粉瘤(ふんりゅう)は皮膚の下にできる良性の腫瘍で、放置すると徐々に大きくなったり、炎症を起こして痛みや腫れが生じることがあります。粉瘤を根本的に治すには手術による摘出が必要ですが、その手術方法には主に「切開法」と「くり抜き法(へそ抜き法)」の2種類があります。どちらの方法を選ぶかによって、傷跡の大きさや術後の経過、再発リスクなどが異なってきます。本記事では、アイシークリニック大宮院の診療経験をもとに、粉瘤の切開法とくり抜き法の違いについて詳しく解説します。それぞれの手術方法の特徴やメリット・デメリットを理解し、ご自身に合った治療法を選ぶ参考にしてください。
目次
- 粉瘤とは?基本的な知識と放置するリスク
- 粉瘤の切開法とくり抜き法の違いとは?手術の概要
- 切開法の特徴と手術の流れ
- くり抜き法の特徴と手術の流れ
- 手術方法の比較と選び方
- 術後ケアと費用について
- まとめ
🏥 粉瘤とは?基本的な知識と放置するリスク
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってしまう良性の腫瘍です。医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」と呼ばれ、アテロームとも呼ばれることがあります。
体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に以下の部位に多く見られます:
- 顔
- 首
- 背中
- 耳の後ろ
- 脇の下
- お尻
🔍 粉瘤ができる原因と症状
粉瘤ができる明確な原因は完全には解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
- 毛穴の詰まりや外傷による皮膚の陥入
- ウイルス感染(ヒトパピローマウイルスなど)
- 遺伝的要因
- ピアスの穴や傷跡の周囲での発生
多くの場合、特定の原因なく自然に発生することが多いのが特徴です。
👀 粉瘤の見分け方と特徴
粉瘤には以下の特徴的な症状があります:
- 皮膚の下にしこりとして触れることができる
- しこりの中央部分に黒い点(開口部・ヘソ)が見える
- 開口部を圧迫すると、ドロドロとした内容物が出てくることがある
- 独特の臭いを伴うことがある
- 初期段階では痛みはないが、炎症を起こすと赤く腫れ、痛みを伴う
⚠️ 放置するリスクと手術の必要性
粉瘤は良性の腫瘍であり、放置しても悪性化することは極めてまれです。しかし、放置することで以下のリスクがあります:
- 時間の経過とともに徐々に大きくなる
- 大きくなるほど手術時の傷跡も大きくなる
- 細菌感染により「炎症性粉瘤」となる
- 炎症を繰り返すと周囲の組織と癒着し、手術が複雑になる
- 粉瘤が破裂すると内容物が周囲に漏れ出し、強い炎症反応を引き起こす
粉瘤は自然に治癒することはありません。塗り薬や飲み薬で治すこともできないため、根本的な治療には手術による袋(嚢腫壁)の完全摘出が必要となります。
💡 粉瘤の切開法とくり抜き法の違いとは?手術の概要
粉瘤を根本的に治すための手術には主に2つの方法があります。それぞれの基本的な特徴と違いを理解することで、最適な治療選択ができます。
⚖️ 手術方法の基本概念
切開法(従来法)
- 粉瘤の大きさに応じて紡錘形(木の葉のような形)に皮膚を切開
- 粉瘤を袋ごと周囲の組織から剥離し、完全に摘出
- 確実性が高く、古くから行われている方法
くり抜き法(へそ抜き法)
- 円筒状の専用器具で粉瘤の開口部を中心に小さな穴を開ける
- そこから内容物と袋を摘出
- 比較的新しい手術方法で、傷跡が小さいことが特徴
🎯 手術選択の基準
適切な手術方法を選ぶためには、以下の要素を総合的に判断する必要があります:
- 粉瘤の大きさ:小さい粉瘤はくり抜き法、大きい粉瘤は切開法が適している
- 部位:顔や首など露出部位では傷跡の小さいくり抜き法が推奨
- 炎症の有無:炎症の状態によって手術方法が変わる
