与野エリア(さいたま市中央区)にお住まいの皆さま、皮膚の下にできたコロコロしたしこりが気になっていませんか。触っても痛くないけれど、なかなか消えない——そのしこりは「粉瘤(ふんりゅう)」の可能性があります。
粉瘤は良性の皮膚腫瘍であり、命に関わる病気ではありません。しかし、放っておくと大きくなったり、ある日突然赤く腫れて痛み出したりすることがあります。「今は痛くないから大丈夫」と思っているうちに、治療が複雑になってしまうケースも少なくありません。
与野は、かつての与野市を中心とした歴史ある地域です。JR埼京線の北与野駅・与野本町駅・南与野駅、JR京浜東北線の与野駅など複数の駅があり、さいたま市の中でも生活の利便性が高いエリアとして知られています。このコラムでは、与野エリアにお住まいの方に向けて、粉瘤についての正しい知識と治療の選択肢をお伝えします。
目次
- 与野エリアの方からよくいただく粉瘤のご相談
- そもそも粉瘤とは?基本的な仕組みを理解する
- なぜ粉瘤ができるのか——考えられる原因
- 粉瘤を見つけたときのセルフチェックポイント
- 粉瘤ができやすい体の部位とその理由
- これって粉瘤?似ている疾患との違い
- 粉瘤が炎症を起こすとどうなるか
- 放置した場合のリスクと早期治療のメリット
- 医療機関での診断の流れ
- 粉瘤の手術方法——くり抜き法と切開法
- 手術当日から術後までの過ごし方
- 治療費用と保険適用について
- 再発を防ぐためにできること
- 与野エリアから当院へのご案内
- 患者さまからよくいただくご質問
- おわりに
- 参考文献
1. 与野エリアの方からよくいただく粉瘤のご相談
当院には、与野エリアからも多くの患者さまがお越しになります。粉瘤についてのご相談で特に多いのが、次のような内容です。
「背中にしこりがあると家族に言われたけれど、自分では見えないので放っておいた。最近になって大きくなってきた気がする」「耳たぶにできた小さなふくらみを何年も気にしていたが、先日押したら白いものが出てきて臭かった」「おしりにできたしこりが座ると痛むようになった」——このようなお悩みをお持ちの方は、粉瘤の可能性を考えて一度診察を受けることをお勧めします。
粉瘤は痛みがないことが多く、特に背中や頭部など自分で見えにくい場所にできると、気づかないまま長期間放置してしまうことがあります。また、「そのうち消えるだろう」と思って様子を見ているうちに、大きくなったり炎症を起こしたりするケースも珍しくありません。
粉瘤は決して珍しい疾患ではなく、皮膚科や形成外科で扱う良性腫瘍の中で最も多いものの一つです。正しい知識を持って、適切なタイミングで治療を受けることが大切です。
2. そもそも粉瘤とは?基本的な仕組みを理解する
粉瘤を正しく理解するために、まずはその仕組みについて説明します。
皮膚の下にできる「袋」
粉瘤は医学用語で「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」と呼ばれます。皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂といった老廃物が溜まることで形成されます。
私たちの皮膚は日々新陳代謝を繰り返しており、古くなった角質は通常、皮膚の表面から自然に剥がれ落ちていきます。ところが、何らかの原因で皮膚の内側に袋ができてしまうと、本来なら外に出ていくはずの老廃物がその袋の中に蓄積されていきます。これが粉瘤の正体です。
「脂肪のかたまり」ではない
粉瘤は俗に「脂肪のかたまり」と言われることがありますが、これは正確ではありません。粉瘤の中身は脂肪ではなく、古い角質(垢)や皮脂などの老廃物です。これらが袋の中で混ざり合い、独特の悪臭を放つドロドロした物質になっています。
脂肪でできた良性腫瘍は「脂肪腫」と呼ばれ、粉瘤とは別の疾患です。両者は治療法も異なるため、正確な診断が重要になります。
自然には消えない
