咳が止まらないと、日常生活に支障をきたすだけでなく、睡眠不足や体力の消耗など、さまざまな問題を引き起こします。風邪が治ったはずなのに咳だけが続く、夜になると咳がひどくなるなど、長引く咳に悩んでいる方は少なくありません。本記事では、咳が止まらない原因や自宅でできる対処法、病院を受診すべき目安について詳しく解説します。
目次
- 咳が止まらない原因とは
- 咳の種類と特徴
- 自宅でできる咳の対処法
- 咳を悪化させないための注意点
- 病院を受診すべき咳の症状
- 病院での咳の治療法
- 咳が止まらないときによくある質問
- まとめ
🤧 咳が止まらない原因とは
咳は、気道に侵入した異物や刺激物を体外に排出するための防御反応です。通常は一時的なものですが、さまざまな原因によって長引くことがあります。ここでは、咳が止まらない主な原因について解説します。
🦠 感染症による咳
咳が止まらない原因として最も一般的なのが、ウイルスや細菌による感染症です。
- ウイルス感染:風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症
- 細菌感染:マイコプラズマ、百日咳
- 感染後咳嗽:感染症が治った後も咳だけが続く状態
特に注意が必要なのは、感染後咳嗽です。ウイルス感染によって気道粘膜が傷つき、過敏になることで、些細な刺激でも咳が出やすくなります。この状態は数週間から数か月続くこともあります。
また、マイコプラズマや百日咳などの細菌感染では、激しい咳が長期間続くことがあります。百日咳は名前の通り、100日近く咳が続くこともある感染症で、成人でも発症することがあります。
🌸 アレルギーによる咳
花粉やハウスダスト、ダニなどのアレルゲンに反応して咳が出ることがあります。
- 花粉症:春や秋の花粉シーズンに悪化
- ハウスダスト・ダニアレルギー:掃除時や就寝時に悪化
- 特徴:くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどを伴う
アレルギー性の咳は、特定の季節や環境で悪化する傾向があります。原因となるアレルゲンを特定し、できるだけ避けることが対処の基本となります。
😮💨 咳喘息
咳喘息は、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)を伴わない、咳だけが症状として現れる喘息の一種です。8週間以上続く慢性的な咳の原因として、非常に多く見られます。
咳喘息の特徴:
- 夜間から明け方にかけて咳が悪化
- 季節の変わり目や気温差で症状が出やすい
- 風邪をきっかけに発症することが多い
咳喘息は適切な治療を行わないと、約3割の方が典型的な気管支喘息に移行するといわれています。長引く咳がある場合は、咳喘息の可能性を考慮して早めに受診することが大切です。
🧬 アトピー咳嗽
アトピー咳嗽は、アトピー素因(アレルギー体質)を持つ方に見られる慢性的な咳です。咳喘息と似た症状ですが、気管支拡張薬が効きにくいという特徴があります。
アトピー咳嗽は、喉のイガイガ感やかゆみを伴うことが多く、乾いた咳が続きます。アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を合併していることも少なくありません。
🔄 胃食道逆流症(GERD)
胃酸が食道に逆流することで、咳が引き起こされることがあります。これは胃食道逆流症(GERD)による咳で、慢性的な咳の原因として見落とされやすい疾患です。
特徴的な症状:
- 食後や横になったときに咳が悪化
- 胸やけや呑酸がなくても咳だけが現れる場合がある
- 夜間に症状が強くなることが多い
👃 副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔に炎症が起こり、膿がたまる副鼻腔炎も咳の原因となります。副鼻腔から鼻汁が喉に流れ落ちる「後鼻漏」によって、咳が誘発されます。
