投稿

防風通聖散の効果とは?18種類の生薬で内臓脂肪を減らす漢方薬を医師が解説|アイシークリニック大宮院

「最近、お腹周りの脂肪が気になる」「便秘がちで体が重い」――そんなお悩みをお持ちの方に注目されている漢方薬が、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)です。防風通聖散は、18種類もの生薬を配合した漢方薬で、脂肪の分解・燃焼を促進するとともに、便秘やむくみの改善にも効果が期待できます。近年では、内臓脂肪を減少させる効果が臨床試験でも確認され、肥満症やメタボリックシンドロームの治療薬として医療現場でも広く処方されています。本記事では、防風通聖散の効果や作用機序、服用に適した体質、副作用と注意点まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。漢方薬は体質に合わせて選ぶことが重要ですので、ご自身に合っているかどうかを確認するための参考にしていただければ幸いです。


目次

  1. 防風通聖散とは
  2. 防風通聖散に期待できる効果・効能
  3. 18種類の生薬とその作用
  4. 防風通聖散が向いている人・向いていない人
  5. 臨床試験で示されたエビデンス
  6. 正しい服用方法と服用期間
  7. 副作用と注意点
  8. 市販薬と医療用の違い
  9. 他の肥満改善漢方薬との比較
  10. よくある質問
  11. まとめ

防風通聖散とは

防風通聖散は、中国の古典的な医学書である「宣明論(せんめいろん)」に収載されている、約800年以上の歴史を持つ漢方薬です。元々は風邪の初期症状や発熱に対して使用されていた処方ですが、その体内の余分なものを排出する働きが体質改善にも効果的であることが分かり、現代では主に肥満症の治療に用いられるようになりました。

東洋医学において、防風通聖散は暴飲暴食などによって体内に蓄積した「毒」(食毒、水毒など)を改善する処方と考えられています。体内にこもった熱を冷まし、発散させ、血液循環を良くし、体表の余分な水分を除き、毒素を排出するという多面的な作用を持っています。

現在、日本では医療用医薬品として保険適用が認められており、ツムラやクラシエなどの製薬会社から製品が販売されています。また、一般用医薬品(OTC医薬品)としても、ナイシトール(小林製薬)やコッコアポ(クラシエ)などの商品名で広く市販されています。保険適用漢方エキス製剤の中で、18種類という構成生薬数は最も多く、これが多面的な効果をもたらす理由の一つとなっています。

防風通聖散に期待できる効果・効能

防風通聖散の添付文書に記載されている効能効果は、「体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:肥満症、高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)」とされています。特に注目すべき効果について、詳しく見ていきましょう。

脂肪の分解・燃焼効果

防風通聖散の最も注目される効果は、内臓脂肪および皮下脂肪の減少作用です。この効果は複数のメカニズムによってもたらされます。まず、構成生薬の麻黄(マオウ)と防風(ボウフウ)には交感神経を刺激する作用があり、これにより脂肪細胞が活性化されて脂肪の分解が促進されます。また、山梔子(サンシシ)にも脂肪分解・燃焼効果への関与が確認されています。

さらに最近の研究では、防風通聖散が褐色脂肪組織の熱産生を活性化し、安静時エネルギー代謝における脂質利用率を高めることが明らかになっています。つまり、じっとしている状態でも脂肪がエネルギーとして使われやすくなるのです。加えて、甘草(カンゾウ)、荊芥(ケイガイ)、連翹(レンギョウ)などの生薬には、活性化された脂肪細胞の状態を維持する作用があり、脂肪燃焼の持続効果も期待できます。

便秘改善効果

防風通聖散には、便秘を改善する作用を持つ生薬が複数含まれています。特に大黄(ダイオウ)は腸の粘膜を刺激して蠕動運動を活発にし、便を出やすくする作用を持ちます。また、芒硝(ボウショウ)は腸内の水分量を調節して便を軟らかくする働きがあります。これらの生薬の相乗効果により、便秘がちな方の排便を促進します。

