「最近シミが増えてきた気がする」「鏡を見るたびにシミが気になる」——このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。シミは加齢とともに目立ちやすくなり、実年齢より老けて見える原因にもなります。しかし、シミには複数の種類があり、それぞれに適した治療法が異なるため、まずは正確な診断を受けることが大切です。
本コラムでは、与野(さいたま市中央区)エリアにお住まいの方に向けて、シミの基礎知識から最新の治療法まで、美容皮膚科の観点から詳しく解説いたします。正しい知識を身につけて、透明感のある健やかな肌を目指しましょう。
目次
- シミとは?皮膚で起きているメカニズム
- シミの種類と特徴を知ろう
- シミができる原因
- 与野(さいたま市中央区)の紫外線環境と地域特性
- 自宅でできるシミの予防法
- 美容皮膚科で受けられるシミ治療
- シミの内服薬治療について
- シミの外用薬治療について
- シミ治療を受ける際の注意点
- クリニック選びのポイント
- まとめ
1. シミとは?皮膚で起きているメカニズム
シミとは、メラニン色素が皮膚に沈着して、肌の一部が茶色や褐色に変色した状態を指します。見た目は同じように見えるシミでも、実際には複数の種類があり、発生する仕組みや原因はそれぞれ異なります。
皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっています。シミに深く関係しているのは、最も外側にある表皮です。表皮はさらに角層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分かれており、シミの原因となるメラニン色素は、基底層に存在するメラノサイトという細胞で作られます。
メラニン色素は本来、紫外線から皮膚を守る役割を担っています。紫外線を浴びると、メラノサイトが刺激されてメラニンを生成し、周囲の表皮細胞に分配することで、紫外線のダメージから肌を守ろうとするのです。
通常、メラニン色素は肌のターンオーバー(新陳代謝)によって、約28日周期で古い角質とともに体外へ排出されます。しかし、紫外線を過度に浴びたり、加齢やストレスなどによってターンオーバーのサイクルが乱れると、メラニンが排出されずに皮膚内に留まってしまいます。こうして蓄積されたメラニンが、シミとなって目に見える形で現れるのです。
メラニンの生成には、チロシナーゼという酵素が深く関わっています。基底層にあるチロシンというアミノ酸が、チロシナーゼの働きによって酸化反応を受けることでメラニンへと変化します。多くの美白成分は、このチロシナーゼの働きを抑制することでメラニンの生成を防ぐ仕組みになっています。
シミは10年、20年という長い時間をかけて少しずつ形成されることが多く、若い頃に浴びた紫外線のダメージが、何年も経ってから肌の表面に現れるケースも珍しくありません。そのため、シミ対策は「できてから治す」だけでなく、「できる前に予防する」という意識が非常に重要です。
2. シミの種類と特徴を知ろう
シミと一口に言っても、その種類は多岐にわたります。治療法を誤るとシミが薄くならないばかりか、かえって悪化してしまうこともあるため、まずは自分のシミがどの種類に該当するのかを正確に把握することが大切です。
老人性色素斑(日光黒子)
老人性色素斑は、シミの中で最も多く見られるタイプです。「老人性」という名前がついていますが、20代後半から出現することもあり、早い方では30代から気になり始める方もいらっしゃいます。
紫外線を長年浴び続けることで発生するため、日光黒子とも呼ばれます。顔、手の甲、腕など、日光によくあたる部位にできやすく、茶色や褐色の境目がはっきりとした丸い平らなシミとして現れます。最初は色が薄く目立ちませんが、少しずつ濃くなり、境目がくっきりしてくるのが特徴です。
60歳以上の方には、ほぼ全員にできているといっても過言ではないほど一般的なシミです。レーザー治療や光治療で比較的改善しやすいシミの一つとされています。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、30代から50代の女性に多く見られるシミで、頬骨の上あたりに左右対称にできるのが特徴です。境目がはっきりせず、もやもやと広がったような薄茶色の色素斑として現れます。目の周りを避けて発生し、場合によっては額や口周りにも出ることがあります。