- 患者の希望:傷跡への配慮や確実性への要望
⏰ 手術のタイミング
粉瘤の手術は、炎症を起こしていない状態で行うのが最も理想的です。
炎症がない状態であれば:
- 袋をきれいに摘出しやすい
- 傷跡を最小限に抑えることができる
炎症を起こしている場合は:
- まず炎症を鎮めてから手術を行う
- 切開排膿で膿を出してから後日改めて手術を行う
- 近年では炎症性粉瘤に対してもくり抜き法で一度に袋ごと摘出する方法が増加
✂️ 切開法の特徴と手術の流れ
切開法は、粉瘤の手術において最も古くから行われてきた従来の方法です。紡錘形(ぼうすいけい)に皮膚を切開し、粉瘤を袋ごと摘出する手術方法で、確実性の高い治療法として現在でも広く行われています。
🔧 手術の流れと詳細
- 局所麻酔:手術部位に局所麻酔を注射し、痛みを感じないようにする
- 切開:粉瘤の大きさに応じて紡錘形(木の葉のような形)に皮膚を切開
- 摘出:粉瘤を袋ごと周囲の組織から剥離し、完全に摘出
- 止血・縫合:出血を止めて傷口を縫合
- 切開の長さ:粉瘤の直径と同程度かそれ以上
- 手術時間:通常15分から30分程度
- 縫合:吸収糸または抜糸が必要な糸を使用
✅ メリットと優位性
- 確実性が高い:袋を直接見ながら確実に摘出できるため、再発率が低い
- 適応範囲が広い:大きな粉瘤や周囲と癒着している粉瘤にも対応
- 視野が広い:出血のコントロールがしやすく、安全性が高い
- 技術的に確立:多くの医療機関で実施可能
❌ デメリットと注意点
- 傷跡が大きい:粉瘤と同程度の大きさの傷跡が残る
- 目立ちやすい:特に顔や首など露出部位では傷跡が気になる
- 術後の症状:痛みや腫れがくり抜き法に比べてやや強い
- 通院の必要性:縫合のため抜糸のための通院が必要
🎯 適応症例
切開法に適している症例
- 大きな粉瘤(直径5cm以上)
- 深い場所にある粉瘤
- 周囲と強く癒着している粉瘤
- 炎症を繰り返して袋がもろくなっている粉瘤
- 再発した粉瘤
🎯 くり抜き法の特徴と手術の流れ
くり抜き法は、「へそ抜き法」とも呼ばれる比較的新しい手術方法です。円筒状の専用器具(トレパン・パンチ)を使用して、粉瘤の開口部(ヘソ)を中心に小さな穴を開け、そこから内容物と袋を摘出する方法です。
🔧 手術の流れと技術的特徴
- 局所麻酔:手術部位に局所麻酔を注射
- 穴あけ:円筒状のトレパン(直径2〜6mm程度)で粉瘤の開口部を中心に小さな円形の穴を開ける
- 内容物排出:穴から内容物(角質や皮脂の塊)を絞り出すように排出
- 袋の摘出:空になった袋を鉗子で引き出すようにして摘出
- 処置:傷口は小さいため縫合せずに自然治癒に任せることも多い
- 手術時間:通常10分から20分程度
- 縫合:不要か最小限(1〜2針)
✅ メリットと美容的利点
- 傷跡が非常に小さい:数ミリ程度の傷跡でほとんど目立たない
- 美容的に優秀:顔や首など露出部位の治療に特に適している
- 手術時間が短い:患者さんの負担が軽減
- 術後症状が軽度:痛みや腫れが最小限
- 通院負担の軽減:抜糸が不要なことが多い
- 炎症性粉瘤への適用:一度の手術で摘出と排膿を同時に実施可能
❌ デメリットと限界
- 技術的難易度:小さな穴から袋を取り出すため高い技術が必要
- 再発の可能性:袋が取り残される可能性があり、切開法に比べて再発率がやや高い
- 適応の限界:非常に大きな粉瘤や深い場所にある粉瘤には適さない
- 技術と経験:すべての医療機関で実施されているわけではない
🎯 適応症例と条件
くり抜き法に適している症例
- 小〜中程度の粉瘤(直径5cm以下程度)
- 開口部(ヘソ)がはっきりしている粉瘤
- 炎症を起こしていないか軽度の粉瘤
- 顔や首など傷跡を目立たせたくない部位の粉瘤
- 小さな粉瘤(直径1cm以下)の場合
⚖️ 手術方法の比較と選び方
ここでは、切開法とくり抜き法の違いを様々な観点から比較して解説します。それぞれの方法の特徴を理解することで、ご自身に合った治療法を選ぶ参考にしてください。
