冬は高齢者にとって転倒リスクが特に高まる季節です。雪や凍結した路面、重ね着による動きにくさ、暖房の効いた室内と外気温の差など、さまざまな要因が重なり合い、思わぬ転倒事故を引き起こします。厚生労働省の調査によると、高齢者の転倒・転落は不慮の事故死亡原因の上位を占めており、一度の転倒が骨折や寝たきりにつながるケースも少なくありません。本記事では、高齢者が冬に転倒しやすい理由を詳しく解説するとともに、ご本人やご家族が今日から実践できる具体的な予防策をお伝えします。正しい知識と適切な対策で、安全で健康な冬を過ごしましょう。
目次
- 高齢者が冬に転倒しやすい理由
- 転倒による影響と後遺症
- 室内での転倒予防対策
- 屋外での転倒予防対策
- 身体機能を維持する運動習慣
- 冬に適した服装と靴の選び方
- 栄養管理と骨の健康
- 家族ができるサポート
- 転倒してしまった場合の対処法
- よくある質問
🌨️ 高齢者が冬に転倒しやすい理由
冬季に高齢者の転倒事故が増加する背景には、複数の要因が関係しています。これらの要因を正しく理解することが、効果的な予防につながります。
❄️ 気温低下による身体機能の変化
気温が低下すると、人間の身体はさまざまな変化を起こします。まず、筋肉が冷えて硬くなり、関節の可動域が狭くなります。これにより、とっさの動作や体のバランスを取る反応が遅れやすくなります。
また、寒さによって血管が収縮し、血行が悪くなることで、手足の感覚が鈍くなることもあります。特に高齢者は若年者に比べて体温調節機能が低下しているため、これらの影響を受けやすい傾向があります。
🧊 路面の凍結と積雪
冬の転倒事故で最も多い原因の一つが、路面の凍結です。早朝や夜間は気温が氷点下になることが多く、一見濡れているだけに見える路面が実は凍結していることがあります。
この「ブラックアイス」と呼ばれる状態は非常に危険で、気づかずに足を踏み出して転倒するケースが後を絶ちません。また、積雪した道路は歩きにくいだけでなく、雪の下に隠れた段差や氷に気づきにくいという問題もあります。
🧥 重ね着による動作の制限
防寒のために厚着をすることも、転倒リスクを高める要因となります。
- 重ね着により体が重くなり、動作が緩慢になる
- 厚手の衣服が関節の動きを妨げる
- 足を上げる動作や腕を振る動作がしにくくなる
- マフラーや帽子で視界が狭くなる
- 手袋により物をつかみにくくなる
🌡️ 室内外の温度差
暖房の効いた室内から急に寒い屋外に出ると、体に大きな負担がかかります。急激な温度変化は血圧の変動を引き起こし、めまいやふらつきの原因となることがあります。
これは「ヒートショック」の一種で、特に高血圧や心臓疾患を持つ高齢者にとっては危険な状態です。また、逆に寒い屋外から暖かい室内に入った際にも、体が慣れるまでの間はバランスを崩しやすくなります。
🌅 日照時間の減少と視界の悪化
冬は日照時間が短くなるため、薄暗い時間帯に外出する機会が増えます。視界が悪いと路面の状態や段差を認識しにくくなり、転倒のリスクが高まります。
また、高齢者は加齢に伴い視力が低下していることが多く、暗い場所での視認性がさらに悪くなります。雪が降っている時や霧が発生している時は、より一層注意が必要です。
⚠️ 転倒による影響と後遺症
高齢者の転倒は、若い世代に比べて深刻な結果を招くことが多くあります。その影響を理解することで、予防の重要性がより明確になります。
🦴 骨折のリスク
高齢者が転倒した際に最も懸念されるのが骨折です。加齢に伴い骨密度が低下する「骨粗鬆症」の状態にある高齢者は、軽い衝撃でも骨折してしまうことがあります。
特に多いのが以下の骨折です:
- 大腿骨頸部骨折(股関節周辺の骨折)
- 橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
- 脊椎圧迫骨折
大腿骨頸部骨折は手術が必要となることが多く、長期間の入院やリハビリが必要になります。
🛏️ 寝たきりへの移行
骨折によって長期間動けなくなると、筋力が急速に低下し、そのまま寝たきりになってしまうケースがあります。研究によると、大腿骨頸部骨折を起こした高齢者の約2割は、1年以内に亡くなるというデータもあります。