粉瘤の大きな特徴は、一度できると自然には消えないという点です。袋の中に老廃物が溜まり続けるため、放置すれば少しずつ大きくなっていきます。最初は数ミリ程度だったものが、数年かけて数センチに成長することもあります。ごくまれに10センチを超える大きさになるケースも報告されています。
粉瘤の種類
粉瘤にはいくつかのタイプがあります。最も一般的なものが「表皮嚢腫」で、顔や背中、首などあらゆる部位に発生します。頭部にできやすい「外毛根鞘性嚢腫」は通常の粉瘤よりやや硬く、ごくまれに悪性化することがあります。また、首や胸、脇などに複数個が同時にできる「多発性毛包嚢腫」というタイプもあります。
3. なぜ粉瘤ができるのか——考えられる原因
「なぜ自分に粉瘤ができたのか」と疑問に思う方は多いでしょう。実は、粉瘤の発生原因は現代医学でも完全には解明されていません。ただし、いくつかの要因が関係していると考えられています。
毛穴のつまり
最も有力な説は、毛穴がつまることで粉瘤が発生するというものです。皮脂や角質が毛穴の出口をふさぎ、行き場を失った老廃物が皮膚の内側に溜まり始めます。やがて表皮細胞が皮膚の深い層に入り込んで袋状の構造を形成し、粉瘤となります。
皮膚への外傷
ケガや手術、ピアスの穴あけなど、皮膚に傷がついた部分から表皮細胞が内側に入り込み、粉瘤が発生することがあります。足の裏や手のひらなど、本来毛穴のない部位にできる粉瘤は、過去の外傷がきっかけになっていることが多いです。
ウイルスの関与
足の裏にできる粉瘤については、ヒトパピローマウイルス(HPV)が関係している場合があります。このウイルスはイボの原因としても知られており、足底の粉瘤は比較的若い世代に多く見られる傾向があります。
体質や遺伝
粉瘤のできやすさには個人差があります。一生に一度も粉瘤ができない方もいれば、何度も繰り返しできる方もいます。遺伝性の疾患に伴って複数の粉瘤が多発するケースもあり、体質的な要因が関係していることは間違いありません。
清潔さとの関係
「不潔だから粉瘤ができた」と思われる方もいらっしゃいますが、これは誤解です。粉瘤は清潔にしていてもできることがあり、不衛生が直接の原因ではありません。確実な予防法がないのも、粉瘤の特徴の一つです。
4. 粉瘤を見つけたときのセルフチェックポイント
皮膚にしこりを発見したとき、それが粉瘤かどうかを判断するためのポイントをご紹介します。ただし、最終的な診断は医師の診察が必要ですので、参考程度にお考えください。
触感と動き
粉瘤は皮膚のすぐ下にあり、触るとコロコロとした弾力のあるしこりとして感じられます。表面の皮膚を動かすと一緒に動きますが、しこり自体が皮膚の下を自由に滑るように動くことはあまりありません。これは粉瘤が皮膚とつながっているためです。
中央の黒い点
粉瘤の多くは、ドーム状に盛り上がった中央部分に小さな黒い点が見られます。これは「開口部」や「へそ」と呼ばれ、袋と皮膚の外側をつなぐ部分です。毛穴がつまって黒ずんで見えたり、酸化した皮脂が黒く変色したものです。この黒い点があれば、粉瘤の可能性が高いと言えます。
においの有無
粉瘤を圧迫すると、開口部から白いクリーム状やチーズ状の内容物が出てくることがあります。この内容物は独特の悪臭を放ちます。においは腐敗したタンパク質に例えられることが多く、粉瘤特有のサインです。ただし、無理に押し出そうとすると炎症を起こす原因になるため、避けてください。
痛みの有無
通常の粉瘤は痛みを伴いません。触っても押しても痛くないのが一般的です。もし赤みや痛み、熱感があれば、炎症を起こしている状態です。この場合は早めに医療機関を受診してください。
5. 粉瘤ができやすい体の部位とその理由
粉瘤は全身どこにでもできる可能性がありますが、統計的に発生しやすい部位があります。
顔面
顔は皮脂腺が豊富な部位であり、粉瘤が発生しやすい場所です。頬、おでこ、こめかみ、眉間などにできることがあります。顔にできた粉瘤は見た目の問題から早めの治療を希望される方が多く、傷跡の目立ちにくい手術法が選ばれることが一般的です。
首まわり
