子どもの鼻血はよくあることとして軽く捉えられがちですが、大人になってから片方だけの鼻血を繰り返す場合は、その原因をしっかり把握しておくことが大切です。多くの場合は心配のいらない原因によるものですが、なかには注意が必要な病気が隠れている可能性もあります。本記事では、大人が片方だけの鼻血を繰り返す原因や、正しい止血法、受診の目安について詳しく解説します。鼻血でお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
- 片方だけ繰り返す大人の鼻血|原因と基礎知識
- 鼻血の仕組みとキーゼルバッハ部位
- 片方だけの鼻血の主な原因と対処法
- 注意が必要な症状と隠れた病気
- 正しい鼻血の止め方と間違った対処法
- 受診のタイミングと検査・治療
- 鼻血予防のための日常ケア
- まとめ
🩸 片方だけ繰り返す大人の鼻血|原因と基礎知識
鼻血は医学的には「鼻出血」と呼ばれ、鼻腔内の粘膜にある血管が何らかの原因で傷つき、出血することで起こります。鼻血自体は非常にありふれた症状であり、統計によると約60%の人が生涯のうちに一度は経験するといわれています。子どもの場合は日常的によくみられる症状ですが、大人で鼻血が繰り返し起こることはそれほど多くありません。
🔍 大人と子どもの鼻血の違い
特に注目すべきなのは、「片方だけ」「繰り返す」という点です。両方の鼻から交互に出血するのではなく、いつも決まった側からのみ出血が続く場合は、その側の鼻腔に何らかの原因が存在している可能性が高いと考えられます。多くの場合は鼻の構造的な問題や慢性的な炎症などが原因ですが、まれに腫瘍などの重大な病気が隠れていることもあります。
⚠️ なぜ片方だけから出血するのか
大人の繰り返す鼻血は、子どもの鼻血とは異なる視点で捉える必要があります。子どもの鼻血の大半はアレルギー性鼻炎による鼻いじりが原因であり、成長とともに自然に改善することが多いです。一方、大人の場合は高血圧や動脈硬化、血液をサラサラにする薬の服用、さらには鼻腔や副鼻腔の腫瘍など、全身的な要因や深刻な病気が関係している可能性があります。
したがって、大人で片方だけの鼻血が繰り返し起こる場合は、「体質だから」と放置せず、一度耳鼻咽喉科を受診して原因を調べることをお勧めします。早期に原因を特定し、適切な対処をすることで、出血の頻度を減らしたり、重大な病気を早期発見したりすることが可能になります。
Q. 大人が片方だけ鼻血を繰り返す主な原因は?
大人が片方だけ鼻血を繰り返す主な原因は、鼻中隔弯曲症・アレルギー性鼻炎・鼻粘膜の乾燥です。鼻中隔が曲がっている側は粘膜が薄くなり出血しやすくなります。まれに鼻腔や副鼻腔の腫瘍が原因となることもあるため、繰り返す場合は耳鼻咽喉科の受診が推奨されます。
🔍 鼻血の仕組みとキーゼルバッハ部位
鼻血がどこから出ているのかを理解することは、適切な止血や予防において非常に重要です。鼻腔内には多くの血管が走っており、粘膜は薄くデリケートなため、わずかな刺激でも傷がつきやすい構造になっています。
📍 キーゼルバッハ部位とは
鼻血の約80〜90%は「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる場所から出血しています。キーゼルバッハ部位は、鼻の穴の入り口から約1〜1.5cmほど奥に入ったところにある、鼻中隔(鼻の穴を左右に分けている壁)の前方に位置しています。この部位は左右の鼻にそれぞれ存在します。
⚠️ 前鼻出血と後鼻出血の違い