便秘が続くと、腸内に留まっている便から水分や糖質、脂質が再吸収され、不要なエネルギーが皮下脂肪として蓄えられてしまいます。そのため、便秘を解消することは、脂肪の蓄積を防ぐことにもつながります。また、最近の研究では、防風通聖散が腸内細菌叢(腸内フローラ)の善玉菌を増やすことで腸管機能を改善し、体重減少をもたらす効果があることも判明しています。

むくみ解消効果

防風通聖散に含まれる黄芩(オウゴン)や山梔子(サンシシ)には利尿作用があり、体内に溜まった余分な水分の排出を促進します。また、防風には発汗作用や血行促進作用があり、これによっても余分な水分や老廃物が排出されます。むくみの解消は見た目の改善だけでなく、体重減少にも直接つながります。

血行促進・代謝改善効果

防風通聖散に含まれる川芎(センキュウ)、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)は「活血化瘀(かっけつかお)」作用を持つ生薬です。これは体内に滞った血液を流れやすくする作用であり、血行の改善が期待できます。血行が改善されると基礎代謝が上がり、脂肪が燃焼しやすい体質へと導かれます。

食欲抑制効果

国内で行われた研究により、防風通聖散が食欲増進ホルモンである「グレリン」を低下させることが明らかになっています。防風の解熱作用によって体内の熱が下がると食欲が抑えられるため、食べ過ぎてしまう方にも有効です。脂肪燃焼や代謝促進などの多面的な作用に加え、食欲の減退効果も認められたことから、生活習慣病の改善への貢献も期待されています。

脂質排出効果

小林製薬と名古屋市立大学、愛知学院大学の共同研究により、防風通聖散には食事で摂取した脂質を便と一緒に排出する効果があることが発見されています。肥満マウスを用いた実験では、防風通聖散を投与したグループで糞便中の脂質が最大で146%、コレステロール量が159%に増加していました。これは腸管からの脂質の吸収を阻害することによるものと考えられています。

18種類の生薬とその作用

防風通聖散は18種類という最多の生薬から構成される漢方薬です。これらの生薬がそれぞれの役割を果たしながら、互いに作用を補完し合うことで、総合的な効果を発揮します。各生薬の特徴と主な作用について解説します。

体内の熱を冷ます生薬

黄芩(オウゴン)、山梔子(サンシシ)、石膏(セッコウ)、薄荷(ハッカ)は、体内にこもった熱を冷ます作用を持ちます。特に黄芩と山梔子には利尿作用もあり、むくみの解消に寄与します。石膏は鉱物性の生薬で、強い清熱作用を持ちます。薄荷は爽やかな香りで気分をリフレッシュさせる効果もあります。

発散・発汗を促す生薬

防風(ボウフウ)、荊芥(ケイガイ)、生姜(ショウキョウ)、麻黄(マオウ)は、発散・発汗を促進する作用を持ちます。麻黄には交感神経を刺激する作用があり、脂肪分解を促進する重要な役割を果たします。ただし、この作用により動悸や血圧上昇などの副作用が現れる可能性もあるため注意が必要です。防風は本処方の名前の由来となっている生薬で、発汗作用、血行促進作用、解熱作用を持ちます。

血液循環を改善する生薬

川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)は血液循環を改善する作用を持つ生薬です。これらは「活血化瘀」作用により、体内に滞った血液を流れやすくし、冷えの改善や代謝の向上に寄与します。特に女性の血の巡りを整える効果があるとされ、婦人科系の漢方薬にもよく配合される生薬です。

余分な水分を除く生薬

白朮(ビャクジュツ)、滑石(カッセキ)は体表の余分な水分を除去する作用を持ちます。白朮は胃腸の働きを整え、体内の水分代謝を調節します。滑石は鉱物性の生薬で、利尿作用により余分な水分の排出を促します。これらの作用によりむくみが解消され、体重減少につながります。

毒素を排出する生薬

桔梗(キキョウ)、連翹(レンギョウ)は解毒作用を持ち、体内に蓄積した毒素の排出を助けます。桔梗は去痰作用もあり、のどの炎症を鎮める効果があります。連翹は抗炎症作用があり、ニキビや吹き出物などの皮膚症状の改善にも寄与します。

