手や足にできた小さなできもの、気づいたら増えていた「いぼ」に悩んでいませんか。いぼは日常的によく見られる皮膚の症状ですが、その原因や種類はさまざまで、適切な治療法も異なります。放置すると周囲に広がったり、他の人にうつしてしまう可能性もあるため、正しい知識を持つことが大切です。
この記事では、いぼの原因や種類、皮膚科で行われる治療法、そして日常生活での予防策まで、詳しく解説します。さいたま新都心駅から大宮駅まで電車でわずか3分という好アクセスの当院では、いぼでお悩みの患者さまに対して、症状に応じた最適な治療をご提案しています。いぼについてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- いぼとは何か
- いぼの主な種類
- いぼができる原因とメカニズム
- いぼの症状と他の皮膚疾患との見分け方
- 皮膚科で行われるいぼの治療法
- 漢方薬「ヨクイニン」によるいぼ治療
- いぼの予防法と日常生活での注意点
- いぼ治療の費用と保険適用について
- 皮膚科を受診すべきタイミング
- さいたま新都心エリアでのいぼ治療
- よくある質問
- まとめ
1. いぼとは何か
いぼとは、皮膚の表面にできる小さな隆起物の総称です。医学用語では「疣贅(ゆうぜい)」と呼ばれ、皮膚の一部が盛り上がった状態を指します。いぼにはウイルス感染によって生じるものと、加齢や紫外線などの影響で生じるものがあり、原因によって性質や治療法が大きく異なります。
日本皮膚科学会の調査によると、皮膚科外来患者さんの約4.5%がウイルス性いぼで受診しており、特に6歳から10歳の子どもでは全体の約23%、11歳から15歳では約17%を占めるなど、若い世代に多い傾向があります。いぼ自体は良性の皮膚病変であり、命に関わる病気ではありませんが、見た目の問題や周囲への感染拡大を防ぐため、適切な治療が推奨されています。
いぼは放置すると徐々に大きくなったり、数が増えたりすることがあります。また、ウイルス性のいぼは他の部位や他の人にうつる可能性があるため、早期の受診と治療が重要です。一方で、いぼに似た見た目をしていても、実際には悪性腫瘍(皮膚がん)の初期症状である可能性もゼロではないため、自己判断せずに皮膚科専門医の診察を受けることをおすすめします。
2. いぼの主な種類
いぼにはさまざまな種類があり、それぞれ原因や好発部位、見た目の特徴が異なります。ここでは代表的ないぼの種類について解説します。
2-1. 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
最も一般的なウイルス性いぼで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発症します。主に手の指や足の裏、膝などにできやすく、表面がザラザラしていたり、カリフラワーのようにゴツゴツした見た目をしているのが特徴です。
直径は数ミリメートルから数センチメートルまでさまざまで、時間の経過とともに徐々に大きくなります。単発で生じることもあれば、複数のいぼが集まって融合し、より大きな病変になることもあります。自覚症状はほとんどなく、痛みやかゆみを感じることは稀です。
特に足の裏にできた尋常性疣贅は「足底疣贅(そくていゆうぜい)」と呼ばれ、歩行時の圧迫によって皮膚にめり込んでしまうことがあります。この場合、ウオノメと見間違えることがありますが、治療法が異なるため正確な診断が重要です。
2-2. 青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)
思春期から青年期の若い世代に多く見られるウイルス性いぼで、主に顔面や手の甲に発症します。尋常性疣贅とは異なり、皮膚面からの盛り上がりが少なく、表面が滑らかで平らな形状をしているのが特徴です。
直径は2ミリメートルから4ミリメートル程度と小さめですが、多発することが多く、数十個から数百個ものいぼが顔全体に広がることもあります。色は肌色から淡い褐色で、一見するとニキビやシミと間違われることもあります。軽度のかゆみを伴うことがありますが、多くの場合は無症状です。