肝斑の原因は完全には解明されていませんが、女性ホルモンのバランスの乱れが大きく関係していると考えられています。妊娠中や経口避妊薬の服用中に発症したり、悪化したりするケースが多いことから、女性ホルモンとの関連が指摘されています。また、紫外線や肌への過度な摩擦、ストレスなども悪化因子として知られています。
肝斑は従来のレーザー治療では悪化する可能性があるため、治療法の選択には注意が必要です。近年はレーザートーニングやトラネキサム酸の内服など、肝斑に適した治療法が確立されています。
そばかす(雀卵斑)
そばかすは、鼻を中心に両頬や目元にかけて散らばるようにできる、直径1〜5mm程度の小さな茶色い斑点です。雀の卵の模様に似ていることから、雀卵斑とも呼ばれます。
そばかすの主な原因は遺伝的要因で、幼少期から思春期にかけて目立つようになることが多いです。色白の方に多く見られ、紫外線を浴びると色が濃くなる傾向があります。一方で、30代以降になると自然と薄くなっていく方もいらっしゃいます。
遺伝的な要因が強いため根本的な改善は難しい場合もありますが、レーザー治療や光治療で目立ちにくくすることは可能です。また、紫外線対策をしっかり行うことで、悪化を防ぐことができます。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着は、ニキビ、虫刺され、やけど、かぶれなどの皮膚の炎症が治った後に、その部位が茶色や褐色に色素沈着を起こしたものです。後天的にできるシミであり、炎症の度合いによっては長期間持続することもあります。
また、レーザー治療などの美容施術を受けた後にも、一時的に炎症後色素沈着が生じることがあります。これは「戻りシミ」とも呼ばれ、多くの場合は時間の経過とともに自然に薄くなっていきます。
炎症後色素沈着は、ターンオーバーによる自然治癒を待つのが基本ですが、なかなか消えない場合には治療を検討することもあります。紫外線を浴びると悪化するため、日焼け対策が重要です。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
ADMは、厳密にはシミではなく、後天性のアザの一種です。頬骨部や額の両側に、小さなシミが複数まとまって出現します。鼻の穴付近にも見られることがあります。
一般的なシミが表皮にメラニンを蓄積するのに対し、ADMは真皮層にメラノサイトが存在し、メラニンが増加するのが特徴です。表皮に近いものは褐色に、真皮の深い部分にあるものは灰色や青色に見えることがあります。
20代から30代に多く見られ、思春期頃から現れることもあります。遺伝的な要因が示唆されており、日本を含む東アジアの女性に多いとされています。
ADMは肝斑やそばかすと見た目が似ているため、誤診されやすいシミの一つです。治療には複数回のレーザー照射が必要となることが多く、時間はかかりますが改善が期待できます。
脂漏性角化症(老人性イボ)
脂漏性角化症は、老人性色素斑が時間の経過とともに盛り上がってできた良性腫瘍です。表面がつぶつぶとした肌色から茶色の小さなできもので、紫外線ダメージや摩擦などの蓄積が原因とされています。多発しやすい遺伝的体質も存在します。
平らなシミとは異なり、厚みがあるためレーザー治療では効果が出にくいことがあります。盛り上がりが強い場合は、炭酸ガスレーザーなどで皮膚腫瘍として治療する必要があります。
3. シミができる原因
シミの発生には、さまざまな要因が複合的に関わっています。原因を正しく理解することで、より効果的な予防や対策が可能になります。
紫外線
シミの最も大きな原因は紫外線です。紫外線には波長の長さによってUVA、UVB、UVCの3種類がありますが、地表に届いて肌に影響を与えるのは主にUVAとUVBです。
UVAは波長が長く、窓ガラスを透過して室内にも入り込みます。肌の真皮層にまで到達し、長期的に浴び続けることでシワやたるみ、シミの原因になります。UVBは波長が短くエネルギーが強力で、肌を赤くさせる炎症を引き起こし、シミやそばかす、肌の乾燥の原因となります。
紫外線は夏だけでなく、曇りの日や雨の日でも降り注いでいます。日本では特に5月から9月にかけて紫外線量が多くなりますが、年間を通じて対策が必要です。
加齢