副鼻腔炎による咳の特徴:
- 横になったときに悪化
- 朝起きたときに痰が絡んだ咳が出やすい
- 鼻づまりや頭痛、顔面の痛みを伴う
💊 薬の副作用
一部の薬の副作用として、咳が出ることがあります。特に注意が必要なのは、高血圧の治療に使われるACE阻害薬です。ACE阻害薬を服用している方の約10〜20%に乾いた咳が出るといわれています。
ACE阻害薬による咳は、服用開始から数週間〜数か月後に現れることが多く、薬を中止すると1〜4週間程度で改善します。
🚬 喫煙による咳
喫煙は気道を刺激し、慢性的な咳の原因となります。タバコの煙に含まれる有害物質が気道粘膜を傷つけ、炎症を引き起こします。
喫煙者に多く見られる慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、長期間の喫煙によって肺が障害される病気で、咳や痰、息切れなどの症状が現れます。
🔍 咳の種類と特徴
咳にはいくつかの種類があり、それぞれの特徴を理解することで原因を推測しやすくなります。ここでは、咳の種類と持続期間による分類について解説します。
🏜️ 乾いた咳(乾性咳嗽)
乾いた咳は、痰を伴わないコンコンという咳です。喉がイガイガしたり、むずむずしたりする感覚を伴うことが多いです。
乾いた咳の主な原因:
- 咳喘息
- アトピー咳嗽
- 胃食道逆流症
- ACE阻害薬の副作用
- ウイルス感染の初期
💧 湿った咳(湿性咳嗽)
湿った咳は、痰を伴うゴホゴホという咳です。気道に分泌物がたまっており、それを排出しようとして咳が出ます。
痰の色による分類:
- 透明・白い痰:ウイルス感染やアレルギー
- 黄色・緑色の痰:細菌感染
- 血が混じった痰:気管支炎や肺がんの可能性
📅 咳の持続期間による分類
咳は持続期間によって、以下の3つに分類されます:
- 急性咳嗽:3週間未満(主に感染症)
- 遷延性咳嗽:3週間以上8週間未満(感染後咳嗽など)
- 慢性咳嗽:8週間以上(専門的な検査と治療が必要)
🏠 自宅でできる咳の対処法
咳が止まらないときは、まず自宅でできる対処法を試してみましょう。ここでは、咳を和らげるための具体的な方法を紹介します。
💨 室内の湿度を適切に保つ
空気が乾燥していると、気道の粘膜も乾燥して刺激を受けやすくなり、咳が出やすくなります。室内の湿度を50〜60%程度に保つことで、気道の粘膜を保護し、咳を和らげることができます。
湿度を上げる方法:
- 加湿器の使用
- 濡れたタオルを室内に干す
- 洗濯物を室内に干す
- 観葉植物を置く
ただし、湿度が高すぎるとカビやダニが繁殖しやすくなるため、70%以上にならないよう注意しましょう。
💧 こまめに水分を摂取する
水分を十分に摂取することで、気道の粘膜を潤し、痰を出しやすくすることができます。
おすすめの飲み物:
- 常温の水や白湯
- 温かいお茶
- はちみつレモンティー
- しょうが湯
ただし、カフェインを含む飲み物やアルコールは利尿作用があり、体から水分を奪ってしまうため、摂り過ぎに注意が必要です。
🍯 はちみつを摂取する
はちみつには、咳を和らげる効果があることが研究で示されています。世界保健機関(WHO)も、咳に対するはちみつの使用を推奨しています。
はちみつには抗菌作用や抗炎症作用があり、喉の粘膜を保護する効果もあります。そのまま舐めたり、温かい飲み物に混ぜたりして摂取するとよいでしょう。
⚠️ 注意:1歳未満の乳児にはちみつを与えると、乳児ボツリヌス症を引き起こす危険があるため、絶対に与えないでください。
🍬 のど飴やトローチを活用する
のど飴やトローチを舐めることで、唾液の分泌が促され、喉が潤います。
効果的な成分:
- メントール
- ユーカリ
- プロポリス
- 漢方エキス
😷 マスクを着用する
マスクを着用することで、吸い込む空気が加湿され、乾燥による気道への刺激を軽減できます。また、ほこりや花粉などのアレルゲンの吸入を防ぐこともできます。