青年性扁平疣贅は自然に治癒することもありますが、顔面にできた場合は見た目の問題から治療を希望される方が多いです。
2-3. 伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)/水いぼ
一般的に「水いぼ」と呼ばれる皮膚感染症で、伝染性軟属腫ウイルスが原因で発症します。ヒトパピローマウイルスによるいぼとは異なるウイルスによるもので、主に乳幼児から小学校低学年の子どもに多く見られます。
直径1ミリメートルから5ミリメートル程度の、表面がつやつやと光沢のある丸い丘疹が特徴で、中央がくぼんでいることが多いです。いぼの中には白っぽいウイルスの塊(モルスクム小体)が含まれており、これが他の皮膚に付着することで感染が広がります。
水いぼは体幹や四肢、脇の下、お尻の割れ目など、皮膚が薄くてこすれやすい部位にできやすいのが特徴です。プールや公衆浴場での感染が多いと言われていますが、プールの水そのものからうつることはなく、ビート板や浮き輪、タオルなどの共有を介して感染することがわかっています。
健康な子どもでは6か月から3年程度で自然に治癒することが多いですが、その間に他の部位や他の子どもに感染が広がることもあるため、治療を行うかどうかは症状や状況に応じて判断します。
2-4. 脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)/老人性いぼ
「老人性いぼ」とも呼ばれる良性の皮膚腫瘍で、ウイルス感染とは関係なく、加齢や紫外線の影響によって発症します。早い人では20代後半から出現し始め、40代以降から増加し、80代ではほぼすべての人に見られるほど一般的な症状です。
顔面、頭部、首、手の甲、前胸部、背中など、日光に当たりやすい部位に好発します。色は褐色から黒褐色までさまざまで、表面はザラザラしていたり、脂っぽい感じがしたりすることがあります。大きさは数ミリメートルから数センチメートルまで幅広く、時間の経過とともに徐々に大きくなったり数が増えたりします。
脂漏性角化症はウイルス性ではないため人にうつることはなく、がん化することもほとんどありません。ただし、見た目が似ている悪性腫瘍もあるため、急に大きくなったり、形がいびつになったり、出血したりする場合は皮膚科を受診することをおすすめします。また、短期間で全身に多数の脂漏性角化症が急に出現し、かゆみを伴う場合は、内臓の悪性腫瘍が隠れている可能性があるため(レーザートレラ徴候)、注意が必要です。
2-5. 軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)/首いぼ・スキンタッグ
首や脇の下、胸元、まぶたなど、皮膚の柔らかい部位にできる小さないぼ状の突起物です。「アクロコルドン」「スキンタッグ」とも呼ばれ、皮膚の良性腫瘍の一種です。
大きさは1ミリメートルから数ミリメートル程度と小さく、皮膚から垂れ下がるような形状をしていることが多いです。肌色から淡い褐色で、痛みやかゆみはありませんが、衣類やアクセサリーに引っかかって炎症を起こすことがあります。
軟性線維腫はウイルス感染とは無関係で、加齢や皮膚への摩擦、肥満、遺伝的要因などが関係していると考えられています。良性のため必ずしも治療が必要ではありませんが、見た目が気になる場合や引っかかって不快な場合は除去することができます。
2-6. 尖圭コンジローマ(せんけいコンジローマ)
性感染症の一種で、ヒトパピローマウイルス(主にHPV6型、11型)の感染によって外陰部や肛門周囲にいぼができる病気です。主に性行為によって感染し、潜伏期間は3週間から8か月と幅があります。
いぼの形状は鶏のトサカやカリフラワーのような特徴的な見た目をしており、ピンク色や白色をしています。自覚症状がないことが多いですが、大きくなると痛みやかゆみを感じることもあります。
尖圭コンジローマは適切な治療を行わないと増殖や再発を繰り返すことがあるため、皮膚科や泌尿器科、婦人科での治療が必要です。
3. いぼができる原因とメカニズム