首も粉瘤がよくできる部位です。衣服の襟による摩擦や、無意識に触れることが多い部位であることが影響していると考えられます。首の粉瘤は炎症を起こすと目立ちやすく、日常生活にも支障が出やすいため注意が必要です。
耳周辺
耳たぶや耳の後ろは粉瘤の好発部位として知られています。ピアスの穴の近くにできることもあり、イヤリングやピアスの着用に支障をきたすケースもあります。耳の粉瘤は小さくても気になりやすい場所です。
背中
背中は自分では見えない場所であるため、家族に指摘されて初めて気づくことが多い部位です。発見が遅れがちなことから、比較的大きくなってから治療を受ける方が多い傾向にあります。背中は皮膚が厚く皮脂腺も発達しているため、粉瘤が発生しやすい環境と言えます。
頭皮
頭皮にも粉瘤ができることがあります。髪の毛に隠れて見えにくいため、ある程度の大きさになるまで気づかないことが少なくありません。洗髪時にしこりに触れて発見されるケースが多いです。
臀部(おしり)
おしりは座ったときに圧迫される部位であり、粉瘤があると日常生活で不便を感じやすくなります。また、圧迫による刺激で炎症を起こしやすい傾向もあります。おしりの粉瘤は受診をためらう方も多いですが、早めの治療が望ましい部位です。
発生部位の傾向
統計によれば、粉瘤の約6割は顔、首、背中に集中しています。一方、足の裏にできる粉瘤は若い世代に多いという特徴があり、部位によって発生メカニズムや患者層が異なることがわかっています。
6. これって粉瘤?似ている疾患との違い
皮膚にできるしこりは粉瘤だけではありません。見た目が似ている他の疾患もあるため、自己判断は禁物です。代表的な疾患との違いを知っておきましょう。
ニキビとの違い
初期の粉瘤はニキビと間違われることがあります。どちらも毛穴に関連して発生しますが、根本的な違いがあります。ニキビは毛穴に皮脂が詰まってアクネ菌が増殖し、炎症を起こしたものです。適切なケアで自然に治癒することが多く、大きさも数ミリ程度です。
対して粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造ができており、自然には治りません。放置すれば数センチ以上に成長する点も、ニキビとは大きく異なります。また、粉瘤特有の悪臭はニキビにはありません。
脂肪腫との違い
脂肪腫は脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍で、粉瘤と混同されやすい疾患です。両者の違いとして、まず粉瘤には中央に黒い点(開口部)があることが多いですが、脂肪腫にはありません。
触った感触も異なります。粉瘤は弾力がありやや硬いのに対し、脂肪腫は柔らかくゴムのような感触です。また、粉瘤は皮膚の浅い層にあり皮膚と一緒に動きますが、脂肪腫は皮膚の深い層にあり、皮膚とは独立して動きます。
粉瘤は炎症を起こすことがありますが、脂肪腫が炎症を起こすことはほとんどありません。臭いの有無も重要な判断材料で、粉瘤は悪臭を放つことがありますが、脂肪腫にはそのような特徴はありません。
せつ(おでき)との違い
せつ(おでき)は毛穴に細菌が感染して化膿したもので、赤く腫れて痛みを伴います。見た目は炎症を起こした粉瘤に似ていますが、せつは感染症であり、適切な治療で治癒します。粉瘤は袋が残っている限り完治しないという点で根本的に異なります。
石灰化上皮腫との違い
石灰化上皮腫は主に顔にできる良性腫瘍で、触ると石のように硬いのが特徴です。粉瘤も硬く感じることがありますが、石灰化上皮腫ほどの硬さではありません。また、石灰化上皮腫は若い世代(20歳以下)に多く発生する傾向があります。
これらの疾患は見た目だけでは判断が難しいことがあります。皮膚にしこりを見つけたら、自己判断せずに医療機関で診察を受けることをお勧めします。
7. 粉瘤が炎症を起こすとどうなるか
粉瘤を放置したときに最も注意すべきリスクが「炎症」です。炎症を起こした粉瘤は「炎症性粉瘤」や「感染性粉瘤」と呼ばれ、治療も複雑になります。
炎症が起きる仕組み