加齢に伴い、肌のターンオーバーのサイクルは遅くなります。若い頃は約28日周期で肌が生まれ変わっていたのが、40代になると40日以上かかるようになることもあります。
ターンオーバーが遅くなると、メラニンの排出も滞りがちになり、シミとして肌に残りやすくなります。また、加齢によってメラノサイトの機能が乱れ、メラニンが過剰に生成されやすくなることも、シミが増える原因の一つです。
ホルモンバランスの乱れ
女性ホルモンのバランスの乱れは、特に肝斑の発症や悪化に関係しています。妊娠中や経口避妊薬の服用中、更年期などに肝斑が出現したり、悪化したりするケースが多く報告されています。
閉経を迎える頃になると肝斑が薄くなったり、消えたりすることもあることから、女性ホルモンとの深い関連性が示唆されています。
摩擦や刺激
肌への過度な摩擦や刺激も、シミの原因となります。洗顔やスキンケアの際にゴシゴシとこすったり、タオルで強くふいたりすることで、肌に炎症が起き、炎症後色素沈着につながることがあります。
また、肝斑は肌をこする習慣がある方に悪化しやすいことが知られています。化粧や肌の洗いすぎも原因の一つとして挙げられており、肌を優しく扱うことが重要です。
ストレス
ストレスは体内のホルモンバランスを乱し、肌のターンオーバーにも影響を与えます。また、ストレスによって活性酸素が増加し、メラニンの生成が促進されることも報告されています。
十分な睡眠をとり、適度な運動を行うなど、ストレスをためない生活習慣を心がけることが、シミ予防にもつながります。
4. 与野(さいたま市中央区)の紫外線環境と地域特性
与野エリア(現在のさいたま市中央区)は、埼玉県の南東部に位置し、浦和区と大宮区に隣接する閑静な住宅街です。2001年に浦和市、大宮市と合併してさいたま市が誕生し、2003年の政令指定都市移行に伴い、旧与野市の区域は中央区となりました。
与野の歴史は古く、鎌倉時代末期の記録に「武蔵国与野郷」として登場しています。室町時代から市場の町として栄え、江戸時代には甲州街道と奥州街道を結ぶ要衝として、多くの人と物が行き交う土地でした。
現在の中央区は、JR埼京線の北与野駅、与野本町駅、南与野駅の3駅、そしてJR京浜東北線の与野駅とさいたま新都心駅を擁し、都内へのアクセスも良好な人気のエリアです。さいたま新都心には大規模な商業施設やさいたまスーパーアリーナがあり、彩の国さいたま芸術劇場では国際的に評価の高いコンサートや舞台が催されるなど、文化・芸術の発信地としても知られています。
また、与野公園のバラ園は昭和52年(1977年)に開設され、バラは旧与野市民の花、そして現在の中央区の花にも指定されています。毎年5月と10月のバラの見頃には、多くの方がバラの観賞に訪れます。
与野エリアの紫外線環境
埼玉県は内陸に位置するため、海沿いの地域と比べると紫外線の反射は少なめですが、夏場の日差しは非常に強くなります。関東平野に位置するさいたま市は、山間部と比べて雲がかかりにくく、晴天日が多いという特徴があります。
また、与野エリアには新大宮バイパスや国道17号などの幹線道路が通っており、コンクリートやアスファルトからの照り返しにも注意が必要です。紫外線は地面からの反射によっても肌に影響を与えるため、日傘や帽子だけでなく、日焼け止めでしっかりと肌を守ることが大切です。
さらに、与野公園やその周辺の公園で屋外活動を楽しむ機会が多い方は、特に紫外線対策を意識しましょう。バラ祭りや屋外イベントの際には、長時間日光にさらされることも多いため、こまめな日焼け止めの塗り直しを心がけてください。
通勤・通学時の紫外線対策
中央区は東京都心部への通勤・通学者が多い地域です。毎日の通勤・通学時にも紫外線対策は欠かせません。朝の通勤時間帯でも紫外線は降り注いでおり、電車を待つホームでの日光や、駅から職場までの徒歩移動でも肌はダメージを受けています。
特に春から夏にかけては、通勤前に日焼け止めを塗る習慣をつけることが重要です。また、UVカット機能のある日傘や帽子を活用し、サングラスで目を守ることも効果的です。
5. 自宅でできるシミの予防法
シミは一度できてしまうとセルフケアだけで完全に消すことは難しいため、予防が非常に重要です。日常生活で実践できるシミ予防法をご紹介します。
日焼け止めの正しい使い方
シミ予防の基本は、何といっても紫外線対策です。日焼け止めは、年間を通して毎日使用することが理想的です。紫外線は曇りの日でも降り注いでおり、UVAは窓ガラスを通過するため、室内にいても対策が必要な場合があります。