いぼができる原因は大きく分けて「ウイルス感染」と「加齢・紫外線」の2つがあります。それぞれの原因とメカニズムについて詳しく解説します。
3-1. ウイルス感染によるいぼ
尋常性疣贅や青年性扁平疣贅などのいぼは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発症します。HPVは150種類以上の型が確認されており、型によっていぼができる部位や症状が異なります。
HPVは皮膚表面にある小さな傷や、バリア機能が低下した皮膚から侵入します。ウイルスが表皮の基底細胞に感染すると、その細胞が異常に増殖し、皮膚が盛り上がっていぼが形成されます。感染から発症までの潜伏期間は1か月から6か月程度と言われていますが、潜伏感染(不顕性感染)の状態で長期間症状が現れないこともあります。
ウイルス性いぼの主な感染経路は以下のとおりです。
直接接触感染として、いぼのある皮膚に直接触れることで感染します。また、間接接触感染として、プールや公衆浴場の床、タオル、スリッパなどを介して間接的に感染することもあります。さらに自家接種として、自分のいぼを触った手で体の別の部位を触ることで、ウイルスが広がることがあります。
子どもや若い世代にいぼが多い理由としては、皮膚のバリア機能が未熟であること、外遊びや集団生活での接触機会が多いこと、まだ免疫が確立されていないことなどが挙げられます。一方、高齢者でいぼが少ないのは、長年かけて免疫が獲得されるためと考えられています。
水いぼの原因となる伝染性軟属腫ウイルスはHPVとは全く別のウイルスで、ポックスウイルス科に属します。感染経路はHPVと同様に皮膚の接触や物品の共有によるものですが、特に皮膚が薄くバリア機能が未熟な乳幼児に多く見られます。アトピー性皮膚炎の子どもでは皮膚のバリア機能が低下しているため、感染しやすく、また広がりやすい傾向があります。
3-2. 加齢・紫外線によるいぼ
脂漏性角化症(老人性いぼ)は、ウイルス感染とは無関係に、皮膚の老化現象として発症します。主な原因は以下のとおりです。
紫外線については、長年にわたって紫外線を浴び続けることで、皮膚の表皮細胞の遺伝子に異常が蓄積し、細胞が異常増殖します。顔や手の甲など日光に当たりやすい部位に多いのはこのためです。
加齢については、年齢とともに皮膚のターンオーバー(新陳代謝)のサイクルが乱れ、メラニン色素や古い角質が排出されにくくなります。これが蓄積することで、シミからいぼへと進展することがあります。
遺伝的要因については、脂漏性角化症のできやすさには個人差があり、家族性に多発する傾向が見られることから、遺伝的な要因も関係していると考えられています。
軟性線維腫(首いぼ)については、加齢に加えて皮膚への摩擦や刺激が原因と考えられています。首や脇の下など、衣類やアクセサリーがこすれやすい部位にできやすいのは、繰り返しの刺激が関係しているためです。肥満の方に多いのは、皮膚同士の摩擦が増えることが一因とされています。
4. いぼの症状と他の皮膚疾患との見分け方
いぼは見た目が似ている他の皮膚疾患と混同されることがあります。正確な診断のためには皮膚科専門医の診察が必要ですが、ここでは主な見分け方のポイントを解説します。
4-1. いぼとウオノメ・タコの違い
足の裏にできたいぼは、ウオノメやタコと間違われることがよくあります。いずれも皮膚が硬くなった状態ですが、原因と構造が全く異なります。
いぼ(足底疣贅)は、ウイルス感染が原因で、皮膚の内部から盛り上がるように成長します。表面をよく見ると、点状の出血斑(黒い点々)が見られることがあり、削ると出血しやすいのが特徴です。また、いぼは周囲に広がったり、他の部位にうつったりする可能性があります。
ウオノメは、繰り返しの圧迫や摩擦による物理的刺激が原因で、角質が楔状に深く食い込んでいきます。中心に「芯」と呼ばれる硬い部分があり、歩行時に神経を圧迫して強い痛みを引き起こします。ウオノメは人にうつることはありません。
タコは、ウオノメと同様に物理的刺激が原因ですが、広い範囲の皮膚が均一に厚く硬くなります。芯がなく、通常は痛みを感じません。ペンダコや座りダコなどが代表的です。