粉瘤が炎症を起こす原因は主に2つあります。1つは細菌感染です。粉瘤の開口部から細菌が侵入し、袋の内部で増殖して感染を引き起こします。風邪を引いたときや疲労がたまっているときなど、免疫力が低下しているときに起こりやすいとされています。
もう1つは袋の破裂です。外部からの圧力で粉瘤の袋が破れると、中の老廃物が周囲の組織に漏れ出します。体はこれを異物と認識して攻撃するため、強い炎症反応が生じます。
炎症時の症状
炎症を起こすと、それまで無症状だった粉瘤が急激に変化します。まず患部が赤く腫れ上がり、触ると熱を感じます。痛みも強くなり、じっとしていても痛むほどになることがあります。化膿が進むと膿が溜まり、皮膚が破れて膿が流れ出すこともあります。発熱を伴うケースもあり、日常生活に大きな支障をきたします。
炎症性粉瘤の治療
炎症を起こしている状態では、すぐに粉瘤を完全に取り除くことは困難です。まず炎症を抑える治療が優先されます。軽度であれば抗生物質の内服で対応しますが、膿が溜まっている場合は「切開排膿」という処置を行います。
切開排膿では、局所麻酔をして皮膚を切開し、内部の膿と老廃物を排出します。ただし、この段階では袋を完全に取り除くことができないため、炎症が落ち着いてから改めて摘出手術を行う必要があります。つまり、炎症性粉瘤の治療は2段階になることが多く、通院の負担も増えます。
8. 放置した場合のリスクと早期治療のメリット
粉瘤は良性腫瘍であり、必ずしも今すぐ治療しなければならないわけではありません。しかし、放置することにはいくつかのリスクがあります。
放置した場合のリスク
まず、粉瘤は自然に消えることがなく、時間とともに大きくなります。大きくなってから手術すると、切開の範囲も広がり、傷跡が目立ちやすくなります。特に顔や首など露出部にある粉瘤は、早めの治療が見た目の面でも有利です。
次に、前述のとおり炎症を起こすリスクがあります。炎症を起こすと痛みや腫れで日常生活に支障が出るだけでなく、治療も複雑になり、傷跡も残りやすくなります。
さらに、非常にまれなケースですが、長年放置して炎症を繰り返すうちに、粉瘤の壁から皮膚がん(有棘細胞がんなど)が発生することが報告されています。可能性は低いものの、ゼロではないため注意が必要です。
早期治療のメリット
小さいうちに手術すれば、傷も小さく済みます。手術時間も短く、体への負担も軽くなります。炎症を起こす前であれば一度の手術で完治でき、通院回数も少なくて済みます。
粉瘤に気づいたら、すぐに手術を受ける必要はなくても、まずは医療機関で診察を受けて状態を確認しておくことをお勧めします。そのうえで、治療のタイミングを相談するのがよいでしょう。
9. 医療機関での診断の流れ
粉瘤が疑われる場合、医療機関ではどのような診断が行われるのでしょうか。一般的な流れをご説明します。
問診
まず、いつ頃からしこりに気づいたか、大きさの変化はあるか、痛みや炎症を起こしたことがあるかなどをお聞きします。持病やアレルギー、服用中の薬についても確認します。
視診・触診
粉瘤は視診と触診で診断できることがほとんどです。しこりの形状、大きさ、色調、中央の開口部の有無、皮膚との関係性などを確認します。触った感触や境界の明瞭さなども診断の手がかりになります。
超音波検査(エコー)
粉瘤が大きい場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合には、超音波検査を行うことがあります。超音波検査では、粉瘤の内部構造や深さ、周囲組織との関係を確認できます。痛みのない検査で、短時間で終わります。
病理検査
手術で摘出した組織は、病理検査に出して顕微鏡で調べることがあります。これにより、粉瘤であることの確定診断が得られるとともに、ごくまれに存在する悪性腫瘍の可能性を除外することができます。
受診先の選び方
粉瘤の診察は皮膚科または形成外科で受けられます。いずれの診療科でも対応可能ですが、手術を視野に入れている場合は、皮膚外科や粉瘤手術の経験が豊富な医療機関を選ぶとよいでしょう。
10. 粉瘤の手術方法——くり抜き法と切開法