便通を促す生薬

大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)は便通を促す瀉下作用を持ちます。大黄は腸の蠕動運動を活発にして便の排出を促進します。芒硝は鉱物性の生薬で、腸内の水分を調節して便を軟らかくします。これらの生薬の作用により便秘が改善され、腸内環境が整えられます。なお、芒硝は「無水ボウショウ」として配合されていることもあります。

全体を調和させる生薬

甘草(カンゾウ)は他の生薬の作用を調和させ、全体としてのバランスを整える役割を果たします。また、抗炎症作用や鎮痙作用もあります。ただし、甘草に含まれるグリチルリチン酸は長期服用により偽アルドステロン症を引き起こす可能性があるため、服用期間や他の甘草含有製剤との併用には注意が必要です。

防風通聖散が向いている人・向いていない人

漢方薬は体質(証)に合わせて選ぶことが非常に重要です。同じ肥満であっても、体質によって適した漢方薬は異なります。防風通聖散が効果を発揮しやすい人と、服用を避けるべき人について詳しく解説します。

防風通聖散が向いている人の特徴

防風通聖散は「実証(じっしょう)」と呼ばれる体質の方に向いています。実証とは、体力があって、余分な熱や老廃物が体内にたまっている状態を指します。具体的には以下のような特徴を持つ方に適しています。

まず、体力が充実しており、比較的がっしりした体格の方です。いわゆる「太鼓腹」と呼ばれるような、前に張り出したお腹の脂肪のつき方をしている人に向いています。特に腹部に皮下脂肪が多く、お腹周りが気になる方に適しています。

食欲旺盛で、濃い味付けの料理や脂っこい食品、辛いものを好む方も防風通聖散の適応となります。また、お酒を好む方や、日頃から食べ過ぎの傾向がある方にも向いています。このような食生活によって代謝が追いつかず、脂肪が蓄積しやすくなっている状態に対して効果を発揮します。

便秘がちで、排便が不規則な方も防風通聖散の適応です。お腹の脂肪によって腸管運動が悪くなり、便秘になりやすい方には特に効果的です。また、暑がりで、冬でも冷たい飲み物を好むような体質の方も向いています。これは体内に熱がこもりやすい状態を示しており、防風通聖散の清熱作用によって改善が期待できます。

さらに、むくみやすい方、高血圧に伴う動悸・肩こり・のぼせがある方、ニキビや吹き出物ができやすい方も防風通聖散の適応となります。不眠やイライラ感、気分の不安定さを感じる方にも効果が期待できる場合があります。

防風通聖散が向いていない人の特徴

一方で、防風通聖散が向いていない体質の方もいます。漢方でいう「虚証(きょしょう)」の方、つまり体力がなく、胃腸が弱い方には適していません。痩せ気味で体力がなく、食欲不振で胃腸が弱い方が防風通聖散を服用すると、下痢や腹痛などの副作用が出やすい傾向があります。

下痢や軟便がある方、普段から胃腸の調子が悪い方は、防風通聖散に含まれる大黄や芒硝の瀉下作用によってこれらの症状が悪化する恐れがあるため、服用を避けるべきです。食欲不振、悪心、嘔吐がある方も同様に注意が必要です。

発汗傾向が強い方は、防風通聖散の発汗作用により発汗過多や全身脱力感が現れる恐れがあります。また、狭心症や心筋梗塞などの循環器系の疾患がある方、重症の高血圧がある方、甲状腺機能亢進症がある方は、麻黄による交感神経刺激作用でこれらの症状が悪化する可能性があるため、服用前に必ず医師に相談する必要があります。

病後の衰弱期や著しく体力が衰えている方も、副作用が現れやすくなるため服用を避けるべきです。高度な腎障害のある方、排尿障害のある方も注意が必要です。妊娠中や授乳中の方は、安全性が確立されていないため服用を避けることが推奨されます。