いぼとウオノメは見た目が似ていることがありますが、治療法が異なるため、正確な診断が重要です。特に子どもの足の裏にできるいぼ(ミルメシア)は、ウオノメと非常によく似た見た目で痛みを伴うことがあり、誤診されやすいので注意が必要です。
4-2. いぼとほくろの違い
いぼとほくろは、どちらも皮膚が盛り上がった状態であるため混同されることがありますが、性質は全く異なります。
いぼは、ウイルス感染または加齢が原因で、表面がザラザラしていることが多いです。色は肌色から褐色、黒褐色までさまざまで、時間とともに大きくなったり増えたりすることがあります。
ほくろ(色素性母斑)は、メラノサイト(色素細胞)が集まってできた良性の腫瘍で、ウイルス感染とは無関係です。色は褐色から黒色で、表面は滑らかなことが多いです。生まれつきのものや、成長過程で出現するものがあります。
注意が必要なのは、ほくろに見える病変の中に悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんが隠れている可能性があることです。急に大きくなる、形がいびつ、色むらがある、境界がぼやけている、などの特徴がある場合は、早めに皮膚科を受診してください。
4-3. 自己診断の危険性
いぼに限らず、皮膚のできものを自己診断することには危険が伴います。以下のような理由から、必ず皮膚科専門医の診察を受けることをおすすめします。
まず、悪性腫瘍の可能性があります。いぼに見える病変の中には、稀に悪性腫瘍(皮膚がん)の初期症状が含まれていることがあります。早期発見・早期治療が重要な悪性腫瘍を見逃してしまうリスクがあります。
次に、誤った治療による悪化があります。市販のいぼ取り薬を使ったり、自分でいぼを削ったりつぶしたりすることで、正常な皮膚を傷つけたり、感染を広げてしまったりすることがあります。
また、他の疾患の見逃しもあります。いぼと似た見た目の皮膚疾患は数多くあり、それぞれ適切な治療法が異なります。
5. 皮膚科で行われるいぼの治療法
いぼの治療法はさまざまで、いぼの種類や大きさ、できている部位、患者さまの年齢や希望などを考慮して、最適な方法を選択します。日本皮膚科学会の「尋常性疣贅診療ガイドライン2019」では、液体窒素凍結療法が第一選択として強く推奨されています。
5-1. 液体窒素凍結療法
最も広く行われている治療法で、マイナス196度の液体窒素をいぼに当てて凍結させ、ウイルスに感染した細胞を壊死させます。凍結と解凍を繰り返すことで、いぼの組織が破壊され、その後かさぶたとなって剥がれ落ちます。
治療は綿棒やスプレーを使って液体窒素をいぼに数秒間当てます。治療中はヒリヒリとした痛みや冷たさを感じますが、通常は麻酔なしで行うことができます。治療後は一時的に赤くなったり、水ぶくれができたりすることがありますが、数日から1週間程度で治まります。
液体窒素凍結療法は1回で完治することは少なく、通常は1週間から2週間の間隔で複数回の治療が必要です。いぼの大きさや深さ、部位によって治療回数は異なりますが、数回から数十回かかることもあります。特に足の裏や手のひらなど角質が厚い部位にできたいぼは、治療回数が多くなる傾向があります。
液体窒素凍結療法は保険適用の治療であり、1回あたり数百円から数千円程度(3割負担の場合)で受けることができます。
5-2. サリチル酸製剤(スピール膏)
サリチル酸を含む貼り薬(スピール膏)を用いる治療法で、角質を軟化させていぼを少しずつ取り除いていきます。液体窒素凍結療法と併用されることも多く、特に足の裏など角質が厚い部位のいぼに有効です。
スピール膏をいぼの大きさに合わせて切り、毎日貼り替えることで、徐々に角質が白く軟化してきます。数日から数週間続けると、いぼの部分が柔らかくなって剥がれやすくなります。
スピール膏は市販もされていますが、いぼの大きさに合わせて正確に貼らないと周囲の正常な皮膚まで溶かしてしまうことがあるため、皮膚科で処方を受けて正しく使用することをおすすめします。
5-3. 炭酸ガスレーザー治療