また、骨折が治っても、転倒への恐怖心から外出や活動を控えるようになり、結果として身体機能がさらに低下するという悪循環に陥ることもあります。
🧠 頭部外傷の危険性
転倒時に頭を打つと、脳出血や脳挫傷などの重篤な頭部外傷を負う可能性があります。特に抗凝固薬を服用している高齢者は、出血が止まりにくく、小さな外傷でも重大な事態になることがあります。
また、転倒直後は症状がなくても、数日から数週間後に慢性硬膜下血腫として症状が現れることもあるため、転倒後はしばらく注意深く経過を観察する必要があります。
😰 精神的な影響
転倒は身体的な影響だけでなく、精神面にも大きな影響を与えます。一度転倒を経験すると、「また転ぶのではないか」という恐怖心が生まれ、外出を避けるようになったり、活動量が減少したりします。
これを「転倒後症候群」といい、社会的孤立やうつ状態を引き起こす原因となることがあります。転倒予防と同時に、転倒後の心理的ケアも重要です。
🏠 室内での転倒予防対策
意外に思われるかもしれませんが、高齢者の転倒事故の多くは実は室内で発生しています。住み慣れた自宅こそ、油断しやすい場所なのです。
🛋️ 居室の環境整備
まず、つまずきの原因となるものを取り除くことが基本です。
- 床に置かれた電気コード
- 新聞や雑誌
- 小物類
これらは転倒の原因になります。カーペットやラグマットは端がめくれやすく、つまずきの原因となるため、滑り止めを貼るか、可能であれば撤去することを検討してください。また、床の素材によっては靴下で滑りやすいこともあるため、室内履きの使用をおすすめします。
🛁 浴室の安全対策
浴室は水で濡れているため、最も転倒しやすい場所の一つです。
- 浴室の床や浴槽内に滑り止めマットを敷く
- 浴槽をまたぐ際や立ち上がる際の手すりを設置
- 浴室と脱衣所の温度差を小さくする工夫
- 入浴前に浴室を温めておく
- シャワーで浴槽にお湯を溜める
🪜 階段・廊下の安全確保
階段は転倒すると大きな怪我につながりやすい場所です。
- 両側に手すりを設置
- 必ず手すりを持って昇り降り
- 階段の踏み面に滑り止めテープを貼る
- 十分な明るさの照明を確保
- 夜間は足元灯やセンサーライトを活用
🚽 トイレの工夫
夜間にトイレに行く際の転倒も多く報告されています。
- ベッドからトイレまでの動線に障害物がないか確認
- 足元灯を設置
- トイレ内に手すりを設置
- 便座の高さが低い場合は補高便座を使用
- 暖房便座の使用を検討
🪑 家具の配置と整理
家具の配置も転倒予防に重要です。移動の際につかまれる家具を動線上に配置すると、バランスを崩した時に体を支えることができます。
ただし、キャスター付きの家具や不安定な家具は逆に危険です。また、高い場所に物を収納すると、取ろうとして背伸びをした際にバランスを崩すことがあるため、よく使うものは手の届きやすい高さに置くようにしましょう。
🚶 屋外での転倒予防対策
冬の屋外は室内以上に転倒リスクが高くなります。外出時の注意点と対策を詳しく見ていきましょう。
📱 外出前の準備
外出前には以下の準備を行いましょう:
- 天気予報を確認し、路面の状態を予測
- 気温が氷点下の場合は外出時間を検討
- 凍結しにくい時間帯(日中の暖かい時間)を選択
- 外出前に軽い準備運動をして体を温める
🐧 安全な歩き方
凍結した路面を歩く際は、「ペンギン歩き」と呼ばれる歩き方が効果的です:
- 歩幅を小さくする
- 足の裏全体で地面を踏みしめるように歩く
- 体の重心はやや前に置く
- 両手はポケットに入れずに出しておく
- 急がずにゆっくりと歩く
⚠️ 危険な場所の認識
特に凍結しやすい場所を知っておくことも重要です:
- 橋の上
- 日陰になっている場所
- 建物の北側
- タイルや金属製のマンホール蓋の上
- 雪が踏み固められた場所
- 雪解け水が再凍結した場所
🦯 杖の活用
普段は杖を使っていない方も、冬場の外出時には杖を使用することをおすすめします。杖があることで体の支えができ、バランスを崩した際にも転倒を防ぎやすくなります。
冬用の杖として、先端に氷に刺さるスパイク(アイスピック)が付いたものもあります。ただし、スパイク付きの杖は店内などの屋内では逆に滑りやすくなるため、着脱式のものを選ぶとよいでしょう。