臨床試験で示されたエビデンス

防風通聖散の効果は、動物実験だけでなく、人を対象とした複数の臨床試験でも確認されています。ここでは、代表的な研究結果を紹介します。

内臓脂肪減少効果の検証

小林製薬と広島国際大学薬学部の共同研究では、30~40代の肥満傾向のある男女に防風通聖散を12週間服用してもらい、その効果を評価しました。その結果、安静時に体内で消費されるエネルギー源を解析したところ、脂質利用率の増加が確認されました。また、服用12週後には体重が平均2.1kg減少し、ウエストサイズは平均3.3cm減少しました。特筆すべきは、内臓脂肪が皮下脂肪よりも大きく減少したことで、著効例では47.5%もの内臓脂肪減少が認められました。

プラセボ対照二重盲検試験

日本人女性81名を対象にした二重盲検ランダム化比較試験では、全員に1,200kcalの低カロリー食と運動療法を実施した上で、半数に防風通聖散(1日7.5g)を24週間投与し、残りの半数にはプラセボ(偽薬)を投与して比較しました。その結果、防風通聖散投与群ではプラセボ群と比較して24週後のウエスト周囲径が有意に減少しました。

さらに、防風通聖散投与群ではプラセボ群では見られなかった内臓脂肪量の低下、LDL/HDLコレステロール値の改善、尿酸値の低下、耐糖能異常の改善が認められました。この研究結果は、防風通聖散が単なる体重減少だけでなく、メタボリックシンドロームに関連する複数の指標を改善する可能性を示しています。

高齢者を対象とした試験

55〜65歳の肥満者(BMI25以上)を対象とした二重盲検ランダム化比較試験では、8週間の投与終了後に解析を行いました。その結果、プラセボ群では0.1kgの体重減少に対し、防風通聖散投与群では0.8kgの体重減少を示し、統計学的に有意な差が認められました。なお、試験前の血圧や血清総蛋白が高い方がより効果を示すことも示唆されました。

動物実験による作用機序の解明

北陸大学の研究では、高脂肪食を与えて肥満状態にしたマウスに防風通聖散を投与したところ、6日目から体重が減少し、投与量が多いほど体重の減りも大きくなるという明確な用量依存性が確認されました。また、名古屋市立大学と愛知学院大学との共同研究では、防風通聖散を投与したマウスの糞便中の脂質量が最大146%、コレステロール量が159%に増加していることが確認され、腸管からの脂質吸収を阻害する作用が明らかになりました。

正しい服用方法と服用期間

防風通聖散の効果を最大限に発揮させるためには、正しい服用方法を守ることが重要です。ここでは、用法・用量、服用のタイミング、期待される効果発現までの期間について解説します。

用法・用量

医療用の防風通聖散(ツムラ防風通聖散エキス顆粒)の場合、通常、成人は1日7.5gを2~3回に分割して服用します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。市販薬の場合は製品によって用量が異なりますので、添付文書の指示に従ってください。

服用のタイミングは、食前または食間(食事と食事の間、食後約2時間)が推奨されています。空腹時に服用することで、生薬の吸収が良くなり、効果が発揮されやすくなります。ただし、胃腸が弱い方や空腹時に胃の不快感を感じやすい方は、食後に服用することで副作用を軽減できる場合があります。

効果が現れるまでの期間

防風通聖散は漢方薬であるため、西洋薬のような即効性は期待できません。効果の発現には個人差がありますが、一般的には2週間~1ヶ月程度で何らかの変化を感じ始める方が多いです。便秘の改善であれば比較的早く効果を実感できることがありますが、体重減少や内臓脂肪の減少には継続的な服用が必要です。

海外の研究では、防風通聖散を半年継続して服用した結果、約1.4kg~4.8kgの体重減少が認められています。十分な効果を得るためには、最低でも1ヶ月以上の継続服用が推奨されます。ただし、1ヶ月以上服用しても効果が感じられない場合は、体質に合っていない可能性がありますので、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

