突然の嘔吐や下痢に見舞われる胃腸風邪は、家族や周囲の人にうつらないか心配になる感染症です。特に小さなお子さんや高齢者がいるご家庭では、感染拡大を防ぐための正しい知識が欠かせません。胃腸風邪の原因となるウイルスは非常に感染力が強く、症状が治まった後も一定期間は周囲にうつる可能性があります。この記事では、胃腸風邪がうつる期間や感染経路、効果的な予防法について詳しく解説します。
目次
- 胃腸風邪とは?原因ウイルスの種類と特徴
- 胃腸風邪がうつる期間はどのくらい?
- 胃腸風邪の感染経路と広がり方
- 胃腸風邪の主な症状と経過
- 胃腸風邪の治療法と自宅でのケア
- 家庭内感染を防ぐための予防法
- 胃腸風邪で病院を受診すべきタイミング
- 胃腸風邪と細菌性胃腸炎の違い
- よくある質問
- まとめ
🦠 胃腸風邪とは?原因ウイルスの種類と特徴
胃腸風邪は正式には「感染性胃腸炎」や「ウイルス性胃腸炎」と呼ばれる病気です。ウイルスが胃や腸に感染することで、嘔吐や下痢、腹痛などの症状を引き起こします。風邪という名前がついていますが、一般的な風邪(上気道炎)とは異なり、主に消化器系に症状が現れるのが特徴です。
🔹 ノロウイルス
ノロウイルスは胃腸風邪の原因として最も多いウイルスの一つです。
- 冬季(11月〜3月頃)に流行のピークを迎える
- 少量のウイルス(10〜100個程度)でも感染が成立するほど感染力が非常に強い
- 感染者の便1グラム中には1億個以上、嘔吐物1グラム中にも100万個以上のウイルスが含まれる
- 多くの遺伝子型があり、一度感染しても別の型に再び感染する可能性がある
🔹 ロタウイルス
ロタウイルスは主に乳幼児(生後6か月〜2歳頃)に感染しやすいウイルスです。
- 冬から春にかけて流行
- 激しい水様性の下痢と嘔吐が特徴
- 便が白っぽくなることもある
- 乳幼児では重症化しやすく、脱水症状を起こしやすい
- 現在は任意接種でワクチンが利用可能
- 5歳までにほぼすべての子どもが一度は感染する
🔹 アデノウイルス
アデノウイルスは一年を通じて感染が見られるウイルスです。
- 胃腸炎を引き起こすのは主に40型と41型
- 症状は比較的軽いことが多い
- 下痢が1〜2週間と長引く傾向がある
- 咽頭炎や結膜炎(プール熱)なども引き起こすことがある
🔹 サポウイルス・アストロウイルス
サポウイルスやアストロウイルスも胃腸風邪の原因となりますが、ノロウイルスやロタウイルスと比較すると頻度は低めです。これらのウイルスによる胃腸炎は症状が比較的軽いことが多く、数日で回復するケースがほとんどです。ただし、高齢者施設などでの集団感染の報告もあり、免疫力が低下している方では注意が必要です。
⏰ 胃腸風邪がうつる期間はどのくらい?