粉瘤を根本的に治すには、袋状の構造物(嚢腫壁)を完全に取り除く手術が必要です。塗り薬や飲み薬で粉瘤を消すことはできません。手術方法には主に2つの選択肢があります。
くり抜き法(へそ抜き法)
くり抜き法は、近年広く行われるようになった手術法です。「トレパン」や「デルマパンチ」と呼ばれる円筒状の器具を使い、粉瘤の中央に直径4〜5ミリ程度の小さな穴を開けます。この穴から内容物を押し出した後、しぼんだ袋を丁寧に引き出して摘出します。
くり抜き法の最大のメリットは、傷が小さいことです。多くの場合、縫合せずに自然に傷が閉じるのを待つため、抜糸も不要です。手術時間も短く、15分程度で終わることが多いです。顔など見た目が気になる部位の粉瘤には特に適しています。
一方で、小さな穴から袋を取り出すため、取り残しが生じると再発するリスクがあります。また、粉瘤が大きすぎる場合や、炎症を繰り返して周囲と癒着している場合には適さないことがあります。
切開法(紡錘形切除法)
切開法は、従来から行われている標準的な手術法です。粉瘤の上の皮膚を紡錘形(木の葉のような形)に切開し、粉瘤を袋ごとまるごと取り除きます。摘出後は縫合し、約1週間後に抜糸を行います。
切開法のメリットは、袋を完全に取り除くことができるため、再発のリスクが低いことです。大きな粉瘤や、炎症を繰り返して周囲の組織と癒着しているケースにも対応できます。
デメリットは、傷跡がくり抜き法より長くなることです。傷の長さは粉瘤の大きさに応じて変わります。また、抜糸のために再度の来院が必要です。
どちらの方法が適しているか
手術方法の選択は、粉瘤の大きさ、部位、炎症の有無、患者さまのご希望などを総合的に考慮して決定します。顔などで傷跡を最小限にしたい場合はくり抜き法が選ばれることが多いですが、確実な摘出を優先する場合は切開法が推奨されます。どちらの方法も局所麻酔で行われ、日帰り手術が可能です。
11. 手術当日から術後までの過ごし方
粉瘤の手術は日帰りで行われるため、術後は自宅で過ごすことになります。傷の回復を促すために、いくつかの注意点を守ってください。
手術当日
手術は局所麻酔で行われます。麻酔の注射時に軽い痛みがありますが、手術中は痛みを感じることはほとんどありません。手術時間は粉瘤の大きさによりますが、15分から30分程度で終わるのが一般的です。
手術後は、傷口をガーゼで保護して帰宅できます。当日は飲酒と激しい運動を控えてください。出血のリスクを高めるためです。入浴もシャワー程度にとどめ、傷口を濡らさないようにしましょう。
術後数日間
翌日からシャワーで傷口をやさしく洗い流すことができます。石鹸を使っても構いませんが、強くこすらないように注意してください。処方された軟膏を塗布し、清潔なガーゼで保護します。
術後は軽度の出血や腫れが見られることがありますが、通常は数日で落ち着きます。痛みがある場合は、処方された鎮痛剤を服用してください。
抜糸まで(切開法の場合)
切開法で縫合した場合は、約1週間後に抜糸のための来院が必要です。傷の状態を確認し、問題がなければ抜糸を行います。くり抜き法で縫合しなかった場合は、傷が自然に閉じるまで2〜3週間程度かかることがあります。
傷跡のケア
傷が閉じた後も、傷跡が落ち着くまでには3〜6か月程度かかります。この期間は傷跡に紫外線が当たらないよう、日焼け対策を心がけてください。テープで傷跡を保護したり、保湿を続けることで、傷跡をきれいに仕上げることができます。
12. 治療費用と保険適用について
粉瘤の治療は健康保険が適用されるため、費用面での負担は比較的軽く済みます。
保険適用の範囲
粉瘤の診察、検査、手術、病理検査は、すべて健康保険の対象です。自己負担割合に応じた金額で治療を受けることができます。
費用の目安
手術費用は、粉瘤の大きさと発生部位によって変わります。医療保険の制度では、「露出部」(顔、首、肘から指先、膝から足先)と「非露出部」(それ以外の部位)で診療報酬が異なり、露出部の方がやや高く設定されています。