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)を用いて、いぼを蒸散させる治療法です。レーザーの熱エネルギーでいぼの組織を気化させて除去するため、1回の治療で確実に取り除くことができます。
局所麻酔を行ってから治療するため、痛みはほとんどありません。治療後は擦り傷のような状態になり、1週間から2週間程度でかさぶたが取れて治癒します。
炭酸ガスレーザー治療は液体窒素凍結療法に比べて治療回数が少なく、傷跡も比較的きれいに治りやすいというメリットがあります。一方で、保険適用外の自費診療となることが多く、費用は数千円から数万円程度かかります。
5-4. 電気焼灼法
電気メスを使っていぼを焼き切る治療法です。局所麻酔を行った後、高周波の電気エネルギーでいぼを蒸発させて除去します。
出血が少なく、周囲の組織へのダメージを最小限に抑えることができます。治療後はかさぶたになり、1週間から2週間程度で治癒します。
5-5. 外科的切除
メスを使っていぼを切除する方法です。局所麻酔を行い、いぼを含む皮膚を切り取った後、縫合します。
大きないぼや、他の治療法で効果が得られなかった場合、または悪性腫瘍との鑑別が必要な場合に選択されます。切除した組織は病理検査に提出することで、正確な診断を得ることができます。
縫合が必要なため、傷跡が残りやすいというデメリットがありますが、確実にいぼを取り除くことができます。
5-6. 水いぼの治療
水いぼ(伝染性軟属腫)の治療法は、ウイルス性いぼとは異なります。
摘除法は、専用のトラコーマ鑷子(ピンセット)を使って、水いぼを一つずつ摘み取る方法です。痛みを伴うため、小さなお子さまには事前に麻酔テープ(ペンレステープ)を貼って痛みを軽減することがあります。最も確実な治療法ですが、多数のいぼがある場合は複数回の治療が必要になることもあります。
銀イオン配合クリーム(M-BFクリーム)は、銀イオンの抗菌作用を利用した塗り薬で、水いぼに毎日塗布することで治療します。痛みを伴わないため、小さなお子さまにも使いやすい治療法です。平均2か月から3か月程度で効果が現れますが、自費診療となります。
経過観察については、水いぼは自然に治癒することも多いため、症状が軽度で数が少ない場合は、積極的な治療を行わずに経過を観察することもあります。ただし、その間に他の部位や他の子どもに感染が広がる可能性があるため、状況に応じて判断します。
6. 漢方薬「ヨクイニン」によるいぼ治療
いぼ治療には、漢方薬のヨクイニン(薏苡仁)が用いられることがあります。ヨクイニンは、イネ科の植物であるハトムギの種皮を除いた成熟種子を乾燥させた生薬で、古くからいぼや肌荒れに効果があるとされてきました。
6-1. ヨクイニンの効果とメカニズム
ヨクイニンは、中国最古の薬物書「神農本草経」(約2000年前)にも収載されている歴史ある生薬です。日本では江戸時代からいぼ治療に用いられてきた記録があり、長い使用経験があります。
ヨクイニンがいぼに効くメカニズムは完全には解明されていませんが、免疫機能を活性化する作用(NK細胞や細胞障害性T細胞の活性化など)が関係していると考えられています。また、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)を促進し、体内の水分バランスを整える作用もあるとされています。
日本皮膚科学会の「尋常性疣贅診療ガイドライン2019」では、ヨクイニン内服療法は推奨度B(行うことを推奨する)に位置付けられており、液体窒素凍結療法との併用療法として広く用いられています。
6-2. ヨクイニンの服用方法と効果が出るまでの期間
ヨクイニンは錠剤または散剤(粉末)として処方されます。通常、成人は1日9錠から18錠(または3グラムから6グラム)を2回から3回に分けて、食前または食間に服用します。
効果が現れるまでの期間には個人差がありますが、ガイドラインでは3か月程度を目安に効果を判定することが推奨されています。臨床データでは、投与後4週間で改善が見られたケースが約21%、8週間で約50%、12週間で約67%という報告があります。また、年齢によって有効率に差があり、乳幼児や学童では70%以上の有効率が報告されている一方、成人では20%程度にとどまるという報告もあります。