胃腸風邪がうつる期間を正確に把握することは、家庭内や職場での感染拡大を防ぐために非常に重要です。ウイルスの種類によって感染力を持つ期間が異なるため、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
🕐 潜伏期間とは
潜伏期間とは、ウイルスに感染してから症状が出るまでの期間のことです。この潜伏期間中にもウイルスは体内で増殖しており、症状が出る前から周囲にうつす可能性があります。
- ノロウイルス:12〜48時間(平均24〜48時間)
- ロタウイルス:1〜3日
- アデノウイルス:3〜10日程度
🚨 症状がある間の感染リスク
嘔吐や下痢などの症状がある間は、最も感染力が強い時期です。便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれており、直接触れることはもちろん、飛沫や汚染された物を介して簡単に感染が広がります。
症状がある間は以下の点に注意が必要です:
- 可能な限り自宅で安静にする
- 家族との接触を最小限に抑える
- トイレの共有や食器の共有を避ける
⚠️ 症状回復後もウイルスは排出される
多くの方が見落としがちな点ですが、胃腸風邪の症状が治まった後もウイルスは便中に排出され続けます。
- ノロウイルス:症状回復後も1〜3週間程度(長い場合は1か月以上)
- ロタウイルス:症状消失後10日〜1か月程度
このため、症状が改善しても手洗いなどの感染対策を継続することが非常に大切です。
📊 ウイルス別の感染可能期間一覧
各ウイルスの感染可能期間をまとめると以下のようになります:
- ノロウイルス:発症前日〜症状回復後3週間程度
- ロタウイルス:発症2日前〜症状回復後10日〜1か月程度
- アデノウイルス:発症前〜症状回復後2週間程度
特にノロウイルスは環境中での生存力も高く、乾燥した場所でも数週間生存できるため、汚染された場所からの二次感染にも注意が必要です。
🔄 胃腸風邪の感染経路と広がり方
胃腸風邪のウイルスがどのようにして人から人へ広がるのかを理解することで、効果的な予防対策を取ることができます。主な感染経路について詳しく見ていきましょう。
👋 接触感染
接触感染は胃腸風邪の最も主要な感染経路です。
直接接触:感染者の便や嘔吐物に直接触れた手で、口や顔を触ることでウイルスが体内に入ります。
間接接触:感染者が触れた以下の物を介して間接的に感染することもあります:
- ドアノブ
- トイレの便座
- 蛇口
- リモコン
- スマートフォン
ノロウイルスはごく少量で感染が成立するため、目に見えない程度のウイルスが付着した物に触れただけでも感染する可能性があります。
💨 飛沫感染・空気感染
嘔吐時に飛び散った飛沫を吸い込んだり、乾燥した嘔吐物から空気中に舞い上がったウイルスを吸い込んだりすることで感染することがあります。
これは「塵埃感染」とも呼ばれ、以下の場合に起こりやすいです:
- 嘔吐物の処理が不十分な場合
- 嘔吐物が乾燥してしまった場合
- 適切な換気が行われていない場合
そのため、嘔吐物は乾燥する前に速やかに適切な方法で処理することが重要です。
🍽️ 経口感染(食品・水を介した感染)
ウイルスに汚染された食品や水を摂取することで感染する経路です。
食品からの感染例:
- 二枚貝(牡蠣、アサリなど)の生食や加熱不十分
- 感染した調理従事者の手を介して汚染された食品
- 汚染された水を使用した食品
食品からの感染は集団食中毒の形で発生することも多いため、飲食店や学校給食などでは特に注意が必要です。
🏠 家庭内感染が起こりやすい理由
胃腸風邪は家庭内で広がりやすい特徴があります。その理由として以下が挙げられます:
- 狭い空間で生活を共にすることで接触の機会が多い
- トイレや洗面所などを共有する
- 食事を一緒にとる
- 乳幼児のおむつ交換や高齢者の排泄介助での接触
- 嘔吐や下痢の処理を家族が行う
家庭内の一人が発症すると、数日以内に家族全員が次々と発症するケースも珍しくありません。
🩺 胃腸風邪の主な症状と経過