📏 傷跡・手術時間・再発率の比較
傷跡の大きさ
切開法
- 粉瘤の直径とほぼ同じ長さの紡錘形の傷跡
- 例:直径2cmの粉瘤 → 2cm程度の線状の傷跡
くり抜き法
- 粉瘤の大きさに関わらず、トレパンの直径(2〜6mm程度)の小さな傷跡
- 見た目を気にされる方や露出部位に最適
手術時間・再発率
- くり抜き法:10〜20分程度、再発率:2〜5%程度
- 切開法:15〜30分程度、再発率:1〜3%程度
😷 術後症状と通院の比較
くり抜き法
- 切開範囲が小さく、組織へのダメージが少ない
- 翌日から通常の生活に戻れることも多い
- 傷口が小さいため縫合せずに自然治癒に任せることが多い
- 縫合が不要か最小限で抜糸の必要がない場合が多い
切開法
- 術後数日間は痛みや腫れが続くことがある
- 個人差や粉瘤の大きさ・部位により変動
- 通常、縫合が必要
- 術後1〜2週間程度で抜糸のための通院が必要
🔸 粉瘤の状態別推奨方法
小さな粉瘤(直径1cm以下)の場合
おすすめ:くり抜き法
- 傷跡を最小限に抑えることができる
- 手術時間も短く済む
- 特に顔や首など露出部位には最適
- ただし、開口部がはっきりしない場合や深い場所にある場合は切開法を選択
中程度の粉瘤(直径1〜3cm)の場合
どちらも適応可能
選択の基準:
- 傷跡を小さくしたい場合 → くり抜き法
- 確実性を重視する場合 → 切開法
- 部位や患者さんの希望、粉瘤の状態を総合的に判断
大きな粉瘤(直径3cm以上)の場合
おすすめ:切開法
理由:
- 大きな粉瘤をくり抜き法で摘出しようとすると袋を取り残すリスクが高い
- 内容物の量も多いため、小さな穴からすべてを排出するのは困難
- 切開法であれば確実に袋全体を摘出可能
🏥 術後ケアと費用について
粉瘤の手術後は、適切なケアを行うことで傷の治りを促進し、合併症を予防することができます。また、治療費についても理解しておくことが重要です。
📅 術後の経過とケア方法
術後当日〜翌日
- 患部を清潔に保ち、できるだけ安静にする
- 局所麻酔が切れると多少の痛みを感じることがある
- 処方された痛み止めで対処可能
- 出血や浸出液が出ることがあるため、医師の指示に従いガーゼ交換を実施
- シャワー:翌日から可能(患部を直接濡らさないよう注意)
術後1週間〜1ヶ月
- 痛みや腫れはかなり軽減
- 切開法の場合:この時期に抜糸を行うことが多い
- くり抜き法で縫合していない場合:傷口が徐々にふさがる
- 患部を清潔に保つ
- 激しい運動は避ける
- 紫外線対策が重要
🎨 傷跡のケアポイント
傷が完全に閉じるまで
- 医師の指示に従い軟膏を塗布
- テープで保護
傷が閉じた後
- シリコンジェルシートやテープ:傷跡が盛り上がる(肥厚性瘢痕・ケロイド)のを予防
- 保湿:保湿クリームなどで乾燥を防ぐ
- 紫外線対策:少なくとも術後半年間は紫外線対策を徹底(色素沈着の予防)
詳しい術後ケアについては、粉瘤手術後のケア完全ガイドをご参照ください。
💰 手術費用と保険適用
粉瘤の手術は健康保険が適用されるため、自己負担は比較的軽く済みます。
3割負担の場合の目安
- 直径2cm未満の粉瘤:5,000〜10,000円程度
- 直径2〜4cmの粉瘤:10,000〜15,000円程度
- 直径4cm以上の粉瘤:15,000〜25,000円程度
保険診療においては、切開法とくり抜き法で手術費用に大きな違いはありません。どちらも「皮膚・皮下腫瘍摘出術」として算定されるため、粉瘤の大きさと部位によって費用が決まります。
🏥 アイシークリニック大宮院での治療
アイシークリニック大宮院では、患者さん一人ひとりの粉瘤の状態に合わせて、最適な治療法をご提案しています。
当院の治療の特徴
- 可能な限りくり抜き法を採用
- 傷跡を最小限に抑えるよう努力
- 可能な場合は一度の手術で袋ごと摘出
- 日帰り手術