服用時の注意点

防風通聖散を服用する際は、決められた用量を守ることが重要です。「早く痩せたい」という気持ちから規定量以上を服用すると、副作用のリスクが高まります。特に肝機能障害の報告例の多くは、自己判断で使用量以上の服用を長期間続けたケースとされています。

また、防風通聖散だけに頼らず、食事療法や運動療法を併用することで、より効果的に肥満を改善できます。炭水化物の制限や適度な運動は、防風通聖散の効果を増強することが知られています。漢方薬はあくまでも体質改善をサポートするものであり、生活習慣の改善と組み合わせることが肥満改善の基本です。

副作用と注意点

漢方薬は自然由来の生薬から構成されるため安全性が高いイメージがありますが、副作用が全くないわけではありません。防風通聖散は18種類もの生薬を含むため、注意すべき副作用がいくつか存在します。

一般的な副作用

防風通聖散で比較的よく見られる副作用として、消化器症状があります。下痢、軟便、腹痛、胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐などが報告されています。これらは主に大黄(ダイオウ)の瀉下作用によるもので、特に胃腸が弱い方に現れやすい傾向があります。便が緩くなることは効き目のサインとも言えますが、症状が強い場合は服用量の調整や中止を検討する必要があります。

自律神経系の症状として、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮などが現れることがあります。これらは主に麻黄(マオウ)に含まれるエフェドリン類似成分による交感神経刺激作用によるものです。また、発疹やかゆみなどのアレルギー症状、排尿障害が現れることもあります。

重大な副作用

頻度は稀ですが、以下のような重大な副作用が報告されています。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。

間質性肺炎は、防風通聖散の服用によってまれに起こる重篤な副作用です。長引く咳、息切れ、発熱、呼吸困難などの症状が現れた場合は、肺の炎症が疑われます。特に肺に持病がある方や喫煙歴がある方はリスクが高いため、注意が必要です。黄芩(オウゴン)が原因となることが多いとされています。

偽アルドステロン症は、甘草(カンゾウ)に含まれるグリチルリチン酸の長期服用によって引き起こされることがあります。体内のナトリウムとカリウムのバランスが崩れることで、血圧上昇、むくみ、低カリウム血症、筋肉のけいれん、だるさなどの症状が現れます。定期的な血清カリウム値の測定が推奨されます。

ミオパチーは、低カリウム血症の結果として現れることがある筋肉の病気です。脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢の痙攣・麻痺などの症状が特徴的です。偽アルドステロン症と関連して発症することがあります。

肝機能障害は、防風通聖散の副作用として比較的報告例が多いものです。発熱、皮膚のかゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、全身倦怠感などの症状が現れることがあります。AST、ALT、γ-GTPなどの肝機能の数値異常を伴います。数ヶ月以上服用する場合は、定期的な血液検査で肝機能をチェックすることが推奨されます。

腸間膜静脈硬化症は、山梔子(サンシシ)を含む製剤の長期投与(多くは5年以上)により発症することがあります。繰り返す腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などの症状が現れ、進行すると腸管の狭窄や潰瘍を引き起こすことがあります。長期服用する場合は定期的なCTや大腸内視鏡検査が推奨されます。

併用注意の薬剤

防風通聖散を服用する際は、以下の薬剤との併用に注意が必要です。

他の瀉下薬(下剤)との併用は避けてください。防風通聖散には大黄や芒硝という便秘を改善する生薬が含まれているため、下剤と併用すると作用が強くなりすぎ、激しい下痢を引き起こす可能性があります。

甘草を含む他の漢方薬やグリチルリチン酸を含む医薬品・食品との併用にも注意が必要です。甘草の重複摂取により、偽アルドステロン症やミオパチーのリスクが高まります。

エフェドリンやテオフィリンなど交感神経刺激作用のある薬との併用は、麻黄の作用と重複し、動悸や不眠などの副作用が強く現れる可能性があります。風邪薬や気管支拡張薬などに含まれていることがあるため、併用前に成分を確認してください。

市販薬と医療用の違い

防風通聖散は、医療機関で処方される医療用医薬品と、ドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品(市販薬)の両方が存在します。それぞれの特徴と違いについて解説します。