胃腸風邪にかかるとどのような症状が現れ、どのような経過をたどるのかを知っておくと、適切な対処ができるようになります。ウイルスの種類によって症状に若干の違いがありますが、共通する特徴も多くあります。
🤢 典型的な症状
胃腸風邪の典型的な症状には以下があります:
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 吐き気
- 発熱
- 倦怠感
ウイルス別の特徴:
- ノロウイルス:嘔吐が強く出ることが多く、突然の激しい嘔吐で始まる
- ロタウイルス:水様性の激しい下痢が主症状、白色便(米のとぎ汁のような便)が見られることもある
- 発熱:37〜38度台の軽度から中等度であることが多いが、ロタウイルスでは39度以上の高熱が出ることもある
📈 症状の経過と回復までの期間
胃腸風邪の症状は、多くの場合1〜3日程度で自然に軽快します。
- ノロウイルス:嘔吐は1〜2日で治まることが多く、下痢も数日でおさまる
- ロタウイルス:下痢がやや長引く傾向があり、3〜8日程度続くことがある
- アデノウイルス:下痢が1〜2週間程度続くことがある
通常は特別な治療をしなくても自然に回復しますが、脱水に対する対応は重要です。
💧 脱水症状に注意
胃腸風邪で最も注意すべき合併症は脱水症状です。嘔吐と下痢によって体内の水分と電解質が急速に失われるため、適切な水分補給ができないと脱水が進行します。
脱水の症状:
初期症状:
- 口の渇き
- 尿量の減少
- 尿の色が濃くなる
- めまい
- 頭痛
重度の症状:
- 皮膚の弾力低下
- 目のくぼみ
- 意識障害
特に乳幼児と高齢者は脱水になりやすく、重症化しやすいため注意が必要です。
👶 年齢による症状の違い
胃腸風邪の症状は年齢によって異なる特徴があります。
乳幼児:
- 機嫌が悪い
- ぐったりする
- 母乳やミルクを飲まない
- 体の水分含有量が高いため脱水になりやすい
- 症状が急速に悪化することがある
高齢者:
- 症状が典型的でないこともある
- 食欲低下や軽度の倦怠感のみで経過することもある
- 基礎疾患がある場合や免疫力が低下している場合は重症化のリスクが高い
- 誤嚥性肺炎などの二次的な合併症に注意が必要
💊 胃腸風邪の治療法と自宅でのケア
胃腸風邪には特効薬がなく、基本的には対症療法と十分な休養で回復を待つことになります。適切なホームケアを行うことで、症状を和らげ、回復を早めることができます。
💧 水分と電解質の補給
胃腸風邪のケアで最も重要なのは、脱水を防ぐための適切な水分補給です。
推奨される飲み物:
- 経口補水液(OS-1など):水分と電解質のバランスが調整されており、脱水予防に最適
- スポーツドリンク:糖分が多く電解質が少ないため、水で薄めるか経口補水液と併用
摂取のコツ:
- 嘔吐がひどい場合は、一度に大量に飲まない
- 少量(スプーン1杯程度)をこまめに摂取
- 冷たすぎない温度で摂取
🍚 食事の摂り方
嘔吐がある間は無理に食事を摂る必要はありません。嘔吐が治まり、少し食欲が出てきたら、消化のよい食べ物から少しずつ再開しましょう。
おすすめの食べ物:
- おかゆ
- うどん
- 食パン
- バナナ
- りんごのすりおろし
避けた方がよいもの:
- 脂っこいもの
- 香辛料が強いもの
- 乳製品
- カフェイン
- アルコール
少量ずつ食べ、様子を見ながら徐々に通常の食事に戻していきます。
💊 薬物療法
胃腸風邪のウイルスに直接効く薬はありませんが、症状を和らげるための薬が使われることがあります。
- 制吐剤:強い嘔吐を抑えるために処方
- 整腸剤:腸内環境を整えるために処方
- 解熱鎮痛剤:発熱や痛みに対してアセトアミノフェンなどを使用
注意点:
- 下痢止め:ウイルスを体外に排出する働きを妨げる可能性があるため、医師の判断なく使用することは避ける
- いずれの薬も、医師や薬剤師に相談してから使用することを推奨
なお、胃腸風邪の症状が長引く場合や、解熱鎮痛剤の選択について詳しく知りたい方は、医師にご相談ください。
😴 安静と休養
胃腸風邪からの回復には十分な休養が欠かせません。
- 体力を消耗しないよう、症状がある間は無理をせず安静に過ごす
- 仕事や学校は、少なくとも症状が治まるまでは休む
- 症状が改善しても、しばらくは激しい運動や重労働は避ける