3割負担の場合、露出部で直径2センチメートル未満の粉瘤であれば5,000円から6,000円程度、2〜4センチメートルであれば11,000円から12,000円程度が目安です。非露出部はこれより若干安くなります。
ただし、これは手術費用のみの目安であり、診察料、検査費用、処方料、病理検査費用などが別途かかります。正確な費用は医療機関でご確認ください。
民間保険の給付金
民間の医療保険に加入している方は、粉瘤の手術が給付金の対象になる場合があります。粉瘤の手術は「皮膚・皮下腫瘍摘出術」という術式で行われますが、この術式が給付対象かどうかは保険商品によって異なります。手術を受ける前に、加入中の保険会社に確認されることをお勧めします。
給付金の申請には医師の診断書が必要になることが多いです。診断書の発行には別途費用がかかりますので、必要な方は手術の際にお申し出ください。
13. 再発を防ぐためにできること
粉瘤の再発を防ぐために最も重要なのは、手術で袋を完全に取り除くことです。袋が残っていると、再び老廃物が溜まって粉瘤が再発します。
手術の質が再発率に影響
経験豊富な医師による丁寧な手術であれば、再発のリスクは非常に低くなります。くり抜き法は傷が小さい反面、袋の取り残しが生じやすいという面がありますが、熟練した医師が行えば再発率を抑えることができます。
炎症を起こしている状態では、袋が周囲の組織と癒着して完全に取り切ることが難しくなります。そのため、炎症を起こす前に治療を受けることが、再発予防の観点からも望ましいといえます。
日常生活での心がけ
粉瘤の発生を完全に防ぐ方法は確立されていませんが、肌の健康を保つことは予防に役立つ可能性があります。以下のような生活習慣を心がけてみてください。
肌を清潔に保ち、適度な保湿を行うこと。過度な洗顔や刺激は避け、肌のバリア機能を守ること。バランスのとれた食事と十分な睡眠で、肌のターンオーバーを整えること。紫外線対策を行い、肌へのダメージを減らすこと。
定期的なセルフチェック
一度粉瘤ができた方は、別の場所にも粉瘤ができやすい体質である可能性があります。入浴時などに皮膚をチェックし、新しいしこりを見つけたら早めに医療機関を受診しましょう。小さいうちに対処すれば、治療の負担も軽くなります。
14. 与野エリアから当院へのご案内
与野エリアは、2001年に浦和市・大宮市と合併してさいたま市となり、2003年の政令指定都市移行に伴い中央区となった地域です。「与野」という名前は、北与野駅、与野本町駅、南与野駅、与野駅といった駅名に今も残っており、地域の方々に親しまれています。
与野エリアは交通の便がよく、JR埼京線とJR京浜東北線が利用できます。大宮駅へのアクセスも良好で、日常的な買い物や通勤・通学にも便利な地域です。与野公園の美しいバラ園や、さいたまスーパーアリーナなど、魅力的なスポットも多くあります。
各駅からのアクセス
与野エリアの各駅から当院最寄りの大宮駅までは、いずれも短時間で到着できます。
JR埼京線をご利用の場合、北与野駅から大宮駅まで約3分、与野本町駅から約5分、南与野駅から約7分です。JR京浜東北線をご利用の場合、与野駅からさいたま新都心駅を経由して大宮駅まで約5分程度です。
お車でお越しの方は、国道17号線や新大宮バイパスをご利用いただくと便利です。
当院について
当院はJR大宮駅から徒歩圏内にあり、粉瘤をはじめとする皮膚のできものの診察・治療を行っています。経験豊富な医師が丁寧に診察し、患者さま一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案いたします。
与野エリアにお住まいで、皮膚のしこりや粉瘤が気になっている方は、どうぞお気軽にご相談ください。

15. 患者さまからよくいただくご質問
粉瘤について、診察時によくいただく質問をまとめました。
自分で潰すことは避けてください。無理に圧迫すると袋が破れ、周囲の組織に内容物が広がって強い炎症を起こす恐れがあります。また、衛生的でない環境で触ると細菌感染のリスクも高まります。しこりが気になる場合は、医療機関で適切な処置を受けてください。