医療用医薬品の特徴

医療用の防風通聖散としては、ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用)やクラシエ防風通聖散料エキス細粒などがあります。医師の処方が必要ですが、健康保険が適用されるため費用負担が軽減されます。1日の服用量は7.5gが標準で、防風通聖散エキスの含有量が多いのが特徴です。

医療用の場合、医師による診察を受けた上で処方されるため、体質や症状に合っているかどうかの判断をしてもらえます。また、副作用が現れた場合や効果が感じられない場合にも、医師に相談しながら服用を継続するかどうかを判断できるというメリットがあります。長期服用する場合には、定期的な血液検査などでモニタリングを行うことも可能です。

一般用医薬品(市販薬)の特徴

市販の防風通聖散としては、ナイシトール(小林製薬)、コッコアポEX錠(クラシエ)、ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒などが代表的です。第2類医薬品として分類されており、処方箋なしでドラッグストアや薬局で購入できます。

市販薬は医療用と比較して、1日あたりの有効成分量が少なめに設定されていることが多いです。例えば、医療用が満量処方(防風通聖散エキスを100%配合)であるのに対し、市販薬には3分の2量や2分の1量のものがあります。初めて服用する方や副作用が心配な方は、少なめの含有量から始めることも一つの選択肢です。

市販薬を購入する際は、薬剤師や登録販売者に相談し、自分の体質や症状に合っているかどうかを確認することをお勧めします。また、添付文書に記載されている「使用上の注意」をよく読み、服用期間の目安(肥満症の場合は1ヶ月程度、便秘の場合は1週間程度)を守って使用してください。

他の肥満改善漢方薬との比較

肥満改善に用いられる漢方薬は防風通聖散だけではありません。体質によって適した漢方薬は異なりますので、代表的な肥満改善漢方薬との違いを知っておくと、自分に合った漢方薬を選ぶ参考になります。

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

防已黄耆湯は、体力がなく疲れやすい方、胃腸が弱く下痢しやすい方、水太りやむくみやすい方に適した漢方薬です。防風通聖散が「実証」向けであるのに対し、防已黄耆湯は「虚証」向けの処方です。特に下半身のむくみが気になる方、汗をかきやすい方に向いています。便秘改善作用はないため、便秘のない方の水太りタイプに適しています。

大柴胡湯(だいさいことう)

大柴胡湯は、ストレスが多くイライラしやすい方、加齢で代謝が落ちて便秘がちな方に適した漢方薬です。肝臓の働きを助け、脂質代謝を改善する効果があります。がっしりした体格でストレスによる過食傾向がある方、上半身に脂肪がつきやすい方に向いています。防風通聖散と同様に実証向けですが、ストレス性の肥満に特に効果的です。

体質別の選び方

自分に合った肥満改善漢方薬を選ぶためには、まず自分の体質を正しく把握することが重要です。体力があって便秘がち、お腹に脂肪がつきやすいタイプには防風通聖散が、体力がなくむくみやすい水太りタイプには防已黄耆湯が、ストレスが多くイライラしやすいタイプには大柴胡湯が適しています。ただし、自己判断は難しい場合もありますので、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

よくある質問

防風通聖散はどのくらいで効果が出ますか?

防風通聖散の効果が現れるまでの期間には個人差がありますが、一般的には2週間~1ヶ月程度で何らかの変化を感じ始める方が多いです。便秘の改善は比較的早く実感できることがありますが、体重減少や内臓脂肪の減少には継続的な服用が必要です。臨床試験では12週間~24週間の服用で有意な効果が確認されています。1ヶ月以上服用しても効果が感じられない場合は、体質に合っていない可能性がありますので、医師や薬剤師に相談してください。

防風通聖散を飲み続けても大丈夫ですか?