- 体調を見ながら徐々に活動量を戻す
🛡️ 家庭内感染を防ぐための予防法
胃腸風邪のウイルスは非常に感染力が強いため、家庭内で一人が発症すると家族への感染を完全に防ぐことは難しいですが、適切な予防策を講じることで感染リスクを大幅に減らすことができます。
🧼 正しい手洗いの方法
手洗いは胃腸風邪の予防において最も基本的かつ重要な対策です。ノロウイルスはアルコール消毒が効きにくいため、流水と石鹸による手洗いが最も効果的です。
手洗いの手順:
- 手のひらをしっかり洗う
- 手の甲を洗う
- 指の間を洗う
- 爪の周りを洗う
- 親指を洗う
- 手首まで洗う
重要なタイミング:
- トイレの後
- おむつ交換の後
- 嘔吐物や便の処理後
- 調理前
- 食事前
30秒以上かけて丁寧に行い、手洗い後は清潔なタオルやペーパータオルで水分をしっかり拭き取ります。
🧽 嘔吐物・便の正しい処理方法
嘔吐物や便の処理は感染予防において非常に重要なポイントです。
処理の手順:
- 使い捨ての手袋とマスクを着用
- 嘔吐物をペーパータオルなどで外側から内側に向かって拭き取る
- ビニール袋に密封して廃棄
- 汚染された場所を次亜塩素酸ナトリウムで拭き取り消毒
- 処理後は必ず手洗いを行う
- 使用した手袋やマスクは適切に廃棄
カーペットや布製品の場合:
- 85度以上で1分以上のスチームクリーニングが有効
🧪 消毒液の作り方と使い方
ノロウイルスの消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効です。家庭用の塩素系漂白剤(ハイターなど、濃度約5%のもの)を使って消毒液を作ることができます。
消毒液の濃度:
- 嘔吐物などの処理用:約0.1%(1000ppm)
- 日常的な消毒用:約0.02%(200ppm)
消毒液の作り方:
- 1000ppm:水500mlに対して塩素系漂白剤10ml(ペットボトルのキャップ2杯程度)
- 200ppm:水500mlに対して2ml(キャップ半分弱)
注意点:
- 消毒液は作り置きせず、その都度作って使用
- 金属には腐食作用があるため、消毒後は水拭きを行う
- 換気を十分に行う
🚽 トイレ・洗面所の衛生管理
トイレと洗面所は胃腸風邪のウイルスが最も広がりやすい場所です。
消毒箇所:
- 便座
- 水洗レバー
- ドアノブ
- 蛇口
対策:
- 可能であれば感染者専用のトイレを設ける
- 感染者の使用後は毎回消毒
- タオルは共用せず、使い捨てのペーパータオルを使用
- 個人ごとにタオルを分ける
- 便座のふたを閉めてから水を流す
🧺 寝具・衣類の洗濯方法
嘔吐物や便で汚れた寝具や衣類は、他の洗濯物と分けて洗濯する必要があります。
洗濯の手順:
- 付着した汚物をできるだけ取り除く
- ビニール袋に入れて密封
- 次亜塩素酸ナトリウムでつけ置き消毒
- または85度以上の熱水で1分以上洗濯
- 十分に乾燥させる
追加の対策:
- 色落ちが心配な場合は、高温での乾燥機使用も有効
- 洗濯後は空の状態で一度洗濯機を運転
🍳 調理時の注意点
胃腸風邪の感染者は、症状がある間は調理を担当しないことが望ましいです。
調理時の注意:
- 症状回復後も少なくとも数日間は調理を控える
- 調理前の手洗いを徹底
- 生野菜はよく洗って使用
- 食品は中心部まで85〜90度以上で90秒以上加熱
- 特に二枚貝は十分に加熱
- 調理器具を清潔に保つ
- まな板や包丁は肉魚用と野菜用を分けて使用
🏥 胃腸風邪で病院を受診すべきタイミング
胃腸風邪は多くの場合、自宅での安静と水分補給で数日のうちに回復します。しかし、一部のケースでは医療機関での診察や治療が必要になることがあります。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
💧 脱水症状が疑われる場合
以下の症状が見られる場合は、点滴による水分補給が必要になることがあります:
- 経口での水分摂取が困難
- 強い口渇
- 尿量の著しい減少
- 尿の色が濃い
- めまい、ふらつき
- 嘔吐が激しく、飲んだ水分をすべて吐いてしまう状態が続く
⏰ 症状が長引く場合