一方、鼻腔の奥の方から出血する「後鼻出血」は、前鼻出血に比べて出血量が多くなりやすく、止血も困難になる傾向があります。後鼻出血は、鼻腔の後方にある蝶口蓋動脈や前篩骨動脈などの比較的太い血管から出血することが多く、特に高血圧や動脈硬化のある中高年の方に起こりやすいとされています。
🔄 片方だけ出血する仕組み
鼻血が片方だけから出る理由はいくつか考えられます:
- 物理的な刺激が特定の側に集中している場合
- 利き手で無意識のうちに同じ側ばかりを触っている
- 鼻の構造に左右差がある場合
- 鼻中隔弯曲症により、弯曲している側の粘膜が乾燥・損傷しやすい
- 片方の鼻腔にのみ存在する病変
- ポリープや腫瘍などによる局所的な出血
Q. 鼻血の正しい止め方を教えてください
鼻血が出たら、まず落ち着いて椅子に座り、少しうつむいた姿勢をとります。次に親指と人差し指で小鼻をしっかりつまみ、5〜10分間圧迫し続けます。上を向くと血液が喉へ流れ込み吐き気を引き起こす危険があるため、必ずうつむいた姿勢で行うことが大切です。
🧬 片方だけの鼻血の主な原因と対処法
大人が片方だけの鼻血を繰り返す場合、さまざまな原因が考えられます。ここでは代表的な原因について詳しく解説します。
🦴 鼻中隔弯曲症
鼻中隔弯曲症は、片方だけの鼻血を繰り返す原因として非常に多くみられる疾患です。鼻中隔とは、鼻の穴を左右に分けている壁のことで、軟骨と骨から構成されています。この鼻中隔が左右どちらかに大きく曲がっている状態を鼻中隔弯曲症といいます。
🌸 アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎
アレルギー性鼻炎は、花粉やダニ、ハウスダストなどのアレルゲンによって鼻の粘膜に炎症が起こる疾患です。アレルギー性鼻炎があると、鼻の粘膜が慢性的に炎症を起こして充血し、血管が拡張した状態になります。この状態で鼻をかんだり、かゆみのために鼻をこすったりすると、容易に出血してしまいます。
💨 鼻粘膜の乾燥
鼻の粘膜は適度な湿度を保つことで正常な機能を維持しています。乾燥した粘膜は柔軟性が失われ、わずかな刺激でも血管が破れやすくなります。特に就寝中は口呼吸になりやすく、朝起きたときに鼻血が出ていたという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
🩺 高血圧・抗凝固薬の影響
高血圧は、中高年の鼻血の重要な要因の一つです。血圧が高い状態が続くと、血管に常に強い圧力がかかるため、血管壁が傷みやすくなります。また、血液をサラサラにする薬を服用している方は、一度鼻血が出ると止まりにくくなります。
⚠️ 注意が必要な症状と隠れた病気
ほとんどの鼻血は心配のいらないものですが、なかには重大な病気のサインである可能性もあります。ここでは、特に注意が必要な症状と、鼻血の原因となりうる深刻な病気について解説します。
🚨 鼻腔・副鼻腔の腫瘍
大人で片方だけの鼻血が繰り返す場合、最も注意すべきなのは鼻腔や副鼻腔の腫瘍です。特に、今まで感じなかった鼻づまりが急に起こるようになった、血が混じった鼻水が続く、頬のしびれや痛みがあるなどの症状が伴う場合は注意が必要です。
🧬 オスラー病
オスラー病は、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)とも呼ばれる遺伝性の疾患で、全身の血管に異常が生じ、出血しやすくなる病気です。オスラー病の最も多い症状は繰り返す鼻血であり、患者さんの80〜90%にみられます。
🚨 危険な鼻血の見分け方
以下のような症状がみられる場合は、命に関わる可能性もある「危険な鼻血」として、直ちに医療機関を受診する必要があります:
- 出血の勢いが強く、鼻を押さえていても血があふれてくる
- 下を向いて小鼻を押さえていても、喉の方に血が流れてきて、口から吐き出さなければならない
- 20分以上圧迫しても出血が止まらない
- 1週間に3回以上鼻血が出る
Q. 鼻血ですぐに救急受診が必要な症状は?
以下の場合は夜間でも救急外来を受診してください。正しい圧迫止血を行っても20分以上出血が止まらない場合、出血量が非常に多くドクドクと脈打つように出てくる場合、頭部を強打した後に鼻血が出た場合です。これらは重篤な病気や血管損傷のサインである可能性があります。
🩹 正しい鼻血の止め方と間違った対処法
鼻血が出たときは、正しい方法で止血することが大切です。間違った方法で対処すると、かえって血が止まりにくくなったり、体調を悪化させたりすることがあります。
✅ 正しい止血の手順
1. 落ち着く
慌てると血圧が上がり、出血量が増える可能性があります。深呼吸をして気持ちを落ち着かせましょう。
2. 正しい姿勢をとる
椅子に座り、少しうつむいた姿勢をとります。頭を心臓より高い位置に保つことで、出血部位への血圧を下げる効果があります。
3. 小鼻を圧迫する
小鼻(鼻のふくらんだ柔らかい部分)を親指と人差し指でしっかりとつまみます。両側からつまんで鼻を閉じるようにし、5〜10分間そのまま圧迫し続けます。
❌ 間違った対処法の危険性
鼻血が出たときに上を向くのは、最もよく行われる間違いの一つです。上を向くと、血液が喉の方へ流れ込んでしまい、血液を飲み込んで吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
また、鼻血が出たときにティッシュや脱脂綿を鼻に詰めることも、詰め方が浅いと出血点を圧迫できず、抜く際にせっかくできたかさぶたを剥がしてしまう可能性があります。
🏥 受診のタイミングと検査・治療
一度だけの鼻血で、正しい方法で圧迫すればすぐに止まる程度であれば、通常は医療機関を受診する必要はありません。しかし、以下のような場合は耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
🚨 すぐに受診すべき場合
以下の症状がある場合は、夜間であっても救急外来を受診してください:
- 出血が20分以上止まらない
- 出血量が非常に多い(血がドクドクと脈打つように出てくる)
- 下を向いて圧迫しているのに喉の方に大量の血が流れてくる
- 頭部を強く打った後に鼻血が出た
🔬 耳鼻咽喉科での検査と治療
耳鼻咽喉科を受診すると、まず問診で鼻血の状況や既往歴、服用中の薬などについて確認されます。その後、内視鏡(ファイバースコープ)を使って鼻腔の奥まで観察し、必要に応じてCTやMRIなどの画像検査が行われることがあります。
治療は原因に応じて行われ、止血処置、薬物治療、手術治療などが検討されます。腫瘍が見つかった場合は、組織の一部を採取して病理検査を行い、その結果に応じた専門治療が提供されます。
Q. 鼻血を日常的に予防する方法は?
鼻血の日常的な予防には、加湿器やマスクの活用・鼻入り口へのワセリン塗布による粘膜の保湿が効果的です。また鼻をほじる癖をやめ、鼻をかむ際は片方ずつ優しく行うことが重要です。アレルギー性鼻炎がある場合は抗アレルギー薬で症状をコントロールし、高血圧がある場合は血圧管理も不可欠です。
🛡️ 鼻血予防のための日常ケア
鼻血を予防するためには、日常生活でいくつかのポイントに気をつけることが大切です。
💧 鼻粘膜の保湿
鼻粘膜の乾燥は鼻血の大きな原因の一つです。加湿器の使用、マスクの着用、鼻の入り口付近にワセリンを塗布、生理食塩水スプレーの使用などで保湿を心がけましょう。
✋ 生活習慣の改善
鼻をほじる癖がある方は、意識的にやめるようにしましょう。また、鼻を強くかまず、片方ずつ優しくかむようにしてください。高血圧がある方は、血圧のコントロールも重要です。
🌸 アレルギー性鼻炎の適切な治療
アレルギー性鼻炎がある方は、抗アレルギー薬やステロイド点鼻薬を使用して症状をコントロールすることが、鼻血の予防につながります。
朝の症状が特に強い方は、モーニングアタック対策についても詳しく解説していますので、併せてご参考ください。
📝 まとめ
大人で片方だけの鼻血を繰り返す場合、その原因はさまざまです。最も多いのは鼻中隔弯曲症やアレルギー性鼻炎、鼻粘膜の乾燥などによるキーゼルバッハ部位からの出血であり、これらは適切な対処や治療によって改善が期待できます。