🚌 公共交通機関の利用
雪や凍結がひどい日は、可能であれば歩く距離を短くするため、公共交通機関を積極的に利用しましょう。
ただし、バスや電車の乗降時、駅構内の階段なども滑りやすいため注意が必要です。時間に余裕を持って行動し、焦らないようにすることが大切です。
💪 身体機能を維持する運動習慣
転倒予防の根本的な対策として、日頃から身体機能を維持・向上させることが重要です。筋力やバランス能力を高める運動を習慣にしましょう。
🦵 下肢の筋力トレーニング
転倒予防には特に下半身の筋力が重要です。自宅で簡単にできる運動:
- 椅子につかまりながらのスクワット
- 椅子に座った状態で足を交互に上げ下げ
- かかとの上げ下げ運動
膝を軽く曲げて腰を落とし、ゆっくりと元に戻す動作を10回程度繰り返します。これらの運動は毎日続けることで、確実に筋力がついてきます。
⚖️ バランス能力の向上
バランス能力を高める運動も大切です:
- 壁や椅子の背もたれにつかまりながら片足で立つ練習
- つま先立ちやかかと立ちで歩く練習
- その場で足踏みをする運動
最初は数秒でも構いません。慣れてきたら徐々に時間を延ばしていきます。
🤸 柔軟性を保つストレッチ
筋肉や関節の柔軟性を保つことも転倒予防に重要です。特に冬場は体が硬くなりやすいため、毎日のストレッチを心がけましょう:
- 足首を回す
- 膝を抱えて胸に近づける
- 体をゆっくりひねる
朝起きた時や入浴後に、無理のない範囲でゆっくりと行うことがポイントです。
🚶♂️ ウォーキングの効果
ウォーキングは全身の筋力維持やバランス能力の向上に効果的な運動です。冬場は寒さで外出が億劫になりがちですが、日中の暖かい時間を選んで短時間でも歩く習慣をつけましょう。
雪や凍結で屋外が危険な場合は、ショッピングモールなどの屋内施設を歩くのも良い方法です。歩く際は、かかとから着地し、つま先で地面を蹴るように意識すると、正しい歩行フォームが身につきます。
🧘 太極拳やヨガの活用
太極拳やヨガは、バランス能力、柔軟性、筋力を総合的に高められる運動として、転倒予防に効果があることが研究で示されています。
ゆっくりとした動きで体に負担が少なく、高齢者でも取り組みやすいのが特徴です。地域の健康教室や介護予防教室などで、これらの運動が行われていることも多いので、参加を検討してみてはいかがでしょうか。
👗 冬に適した服装と靴の選び方
適切な服装と靴を選ぶことも、冬の転倒予防には欠かせません。防寒と動きやすさを両立させることがポイントです。
🧥 動きやすい防寒着の選び方
防寒のために何枚も重ね着をすると動きにくくなります。おすすめの対策:
- 薄くて保温性の高い機能性インナーを活用
- 重ね着の枚数を減らす
- 軽量で保温性の高いダウンジャケットやフリースを選択
- 裾が長すぎる服は避ける
👟 滑りにくい靴の選択
冬用の靴選びは転倒予防の重要なポイントです:
- 靴底に深い溝があるもの
- 滑りにくい素材(ゴム製など)
- 足にしっかりフィットするサイズ
- 雪国では氷に強いガラス繊維入りのソール
- スパイク付きの靴(着脱式がおすすめ)
👠 靴の着脱を安全に
玄関での靴の着脱時も転倒が多く発生します。安全な着脱方法:
- 必ず椅子に座るか壁・手すりにつかまる
- 片足立ちで靴を履かない
- 玄関に小さな椅子やベンチを設置
- 着脱しやすい靴(マジックテープやファスナー付き)を選択
👀 視界を確保する工夫
マフラーや帽子で顔を覆いすぎると視界が狭くなり、足元や周囲の状況が見えにくくなります。
- 防寒しながらも視界を確保できる巻き方・被り方を工夫
- 反射材のついた衣服やバッグを使用
- 車や自転車からの視認性を高める
🧤 手袋の選び方
手袋は防寒に欠かせませんが、適切な選択が重要です:
- 保温性がありながら指の感覚が残る薄手タイプ
- グリップ力のあるもの
- スマートフォン対応の手袋
- 手すりや杖をしっかり握れるもの
🥛 栄養管理と骨の健康
転倒してしまった場合に備えて、骨を丈夫に保つことも重要な対策です。食事から摂る栄養素が骨の健康に大きく影響します。