日焼け止めには、SPFとPAという2つの指標があります。SPFは紫外線B波(UVB)を防ぐ効果を示し、数値が高いほど長時間効果が持続します。PAは紫外線A波(UVA)を防ぐ効果を示し、+の数が多いほど防御効果が高くなります。
日常生活ではSPF15〜30、PA++程度で十分ですが、屋外でのスポーツやレジャーの際にはSPF50、PA++++など高い数値のものを選びましょう。ただし、どんなに高い数値の日焼け止めでも、汗や皮脂で落ちてしまうため、2〜3時間おきに塗り直すことが大切です。
日焼け止めの塗り方にもポイントがあります。顔に塗る場合は、おでこ、鼻先、頬骨のあたり、あご先など、紫外線が当たりやすい突出部分にまずUV剤を置き、そこから周囲に伸ばしていくと効率的です。塗りムラがあると、その部分だけ日焼けしてしまうため、丁寧に均一に塗ることを心がけましょう。
物理的な紫外線対策
日焼け止めだけでなく、帽子、日傘、サングラスなどを併用することで、より効果的に紫外線をカットできます。
帽子は広いつばが全周にあるものがおすすめです。顔だけでなく、首の後ろや耳も日焼けしやすい部位なので、しっかりカバーしましょう。日傘は晴雨兼用のUVカット加工されたものを選ぶと便利です。
長袖や長ズボンで肌の露出を減らすことも効果的です。最近はUVカット機能付きの衣類も多く販売されていますので、活用してみてください。
適切なスキンケア
肌が乾燥しているとバリア機能が低下し、紫外線の影響を受けやすくなります。洗顔後はすぐに化粧水や乳液で保湿を行い、肌のうるおいを保ちましょう。
洗顔や体を洗う際には、肌をゴシゴシとこすらないように注意が必要です。刺激の少ない洗顔料をよく泡立て、優しくマッサージするように洗い、ぬるま湯で丁寧にすすぎましょう。タオルで肌を拭く際も、やさしく押さえるようにして水分を取ることが大切です。
ビタミンCを意識した食事
シミ予防には、体の内側からのケアも重要です。ビタミンCにはメラニンの生成を抑制する働きがあり、積極的に摂取したい栄養素の一つです。ビタミンCは野菜、フルーツ、いも類に多く含まれています。
ビタミンCは水溶性で体内に蓄積されにくいため、毎日の食事でコンスタントに摂取することが望ましいです。また、紫外線を浴びやすい時間帯の1〜2時間前に摂取すると、より効果的とも言われています。
ビタミンEには血行を促進し、抗酸化作用によって肌のターンオーバーを助ける働きがあります。ビタミンCと一緒に摂取すると相乗効果が期待できます。
生活習慣の改善
十分な睡眠をとることは、肌のターンオーバーを正常に保つために欠かせません。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、肌のダメージを修復する働きが活発になります。
また、ストレスを溜めないことも重要です。ストレスはホルモンバランスを乱し、肌のターンオーバーにも悪影響を与えます。適度な運動や趣味の時間を設けるなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
喫煙は体内のビタミンCを大量に消費し、肌の老化を促進するとされています。シミ予防の観点からも、禁煙を検討されることをおすすめします。
6. 美容皮膚科で受けられるシミ治療
セルフケアだけではなかなか改善しないシミには、美容皮膚科での治療が効果的です。シミの種類や状態に応じて、さまざまな治療法があります。
レーザー治療
レーザー治療は、シミ取りの代表的な治療法です。レーザー光がメラニン色素に反応して熱を発生させ、シミの原因となるメラニンを破壊します。
Qスイッチレーザー
Qスイッチレーザーは、ナノ秒(10億分の1秒)という短い時間でレーザーを照射する治療法です。シミの黒い細胞だけに反応して破壊するため、周囲の皮膚へのダメージを最小限に抑えられます。
老人性色素斑やそばかすなど、くっきりとしたシミに適しています。基本的に1回の治療でシミを取ることができますが、治療後5〜7日程度はかさぶたができるダウンタイムがあります。かさぶたが取れた後、一時的に炎症後色素沈着(戻りシミ)が生じることがありますが、数ヶ月から半年程度で徐々に薄くなっていきます。
ピコレーザー