ヨクイニンは味がほんのり甘く、比較的飲みやすい漢方薬です。錠剤が飲みにくいお子さまは、ラムネのようにかじって食べることもできます。
6-3. ヨクイニンの副作用と注意点
ヨクイニンは生薬由来の漢方薬であり、一般的に副作用は少ないとされています。ただし、以下のような症状が現れることがあります。
胃腸症状として、胃の不快感、下痢などが報告されています。また皮膚症状として、発疹、かゆみなどが現れることがあります。
ヨクイニン(ハトムギ)はイネ科の植物であるため、小麦アレルギーなどイネ科アレルギーがある方は服用を避けた方がよいでしょう。また、ヨクイニンには子宮収縮作用があるため、妊娠中の方は服用前に医師に相談してください。
なお、ヨクイニンはウイルス性いぼ(尋常性疣贅、青年性扁平疣贅)に対して保険適用がありますが、脂漏性角化症(老人性いぼ)には効果がなく、適応外となります。
7. いぼの予防法と日常生活での注意点
いぼを予防するためには、日常生活での心がけが大切です。ウイルス性いぼと老人性いぼでは予防法が異なるため、それぞれについて解説します。
7-1. ウイルス性いぼの予防
皮膚のバリア機能を維持することが重要です。乾燥した皮膚や傷のある皮膚はウイルスが侵入しやすいため、日頃から保湿ケアを心がけ、手荒れやひび割れを防ぎましょう。
感染経路を断つことも大切です。プールや公衆浴場では、タオル、ビート板、浮き輪などを共有しないようにしましょう。プール後はシャワーで体をよく洗い、しっかりと保湿してください。
いぼができている場合は触らないことが基本です。気になって触ってしまうと、ウイルスが手を介して他の部位に広がる(自家接種)可能性があります。いぼを覆う場合は、絆創膏などでカバーしましょう。
免疫力を維持することも予防につながります。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など、健康的な生活習慣を心がけることで、ウイルスに対する抵抗力を維持できます。
早期治療を受けることで、いぼが小さいうちに治療することで、周囲への感染拡大を防ぐことができます。いぼを見つけたら、放置せずに早めに皮膚科を受診しましょう。
7-2. 老人性いぼ(脂漏性角化症)の予防
紫外線対策が最も重要です。脂漏性角化症の主な原因は長年の紫外線ダメージの蓄積です。日焼け止めをこまめに塗り、帽子や日傘を活用するなど、年間を通じて紫外線対策を行いましょう。若い頃からの紫外線対策が、将来の老人性いぼの発症予防につながります。
スキンケアも大切です。肌のターンオーバーを正常に保つため、適切な洗顔と保湿を心がけましょう。ただし、過度な摩擦や刺激は避けてください。
なお、脂漏性角化症は加齢現象の一つであり、完全に予防することは難しいです。日光に当たらない部位にできる脂漏性角化症については、有効な予防法は確立されていません。
7-3. 水いぼの予防(お子さまの保護者の方へ)
水いぼの予防では、皮膚の保湿を保つことが基本です。乾燥した皮膚はウイルスが侵入しやすいため、入浴後は保湿剤を塗って肌を保護しましょう。特にアトピー性皮膚炎のお子さまは、日頃のスキンケアが重要です。
タオルや衣類の共有を避けることも大切です。家庭内でも、兄弟姉妹とタオルを共有しないようにしましょう。水いぼのあるお子さまとの入浴は、可能であれば別々にするか、直接肌が触れ合わないよう注意してください。
プールでの注意点として、日本小児皮膚科学会、日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会の統一見解によると、「プールの水ではうつらないため、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けてください」とされています。ラッシュガードや防水絆創膏などで患部を覆うことも効果的です。
引っかかないよう注意することも重要です。水いぼを引っかくと中身が出て感染が広がります。かゆみがある場合は、爪を短く切り、かゆみ止めの薬を使うなどして対処しましょう。