🥛 カルシウムの摂取
骨の主成分であるカルシウムは、高齢者にとって特に重要な栄養素です。
カルシウム豊富な食材:
- 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
- 小魚
- 豆腐
- 小松菜
- ひじき
1日あたり700〜800mg程度のカルシウム摂取が推奨されています。
☀️ ビタミンDの重要性
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にするために欠かせない栄養素です。
ビタミンD豊富な食材:
- 魚(特にサケ、サバ、イワシなど)
- きのこ類
- 卵黄
また、ビタミンDは日光を浴びることで体内でも合成されます。冬は日照時間が短く、外出の機会も減りがちなため、意識的に日光浴をするか、食事からの摂取を心がけましょう。
🥩 タンパク質と筋力
筋力を維持するためにはタンパク質の摂取も重要です。
タンパク質豊富な食材:
- 肉
- 魚
- 卵
- 大豆製品
- 乳製品
毎食バランスよくタンパク質を摂るようにしましょう。高齢者は若年者に比べてタンパク質の利用効率が低下しているため、体重1kgあたり1.0〜1.2g程度のタンパク質摂取が目安です。
🥬 ビタミンKの働き
ビタミンKは骨の形成を促進し、骨密度の維持に関わる栄養素です。
ビタミンK豊富な食材:
- 納豆
- 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー、小松菜など)
特に納豆は発酵によってビタミンK2が豊富に含まれており、骨の健康に効果的です。ただし、血液をサラサラにする薬(ワルファリン)を服用している方は、ビタミンKの摂取について医師に相談してください。
🍲 バランスの良い食事
特定の栄養素だけでなく、全体的にバランスの良い食事を心がけることが大切です。
- 体を温める根菜類
- 鍋料理
- さまざまな食材を使った温かい料理
- 十分な水分摂取
冬は汗をかきにくいため水分摂取が減りがちですが、脱水は筋力低下やめまいの原因となることがあります。
👨👩👧👦 家族ができるサポート
高齢者の転倒予防は、ご本人だけでなく家族のサポートも重要です。離れて暮らしている場合でもできることはたくさんあります。
🔍 住環境の点検と改善
帰省した際などに、高齢の家族が暮らす住環境を点検しましょう。
チェックポイント:
- つまずきやすい場所はないか
- 照明は十分か
- 手すりは必要な場所についているか
本人は長年住み慣れた環境に慣れてしまい、危険に気づきにくいことがあります。第三者の目で見ることで、改善点が見つかることも多いです。必要に応じて、介護保険を利用した住宅改修も検討してください。
🚶♀️ 外出時の付き添い
雪が降った後や凍結が予想される日は、可能であれば外出に付き添いましょう。
- 一人では不安な場所でも安心して歩ける
- 買い物など日常的な外出を一緒に行う
- 高齢者の歩行状態や体調の変化に気づける
📞 定期的な連絡と見守り
離れて暮らしている場合は、定期的に電話やビデオ通話で連絡を取りましょう。
- 体調の変化や困っていることがないか確認
- 転倒予防の意識を高めてもらう
- 見守りサービスやセンサー機器の活用も検討
- 万が一転倒した場合に早期発見できる仕組みを整備
🏃♂️ 運動習慣のサポート
高齢者が一人で運動を続けるのは、なかなか難しいものです。
- 一緒に散歩をしたり、体操をしたりする機会を作る
- 地域の介護予防教室や健康体操教室への参加を勧める
- 仲間と一緒に運動することで継続しやすくなる
🦯 福祉用具の検討
必要に応じて、杖や歩行器などの福祉用具の導入を検討しましょう。
- おしゃれなデザインの杖
- 軽量で持ち運びやすい杖
- 介護保険を利用したレンタル
「杖を使うのは恥ずかしい」と抵抗を感じる方もいますが、さまざまな種類があります。地域包括支援センターやケアマネージャーに相談してみてください。
🚨 転倒してしまった場合の対処法
どんなに気をつけていても、転倒してしまうことはあります。そのような場合に備えて、適切な対処法を知っておくことが重要です。
✅ 転倒直後の確認事項