通常、胃腸風邪の症状は1〜3日程度で改善に向かいます。以下の場合は他の病気の可能性も考えられるため、医師に相談することをおすすめします:
- 嘔吐が2日以上続く
- 下痢が1週間以上続く
- 発熱が3日以上続く
- 一度良くなった後に再び症状が悪化
また、胃腸風邪に似た症状でも、機能性ディスペプシアなどの他の疾患の可能性もあるため、症状が続く場合は医師の診察を受けることが大切です。
🩸 血便・激しい腹痛がある場合
以下の症状がある場合は速やかに医療機関を受診してください:
- 便に血が混じっている(血便・黒色便)
- 激しい腹痛が続く
- 嘔吐物に血が混じっている
これらは単純なウイルス性胃腸炎ではなく、細菌性胃腸炎や他の消化器疾患の可能性があります。
👶👴 乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方
以下に該当する方は胃腸風邪が重症化しやすいリスクがあります:
- 乳幼児(特に生後3か月未満の赤ちゃん)
- 高齢者
- 免疫力が低下している方
- 糖尿病・腎臓病・心臓病などの基礎疾患がある方
乳幼児の受診目安:
- ぐったりしている
- 機嫌が悪い
- 母乳やミルクを飲まない
- おしっこの回数が極端に少ない
🚨 意識がもうろうとしている場合
以下の症状は緊急事態です。すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください:
- 意識がもうろうとしている
- 呼びかけに反応が鈍い
- けいれんを起こしている
重度の脱水やその他の合併症の可能性があり、速やかな治療が必要です。
🔬 胃腸風邪と細菌性胃腸炎の違い
胃腸炎には大きく分けてウイルス性と細菌性があり、原因によって症状や治療法が異なります。胃腸風邪(ウイルス性胃腸炎)と細菌性胃腸炎の違いを理解しておくことで、適切な対応ができるようになります。
🦠 原因の違い
胃腸風邪(ウイルス性):
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- アデノウイルス
細菌性胃腸炎:
- サルモネラ菌
- カンピロバクター
- 病原性大腸菌(O157など)
- 腸炎ビブリオ
- 黄色ブドウ球菌
細菌性胃腸炎は、十分に加熱されていない肉(特に鶏肉)、卵、魚介類などの食品を介して感染することが多いです。
🤒 症状の違い
| 項目 | ウイルス性胃腸炎 | 細菌性胃腸炎 |
|---|---|---|
| 主症状 | 嘔吐が主症状 | 下痢が主症状 |
| 便の性状 | 水様便が多い | 血便や粘血便が見られることがある |
| 腹痛 | 軽度〜中等度 | 強い腹痛 |
| 発熱 | 軽度〜中等度 | 高熱になることが多い |
ただし、症状だけで両者を完全に区別することは難しく、正確な診断には医師の診察や検査が必要です。
💊 治療の違い
ウイルス性胃腸炎:
- 特効薬がなく、対症療法と水分補給が中心
- 自然回復を待つ
細菌性胃腸炎:
- 原因菌によっては抗生物質(抗菌薬)による治療が有効
- ただし、すべての細菌性胃腸炎に抗生物質が必要なわけではない
- 医師の判断により投与の有無が決定
下痢止めの使用についても、細菌やその毒素を体外に排出する働きを妨げる可能性があるため、医師の指示に従うことが重要です。
🛡️ 感染経路と予防法の違い
ウイルス性胃腸炎:
- 主な感染経路:人から人への接触感染
- 予防法:手洗いや環境消毒が重要
細菌性胃腸炎:
- 主な感染経路:汚染された食品の摂取(食中毒)
- 予防法:食品の適切な加熱調理、保存温度の管理、調理器具の衛生管理
どちらの予防にも手洗いは基本的かつ効果的な対策です。

❓ よくある質問
胃腸風邪の場合、嘔吐や下痢などの症状がある間は自宅で安静にすることが基本です。一般的には症状が治まってから最低24〜48時間は自宅で過ごし、食事が普通に摂れるようになってから復帰することが望ましいです。ただし、症状が治まった後もウイルスは便から排出され続けるため、復帰後も手洗いを徹底することが重要です。学校や保育園の出席停止期間については施設の規定を確認してください。