🛏️ 上体を起こして休む
横になると気道が狭くなり、咳が出やすくなることがあります。咳がひどいときは、クッションや枕を使って上体を少し起こした状態で休むとよいでしょう。
💊 市販の咳止め薬を使用する
市販の咳止め薬(鎮咳薬)を使用することで、一時的に咳を抑えることができます。
咳止め薬の種類:
- 中枢性鎮咳薬:脳の咳中枢に作用
- 末梢性鎮咳薬:気道に直接作用
- 去痰薬:痰を出しやすくする
👆 ツボ押しを試す
東洋医学では、咳に効果があるとされるツボがいくつかあります。
咳に効くツボ:
- 天突(てんとつ):左右の鎖骨の間のくぼみ
- 尺沢(しゃくたく):肘のしわの親指側
- 孔最(こうさい):手首と肘の中間あたり
⚠️ 咳を悪化させないための注意点
咳を早く治すためには、悪化させる要因を避けることも大切です。
🚭 喫煙を避ける
タバコの煙は気道を刺激し、咳を悪化させます。
避けるべきもの:
- 紙巻きタバコ
- 電子タバコ
- 加熱式タバコ
- 受動喫煙
🍺 アルコールを控える
アルコールは気道の粘膜を刺激し、咳を悪化させることがあります。また、アルコールには利尿作用があり、体から水分を奪ってしまいます。
🌶️ 刺激物を避ける
避けるべき刺激物:
- 辛い食べ物
- 酸っぱい食べ物
- 冷たい飲み物や食べ物
- 香辛料の強い料理
🌡️ 急激な温度変化を避ける
急激な温度変化は気道を刺激し、咳を誘発することがあります。特に咳喘息の方は、冷たい空気を吸い込むと咳が悪化しやすいです。
🧹 ほこりや花粉を避ける
対策方法:
- こまめな掃除
- 空気清浄機の使用
- 花粉シーズンの窓の開閉を控える
- 布団や枕カバーの定期的な洗濯
😴 十分な睡眠をとる
睡眠不足は免疫力を低下させ、感染症からの回復を遅らせます。規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとるようにしましょう。
🏥 病院を受診すべき咳の症状
多くの咳は自然に治りますが、中には医療機関での診察や治療が必要な場合があります。ここでは、病院を受診すべき咳の症状について解説します。
📅 咳が3週間以上続く場合
風邪などの感染症による咳は、通常2〜3週間で治まります。3週間以上咳が続く場合は、咳喘息や胃食道逆流症、副鼻腔炎など、他の原因が隠れている可能性があります。
🩸 血痰が出る場合
咳をしたときに血が混じった痰が出る場合は、すぐに医療機関を受診してください。
血痰の原因:
- 気管支炎
- 肺炎
- 肺結核
- 肺がん
🔥 高熱が続く場合
咳とともに38度以上の高熱が3日以上続く場合は、細菌性肺炎やインフルエンザなどの可能性があります。
😰 息苦しさや呼吸困難がある場合
咳とともに息苦しさや呼吸困難を感じる場合は、喘息の発作や肺炎、心不全などの可能性があります。
緊急性の高い症状:
- 安静にしていても息苦しい
- 唇や爪が青紫色になっている
- 話すのも困難
💔 胸の痛みがある場合
咳をするたびに胸が痛む場合は、肋骨の疲労骨折や胸膜炎、肺炎などの可能性があります。
⚖️ 体重減少がある場合
特にダイエットをしていないのに体重が減少している場合は、肺結核や肺がんなどの深刻な病気の可能性があります。
🎵 ゼーゼー、ヒューヒューという音がする場合
呼吸するたびにゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)がする場合は、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の可能性があります。
🏥 病院での咳の治療法
病院では、咳の原因に応じてさまざまな治療が行われます。ここでは、代表的な治療法について解説します。
📋 問診と診察
問診内容:
- 咳がいつから始まったか
- 咳の性質(乾いた咳か湿った咳か)
- 悪化する状況
- 他の症状の有無
検査:
- 聴診器での胸部聴診