ピコレーザーは、ピコ秒(1兆分の1秒)という、Qスイッチレーザーよりもさらに短い時間でレーザーを照射する最新の治療法です。熱ではなく衝撃波でメラニン色素を細かく粉砕するため、従来のレーザーよりも肌への負担が少なく、ダウンタイムも短いのが特徴です。
ピコレーザーには、シミの状態や治療目的に応じて3つの照射方法があります。
ピコスポットは、濃いシミやそばかすにピンポイントで高出力のレーザーを照射する方法です。1〜2回の治療でシミが目立たなくなることが期待できます。治療後は一時的にかさぶたができ、自然に剥がれ落ちた後に新しい皮膚が現れます。
ピコトーニングは、低出力のレーザーを肌全体に照射する方法です。メラニン色素を少しずつ分解・排出してシミやくすみを薄くしていきます。肝斑の治療にも適しており、2〜4週間に1回、10回程度の施術が目安です。ダウンタイムがほとんどなく、施術直後からメイクが可能です。
ピコフラクショナルは、ピコレーザーを点状に照射する方法で、肌の真皮層にアプローチしてシワやニキビ跡、毛穴の開きなどの改善に効果的です。コラーゲンやエラスチンの生成を促進し、肌のハリや弾力を取り戻す効果も期待できます。
レーザートーニング
レーザートーニングは、低出力のレーザーを均一に照射する治療法で、特に肝斑の治療に適しています。従来のレーザー治療では肝斑は悪化する可能性がありましたが、レーザートーニングは肌への刺激を抑えながらメラニンに働きかけるため、安全に肝斑を改善することができます。
1〜2週間に1回のペースで5〜10回程度の治療を続けることで、徐々にシミが薄くなっていきます。
光治療(IPL/フォトフェイシャル)
光治療は、IPL(Intense Pulsed Light)と呼ばれる特殊な光を肌に照射し、メラニン色素に反応させてシミを薄くする治療法です。フォトフェイシャルという名称で知られています。
レーザー治療と比較すると、痛みやダウンタイムが少ないのが特徴です。また、シミだけでなく、赤ら顔の改善や肌のハリ・弾力向上など、総合的な美肌効果も期待できます。広範囲にシミやそばかすがある方にも適しています。
3〜4週間に1回のペースで、3〜5回程度の治療が一般的です。施術直後から日常生活に戻ることができ、メイクも当日から可能な場合がほとんどです。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸を使って古い角質層を取り除き、肌のターンオーバーを促進する治療法です。メラニンの排出を促し、シミやくすみの改善に効果があります。
また、毛穴の詰まりやニキビの改善にも効果的で、肌全体のトーンアップが期待できます。2〜4週間に1回のペースで、複数回の治療を継続することで効果が実感できます。
イオン導入
イオン導入は、微弱な電流を利用して、ビタミンCやトラネキサム酸などの美白成分を肌の奥深くまで浸透させる治療法です。通常のスキンケアでは浸透しにくい成分を効率よく肌に届けることができます。
レーザー治療や光治療と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。痛みやダウンタイムがほとんどなく、気軽に受けられる治療です。
7. シミの内服薬治療について
シミの治療には、外側からのアプローチだけでなく、内服薬による体の内側からのアプローチも効果的です。美容皮膚科では、シミの改善や予防のためにいくつかの内服薬が処方されています。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、もともと止血剤や抗炎症剤として使用されてきた成分ですが、シミ、特に肝斑の治療に効果があることが認められています。2002年には厚生労働省から美白成分として認可を受けました。
トラネキサム酸には抗プラスミン作用があり、メラノサイトを活性化するプラスミンの働きを抑制することで、メラニンの過剰な生成を防ぎます。肝斑治療の第一選択薬として位置づけられており、そばかすや炎症後色素沈着にも効果が期待できます。
通常、1日2〜3回、数ヶ月継続して服用します。効果を実感するまでには1〜2ヶ月程度かかることが多いですが、くすみの改善や肌のトーンアップ効果も期待できます。
ただし、止血作用があるため、血栓症の既往がある方、妊娠中の方、経口避妊薬を服用中の方は使用できない場合があります。服用前には必ず医師に相談しましょう。
ビタミンC(シナール)