8. いぼ治療の費用と保険適用について
いぼの治療にかかる費用は、治療法やいぼの種類、大きさ、個数などによって異なります。ここでは、保険診療と自費診療の違いについて解説します。
8-1. 保険適用となる治療
ウイルス性いぼ(尋常性疣贅など)に対する以下の治療は、原則として保険適用となります。
液体窒素凍結療法は、1回あたり数百円から数千円程度(3割負担の場合)です。複数回の治療が必要なため、総額は治療回数によって変わります。
ヨクイニン内服は、処方日数によりますが、1か月分で数百円から千円程度(3割負担の場合)です。
サリチル酸製剤(スピール膏)も保険適用となります。
水いぼに対するピンセットでの摘除も保険適用の治療です。
8-2. 自費診療となる治療
以下の治療は、保険適用外の自費診療となることが多いです。
炭酸ガスレーザー治療は、1回あたり数千円から数万円程度です。いぼの大きさや個数によって費用が変わります。
脂漏性角化症(老人性いぼ)に対するレーザー治療も自費診療となります。
水いぼに対する銀イオン配合クリーム(M-BFクリーム)も自費です。
美容目的での治療も自費診療となります。
費用の詳細については、治療を受ける医療機関に直接お問い合わせください。
9. 皮膚科を受診すべきタイミング
以下のような場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
いぼを見つけた時は、早期発見・早期治療が基本です。いぼが小さいうちは治療への反応も良好で、少ない通院回数で治すことができます。放置すると徐々に大きくなったり、数が増えたりする可能性があります。
いぼが増えてきた時は、ウイルス性いぼは周囲に広がりやすいため、いぼが増え始めたら早めに受診しましょう。
痛みやかゆみがある時も受診が必要です。いぼ自体は通常無症状ですが、痛みやかゆみがある場合は他の疾患の可能性もあります。
出血や色の変化がある時は注意が必要です。いぼから出血する、急に色が変わる、形がいびつになるなどの変化があれば、悪性腫瘍の可能性も考慮して受診してください。
自己治療で改善しない時も皮膚科を受診しましょう。市販薬を使っても改善しない場合は、正確な診断と適切な治療が必要です。
他の人にうつす可能性がある時、特に小さなお子さまや集団生活をしている方は、周囲への感染を防ぐためにも早めの治療をおすすめします。
10. さいたま新都心エリアでのいぼ治療
さいたま新都心エリアは、交通アクセスが非常に便利な地域です。さいたま新都心駅から大宮駅までは、JR京浜東北線またはJR高崎線・宇都宮線でわずか1駅、約3分で到着します。電車は平日日中で3分から4分間隔、朝夕のラッシュ時は2分から3分間隔で運行しているため、待ち時間もほとんどありません。
大宮駅は埼玉県最大のターミナル駅であり、JR各線、東武野田線、埼玉新都市交通ニューシャトルなど複数の路線が乗り入れています。浦和、上尾、蓮田、春日部、岩槻など埼玉県内の広い範囲からアクセスしやすく、東京方面からも湘南新宿ラインや上野東京ラインで乗り換えなしで来ることができます。
アイシークリニック大宮院は、JR大宮駅東口から徒歩1分の場所にあり、いぼをはじめとするさまざまな皮膚のお悩みに対応しています。いぼでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

11. よくある質問
A: ウイルス性いぼ(尋常性疣贅、水いぼなど)は、皮膚の接触やタオルなどの共有を介して他の人にうつる可能性があります。一方、脂漏性角化症(老人性いぼ)や軟性線維腫(首いぼ)はウイルス性ではないため、人にうつることはありません。
A: 一部のいぼは自然に治癒することもありますが、数年以上かかることがあります。また、その間にいぼが大きくなったり、周囲に広がったりする可能性があります。水いぼは6か月から3年程度で自然に治癒することが多いですが、個人差が大きいです。いぼを見つけたら、早めに皮膚科を受診して適切な治療を受けることをおすすめします。
Q: いぼの治療は痛いですか?