転倒してしまったら、まずは慌てずにその場でじっとして、体の状態を確認します。
確認ポイント:
- 激しい痛みがある部位はないか
- 手足は動くか
- 頭を打っていないか
痛みが強い場合や動かせない部位がある場合は、無理に立ち上がろうとせず、周囲に助けを求めてください。
⬆️ 安全な立ち上がり方
体に異常がなさそうであれば、ゆっくりと立ち上がります。
立ち上がりの手順:
- まずは四つん這いの姿勢になる
- 近くにある安定した家具(椅子やテーブルなど)につかまる
- 片膝を立て、両手で体を支えながらゆっくりと立ち上がる
- めまいやふらつきがないか確認
焦らずに行動することが大切です。
🏥 医療機関の受診
転倒後は、たとえ大したことがないように思えても、念のため医療機関を受診することをおすすめします。
特に注意が必要な場合:
- 頭を打った場合(必ず受診)
- 腰や股関節に痛みがある場合
- 症状は転倒直後ではなく後から現れることもある
🔍 転倒の原因分析
転倒した後は、なぜ転倒したのかを振り返ることが大切です。
分析ポイント:
- つまずいた原因は何だったのか
- 滑った場所はどこだったのか
- 体調は悪くなかったか
- 同じ状況で転倒しないよう対策を講じる
転倒を経験した場所や状況を家族と共有しておくことも、再発防止に役立ちます。
💭 心理的なケア
転倒を経験すると、「また転ぶのではないか」という恐怖心が生まれることがあります。
しかし、転倒を恐れて活動を控えすぎると、かえって筋力が低下し、転倒リスクが高まるという悪循環に陥ります。転倒は誰にでも起こりうることであり、適切な対策を取れば予防できることを理解し、前向きに活動を続けることが大切です。

❓ よくある質問
高齢者の転倒事故の多くは実は自宅内で発生しています。特に居室、階段、浴室、トイレが転倒の多い場所です。住み慣れた場所ほど油断しやすいため、改めて危険箇所を点検し、手すりの設置や照明の改善、つまずきの原因となる物の撤去などの対策を行うことが重要です。
椅子につかまりながらのスクワット、かかとの上げ下げ運動、片足立ちなどが効果的です。これらは特別な器具がなくても自宅で行え、下肢の筋力やバランス能力を高めることができます。無理のない範囲で、毎日少しずつ続けることが大切です。また、ストレッチで体の柔軟性を保つことも転倒予防に役立ちます。
ペンギン歩きと呼ばれる歩き方が効果的です。歩幅を小さくし、足の裏全体で地面を踏みしめるように歩きます。体の重心はやや前に置き、両手はポケットに入れずに出しておくことで、バランスを崩した際に体を支えることができます。また、滑りにくい靴底の靴を選び、杖を使用することもおすすめです。
靴底に深い溝があり、滑りにくいゴム素材のものを選びましょう。雪国では氷に強いガラス繊維入りのソールやスパイク付きの靴もあります。足にしっかりフィットするサイズを選び、着脱しやすいマジックテープやファスナー付きのデザインがおすすめです。履く際は必ず座って行い、立ったままの着脱は避けてください。
頭痛、吐き気、めまい、意識がぼんやりする、物が二重に見える、手足のしびれや動きにくさなどの症状に注意が必要です。これらの症状は転倒直後ではなく、数日から数週間後に現れることもあります。転倒後にこれらの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
カルシウム、ビタミンD、タンパク質、ビタミンKが骨の健康に重要です。カルシウムは乳製品や小魚、ビタミンDは魚やきのこ類、タンパク質は肉・魚・大豆製品、ビタミンKは納豆や緑黄色野菜に含まれています。これらをバランスよく摂取し、適度な日光浴も心がけましょう。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
転倒は高齢者にとって生命に関わる深刻な問題です。特に冬場は気温低下による筋肉の硬化や路面凍結により転倒リスクが大幅に増加します。大腿骨頸部骨折は「人生の最後の骨折」と呼ばれることもあり、予後が極めて重要です。日頃からの筋力維持と環境整備により、多くの転倒は予防可能です。不安がある場合は医療機関で骨密度検査や歩行能力の評価を受けることをお勧めします。