ビタミンC(アスコルビン酸)は、メラニンの生成に関わるチロシナーゼの活性を阻害し、メラニンの合成を抑制する効果があります。また、すでに作られたメラニンを還元して薄くする働きも持っています。
医療機関で処方されるシナールは、ビタミンCに加えてパントテン酸(ビタミンB5)が配合されており、ビタミンCの吸収を助ける働きがあります。
ビタミンCは抗酸化作用にも優れており、紫外線によって発生する活性酸素から肌を守ります。さらに、コラーゲンの生成を助ける働きもあるため、肌のハリや弾力の維持にも効果的です。
水溶性ビタミンであるため体内に蓄積されにくく、過剰摂取による副作用の心配が少ないのも特徴です。ただし、体質によってはお腹がゆるくなることがあります。
ビタミンE(ユベラ)
ビタミンEには血行促進作用と抗酸化作用があり、肌のターンオーバーを高めてメラニンの排出を促進します。ビタミンCと併用することで相乗効果が得られ、シミや色素沈着の改善効果が高まります。
また、血液の流れを良くすることで、目の下のくまの改善にも効果が期待できます。
L-システイン(ハイチオール)
L-システインは、肌のターンオーバーを正常化し、メラニンの排出を促進する効果があります。また、メラニンの生成を抑制する働きもあり、シミ、そばかす、日焼けによる色素沈着などの改善に使用されます。
内服薬治療のポイント
内服薬によるシミ治療は、即効性があるわけではありません。効果を実感するまでには通常2〜3ヶ月程度かかるため、継続して服用することが重要です。
また、内服薬だけでシミを完全に消すことは難しく、レーザー治療や光治療と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。シミ治療後の再発予防としても、内服薬の継続は有効です。
市販のサプリメントと医療機関で処方される医薬品では、成分の濃度や配合が異なります。効果を確実に得たい方は、医師の診察を受けて処方薬を使用することをおすすめします。
8. シミの外用薬治療について
シミの治療には、外用薬(塗り薬)も重要な役割を果たします。肌に直接塗布することで、メラニンの生成を抑制したり、ターンオーバーを促進したりして、シミの改善を目指します。
ハイドロキノン
ハイドロキノンは「肌の漂白剤」とも呼ばれる強力な美白成分で、シミ治療の外用薬として広く使用されています。イチゴやコーヒー、紅茶などにも天然に存在する成分です。
ハイドロキノンには2つの主な働きがあります。一つは、メラニンの生成に関わるチロシナーゼの活性を阻害し、新たなメラニンが作られるのを防ぐこと。もう一つは、メラノサイト(色素細胞)そのものの働きを抑制することです。これにより、シミの予防と改善の両方にアプローチできます。
ハイドロキノンの美白効果は、ビタミンCやアルブチンなど他の美白成分の10〜100倍とも言われています。特に老人性色素斑、肝斑、炎症後色素沈着(ニキビ跡など)に効果的です。
使用方法は、1日1回、夜の洗顔後に気になるシミの部分にピンポイントで塗布するのが基本です。効果を実感するまでには2〜3ヶ月程度かかることが多いです。
ただし、ハイドロキノンにはいくつかの注意点があります。使用中は紫外線の影響を受けやすくなるため、日焼け止めによる紫外線対策が必須です。また、長期間の連続使用は白斑(肌の一部が白くなる)のリスクがあるため、3ヶ月程度使用したら休薬期間を設けることが推奨されています。
肌が赤くなったり、かゆみを感じたりする場合は使用を中止し、医師に相談してください。また、妊娠中・授乳中の使用は一般的に推奨されていません。
医療機関で処方されるハイドロキノンは4〜5%程度の濃度であることが多く、市販品よりも高い効果が期待できます。一方で、市販品は濃度が低く抑えられているため、初めての方や肌が敏感な方でも比較的使用しやすくなっています。
トレチノイン
トレチノインはビタミンA誘導体の一種で、肌のターンオーバーを強力に促進する効果があります。古い角質を剥がし、メラニンを含んだ表皮細胞の排出を早めることで、シミを改善します。
トレチノインはハイドロキノンと併用することで、より高い効果を発揮します。トレチノインで角質を剥がしながら、ハイドロキノンでメラニンの生成を抑制するという組み合わせは、シミ治療の定番とも言える方法です。
使用方法は、洗顔後にまずトレチノインをシミの部分に薄く塗布し、10〜15分ほど浸透させた後、ハイドロキノンをやや広めに塗布します。