A: 液体窒素凍結療法は、治療中にヒリヒリとした痛みや冷たさを感じますが、通常は我慢できる程度です。治療後も数日間痛みが続くことがあります。レーザー治療や外科的切除は、局所麻酔を行うため治療中の痛みはほとんどありません。お子さまや痛みに敏感な方には、痛みの少ない治療法を選択することも可能です。
Q: いぼ治療は何回くらい通院が必要ですか?
A: いぼの大きさや深さ、部位、治療法によって異なります。液体窒素凍結療法の場合、1週間から2週間間隔で数回から数十回の通院が必要になることがあります。レーザー治療は1回で完了することもありますが、大きないぼや複数のいぼがある場合は複数回の治療が必要です。治療回数の目安は、診察時にお伝えします。
Q: 市販のイボコロリでいぼは治せますか?
A: イボコロリ(サリチル酸製剤)は、ウイルス性いぼに対してある程度の効果が期待できますが、いぼの大きさに合わせて正確に使用しないと周囲の正常な皮膚を傷つけてしまうことがあります。また、いぼと思っていたものが実は別の疾患だった場合、適切な治療が遅れてしまう可能性もあります。自己判断での治療は避け、皮膚科を受診することをおすすめします。
Q: いぼはがんになりますか?
A: 通常のウイルス性いぼ(尋常性疣贅など)ががん化することは基本的にありません。脂漏性角化症(老人性いぼ)も良性の腫瘍であり、がん化することはほとんどありません。ただし、いぼに見える病変の中には、稀に悪性腫瘍(皮膚がん)の初期症状が含まれていることがあります。急に大きくなる、形がいびつ、色が変わる、出血するなどの変化があれば、早めに皮膚科を受診してください。
Q: 子どもの水いぼ、プールに入っても大丈夫ですか?
A: 日本小児皮膚科学会、日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会の統一見解によると、「プールの水ではうつらないため、プールに入っても構いません」とされています。ただし、タオル、浮き輪、ビート板などを介してうつることがあるため、これらの共有は避けてください。ラッシュガードや防水絆創膏で患部を覆うことも感染予防に効果的です。
12. まとめ
いぼは日常的によく見られる皮膚の症状ですが、その原因や種類はさまざまであり、適切な診断と治療が重要です。ウイルス性いぼは放置すると周囲に広がったり、他の人にうつしたりする可能性があるため、早めの治療をおすすめします。
いぼ治療の第一選択は液体窒素凍結療法であり、保険適用で受けることができます。また、漢方薬のヨクイニンも補助的な治療として用いられています。レーザー治療など、いぼの状態に応じてさまざまな治療法を選択することが可能です。
日常生活では、皮膚の保湿を心がけ、タオルなどの共有を避けることで、ウイルス性いぼの予防につなげることができます。老人性いぼの予防には、日頃からの紫外線対策が効果的です。
いぼでお悩みの方は、自己判断で放置したり、市販薬で治療しようとしたりせず、皮膚科専門医の診察を受けることをおすすめします。正確な診断に基づいた適切な治療を受けることで、より早く、より確実にいぼを治すことができます。
アイシークリニック大宮院は、JR大宮駅東口から徒歩1分とアクセス便利な場所にあります。さいたま新都心エリアをはじめ、埼玉県内の広い範囲からご来院いただけます。いぼのことでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)- Mindsガイドラインライブラリ
- 一般公開ガイドライン|公益社団法人日本皮膚科学会
- イボとミズイボ、ウオノメとタコ─どう違うのですか?─ – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
- ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~|厚生労働省
- ヒトパピローマウイルス感染症とは|厚生労働省
- 水いぼ(みずいぼ)|日本小児皮膚科学会
- ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんワクチン(ファクトシート)|厚生労働省検疫所FORTH
- 『脂漏性角化症(老人性イボ)』の症状・原因・治療法|田辺三菱製薬|ヒフノコトサイト
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務