防風通聖散は長期服用が可能な漢方薬ですが、いくつかの注意点があります。5年以上の長期服用では、山梔子(サンシシ)による腸間膜静脈硬化症のリスクが報告されています。また、甘草(カンゾウ)による偽アルドステロン症や、肝機能障害のリスクもあります。長期服用する場合は、定期的に医師の診察を受け、必要に応じて血液検査などでモニタリングを行うことが推奨されます。効果が得られた後も漫然と服用を続けるのではなく、医師と相談しながら服用期間を決めることが大切です。

防風通聖散は肝臓に悪いですか?

防風通聖散自体が肝臓に直接悪影響を与えるわけではありませんが、長期間の服用や過剰摂取は肝臓に負担をかける可能性があります。肝機能障害は防風通聖散の副作用として報告されており、発熱、皮膚のかゆみ、発疹、黄疸、全身倦怠感などの症状が現れることがあります。特に規定量以上の服用を長期間続けた場合にリスクが高まるとされています。肝機能に不安がある方や肝疾患をお持ちの方は、服用前に医師に相談してください。数ヶ月以上服用する場合は、定期的な血液検査で肝機能をチェックすることが推奨されます。

防風通聖散で下痢になるのは副作用ですか?

防風通聖散を服用して便が緩くなることは、必ずしも副作用とは言い切れません。防風通聖散には大黄(ダイオウ)や芒硝(ボウショウ)という便通を促す生薬が含まれており、便秘を改善する効果の一環として便が緩くなることがあります。これは効き目のサインとも言えます。ただし、激しい下痢や腹痛を伴う場合、水様便が続く場合は副作用の可能性があります。そのような場合は服用量を減らすか、服用を中止して医師や薬剤師に相談してください。もともと下痢気味の方には防風通聖散は向いていません。

防風通聖散は運動しなくても痩せますか?

防風通聖散には脂肪の分解・燃焼を促進する効果がありますが、薬だけで大幅に痩せることを期待するのは現実的ではありません。臨床試験では、食事療法や運動療法と併用することでより効果的な体重減少が確認されています。防風通聖散は痩せにくい体質そのものにアプローチする漢方薬であり、生活習慣の改善をサポートするものと考えてください。炭水化物の制限や適度な運動を取り入れることで、防風通聖散の効果がより発揮されます。基本は食事・運動・睡眠という土台があってこそ、補助的な効果が得られるものです。

防風通聖散は誰でも飲めますか?

防風通聖散は体質(証)によって向き不向きがある漢方薬です。体力が充実していて、お腹に脂肪が多く、便秘がちな「実証」タイプの方に向いています。逆に、体力がなく胃腸が弱い「虚証」タイプの方、下痢や軟便がある方、発汗傾向が強い方には向いていません。また、狭心症や心筋梗塞などの循環器疾患がある方、重症高血圧の方、甲状腺機能亢進症の方、妊娠中・授乳中の方は服用を避けるか、医師に相談する必要があります。自分の体質に合っているかどうか分からない場合は、医師や薬剤師に相談してください。

まとめ

防風通聖散は、18種類の生薬を配合した漢方薬で、内臓脂肪の減少、便秘改善、むくみ解消、代謝向上など多面的な効果が期待できます。臨床試験でも体重減少や内臓脂肪の減少効果が科学的に確認されており、肥満症やメタボリックシンドロームの治療薬として医療現場でも広く使用されています。

ただし、防風通聖散は全ての人に適した漢方薬ではありません。体力が充実して便秘がちな「実証」タイプの方に向いている一方で、体力がなく胃腸が弱い方には適していません。また、間質性肺炎、偽アルドステロン症、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症などの重大な副作用の可能性もあるため、服用にあたっては注意が必要です。

防風通聖散の効果を最大限に発揮させるためには、正しい用法・用量を守り、食事療法や運動療法と併用することが重要です。漢方薬はあくまでも体質改善をサポートするものであり、生活習慣の改善が肥満解消の基本であることを忘れないでください。

自分に防風通聖散が合っているかどうか分からない場合や、服用中に気になる症状が現れた場合は、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。当院では、患者様一人ひとりの体質や症状に合わせた適切な治療法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

関連記事

RETURN TOP
電話予約
0120-561-118
1分で入力完了
簡単Web予約