トレチノインは効果が強力な分、肌への刺激も強いのが特徴です。使用開始後に皮むけ、赤み、ヒリヒリ感などの反応が出ることがありますが、これは薬が効いている証拠でもあります。ただし、反応が強すぎる場合は使用頻度を減らすなど、医師と相談しながら調整することが重要です。
トレチノインも紫外線の影響を受けやすくするため、日焼け止めは必須です。また、妊娠中の使用は禁忌とされています。
ビタミンC誘導体
ビタミンC誘導体は、ビタミンCの肌への浸透性を高めた成分です。チロシナーゼの活性を阻害してメラニンの生成を抑制するとともに、すでに作られたメラニンを還元する働きがあります。
ハイドロキノンほど強力ではありませんが、肌への刺激が少なく、長期間安全に使用できるのがメリットです。美白化粧品にも広く配合されている成分で、日常的なスキンケアに取り入れやすいのも特徴です。
外用薬治療のポイント
外用薬によるシミ治療は、継続が大切です。塗り始めてすぐに効果が出るわけではなく、数ヶ月単位で続けることで徐々に改善が見られます。
また、外用薬を使用している間は、紫外線対策を怠らないことが非常に重要です。紫外線を浴びるとシミが悪化したり、新たなシミができたりする可能性があります。
医療機関で処方される外用薬は、市販品よりも高濃度で効果が高い反面、副作用のリスクもあります。必ず医師の指示に従って使用し、異常を感じた場合はすぐに相談するようにしましょう。
9. シミ治療を受ける際の注意点
シミ治療を受ける際には、いくつかの重要な注意点があります。安全で効果的な治療を受けるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
正確な診断の重要性
シミには複数の種類があり、それぞれに適した治療法が異なります。治療法を誤ると、シミが改善しないばかりか、かえって悪化してしまうこともあります。特に肝斑は、通常のレーザー治療で悪化する可能性があるため、注意が必要です。
また、シミに見えて実は皮膚がんが隠れているケースもあります。シミが急に大きくなった、形が不規則になった、色むらがあるなどの場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
治療を始める前に、自分のシミがどの種類なのかを正確に診断してもらうことが、最も重要なステップです。シミ治療に精通した医師のもとで診察を受けることをおすすめします。
治療後の紫外線対策
シミ治療後の肌は非常にデリケートな状態になっています。レーザー治療後や外用薬使用中は、紫外線の影響を受けやすくなるため、日焼け止めによる紫外線対策は必須です。
治療後に紫外線を浴びると、シミの再発や悪化、炎症後色素沈着(戻りシミ)を引き起こす可能性があります。治療効果を最大限に発揮するためにも、紫外線対策を怠らないようにしましょう。
シミ治療は紫外線の少ない秋から春先にかけて行うのが理想的とも言われていますが、適切なケアを行えば季節を問わず治療は可能です。
複数回の治療が必要な場合がある
シミの種類や状態によっては、1回の治療で完全に消えないこともあります。特にピコトーニングやレーザートーニング、光治療などは、複数回の施術を重ねることで効果を発揮する治療法です。
ADMや深い位置にあるシミなども、複数回のレーザー治療が必要になることが多いです。治療開始前に、およその治療回数や期間、費用について医師と十分に相談しておきましょう。
炎症後色素沈着(戻りシミ)について
レーザー治療後、一時的にシミが濃くなったように見える「炎症後色素沈着」が生じることがあります。これは治療によって起きた炎症に対する反応で、もともとあったシミとは別のものです。
炎症後色素沈着は通常、1ヶ月をピークに濃くなり、その後は徐々に薄くなっていきます。数ヶ月から半年程度で消えていくことがほとんどですが、焦って追加の治療を行うと悪化することがあるため、医師の指示に従って経過を見守ることが大切です。
ダウンタイムについて
治療法によって、施術後のダウンタイム(日常生活に戻るまでの期間)は異なります。
Qスイッチレーザーやピコスポットでは、治療後に一時的にかさぶたができ、5〜7日程度で自然に剥がれ落ちます。この期間は保護テープを貼ることもあります。