- レントゲン検査
- 血液検査
- 肺機能検査
💊 感染症に対する治療
細菌感染:抗菌薬(抗生物質)
ウイルス感染:対症療法
インフルエンザ:発症から48時間以内なら抗インフルエンザ薬
🫁 咳喘息に対する治療
咳喘息の治療には、以下の薬が使用されます:
- 吸入ステロイド薬:気道の炎症を抑える
- 気管支拡張薬:狭くなった気道を広げる
🌸 アレルギーに対する治療
使用される薬:
- 抗ヒスタミン薬
- ロイコトリエン受容体拮抗薬
- アレルゲン免疫療法(重症例)
🔄 胃食道逆流症に対する治療
薬物療法:
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- H2受容体拮抗薬
生活習慣の改善:
- 食後すぐに横にならない
- 就寝前の食事を避ける
- 脂っこい食事を控える
👃 副鼻腔炎に対する治療
薬物療法:
- 抗菌薬
- 去痰薬
- 点鼻ステロイド薬
- マクロライド系抗菌薬の少量長期投与

❓ 咳が止まらないときによくある質問
まずは内科や呼吸器内科を受診することをおすすめします。咳の原因はさまざまであり、感染症、アレルギー、咳喘息、胃食道逆流症など多岐にわたります。内科では幅広い疾患に対応でき、必要に応じて専門科への紹介も行われます。鼻水や鼻づまりを伴う場合は耳鼻咽喉科、胸やけや逆流症状がある場合は消化器内科も選択肢となります。
夜に咳がひどくなる原因はいくつかあります。横になることで気道が狭くなりやすいこと、副交感神経が優位になり気管支が収縮しやすくなること、後鼻漏が喉に流れやすくなること、胃酸が逆流しやすくなることなどが挙げられます。また、寝室の乾燥やハウスダスト、ダニなども原因となります。上体を少し起こして寝たり、加湿器を使用したりすることで改善することがあります。
これは感染後咳嗽と呼ばれる状態です。風邪などのウイルス感染によって気道の粘膜が傷つき、過敏になることで、感染が治った後も咳が続きます。通常は3〜8週間程度で自然に治まりますが、咳喘息に移行することもあるため、長引く場合は医療機関を受診することをおすすめします。加湿や保温など、気道を刺激しない生活を心がけることが大切です。
咳を無理に我慢することはおすすめしません。咳は気道に入った異物や分泌物を排出するための重要な防御反応です。咳を我慢すると、異物や痰が気道に残り、症状が悪化することがあります。ただし、頻繁に咳をすることで喉を傷つけたり、肋骨を痛めたりすることもあるため、適切な治療を受けて咳の原因を取り除くことが大切です。
咳で眠れないときは、まず室内の湿度を50〜60%程度に保ち、上体を少し起こした状態で休むことをおすすめします。就寝前にはちみつ入りの温かい飲み物を飲んだり、マスクを着用して喉を保湿したりすることも効果的です。市販の咳止め薬を就寝前に服用する方法もあります。それでも改善しない場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けてください。
📝 まとめ
咳が止まらない原因は、感染症、アレルギー、咳喘息、胃食道逆流症などさまざまです。自宅でできる対処法としては、室内の加湿、こまめな水分摂取、はちみつの摂取、マスクの着用などがあります。
しかし、以下の症状がある場合は早めに医療機関を受診することが大切です:
- 3週間以上咳が続く
- 血痰が出る
- 高熱や息苦しさがある
- 胸の痛みや体重減少がある
咳は体からのサインです。放置せずに適切な対処をすることで、症状の悪化や慢性化を防ぐことができます。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
長引く咳の中でも、咳喘息は見逃されやすい疾患の一つです。特に夜間に悪化する乾いた咳が続く場合は、早期の診断と治療が重要です。放置すると典型的な喘息に移行するリスクがあるため、3週間以上続く咳は必ず医療機関でご相談ください。