残念ながら、粉瘤を市販薬で治すことはできません。粉瘤は皮膚の下に袋状の構造ができているため、塗り薬や飲み薬では袋を消すことができないのです。抗生物質は炎症を一時的に抑える効果がありますが、根本的な治療にはなりません。完治には手術で袋を取り除く必要があります。
手術は局所麻酔で行うため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。麻酔を注射する際に軽い痛みがありますが、極細の針を使用して痛みを軽減する工夫をしています。手術後は麻酔が切れると鈍い痛みを感じることがありますが、処方される鎮痛剤で対応できる程度です。
粉瘤の手術は日帰りで行われ、多くの方が手術後すぐに通常の生活に戻れます。デスクワークや軽作業であれば、手術当日から可能なことがほとんどです。ただし、激しい運動や重い荷物を持つ作業は、術後数日間は控えることをお勧めします。顔など目立つ場所の手術では、ガーゼを貼った状態になることを考慮してスケジュールを組むとよいでしょう。
どのような手術でも傷跡は残りますが、粉瘤が小さいうちに手術すれば傷も小さく済みます。くり抜き法であれば傷は数ミリ程度で、時間の経過とともにほとんど目立たなくなることが多いです。切開法の場合は傷跡が長くなりますが、皮膚のしわに沿って切開するなど、目立ちにくくする工夫がなされます。傷跡が気になる方は、診察時にご相談ください。
Q6. 手術した粉瘤は再発しますか?
袋状の組織を完全に取り除けば、同じ場所に再発することはほとんどありません。ただし、袋の一部が残ってしまった場合には再発する可能性があります。また、体質的に粉瘤ができやすい方は、別の場所に新たに粉瘤ができることがあります。これは再発ではなく、新しい粉瘤の発生です。
Q7. 粉瘤は放っておいても大丈夫ですか?
粉瘤は良性腫瘍なので、直ちに命に関わることはありません。しかし、放置すると徐々に大きくなり、炎症を起こすリスクも高まります。大きくなったり炎症を起こしたりしてから治療すると、傷跡も目立ちやすくなります。気になるしこりがある方は、まず診察を受けて状態を確認し、治療のタイミングを相談されることをお勧めします。
Q8. 完治までどのくらいかかりますか?
傷が閉じるまでの期間は手術方法によって異なります。切開法で縫合した場合は約1週間で抜糸を行い、その後は徐々に傷跡が落ち着いていきます。くり抜き法で縫合しなかった場合は、傷が閉じるまで2〜3週間程度かかることがあります。傷跡が完全に成熟するまでには3〜6か月を要します。
16. おわりに
粉瘤は決して珍しい疾患ではなく、多くの方が一生のうちに経験する可能性のある身近な皮膚トラブルです。良性腫瘍であり、適切な治療を受ければ完治できる疾患ですので、必要以上に心配することはありません。
大切なのは、正しい知識を持って適切なタイミングで治療を受けることです。自己判断で放置したり、自分で潰そうとしたりすると、かえって状態を悪化させてしまう恐れがあります。皮膚にしこりを見つけたら、まずは医療機関で診察を受けて、専門家の意見を聞いてみてください。
与野エリアにお住まいの皆さまにとって、このコラムが粉瘤への理解を深め、適切な治療を受けるきっかけとなれば幸いです。当院では、粉瘤をはじめとする皮膚のお悩みに丁寧に対応しております。気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- アテローム(粉瘤) Q&A | 公益社団法人日本皮膚科学会
- 粉瘤(アテローム・表皮嚢腫)| 日本形成外科学会
- 粉瘤(ふんりゅう) | みんなの医療ガイド | 兵庫医科大学病院
- 粉瘤について | 関東労災病院
- 粉瘤(症状・原因・治療など)| ドクターズ・ファイル
- 中央区の歴史 | さいたま市
- さいたま市エリアガイド | VISIT SAITAMA CITY
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務