ピコトーニングや光治療では、施術後に軽い赤みやほてりが出ることがありますが、数時間で治まることが多く、当日からメイクが可能な場合がほとんどです。
仕事や予定に合わせて、適切な治療法を選択することも重要です。
生活習慣の改善
治療を受けるだけでなく、日常生活でのケアも重要です。紫外線対策、適切なスキンケア、バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレス管理など、生活習慣を整えることで、治療効果を高め、シミの再発を防ぐことができます。
10. クリニック選びのポイント
シミ治療を受けるクリニックを選ぶ際には、いくつかのポイントをチェックしましょう。
皮膚科専門医・経験豊富な医師がいるか
シミの正確な診断と適切な治療のためには、皮膚科の専門知識と経験が必要です。皮膚科専門医の資格を持つ医師が在籍しているか、シミ治療の経験が豊富かどうかを確認しましょう。
カウンセリングが丁寧か
治療前のカウンセリングで、シミの種類や治療法、期待できる効果、リスク、費用などについて丁寧に説明してくれるクリニックを選びましょう。患者の悩みや希望をしっかり聞いてくれるかどうかも重要なポイントです。
複数の治療法に対応しているか
シミにはさまざまな種類があり、最適な治療法も異なります。レーザー治療、光治療、内服薬、外用薬など、複数の治療オプションを持っているクリニックであれば、自分のシミに合った治療を受けやすくなります。
アクセスの良さ
シミ治療は複数回の通院が必要になることも多いため、通いやすい場所にあるクリニックを選ぶことも大切です。
与野エリアにお住まいの方は、JR埼京線やJR京浜東北線で大宮駅周辺のクリニックにアクセスしやすい環境にあります。仕事帰りや休日に通院しやすいクリニックを選ぶと、治療を継続しやすくなります。
アフターケアが充実しているか
治療後のアフターケアがしっかりしているかどうかも、クリニック選びの重要なポイントです。治療後に何か問題があったときに相談できる体制が整っているか確認しましょう。

11. まとめ
シミは多くの方が悩む肌トラブルの一つですが、正しい知識を持ち、適切な治療を受けることで改善が期待できます。
本コラムで解説したポイントを整理すると、以下のようになります。
シミにはさまざまな種類があり、老人性色素斑、肝斑、そばかす、炎症後色素沈着、ADM、脂漏性角化症など、それぞれ原因や特徴が異なります。治療法を誤ると悪化することもあるため、まずは正確な診断を受けることが大切です。
シミの主な原因は紫外線であり、年間を通じた紫外線対策がシミ予防の基本です。日焼け止めを正しく使用し、帽子や日傘なども活用しましょう。また、加齢やホルモンバランスの乱れ、摩擦、ストレスなども原因となるため、生活習慣の改善も重要です。
美容皮膚科では、レーザー治療(Qスイッチレーザー、ピコレーザー、レーザートーニング)、光治療(IPL)、ケミカルピーリング、イオン導入など、さまざまな治療法が用意されています。また、トラネキサム酸やビタミンCなどの内服薬、ハイドロキノンやトレチノインなどの外用薬も、シミ治療に効果的です。
治療を受ける際には、治療後の紫外線対策を徹底し、医師の指示に従ってケアを続けることが大切です。複数回の治療が必要な場合もありますので、焦らず継続することが改善への近道です。
与野(さいたま市中央区)にお住まいの方も、大宮駅周辺の美容皮膚科へのアクセスは良好です。シミでお悩みの方は、まずは専門医のカウンセリングを受けて、ご自身に合った治療法を見つけてください。
透明感のある健やかな肌を手に入れるために、正しいケアと適切な治療で、シミのない美しい肌を目指しましょう。
参考文献
- 紫外線環境保健マニュアル2020 | 環境省
- シミの予防 | くすりと健康の情報局(第一三共ヘルスケア)
- 日焼け・シミ・そばかす | 大正製薬 大正健康ナビ
- シミの症状・原因・対策を美容皮膚科医が解説 | アラガン・エステティックス・ビューティー
- ピコレーザーとは?肝斑などのシミへの効果を美容皮膚科医が解説 | アラガン・エステティックス・ビューティー
- ハイドロキノンとは?ハイドロキノンの効果と正しい使い方を解説 | 日比谷ヒフ科クリニック
- 中央区の歴史、沿革 | さいたま市
- 与野市 | Wikipedia
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務