一方で、高血圧や血液をサラサラにする薬の服用、血液の病気、さらには鼻腔や副鼻腔の腫瘍など、より深刻な原因が隠れている可能性もあります。特に、以下の症状がある場合は早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です:
- 今まで感じなかった鼻づまりが急に起こるようになった
- 血が混じった鼻水が続く
- 頬のしびれや痛みがある
鼻血が出たときは、落ち着いて少しうつむいた姿勢をとり、小鼻をしっかりと圧迫することで、多くの場合5〜10分程度で止血できます。上を向いたり、鼻にティッシュを詰めたりする方法は、かえって悪化させる可能性があるため避けましょう。
鼻血を予防するためには、鼻粘膜の保湿、鼻をいじらないこと、アレルギー性鼻炎の治療、血圧の管理などが有効です。繰り返す鼻血でお悩みの方は、一度耳鼻咽喉科を受診して原因を調べ、適切な治療を受けることをお勧めします。

この記事のポイント
大人の片方だけ繰り返す鼻血は、鼻中隔弯曲症・アレルギー性鼻炎・乾燥が主因だが、腫瘍や高血圧が隠れる場合もあるため、耳鼻咽喉科での受診が推奨される。
❓ よくある質問
片方だけ鼻血が繰り返す原因としては、鼻中隔弯曲症(鼻の真ん中の壁が曲がっている状態)、片側の鼻粘膜の乾燥、特定の側を触る癖、片側の鼻腔にある病変(ポリープや腫瘍など)が考えられます。鼻中隔が曲がっている側は粘膜が引き延ばされて薄くなり、空気の流れも乱れやすいため、出血しやすくなります。繰り返す場合は耳鼻咽喉科で原因を調べることをお勧めします。
子どもの鼻血の多くはアレルギー性鼻炎による鼻いじりが原因で、成長とともに改善することが多いです。一方、大人の鼻血は高血圧や動脈硬化、血液をサラサラにする薬の服用、まれに腫瘍など、全身的な要因や深刻な病気が関係している可能性があります。大人で繰り返す鼻血は、子どもよりも注意が必要であり、一度は耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
上を向くと血液が喉の方へ流れ込んでしまいます。血液を飲み込むと胃の中で酸化されて吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。また、横になって上を向いた状態で嘔吐すると、吐しゃ物が気道に入り窒息の原因となる危険もあります。鼻血が出たときは少しうつむいた姿勢で、小鼻を圧迫するのが正しい止め方です。
正しい方法(少しうつむいた姿勢で小鼻を圧迫)で20分以上止血を試みても鼻血が止まらない場合は、キーゼルバッハ部位以外からの出血や、動脈からの出血の可能性があります。この場合は自宅での対処が困難なため、耳鼻咽喉科または救急外来を受診してください。特に血液をサラサラにする薬を服用中の方は止血に時間がかかりやすいので、早めの受診をお勧めします。
高血圧そのものが直接の原因で鼻血が起きることは比較的少ないですが、血圧が高い状態が続くと血管に負担がかかり、血管壁がもろくなります。また、一度出血すると高い血圧によって出血の勢いが強くなり、止まりにくくなる傾向があります。高血圧の方が鼻血を繰り返す場合は、血圧のコントロールが重要です。
片方だけの鼻血が繰り返す場合、まれに鼻腔や副鼻腔の腫瘍が原因であることがあります。特に、今まで感じなかった鼻づまりが急に起こるようになった、血が混じった鼻水が続く、頬のしびれや痛みがあるなどの症状が伴う場合は注意が必要です。これらの症状が数週間にわたって片側だけに続く場合は、痛みがなくても早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
📚 参考文献
- 鼻出血-意外と知らない|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- 侮れない、大人に起こる危険な鼻血|サワイ健康推進課
- 鼻中隔弯曲症|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- オスラー病(指定難病227)|難病情報センター
- 上顎洞がん|国立がん研究センター 東病院
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
片方だけの鼻血が繰り返す場合、多くは鼻中隔弯曲症やアレルギー性鼻炎など治療可能な原因によるものです。しかし、まれに鼻腔内の腫瘍が原因となることもあるため、繰り返す症状に対しては耳鼻咽喉科での詳しい検査をお勧めします。早期発見・早期治療により、症状の改善が期待できます。