- 局所麻酔下で痛みを最小限に抑制
- 丁寧な術後フォローアップ
📚 まとめ
粉瘤の切開法とくり抜き法の違いについて詳しく解説してきました。それぞれの手術方法には特徴があり、患者さんの状態や希望に応じて最適な方法を選択することが重要です。
切開法の特徴
- 確実性が高く再発率が低い
- 大きな粉瘤や複雑な症例にも対応可能
- 傷跡は粉瘤と同程度の大きさになる
くり抜き法の特徴
- 傷跡が非常に小さく美容的に優秀
- 手術時間が短く術後の症状も軽度
- 小さな穴からの摘出のため技術的難易度が高い
粉瘤は放置しても自然に治ることはありません。気になるしこりがある方は放置せずに早めの受診を推奨します。早期治療により、傷跡を小さく抑え、炎症などのトラブルを防ぐことができます。
アイシークリニック大宮院では、豊富な経験を持つ医師が患者さん一人ひとりに最適な治療法をご提案いたします。粉瘤でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
手術は局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みを感じることがありますが、その後は痛みを感じることなく手術を受けられます。術後、麻酔が切れると多少の痛みが出ることがありますが、処方される痛み止めで十分対処できる程度です。
デスクワークなど体を動かさない仕事であれば、翌日から可能なことが多いです。ただし、粉瘤の部位や大きさによっては数日間の安静が必要な場合もあります。激しい運動やプールなどは、傷が完全に塞がるまで(通常1〜2週間程度)控えてください。
くり抜き法は小さな穴から袋を取り出すため、技術的に難易度が高く、経験の浅い医師が行うと袋を取り残してしまい再発するリスクがあります。しかし、経験豊富な医師が適切に行えば、切開法と同等の低い再発率を達成することが可能です。当院では豊富な症例経験を持つ医師がくり抜き法を行っています。
炎症を起こしている粉瘤でも手術は可能です。従来は炎症を鎮めてから改めて手術を行う二段階治療が主流でしたが、近年ではくり抜き法で炎症性粉瘤を一度に袋ごと摘出する方法も行われています。ただし、炎症が非常に強い場合や膿瘍を形成している場合は、まず切開排膿を行うこともあります。
はい、粉瘤の手術は健康保険が適用されます。3割負担の場合、粉瘤の大きさや部位によって異なりますが、およそ5,000円〜25,000円程度が目安となります。これに初診料や検査料、処方薬代などが加わります。
傷跡の経過には個人差がありますが、一般的には術後3〜6ヶ月程度で赤みが落ち着き、1年程度でかなり目立たなくなります。くり抜き法の場合は傷口が小さいため、より早く目立たなくなる傾向があります。傷跡を目立たなくするためには、紫外線対策と保湿が重要です。
粉瘤を自分で潰すことは絶対に避けてください。無理に潰すと細菌感染を起こし、炎症性粉瘤になるリスクがあります。また、袋が破れて内容物が周囲に漏れ出すと、強い炎症反応を引き起こすこともあります。袋が残っている限り再発もしますので、必ず医療機関で適切な治療を受けてください。
どちらの方法が適しているかは、粉瘤の大きさ、部位、状態、患者さんのご希望によって異なります。傷跡を小さくしたい場合や顔など露出部位にある場合はくり抜き法が向いています。大きな粉瘤や周囲と癒着している粉瘤には切開法が確実です。診察時に医師と相談して最適な方法を選択することをおすすめします。
📚 参考文献
❓ よくある質問

監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
医師・当院治療責任者
粉瘤の治療において最も重要なのは、適切な時期に適切な方法で完全摘出を行うことです。炎症を起こす前に治療を行えば、患者さんの負担を最小限に抑え、美容的にも優れた結果を得ることができます。当院では患者さんの状態やご希望に応じて、最適な治療法をご提案いたします。