同じ部屋で過ごすこと自体が直接感染につながるわけではありませんが、接触機会が増えるため感染リスクは高まります。可能であれば感染者は別室で休養し、接触を最小限にすることが望ましいです。同じ部屋で過ごす場合は、定期的な換気を行い、感染者の使用したものには触れないよう注意しましょう。マスクの着用も飛沫感染予防に有効です。トイレや洗面所の共有は避けられない場合が多いため、使用後の消毒と手洗いを徹底してください。
ノロウイルスに対しては一般的なアルコール消毒剤の効果は限定的です。ノロウイルスはエンベロープ(脂質の膜)を持たないウイルスのため、アルコールによる不活化が難しいとされています。そのため、ノロウイルス対策には次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)による消毒が推奨されます。手指消毒においては、アルコールよりも流水と石鹸による丁寧な手洗いが最も効果的です。ロタウイルスに対してはアルコールは一定の効果がありますが、やはり手洗いが基本となります。
ノロウイルスに対するワクチンは現時点で実用化されていません。一方、ロタウイルスに対しては経口生ワクチンが開発されており、日本では任意接種として受けることができます。ロタウイルスワクチンは生後6週から接種を開始し、2回または3回(ワクチンの種類による)の接種で完了します。接種可能な時期が限られているため、接種を希望される場合は早めにかかりつけ医に相談してください。ワクチン接種により、ロタウイルス胃腸炎の重症化を予防する効果が期待できます。
症状がひどい時期は入浴は控えた方がよいでしょう。嘔吐や下痢で体力を消耗しているため、入浴によってさらに疲労する可能性があります。また、脱水状態での入浴は危険です。症状が落ち着いてきたら、シャワーなど短時間の入浴から再開するとよいでしょう。家族への感染を防ぐため、感染者は最後に入浴し、浴槽のお湯は共有しないことをおすすめします。入浴後は浴室をよく換気し、使用したタオルは別にして洗濯してください。
胃腸風邪の主な感染経路は接触感染と経口感染であり、空気感染(飛沫核感染)は主要な感染経路ではありません。ただし、嘔吐時の飛沫を吸い込んだり、乾燥した嘔吐物から舞い上がったウイルスを吸い込んだりすることで感染することがあります。これは厳密には空気感染ではなく飛沫感染や塵埃感染と呼ばれます。嘔吐物の適切な処理と換気を行うことで、このような感染リスクを減らすことができます。
📝 まとめ
胃腸風邪は非常に感染力の強いウイルス性の感染症で、家庭内や集団生活の場で容易に広がります。感染力が最も高いのは症状がある間ですが、症状が治まった後も数週間にわたってウイルスが便中に排出され続けるため、周囲への感染リスクは持続します。
感染期間の目安:
- ノロウイルス:症状回復後も1〜3週間程度
- ロタウイルス:10日〜1か月程度
これらの期間はウイルス排出が続くことを念頭に置き、手洗いなどの感染対策を継続することが大切です。
家庭内感染予防のポイント:
- 正しい手洗いの徹底
- 嘔吐物や便の適切な処理
- 次亜塩素酸ナトリウムによる消毒
- トイレや洗面所の衛生管理
- 感染者の個室での安静
- 食器やタオルの共有を避ける
胃腸風邪の多くは数日で自然に回復しますが、以下の場合は医療機関を受診してください:
- 脱水症状
- 症状の長期化
- 血便
- 激しい腹痛
特に乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方は重症化のリスクがあるため、早めの受診をおすすめします。また、胃腸風邪と似た症状を示すインフルエンザや風邪との鑑別も重要です。
📚 参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
胃腸風邪の感染性について患者さんからよく質問を受けますが、特に注意していただきたいのは症状が改善した後もウイルスの排出が続くという点です。多くの方が症状が治まるとすぐに通常の生活に戻られますが、実際には数週間にわたって感染リスクが残っています。ご家族への感染を防ぐためにも、症状改善後の手洗いなどの基本的な感染対策の継続が重要です。